準決勝: 角岡 利幸(東京) vs.
宮島 淳一(新潟)

Posted in Event Coverage on June 22, 2012

By Wizards of the Coast

 1500人の頂点を目指す権利者は残り4人にまで絞られた。

 今大会を代表するデッキにふさわしい『Kiki-Pod』を駆る角岡 利幸(東京)と、白黒トークンというややマイナーなアーキタイプながらも予選ラウンドを2位の好成績で突破した宮島 淳一(新潟)が最後に残る決勝戦への席を争うこととなった。

 準決勝からはお互いのデッキリストがゲーム前に交換される。そのリストから相手のデッキを知ることができるため、サイドボードやシークレットテク等のゲームの勝敗に大きく影響する未知の要素がいくらか軽減される。

 お互いにトップメタのアーキタイプとは少しずれた構成をしているため、ふたりともが所々のカード選択に驚きや嘆息を零しながらお互いのデッキの内容を慎重に確認していく。結局、制限時間の2分間を限界まで使い、二人は直後に控えたゲームへの集中力を高めていく。

 二人はデッキリストをジャッジに返却すると、リストではなく目の前に座る対戦相手を視界に映し、恨みっこなしと固い握手を交わした。

 負けられない。負けたくないゲームが今、始まる。

ゲーム1

SF_kadooka_VS_miyajima.jpg

 スイスラウンドを2位と角岡よりも高順位で通過している宮島は、先手後手の選択権を得ている。その選択は当然先攻。角岡も確認するまでもなく宮島のマリガン宣言を待ち、お互い7枚の初手で準決勝の火蓋が切られた。

 宮島は《》から《思考囲い》を角岡に差し出す。公開された角岡の7枚は、土地4枚に《召喚の調べ》《村の鐘鳴らし》《呪文滑り》という形容しがたい内容。その中から《召喚の調べ》が墓地へと送られる。  2ターン目には《急報》が唱えられ、角岡はそれを《呪文滑り》で受け止める。

 3ターン目のアクションがなかった宮島に対して、角岡は3枚目の土地を即座に寝かすと《狡猾な火花魔道士》を場に繰り出す。

 ここで注目すべきは角岡の行動で、目の前に撃ち落とせる兵士トークンがいるにもかかわらず《呪文滑り》で2体のうちの一つをブロックするにとどめて《狡猾な火花魔道士》を起動することはなかった。

 これは先程のデッキリストの内容から宮島が《盲信的迫害》を抱えている可能性を考えた結論なのだろう。いつかは打たれてしまう呪文かもしれないが、牽制するに越したことはなく、打たせるにしても今ではない。角岡は落ち着いた様子で宮島の行動を待つ。

 4枚の土地が自由な宮島はその内の3つをタップすると、白黒トークンの代名詞とも言える《幽体の行列》でトークンを3体追加した。残されたマナが一つになれば《盲信的迫害》は怖くない。宮島のターンエンドに角岡の《狡猾な火花魔道士》が飛行トークンを撃ち落とす。

 こうなってしまうと宮島がゲームを決めるには時間がかかってしまう。角岡に余分な猶予を与える前に数で押し切ってしまおう、そう考えたかは定かではないが、5枚目の土地をセットすると《雲山羊のレインジャー》をフルタップで盤面に追加した。

 しかし、豪腕一閃、既に手札に《鏡割りのキキジキ》と《村の鐘鳴らし》を揃えていた角岡は、宮島の土地を確認するとその2枚を手札から提示した。

SF_kadooka.jpg

 それを受けた宮島は、引いていたならば仕方ないと、潔くトークンを片付けた。

角岡 1-0 宮島

ゲーム2

 お互いにデッキリストを確認した段階で想定していたのか、大舞台にしてはあっさりとしたサイドボーディングの時間を過ごすと、すぐにゲーム2は始まった。

 ゲーム1は角岡の『無限』コンボにより一瞬で幕を閉じたが、ゲーム2も同程度の所要時間で終了した。

 1回のマリガンを挟んだ角岡の土地が1枚で止まってしまったのだ。後手の1ドローに期待した甘えか、1枚引けば万全なハイリターンな手札だったのかは分からない。

 宮島は《風立ての高地》→《無形の美徳》→《幽体の行列》と最高のホットラインを完成させ、それを確認した角岡は何を引いても逆転できないとゲーム3に向けて戦略を練り直し始めた。

角岡 1-1 宮島

ゲーム3

 泣いても笑っても最後の一本。決勝進出をかけた最後の大一番が始まった。

 角岡は貴重な先手を手に入れ、一回のマリガンを挟んだ後に、土地が2枚と《貴族の教主》《狡猾な火花魔道士》《台所の嫌がらせ屋》《クァーサルの群れ魔道士》という及第点な初手に運命を託すことに決めた。

 《踏み鳴らされる地》から《貴族の教主》を展開した角岡に対して、宮島は《風立ての高地》で秘匿する。両者ともに満足のいくスタートを切れたようだ。

 角岡の《貴族の教主》は《盲信的迫害》で落とされてしまうが、《根の壁》と《クァーサルの群れ魔道士》が追加されることで大きな被害には至らない。

 迎えた3ターン目、手札に《未練ある魂》を抱えていた宮島だったが、若干悩んだ後に《オーリオックのチャンピオン》を先にプレイすることに決めた。じっくりと腰を据えて後のための布石を打ったようだ。

 それを見て好機と先を急ぐ角岡は、《台所の嫌がらせ屋》と《修復の天使》を並べて宮島に余裕を与えない。

 《未練ある魂》を唱えて徐々に盤上の支配を取り返そうとする宮島は、《流刑への道》で《修復の天使》を捌く。  それならと、《狡猾な火花魔道士》でトークンの対処を急ぐ角岡だが、あっさりと1枚目が飛んできたことから導かれる、《盲信的迫害》の2枚目で魔導師を失ってしまう。

 《未練ある魂》のフラッシュバック、《変わり谷》と、クリーチャーを用意した宮島は時折《風立ての高地》に秘匿されたカードを確認しつつ、角岡の地上クリーチャーとダメージレースを開始した。

SF_miyajima.jpg

 角岡は2枚目の《クァーサルの群れ魔道士》を追加して打点を引き上げるものの、宮島の《オーリオックのチャンピオン》がやすやすとライフを削らせてくれないのだ。かれこれ4/4というサイズで4回ほど攻撃を続けているにもかかわらず、宮島のライフは二桁を割らない。

 戦況に若干の停滞が生まれた頃、宮島のライブラリーはふと気がついたように《刃砦の英雄》を宮島にもたらした。3点と4点の交換というちまちまとしたライフレースが主だった戦場に一気に緊張が走る。

 そのターンエンドに角岡はじっくり考え込んだ末にX=3の《召喚の調べ》をキャストした。サーチ対象は《永遠の証人》で、今しがたプレイした《召喚の調べ》を手札に返す。これで次のターンエンドに《鏡割りのキキジキ》か《修復の天使》を呼び寄せ、《永遠の証人》を再利用して《召喚の調べ》を再び回収し、三度目の正直と、足りないコンボパーツを場に提供できれば『無限』コンボの完成だ。

 お互いに一撃必死の刃を喉元に押し付け合う。

 角岡のドローは土地だったが、次のターンを迎えれば見事にコンボ完成である。緊張した面持ちで宮島に最後の戦闘フェイズを許可する。

 ターンを渡された宮島は、《変わり谷》を起動すると《刃砦の英雄》とスピリットトークンをレッドゾーンに押し込んだ。角岡は自分のライフが0にならないように丁寧にブロックを宣言すると、ダメージが解決される前に《召喚の調べ》をプレイした。X=5が許可された角岡は《鏡割りのキキジキ》を場に出すと、《永遠の証人》を対象に能力を起動した。

 宮島は少し悩んだ末にコピーが場に出ることを許可し、回収対象として選んだ《召喚の調べ》が角岡の手札に戻る前に《風立ての高地》に隠された1枚を開放した。

 それは3枚目の《盲信的迫害》だった。宮島のクリーチャーは強化され、角岡の《永遠の証人》とコピーが墓地に置かれる。さらに、回収する能力がスタック上にある状態で《鏡割りのキキジキ》に手札から《流刑への道》を打ち込んだ。

 《召喚の調べ》が角岡の手札に戻り、戦闘ダメージが解決される。《台所の嫌がらせ屋》のおかげで3点のライフが残されたものの、宮島の軍勢を見るに次のターンは角岡には残されていない。

 《根の壁》が2枚と《台所の嫌がらせ屋》と土地が5枚。

鏡割りのキキジキ

 角岡は盤面を整理してから力強くドローすると、それは起死回生の《鏡割りのキキジキ》だったのだ。土地5枚から《鏡割りのキキジキ》をプレイし、その能力で《根の壁》をコピーする。合計で3枚の《根の壁》と《台所の嫌がらせ屋》をタップし、《根の壁》それぞれから緑マナを生み出すと、X=4の《召喚の調べ》を打てる。その調べから召喚されるはミッシングパーツの《修復の天使》だ。

 《修復の天使》は《鏡割りのキキジキ》を明滅し、次々と新しい《修復の天使》を生み出し続けた。宮島はそのコンボが成立していることを確認すると、自身の不運を嘆きながらも角岡に祝福の言葉を告げて投了した。

 ジャッジとギャラリーも劇的なトップデッキを話題にし、ゲームを終えた両者が感想戦に花を咲かせていたとき、一人の観戦者からの申し出がジャッジを通じて伝えられた。

 今のゲームにどこかおかしな所はなかっただろうか、と。

 具体的には、最終ターンの一つ前、宮島の《刃砦の英雄》を含めたクリーチャー陣による攻撃を受け止めた際のやり取りで《根の壁》の1枚が致死ダメージを受けていたのではないか、とのことだった。

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 《根の壁》がブロックした兵士トークンは《刃砦の英雄》の喚声能力と《盲信的迫害》によって、そのパワーは3に上昇している。そして、その兵士をブロックした《根の壁》には-0/-1カウンターがひとつ置かれているはずで、《盲信的迫害》によって-1/3にまでサイズが落ちていた《根の壁》は致死ダメージを受けていたというのだ。

 ゲームを観戦していた人々は大勢いて、ルールを管理するジャッジも複数人、ゲームの流れに皆注目していた。それでも皆、その《根の壁》にその時点で-0/-1カウンターが載せられていたかどうか、《根の壁》が墓地に落ちる可能性を見落としてしまっていた。

 かくいうこのマッチアップを取材していた筆者も、この時点の正確な状況を自信を持って答えることはできなかった。言われてみれば載っていたかもしれないし、最終ターンにX=4の《召喚の調べ》を撃った時に載せていた気もする。

 ゲームをプレイしていた本人たちも自信を持って答えることはできず、既に宮島が投了していたことでテーブルの上に当時の面影は残されていない。

 仮に戦闘時にカウンターが《根の壁》に載っていたとすれば、《根の壁》は墓地に落ちているはずだが、それを見落として進行していたとすれば、それはMTGのルールではイリーガルな状況だ。

SF_judge.jpg

 ジャッジはゲームがルール的に適切な状態で進行していたのかを検証するために情報を整理し、プレイヤー両者と取材関係者、側にいたジャッジから綿密なインタビューを行ったところ、件の戦闘フェイズの状況を再現することに成功した。

 あとは、《根の壁》にカウンターが載っていたかどうかについてだ。これはプレイヤー両者も忘れており、周囲のギャラリー及びジャッジも気に留めずに観戦していたため、それが載っていたかどうかの検証は困難に思われた。

 だが、取材スタッフにその戦闘フェイズの場面を撮影していた方がいたことで問題は解決された。その写真には宮島の攻撃の瞬間を捉えたもので、そこにはカウンターが載せられた《根の壁》が写されていたのだった。

SF_wallofroots.jpg

 これで先ほどの状況がイリーガルな状況だったことが分かった。そこで、その瞬間の手札や盤面を再構築することで、戦闘フェイズをやり直し、適切なルール処理に基づいてゲームを再開する、とヘッドジャッジは告げた。

 一度ゲームに決着がついたと認識していた両プレイヤーは驚いていたが、ヘッドジャッジの、定められたルールのもとで適切な状態でゲームを進行することが重要だという主張を理解し、両者ともに快くゲームの再開に賛同した。

 ダメージ解決時にまで巻き戻り、次のターンの角岡のドローである《鏡割りのキキジキ》が角岡のライブラリーに載せられると、両者のゲームは改めて開始された。

 角岡の《根の壁》の1枚は墓地に送られ、ライフは同様に3にまで落ち込んだ。最後のドローは《鏡割りのキキジキ》だ。手札に残された《召喚の調べ》にあらゆる可能性を求めて思考を巡らせる角岡だったが、すべての可能性が閉ざされていることを確認して、投了を宣言した。

 一度は違った形で終幕した準決勝だったが、それは本来のルールでは起こらない状況の末の決着だった。その不自然に気づいて申告した観戦者、その真偽を検討するために情報提供したジャッジと関係者、そして何よりも、ルールの上でのあるべき決着の姿を求めた両プレイヤーと、多くの人々の協力があったことで、ゲームはルールに沿った形で結末を迎えることができた。

角岡 1-2 宮島


By Jun'ya Takahashi

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