勝つしかない。

長かった日本選手権も、スイスラウンドは残すところ、あと2戦。当然、このテーブルには「勝つしかない」プレイヤーが招かれる事になる。
森は、ネームバリューからは当然かもしれないが、途中何度ものフィーチャーマッチへと招待され、そのプレッシャーの中で3敗ラインに留まっている。
一方の板東は、忘れもしないだろう。昨年の同じ会場、2日目の最終ラウンド。《頭蓋骨絞め/Skullclamp》が禁止になる直前の親和全盛時代、「人類の英知」と自ら称した青白コントロールで「ここを勝てばTop8」という場面で、対コントロールにシフトされた亀井 俊祐(大阪)の青白に非業の死を遂げ、決勝ラウンドへ進む事は叶わなかった。
だが、あれから1年余り。
板東は、再びこの舞台に戻ってきた。
相棒の青コントロールを手に、届かなかった栄光を掴み取る為に。
Game 1
先に動いたのは板東。
4マナから《呪師の弟子/Jushi Apprentice》を通し、森の《知識の渇望/Thirst for Knowledge》は《マナ漏出/Mana Leak》でカウンター。
《忘却石/Oblivion Stone》は通すが、起動にスタックで《呪師の弟子/Jushi Apprentice》を《ブーメラン/Boomerang》すると、ウルザ地形が揃わない森は、《知識の渇望/Thirst for Knowledge》《卑下/Condescend》と抵抗をするが、通した《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》をカウンター合戦の末に登場を許した《ヴィダルケンの枷/Vedalken Shackles》に奪われる、森にとっては最悪の展開になる。
しかし、森は逆転を賭けて《メムナーク/Memnarch》をプレイする。カウンターのマナは、ある。だが、ここで突き刺さったのが、スタンダードのインタビューで板東が対青系の「必殺呪文」に指名した《最後の言葉/Last Word》!
さらに《連絡/Tidings》で手札を増強した板東は、終始、森にペースを渡さなかった。
森 0-1 板東
Game 2
《すべてを護るもの、母聖樹/Boseiju, Who Shelters All》スタートで勢いに乗りたい森だが、すぐに対消滅で落ち着いた展開に。しかも、1本目に完敗を喫した森に追い討ちをかけるように、ランドが止まったのだ。
手札にはカウンターは十分だが、先につながるカードが見えてこない。そうしている間に、板東は《隠れ石/Stalking Stones》を起動。悠然と森に襲い掛かるダメージクロックは、その愚鈍そうな姿とは裏腹に、差し迫った時の訪れを厳しく森に宣告していく。
これ以上はさせない。板東の《呪師の弟子/Jushi Apprentice》をカウンターしにかかる森だったが、またしても《最後の言葉/Last Word》が邪魔をする。だが、《最後の言葉/Last Word》でなくてもいい場面で、このカウンターに板東が手を付けたということは……?

事実、森が次にプレイした《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》が通り、板東がプレイした《接収/Acquire》を《双つ術/Twincast》するなど、完璧なはずだった。
しかし、板東のライブラリーの中には何もアーティファクトは残されていなかった。そして、奪われた宝具は当然《精神隷属器/Mindslaver》。悪い事は重なるもので、形の上では森の、もはや森ではないターンに引き当てたカードは、自らのメロクを含め、全てを灰燼と帰さしめる《忘却石/Oblivion Stone》。
しかし、例外はある。
愚鈍な宣告人は、板東と森の激しい呪文のやり取りなど意に介さなかったのだ。
板東「今年は……今年のデッキはコントロールにも強いですから!」
1年越しのリベンジまで、あと1勝だ。
森 0-2 板東
Final Result 板東 Wins!