決勝: 彌永 淳也 vs 諸藤 拓馬

Posted in Event Coverage on September 2, 2005

By Yukio Kozakai

彌永 淳也3位決定戦は、大礒 正嗣(広島)と志村 一郎(茨城)の2人で行われていた。正直なところ、多くのプレイヤーが望んでいた決勝の組み合わせは、その2人だっただろう。ただ、現実として彼らはこの決勝のテーブルに座ることは出来なかったのだ。

しかし、それで悲観するのは大間違いだ。

生まれついての勝者などこの世にはいない。誰しもが、どこかでブレイクを果たすポイントというのはあるものだが、それが10年という節目を迎えたこの日本選手権だった。それだけの話だ。

しかも、こんなチャンスはそうそう巡ってくる訳では無い。これまでタイトルとは無縁だった2人の挑戦者が、まさにブレイクと呼ぶに相応しい最高の舞台に上がり、王座を目指して最後の戦いに挑む。

■彌永 淳也(東京)

この日本選手権に向けての胸の内を、こう明かしてくれた。彼は、例え準々決勝を勝ち上がっても、世界選手権には参加しない事を既に決めていたのだ。

彌永「自分、受験生なんで。本当はGP松山で一度マジックから離れて勉強するつもりだったんですが、松山の戦績があんまりだったんで、ちょっとやり残した感があって……。夏はずっと勉強してて(GP新潟は不参加)、レーティング招待があったんで選手権だけは出ようかなと。ブロック構築は全然やって無かったですし、(勉強優先だったんで)選手権に向けての練習もあんまり出来なかったんですが、いい赤単が組めましたし、ドラフトも勝てたので」

代表チーム入りしても、世界選手権の権利を得ても、「勉強をする」という鉄の意志は変わらないと言う。つまりは、この日本選手権を一つの区切りに捕らえていたのだ。

彌永「でも、プロツアー(PTホノルル)までには受験終わるんで、そうしたら今回のレーティングで行けると思います。予選シーズンもPTQ出なくていいですから、PTはぜひ行きたいです。それと、世界選手権は出れないですけど、やっぱりタイトルは欲しいです」

決勝まで残って、ようやくはっきりとタイトルに対して口を開いた彌永。戦いの場は、MTGから受験勉強へと移るが、その前に一つ大きな仕事が残っている。

もう、悔いは残さない。

■諸藤 拓馬(福岡)

諸藤「負けるんじゃないでしょうかね」

決勝を前にして意気込みを尋ねたところ、こんな答えが返ってきた。最近では勝利に対しての貪欲なまでの執念を前面に押し出すプレイヤーが増えている中で、実に自然体にMTGを楽しみに、久々にやってきた男が今、どデカいタイトルに手が届こうとしている。

スタイルだけ見るなら、彌永と諸藤、両者とも本当に自然体の男達だ。しかし、諸藤には彌永とはまた違った想いを抱いてこの決勝に向かっている。

諸藤「三原は―――――」

二言目には、11連勝の大記録を打ち立てて2日目の主役に躍り出た、同郷の仲間の名が口をついて出てくる。この日本選手権、諸藤は本当に三原と共にあり、三原と決勝を戦う事を夢見て日曜日を迎えていたのだ。

諸藤「世界選手権は出れるなら出たいですけど、仕事の都合次第ですね。だけど、三原はどうなりますか?(現状では彌永が出場辞退を表明しているので、諸藤が参加すれば予選ラウンドで彌永に続く2位だった三原はリザーブに、諸藤が辞退となると、三原の日本代表チーム入りが決まる) 三原が出れるなら……。強い人が出た方がいいとも思うし、日程的な関係もあるし……」

揺れる胸の内を明かしてくれた諸藤。そこには、デッキをシェアしてくれた三原と、九州の仲間達への、強い想いが感じられる。

諸藤 拓馬

迷いを断ち切れないまま、諸藤の決勝は始まるのだろうか。

諸藤「でも、タイトルは欲しいですよね。日本王者って」

それを聞いて、ちょっと安心した。

Game 1

先手の諸藤は《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》から始まる理想的な立ち上がり。彌永も《尖塔の源獣/Genju of the Spires》スタートから2ターン目に早々と《金属モックス/Chrome Mox》経由の《火と氷の剣/Sword of Fire and Ice》で《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》が空襲出来る体勢を作り上げ、まずは挨拶代わりの5点パンチ。

しかし、早さを見せ付けたのは諸藤だ。

4ターン目には独楽の力だけでトロンを成立させ、《刈り取りと種まき/Reap and Sow》で邪魔な彌永の《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》を破壊。《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》は《尖塔の源獣/Genju of the Spires》の牽制に残しつつ、《歯と爪/Tooth and Nail》を双呪。《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》が呼び出され、次のターンには勝敗は決していた。

諸藤 1-0 彌永

darksteel colossus

廣澤 0-1 彌永

Game 2

彌永にとってはどうしても取っておきたい1本目だった。サイドボード後の(最大)4戦は、《赤の防御円/Circle of Protection: Red》との戦いになる。通常の緑トロン・青トロンには無い赤単へのソリューションは、同条件以上の確率で割られる《真髄の針/Pithing Needle》1枚でどうにかなるものではない。

ゲームを長引かせず、速やかに諸藤のライフを削り切る必要がある。

先ほどと同じく、《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》と《尖塔の源獣/Genju of the Spires》の出し合いから始まった第2ゲーム。

諸藤が、彌永の《尖塔の源獣/Genju of the Spires》が殴って来るのに合わせて《帰化/Naturalize》を打ち込むが、能力を得ているのは土地。浴びなくていい6点を喰らった諸藤は《ウルザの魔力炉/Urza's Power Plant》も《溶鉄の雨/Molten Rain》で失って苦しくなるが、《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》から捧げられた《平地/Plains》が、手札の《赤の防御円/Circle of Protection: Red》を導き出す。

トロンの完成は遅らせた彌永、必死にクリーチャーを展開して諸藤のマナを拘束し、《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》でコツコツとライフを削り落としていく。そうして諸藤が独楽を起動した隙に、《弧炎撒き/Arc-Slogger》を4度に渡って起動。うち3回が命中し、残り5点のライフを《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》で落とし切れるかどうかの勝負になった。

増える彌永の軍勢。
増えない諸藤のマナ。

フルタップとなるが、たまらず起動した《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》の先には、彌永がハンドから公開する《爆片破/Shrapnel Blast》だけが映っていた。

諸藤「……あの6点が」

プレイミスの代償は、あまりにも大きかった。

諸藤 1-1 彌永

数多くのギャラリーが見守った決勝戦

Game 3

開幕スリス!

後手ながら、1ターン目に《炎歩スリス/Slith Firewalker》を走らせた彌永。諸藤も《団結のタリスマン/Talisman of Unity》《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》と展開するが、続く彌永の手は《罰する者、ゾーズー/Zo-Zu the Punisher》。彌永のハンドは、テンパイというよりも、トロンに対しての天和だ!

さらに追い打ちをかけるように、《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》をブロッカーに召喚した諸藤に、《真髄の針/Pithing Needle》で対応を迫る。

「その《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》を起動しますか? しないなら、土地と新鮮なライブラリーの保障は致しかねますよ? 起動するなら、ウチとしましては《赤の防御円/Circle of Protection: Red》などご遠慮したい気持ちですが。まぁ、どうされても指定するカードは変わりませんけどね」

実際に言っているわけではないが、そんな感じだ。

結局、長老を残す事を選択した諸藤に対し、防御円を宣言した彌永。《かまどの神/Hearth Kami》《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》も追加してアタックを繰り返し、《団結のタリスマン/Talisman of Unity》を破壊して2つ目の緑マナも遠ざけ、やむを得ずプレイした森によりダメージを受けつつも《歯と爪/Tooth and Nail》で《トリスケリオン/Triskelion》《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》を送り込み、手札のもう1枚の《歯と爪/Tooth and Nail》まで生き残る事が出来れば、《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》からの大逆転勝利を狙える。残ライフは2、《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》を通してもまだ生き残れる。

しかし、彌永はどこまでも完璧だった。

2枚のハンドから現れたのは、6枚目の土地。そして、《弧炎撒き/Arc-Slogger》!

諸藤 1-2 彌永

Game 4

molten rain

またしても、無人の荒野を《炎歩スリス/Slith Firewalker》が駆け抜ける。この炎の化身の、いかに凶暴な事か。

《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》でブロックをし、土地を探してくるものの、待っていたのは《溶鉄の雨/Molten Rain》。《永遠の証人/Eternal Witness》で、壊された《ウルザの鉱山/Urza's Mine》を取り返すも、彌永は《煮えたぎる歌/Seething Song》からの《火と氷の剣/Sword of Fire and Ice》プレイ即装備で再び走り始め、2枚目の《永遠の証人/Eternal Witness》が仲間を回収するも、《凍らし/Frostling》があまりにも強烈な一撃を与える。

カウンターが2つ乗った《炎歩スリス/Slith Firewalker》に携えられた、強大な剣。トロンを揃えた諸藤が《トリスケリオン/Triskelion》で迎え撃ち、何とか《炎歩スリス/Slith Firewalker》は排除したが、今度は《凍らし/Frostling》が後を引き継ぐ。

だが、スリスの猛攻を耐え抜いた諸藤は、《精神隷属器/Mindslaver》をプレイ即起動して彌永の動きを封じるが、《凍らし/Frostling》が自身を対象に生贄に捧げる事で《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》を守り、攻め手を失わない。

諸藤は、続いて《永遠の証人/Eternal Witness》で《トリスケリオン/Triskelion》を回収して防御手段を得たが、3枚並んだ《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》のバックアップ付きの猛攻を止められない。

ドローを信じてライブラリーをめくるが……そこに希望の光は見出せず。諸藤は、その右手を彌永に差し伸べ、10周年を迎えた日本選手権は幕を降ろすのだった。

諸藤 1-3 彌永

―――――しかし、このゲーム、いや日本選手権決勝に待ったがかかる。この観戦記事の、数行上を確認して欲しい。

「《凍らし/Frostling》が自身を対象に生贄に捧げる事で《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》を守り、攻め手を失わない」

実はこの時、当の彌永からルーリングに関してジャッジに質問が行われており、上記の通りの動きが果たして出来るかどうかが問われていたのだった。そして、それに対してヘッドジャッジが「可能である」という回答を行った上で、ゲームが再開されたという経緯があった。

この時、場には他にクリーチャーがおらず、《凍らし/Frostling》には《火と氷の剣/Sword of Fire and Ice》が装備されていた。プロテクション(赤)の付いたクリーチャーを対象とした能力の起動は当然出来ない。ヘッドジャッジを含めた全てのスタッフがその見落としに気付かず、一度日本選手権は終了し、優勝者のコールまでが行われた。

しかし、周囲と他のジャッジからのアピールにより、上記ルールの相違が確認された。当事者を含めて関係者の間で協議が行われ、結果、公平を期すためにゲームのやり直しが決定した。

この決勝はテレビマッチが採用されており、当然この決勝の模様も全てビデオに収められていた。場も、手札も、墓地も、もちろんライフも記録が残されている。

数十分が経過し、「完全に再現が可能」という確認が取れ、スタッフの手によってゲーム状況の全てを完全に再現した上で、問題の《精神隷属器/Mindslaver》を起動したターンからリテイクに。

再び第4ゲームが行われる。

ヘッドジャッジから『第4ゲーム再試合』措置についての説明が

Game 4 Rematch

《精神隷属器/Mindslaver》を起動した諸藤が、彌永のターンを手に入れる。《凍らし/Frostling》を生贄に《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》の1枚を除去し、返しの自分のターンでは《永遠の証人/Eternal Witness》からの《トリスケリオン/Triskelion》で場を再構築し、以降、展開の芳しくない彌永に対してロケット砲のプレッシャーが大きく圧し掛かる。

諸藤が引き当てた《赤の防御円/Circle of Protection: Red》。これが彌永の攻撃を完全に食い止める。

2枚の《かまどの神/Hearth Kami》、《弧炎撒き/Arc-Slogger》を並べ立てるが、防御円の力はあまりに大きい。引き伸ばした時間の先には、《歯と爪/Tooth and Nail》が待っている。

探してきたのは《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》と《映し身人形/Duplicant》。もともと手札にあった《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》の号令の元、猛反撃の一撃が、彌永を襲う。

あるはずの無かった第5ゲームへ、勝負の行方は委ねられる事になった。

諸藤 2-2 彌永

Game 5

スリスは3度走らない。

《凍らし/Frostling》《真髄の針/Pithing Needle》のみで序盤の行動を終えた彌永。反対に、《団結のタリスマン/Talisman of Unity》経由で3ターン目にトロンを揃えた諸藤。

しかし、有効牌らしいカードは《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》のみ。その前に《溶鉄の雨/Molten Rain》を浴びた諸藤は、再びトロン不成立の状態に陥っていた。そんな中でも《赤の防御円/Circle of Protection: Red》をしっかり引き当てて、以降全く動く気配の無い彌永に対して再びトロンを成立させ、《トリスケリオン/Triskelion》をプレイ。

《弧炎撒き/Arc-Slogger》を2枚並べるが、後の祭り。既に2桁を超える数のマナを有する諸藤のライブラリーには、独楽で見えた3枚先に《精神隷属器/Mindslaver》が据えられていた。

手札の《爆片破/Shrapnel Blast》もろとも、場もライブラリーごと壊滅。絶望の彌永の前には、《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》がその姿を現す……。

諸藤 3-2 彌永

2005年日本王者、諸藤 本来、あり得なかった筈の第5ゲーム。もちろん、裁定を下したジャッジはこれを教訓に大いに反省をすべきであるが、あり得なかったはずのチャンスを掴み取ったことは、間違いなく諸藤自身の実力によるものだ。

それこそが、王者としての資質を持ち合わせている何よりの証明であり、例えやり直しがあっての勝利としても、それをモノに出来なければそれまで、という厳しい勝負の世界なのだから、その勝利は決して色褪せてはならない。また、色褪せることを許してはいけない。それは、一度は栄冠を勝ち取った彌永の功績をも否定する事になるのだから。

そして、去り行く勝利の女神の前髪ならぬ、あるはずの無い後ろ髪を掴み切った王者に、惜しみない賞賛を!

記念すべき、10回目の日本選手権。チャンピオンは、諸藤 拓馬!

諸藤 拓馬 is Japan Nationals 2005 Champion!

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