決勝:

Posted in Event Coverage on February 29, 2004

By 吉川 祐輔

長かった16+2回戦の旅路の果て、残るプレイヤーはただ2人。共に数多くの実績を誇る、この場にふさわしいプレイヤーといえよう。

片や日本の黒田正城。アーティファクト対策の古来からの王道である赤単色を選択し、《溶鉱炉の脈動/Pulse of the Forge》の緻密な計算を重ねここまで勝ちあがってきた。
片やフランスのGabriel Nassif。「マナは力だ」とばかりに緑単色"Twelvepost"を操り、我慢の末にモンスターを呼び出しては勝利を重ねてきた。

大本命と目され、参加者の4割以上のプレイヤーが選択したAffinity(親和)はこの場にいない。世界を正確に予測し、的確な選択をしてきたこれらのデッキのどちらかが、今日から新たなメタゲームの本命となるのだ。

黒田はこの大会で「初日全勝すると2日目に残れない」という自らのジンクスを破ってきた。一方で、「日本人はプロツアーの決勝で1ゲームも勝利できない」というジンクスが未だに残っている。
ここは全てのジンクスをまとめて打破すべく、黒田の勢いに期待したいところだ。

様々な思いを乗せ、今決勝の幕が上がる。

Game 1

ダイスロールに勝利し黒田先攻。《山/Mountain》3枚《溶鉱炉の脈動/Pulse of the Forge》3枚、《減衰のマトリックス/Damping Matrix》と微妙なハンドだが、これをマリガンする理由もない。

序盤はマナソースを並ベあう静かな立ち上がり。第2ターンに《団結のタリスマン/Talisman of Unity》で先攻したNassifは、第3ターンに《森の占術/Sylvan Scrying》で1枚目の《雲上の座/Cloudpost》を持ってきて即セット。黒田はその終了時に1発目の《溶鉱炉の脈動/Pulse of the Forge》を放ち、Nassifは驚きの表情を見せる。

Nassifは続くターンにも《森の占術/Sylvan Scrying》から2枚目となる《雲上の座/Cloudpost》をセットし、着々とその基盤を整えていく。黒田は2発目の《溶鉱炉の脈動/Pulse of the Forge》をプレイ。

黒田が5枚目の土地を置けないでいると、第5ターンにして7マナを生成できるNassifは《刈り取りと種まき/Reap and Sow》を双呪でプレイ。自らのマナ基盤を拡張するだけでなく、黒田のマナ生産をも阻害にかかる。対応して黒田は3枚目となる《溶鉱炉の脈動/Pulse of the Forge》を。これにはNassif苦笑い。持ってくるのはこちらも3枚目となる《雲上の座/Cloudpost》である。

直後に《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》をドローしてしまい、少し嫌な予感を受ける黒田だが、だからといって止まってもいられない。特に何もなかったNassifの終了時に《とげの稲妻/Barbed Lightning》を放ち、攻撃することなくライフを5に減少させる。手札の《減衰のマトリックス/Damping Matrix》と合わせ、まずは《爆片破/Shrapnel Blast》待ちに。

途中《火の玉/Fireball》を引き、これをフィニッシュに温存したかった黒田ではあるが、マナ基盤がこれ以上伸びることは少ないと考え、これを2点でプレイ。Nassifのライフを3にする。これで《とげの稲妻/Barbed Lightning》《溶鉱炉の脈動/Pulse of the Forge》でもOKだ。

Nassifもこの状況を理解して、むしろニコニコしている。割り切っているのだ。《隠れ石/Stalking Stones》をプレイし、《ヴィリジアンのシャーマン/Viridian Shaman》→《減衰のマトリックス/Damping Matrix》を破壊して《忘却石/Oblivion Stone》と、できることは全てやろう。人事を尽くし、天命を待つ。それが名手の姿勢。

黒田も4マナまで我慢して《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》。そしてそれが破壊されたことによりドローしてきた《火の玉/Fireball》で勝負を決めた。

黒田 –1 Nassif -0

黒田のサイドボーディング:
Out: 4《減衰のマトリックス/Damping Matrix》 4《爆破/Detonate
In: 4《溶鉄の雨/Molten Rain》 4《残響する破滅/Echoing Ruin

Nassifのサイドボーディング:
Out: 3《ヴィリジアンのシャーマン/Viridian Shaman
In: 1《映し身人形/Duplicant》 1《白金の天使/Platinum Angel》 1《精神隷属器/Mindslaver

Game 2

黒田の初手は《山/Mountain》《山/Mountain》《ダークスティールの城塞/Darksteel Citadel》《とげの稲妻/Barbed Lightning》《静電気の稲妻/Electrostatic Bolt》2枚《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》。これに2ターンの後《溶鉄の雨/Molten Rain》を引き当て、直前にNassifが《森の占術/Sylvan Scrying》で引き込んだ《雲上の座/Cloudpost》を破壊できる準備が出来た。

しかし、Nassifは第3ターン、敢えて《森/Forest》から《忘却石/Oblivion Stone》。もちろん両者分かっているため、黒田も"I must play."と言いながらこの《森/Forest》を《溶鉄の雨/Molten Rain》する。

これを見届けてNassifは《雲上の座/Cloudpost》を続けて2ターンに渡りセットし、マナ基盤を整えていく。この間、お互い《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》をプレイし合う。
黒田は少考するが、手札に余った《静電気の稲妻/Electrostatic Bolt》を活用できる術ができ、またダメージを通していかなければならないことから、Nassifのそれを除去しこのゲーム初のダメージを与える。

返すターン、Nassifはキーカード《刈り取りと種まき/Reap and Sow》を双呪でプレイ。《雲上の座/Cloudpost》は3枚に、黒田のマナソースは5枚にそれぞれ変化する。黒田が終了時に《溶鉱炉の脈動/Pulse of the Forge》をプレイするのを見て、黒田の手札の枚数を確認の上《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》を《酸化/Oxidize》。恒久的なダメージ源を潰す。

14になったNassifのライフを見て黒田は考え、ここが打ち所か、と全力で5点の《火の玉/Fireball》をプレイ。Nassifのライフは9となり、手札に見える火力では足りないが、今後の引き如何ではこれが最速と読んだのだ。

しかし次ターン、Nassifは慎重に考えた末とうとう《歯と爪/Tooth and Nail》をプレイ。《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》と《白金の天使/Platinum Angel》を引き出し、自らの敗北に少しの猶予を得ると同時に黒田に外し得ない2ターンのクロックを突きつける。

もちろん黒田は《白金の天使/Platinum Angel》を《静電気の稲妻/Electrostatic Bolt》で始末するのだが、《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》はどうにもならない。それでも引いてきた《とげの稲妻/Barbed Lightning》と、もともとあったもう1枚を合わせ、あと3点分のダメージソースを得れば良い状態にまで持ち込む。

だが、次のターンに《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》が一撃を振り下ろした後、Nassifがプレイした2枚目の《白金の天使/Platinum Angel》が計算を大きく狂わせた。

《爆破/Detonate》を全てサイドアウトした黒田には、《白金の天使/Platinum Angel》を除去しながらNassif自身に9点のダメージを与える手段は残っていなかったのだった。

黒田-1 Nassif -1

以下、両者サイドボーディングなし。

Game 3

《山/Mountain》3枚《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》《残響する破滅/Echoing Ruin》2枚《爆片破/Shrapnel Blast》の初手を静かにキープする黒田。先程からバランスの良い初手を引けている。Nassifは《雲上の座/Cloudpost》スタート。

第2ターンには《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》での攻撃を開始する黒田に対し、Nassifは《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》から《団結のタリスマン/Talisman of Unity》。しかしこれを黒田が《残響する破滅/Echoing Ruin》すると、Nassifのマナ供給がピタリと止まってしまう。無色マナは《隠れ石/Stalking Stones》を引くのだが、緑マナが出ず苦しい。

黒田は2枚に増えた《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》で淡々と強化攻撃をしていく。その間Nassifは1度ディスカードにまで追い込まれるが、蛾を3回通してライフが13になった後ようやく《雲上の座/Cloudpost》から《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》をプレイする。

その上をすり抜け2点、さらに終了時に《とげの稲妻/Barbed Lightning》で3点とライフを8にまで追い詰めた黒田だが、続くターン更なる《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》と《森の占術/Sylvan Scrying》で一気にマナを回復してきたNassifに対し、時間がそう多く残されていないことを感じ取っていた。

《森/Forest》《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》と立ててターンを返してきたNassifに対し《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》2体で攻撃を仕掛けるとNassifは片方に《酸化/Oxidize》。黒田はここで考える。

手札には《爆片破/Shrapnel Blast》がある。使うか、否か。使えばNassifのライフを2にできるが、次のターンNassifが《歯と爪/Tooth and Nail》から《レオニンの高僧/Leonin Abunas》《白金の天使/Platinum Angel》と出してきた場合、これらに対処する手段を失ってしまうことになる。かといって、現在コントロールするアーティファクトは《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》2枚のみ。手札にこれ以上のダメージソースはない。

黒田は熟考の後、そのまま《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》を墓地に置いた。もう一方の《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》によりNassifのライフは7に。
直後のNassifのターン、運命のターン。その重要性はNassifの表情から、考慮時間から伝わってくる。《歯と爪/Tooth and Nail》は、あるか。それとも。

そこで彼が選んだのは、攻撃の後《ヴィリジアンのシャーマン/Viridian Shaman》で自らの《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》の一方を破壊することだった。Nassifは新たなカードを求める。しかし、その場には8点分のマナソースしか残らない。《歯と爪/Tooth and Nail》は双呪コストを含めるとである。ということは、少なくともこのターンは《白金の天使/Platinum Angel》ロックが決まることはないのだ。

Nassifは仕方ないという表情で《刈り取りと種まき/Reap and Sow》を黒田の《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》にプレイ。黒田はこれを起動した上で《爆片破/Shrapnel Blast》をNassifに撃ち込む。これでNassifのライフは2となる。

黒田は祈りを込めてドローする。Nassifは「決まったかい?」とばかりに黒田を見つめる。
「ああ、これでもいいんだ」
そのドローは《溶鉄の雨/Molten Rain》。

黒田 –2 Nassif -1

Game 4

最初の初手をマリガンしたNassif。6枚になってもやや苦笑気味だが、さすがにこれをキープ。一方黒田の初手は《山/Mountain》4枚《溶鉄の雨/Molten Rain》《火の玉/Fireball》《弧炎撒き/Arc-Slogger》。相変わらず好調を感じさせる。

《雲上の座/Cloudpost》発進から第2ターンに2枚目を《森の占術/Sylvan Scrying》したNassifだが、その2枚目を黒田が《溶鉄の雨/Molten Rain》で押さえ込む。その影響はあまりに色濃く、Nassifの3枚目の土地は《森/Forest》。高速マナ生成は影を潜め、できることといえばナイス2/2こと《ヴィリジアンのシャーマン/Viridian Shaman》を出してみるくらい。

その間にも黒田は《とげの稲妻/Barbed Lightning》でコツコツダメージを蓄積し、第5ターンには《弧炎撒き/Arc-Slogger》をプレイ。勝利への秒読みが始まる。
Nassifは4枚目の土地を引き当て《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》をプレイするが、この時点で両者の間に和やかな雰囲気が流れ始める。

《弧炎撒き/Arc-Slogger》の稲妻が2/2クリーチャーを吹き飛ばし、その歩みは確実に勝利へ向かう。Nassifは《映し身人形/Duplicant》をプレイするが、《弧炎撒き/Arc-Slogger》のコスト支払いを待つ間、その顔は勝者を称えるように微笑んでいる。

そして。
黒田は力強く土地をプレイし、その全てをタップする。

《火の玉/Fireball》をあなたに。

黒田 –3 Nassif -1

藤田剛史がTop8の重い扉を開いてから3年。そのときと同じ日本で、日本人初のプロツアー・チャンピオンが誕生した。
その間、多くのプレイヤーが活躍し、日本人がプロツアーのフィーチャー・マッチエリアで見られることもそう珍しいことではなくなってきた。これからは、もっと普通のことになっていくだろう。

勝負の世界には、ジンクスがつきものだ。良いジンクス、悪いジンクス、いろいろある。
しかしそれに縛られるのではなく、その力を自分のものにできたら、それほど素晴らしいことはない。
黒田正城はそれを、身をもって証明してみせたのだ。
偉業を成し遂げた王者に、惜しみない賞賛を。

そして次は、あなたかもしれない。

Masashiro Kuroda defeats Gabriel Nassif.
Congratulations to Masashiro Kuroda, Champion of Pro Tour Kobe 2004 !

Nassif Gabriel

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Kuroda Masashiro

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