トップ8全体を通して見られたように、ブライアン・キブラー/ Brian Kiblerが精巧に組み上げた「Wrath」デッキ――というより、イニストラード・ブロック構築のジャンド・デッキ――は決勝の舞台でもほとんどミラーマッチを演じることとなった。
台湾のツンイー・チェン/Tung-Yi Chengのデッキはわずかに違う形で、強力な《 修復の天使 》のために白をタッチした――《 平地 》1枚と《 国境地帯のレインジャー 》、《 豊かな成長 》や《 アヴァシンの巡礼者 》を足した――ものだった。天使に代わってプエルトリコのセサール・ソト/Cesar Sotoのデッキに入っているのは、迅速で、たびたびゲームを奪い去っていく《 ファルケンラスの貴種 》だ。
チェンとソトはすでにプロツアー招待権を獲得している――両者ともこの週末以前に出場権を得てはいなかった――が、この試合にはそれより大きな意味があった。ここに懸かるのは今年一年間を誇りに思う権利そのものであり、素晴らしいトロフィーであり、そして歴史に記す足跡なのである。
ゲーム1
チェンは初手《 アヴァシンの巡礼者 》、続けて《 豊かな成長 》と《 進化する未開地 》でマナ基盤を整えた。ジャンド・デッキで重要なことのひとつは、動き出すためのマナ基盤がいかに強固か、だ。
一方、ソトは《 進化する未開地 》で《 山 》を持ってくるものの、1ターン目、2ターン目と動きがない。あるいはそれは、彼の手札で待ちかまえているビッグ・ゲームの前兆なのかもしれない。しかしながら、ドローを積み上げていくと、そういった勝負をするための時間はあまりないようであった。
チェンは《 高原の狩りの達人 》を投下し、厄介なトークンを引き連れ、最初に大きな打撃を与えた。ソトは変身を防ぐために《 忌むべき者のかがり火 》をX=1で撃つが、チェンは単に《 国境地帯のレインジャー 》で《 森 》を持ってきて、《 アヴァシンの巡礼者 》に代わるマナ・ソースを用意した。
4ターン目ついに、ソトが《 ファルケンラスの貴種 》を盤面に送るが、チェンはターンをそのまま返し、《 高原の荒廃者 》へと変身して貴種を除去した。
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決勝戦第1ゲームでは、遅めのハンドがセサール・ソトの敗北を決定づけた。 |
その後大きな災難がソトを襲う。《 高原の荒廃者 》に《 悲劇的な過ち 》を向けるが、《 修復の天使 》――ふたつのデッキにある重大な違い――が荒廃者を救うだけでなく、2体目の狼トークンと致命傷となるダメージを与える攻め手をたっぷりとチェンに与えるのだった。
チェン 1-0 ソト
ゲーム2
手札を見つめるチェンを5枚の土地が見つめ返してきていて、動けるのは《 忌むべき者のかがり火 》と《 小悪魔の遊び 》だけ。より良い6枚が収まるように、デッキへ送り返すことを手早く選択する。
ソトは今一度序盤のプレッシャーが弱いハンドをキープし、それは緑マナが足りないものだったが、チェンの《 アヴァシンの巡礼者 》に対処する《 悲劇的な過ち 》は持っていた。
それでも4ターン目《 高原の狩りの達人 》による攻めのプレイを逃すものかと、《 豊かな成長 》の力を借りて足りない緑マナが素早く供給された。《 高原の狩りの達人 》は《 血統の切断 》で除去されたものの、《 ファルケンラスの貴種 》を置き直した。
一方、チェンのマナは噛み合っていなかった。ソトが《 忌むべき者のかがり火 》をX=4で奇跡したことにより、森3枚と沼1枚のチェンの状況は悪化した。しかし、チェンの盤面にクリーチャーがいない状況で、かがり火を豪華な《 火の玉 》のように使ってしまったことを、ソトは後悔することになる。
《 悲劇的な過ち 》が《 ファルケンラスの貴種 》に向けられ、チェンをこれ以上後退させなかった。さらに《 脳食願望 》が《 国境地帯のレインジャー 》と《 悲劇的な過ち 》とともに《 血統の切断 》を公開し、それはソトがしばらく大きな脅威を持たない、ということを意味していた。とりわけ、彼の狼トークンを《 国境地帯のレインジャー 》と交換に取ってしまえば。
ソトは自身の《 国境地帯のレインジャー 》を繰り出しターンを渡すが、チェンのさらなる《 悲劇的な過ち 》で2/2を失う。
チェンは自陣の《 ウルフィーの銀心 》が生き残れるものかと緊張を感じていたが、返しのターン、ソトが《 高原の狩りの達人 》を繰り出したことに安堵し笑顔になった。
ソトが奇跡の引きだと信じた《 高原の狩りの達人 》は、新たに出された《 アヴァシンの巡礼者 》と組になった《 ウルフィーの銀心 》と比べてあまりにも、あまりにも小さかった。そしてチェンが《 血統の切断 》のフラッシュバックを《 高原の狩りの達人 》に向ける7マナを叩き出したことにより、プエルトリコ側は厳しい状況になった。
ソトは残った狼トークンをチャンプ・ブロックに使い、《 悲劇的な過ち 》で《 ウルフィーの銀心 》を除去できる陰鬱状態を作り出した。
だが、チェンは2体目を送り出す。
盤面に2ターン・クロックがある中で、ソトは奇跡を願った。比喩の意味でも、文字通りの「奇跡」も。しかし彼のデッキは連続して《 森 》を彼に渡すのだった。
2体目の《 ウルフィーの銀心 》を除去する手段を持たない相手に、チェンは致命傷を喰らわせ、手早く台湾チームの1勝目を挙げた。
チェン 2-0 ソト
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大量の除去呪文と強大なクリーチャーが、ツンイー・チェンと台湾チームにこの決勝最初の勝利をもたらした。 |
(Tr. Tetsuya Yabuki)