
このプロツアー神戸のための予選シーズンをリードし続けたデッキデザイナーである平林和哉。「エンチャントレス」や「ダンシンググール」といったエクステンデッドデッキが印象的なだけに彼のブロック構築デッキにも期待が集まったが、平林は大会開催の数日前に石田格デザインの赤緑デッキへと鞍替えしている。
平林:今回のはダメでした(笑) みんなにお手合わせ願って現実に気がついて、ゴミ箱いきだよ。
デッキ選択に関してはこういって苦笑した平林。しかし、これまで7勝2敗という今大会のパフォーマンスを考えてみれば、その英断が彼自身を救ったと言えるだろう。
ここで平林が対する Ben Stark はミラディン・ブロックにはいってからの活躍ぶりが印象的なアメリカの若手。アメリカ組のライターにいわせると「未来のエース」なのだとか。そんなStark は彼自身がリミテッドでも愛好するアーキタイプであるという「親和」をプロツアー神戸ではプレイしている。はたして Stark は、オンスロート・ブロック時代の大礒正嗣のようなブレイクをはたすことができるだろうか?
Game 1
プロツアーでのフューチャーマッチは「初出場にして初日突破を果たした2000年のプロツアー・ニューヨーク以来」だという平林。思えばあのときのフォーマットもブロック構築で、彼は《果敢な勇士リン・シヴィー/Lin Sivvi, Defiant Hero》率いるレベリオンデッキの海に緑黒のビートダウンデッキで挑戦していたのだった。
そんなわけで 4 年ぶりのフューチャーマッチを戦うことになった平林和哉は《伝承の樹/Tree of Tales》2枚に《酸化/Oxidize》、《ヴィリジアンのシャーマン/Viridian Shaman》といったスピード面でも不安の無い初手を力強くキープ。Ben Starkが《羽ばたき飛行機械/Ornithopter》プレイ、《囁きの大霊堂/Vault of Whispers》セットから《電結の働き手/Arcbound Worker》召喚という具合に開幕ターンを終えると、平林はそのエンドステップに《囁きの大霊堂/Vault of Whispers》を《酸化/Oxidize》するというファーストリアクションで応じてみせた。
続くターンに平林はプレイ《衝動のタリスマン/Talisman of Impulse》。ここでハンドの《黄鉄の呪文爆弾/Pyrite Spellbomb》を設置するか《静電気の稲妻/Electrostatic Bolt》をキャストするかで小考し、結局《羽ばたき飛行機械/Ornithopter》へと《静電気の稲妻》を叩き込んでターンエンドとした。
一方のStarkは1/1の《電結の働き手/Arcbound Worker》でアタックしつつ《教議会の座席/Seat of the Synod》セットから《頭蓋骨絞め/Skullclamp》。平林はこのドローエンジンを《ヴィリジアンのシャーマン/Viridian Shaman》で叩き壊しつつ、《電結の働き手/Arcbound Worker》に対して先ほどの二択で使わなかった《呪文爆弾》をお見舞いした。
静かに《シャーマン》がアタックを開始し、平林は序盤のリードをビートダウンにむすびつけるべく《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》を展開。マナベースを完成させた平林としては《炉のドラゴン/Furnace Dragon》なり《弧炎撒き/Arc-Slogger》なりでこのままゲームを決めてしまいところなのだが・・・どうもドローがいわゆる「土地ゾーン」へと突入してしまった雰囲気だった。勝ちきれない平林。
すると、一度は戦線をズタズタにされてしまったStarkが対照的にここで息を吹きかえしてしまう。2枚目、3枚目の《頭蓋骨絞め/Skullclamp》を都合よく引き当てた彼は《金属ガエル/Frogmite》を4枚の新鮮なドローに。そのドローからさらなる《金属ガエル/Frogmite》や親和アーティファクト、ついには《マイアの処罰者/Myr Enforcer》が登場するという按排だ。
こうなると傾いた天秤が平衡をとりもどしつつあることは明白で、平林も必死に2枚目、3枚目の"Thoren"こと《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》を展開して《炉のドラゴン/Furnace Dragon》の到来を待ちわびるのだが・・・これがかなわない。
平林が凪ぎのドローを繰り返すうちに・・・Starkは場に10数枚のパーマネントを展開しつつハンドを毎ターンのディスカードステップに整理しなければならない、という状況を作り上げてしまった。
いつのまにやら劣勢となってしまった平林は最後の望み(墓地に落ちたときのカードドロー)をかけて"Thoren"の群れでStarkに突撃をしかけてみたのだが、Starkは《マイアの処罰者/Myr Enforcer》でブロックしたうえで平林の《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》を《溶接の壺/Welding Jar》によって再生させるというプレイをみせた。もちろん、次ターンに自身の勝利を確信しているからだ。
平林は苦笑を浮かべながら自軍の《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》に《酸化/Oxidize》をうちこみ、ライブラリー最上段がやはり土地であることを確認してから投了を宣言した。
平林-0, Stark-1
Game 2
先手平林はテイクマリガンからのスタートで、《山/Mountain》と《森/Forest》を置いてから2ターン目に《衝動のタリスマン/Talisman of Impulse》設置という立ち上がりとなった。一方のStarkは開幕ターンに《電結の働き手/Arcbound Worker》を展開した上で第2ターンに《空僻地/Glimmervoid》からのマナで《酸化/Oxidize》を《タリスマン》に叩き込むというアクション。
そして、ここからの平林のドローがただひたすらランド・ゾーンを迷走することとなってしまうのだが、対するStarkはすばらしいスピードで親和システムを構築していくことになった。
Starkは3ターン目に《彩色の宝球/Chromatic Sphere》と《チス=ゴリアの歯/Tooth of Chiss-Goria》プレイ。4ターン目に2体目の《電結の働き手/Arcbound Worker》と《金属ガエル/Frogmite》の展開から《物読み/Thoughtcast》。5ターン目にはとうとう《電結の荒廃者/Arcbound Ravager》を呼び出し、余剰アーティファクトをひたすらサクリファイスした上でこの《荒廃者》自体をも・・・召喚酔いの無い状態の《電結の働き手/Arcbound Worker》を強化するために生贄にささげた。
かくて、5ターン目に6/6の《電結の働き手/Arcbound Worker》と2/2の《カエル》にアタックされた平林和哉のライフはたったの8に。その上でStarkはダメ押しにさらなる《カエル》をノーコストで召喚したのだった。

平林はそれでもカエル2匹に向けて2点ずつの《火の玉/Fireball》をプレイし、最後の抵抗を試みる。しかし、ここで Ben Starkが《チス=ゴリアの鱗/Scale of Chiss-Goria》をハンドから公開し、平林和哉は投了を宣言することになった。
平林:二戦目に関してはもうどうしようもなかったね。やれることもやったし。
自分に言い聞かせるように話した平林は、ここでライブラリーの一番上のカードを何気なくめくる。すると、無情にも《炉のドラゴン/Furnace Dragon》がそこに佇んでいた。
Final Results:平林-0, Stark-2