準決勝: 諸藤 拓馬 vs. 大礒 正嗣

Posted in Event Coverage on September 2, 2005

By Daisuke Kawasaki

諸藤 拓馬

今回の日本選手権で大礒の肩に背負わされたものは随分大きかったのではないだろうか。「二人目のルーキー」から「世界のISO」へと成長した大礒が、今年の、そう、記念すべき10人目の日本チャンピオンに相応しいと考える人間は少なくなかったはずだ。それぐらい大礒の強さは誰もが認めている。すでに大礒の名前は日本という器では収まりきらなくなっている。

そんな大礒だからこそ、名目としても日本のトップに立って欲しい。そんな声にならない思いが会場中に渦巻いていたように感じられる。

一方の諸藤は今回の日本選手権にそれほど思い入れは無かったのだろう。実際、準々決勝の三津家戦において「是が非でも世界選手権に行きたい」という三津家に対して「世界選手権の権利は特に興味ないんですよね」と答えている。「三原のデックが強かったから勝てただけ。すべては三原のおかげです。できれば準決勝で三原と直接対決したいなぁ」諸藤は決勝ラウンド前に笑いながらそう語った。

その三原が、準々決勝で大礒に敗れた。0-3から快進撃を続け、トップ8へ奇跡の大逆転を果たした三原の世界選手権への道はここで閉ざされた。

三原の強さ、そして世界選手権に行きたい気持ちを誰よりもよく知っている諸藤は心に誓っただろう。「三原のかたきをとる」と。

今までマイペースで進めてきた諸藤の肩に、初めて背負うべきものができた。

Game 1

青と緑のトロン対決となった準決勝。
スタートは双方《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を置くという順当な立ち上がり。

そして、2枚目の土地を置いて、相手のエンドに《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を起動する所までそっくりだ。

だが、《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を起動した諸藤は微妙な顔。

なんとかシャッフルしようと、《森の占術/Sylvan Scrying》をキャストするが、それは当然大礒に《卑下/Condescend》される。仕方なく諸藤はX=0マナで《卑下/Condescend》をキャスト。せめて占術でトップを下に送りでもしないと勝負にならないと判断したのか。

だが、一方の大礒も中々ドローに恵まれない。何とか《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》で土地を持ってきてセットして終了する事しかできない。

rewind

占術を使用しても、まだどうにもならなかったライブラリートップを、大礒の《知識の渇望/Thirst for Knowledge》をカウンターした《卑下/Condescend》でなんとか追いやり、やっとこさ追加の土地、しかも願ってもない2枚目のウルザ地形である《ウルザの魔力炉/Urza's Power Plant》を引いて、《刈り取りと種まき/Reap and Sow》。当然それは《巻き直し/Rewind》。

ここで大礒の土地が止まってしまう。《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》をキャストして起動…しかしそこにも土地は無い。諸藤の2枚目の《刈り取りと種まき/Reap and Sow》を《卑下/Condescend》してライブラリートップをリフレッシュするが、それでも土地は来ない。まるで悪い夢のようだ。

しかし、真の悪夢は次のターンに待っていた。

自力で最後のウルザ地形である《ウルザの塔/Urza's Tower》をひいてきた諸藤は、迷う事無く《歯と爪/Tooth and Nail》。大礒は《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を起動するが、そこには土地だけでなく打ち消し呪文もなかったのだ。

《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》で《隔離するタイタン/Sundering Titan》を回し始めることが判明すると大礒は投了を宣言する。

諸藤 1-0 大礒

当然、十分にスパーリングをしてきたであろう大礒は、準々決勝も同じデックだった事もあって、瞬時にサイドボードを変更する。

一方の諸藤は、何回もサイドボードの内容を変更しては悩みを繰り返している。諸藤が準々決勝で勝った場合の相手は三原か大礒。同系の三原があがってこなかった場合、大礒があがってくるのはわかりきっていた事。何より、三原は大礒戦の為のサイドボーディングを考えてきていた筈ではないか。三原と諸藤のサイドボードはたったの1枚しか違わないのだ。

大礒:…サイドボード決まってないの!?

大礒は思わず叫んだ。

Game 2

第2デュエルは、諸藤に《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》大礒は《血清の幻視/Serum Visions》という立ち上がり。
諸藤の《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》や《刈り取りと種まき/Reap and Sow》を《卑下/Condescend》でカウンターしつつ、占術でライブラリーを順調に操作する大礒。だが、大礒の手にくるウルザランドは《ウルザの鉱山/Urza's Mine》ばかり。

だが、それは諸藤も同じだった。二人が4枚ずつ土地を並べた状態で《ウルザの鉱山/Urza's Mine》は場に4枚並んでいたのである。

緊張の為か手札をよく落っことす諸藤。三津家戦でみせたあのマイペースっぷりがこの試合では薄れているように見える。やはり背負うものができると人間変わるのか。諸藤の後ろでは三原が心配そうな表情で見守っているのだ。

しばらく、諸藤は《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を回し続け、大礒は《知識の渇望/Thirst for Knowledge》を撃ち続け、たまに諸藤のスペルを大礒がカウンターする淡々とした場が続く。

oblivion stone

大きな動きがあったのは、諸藤の《永遠の証人/Eternal Witness》を大礒がスルーして回収した《森の占術/Sylvan Scrying》を《マナ漏出/Mana Leak》した返しに、《忘却石/Oblivion Stone》をキャストしたターンに訪れた。

コマを起動してから自分のターンを迎えた諸藤は、《忘却石/Oblivion Stone》に《テル=ジラードの正義/Tel-Jilad Justice》を打ち込む。大礒は占術を避ける為にも《永遠の証人/Eternal Witness》のクロックを外す為にも対応して《忘却石/Oblivion Stone》を起動するしかない。そうしてマナがなくなった大礒の前に現れたのは《落葉の道三/Dosan the Falling Leaf》。カウンター殺しの伝説のクリーチャーだ。

何も出来ない大礒は何も出来ないままターンを渡す。

だが、ここで諸藤はミスを犯す。すでに場にある《ウルザの鉱山/Urza's Mine》をセットしてから《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を起動してしまったのだ。新しく諸藤に公開されたライブラリーの3枚目には…3種類目のウルザ地形である《ウルザの魔力炉/Urza's Power Plant》が…土地をセットする前に見ていれば場にそろえる事ができたのである。

このミスに付けこむように、大礒は《残響する真実/Echoing Truth》を《落葉の道三/Dosan the Falling Leaf》にキャスト。しかし、《ウルザの魔力炉/Urza's Power Plant》を置いてキャストされる《落葉の道三/Dosan the Falling Leaf》を大礒はカウンターできない。相手のミスにつけこめる程のカードを大礒は引けていない。

結果、《歯と爪/Tooth and Nail》ででてきた《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》が《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》と《落葉の道三/Dosan the Falling Leaf》が大礒のライフを削りきった。

諸藤 2-0 大礒

デュエルの合間に後ろで見ていた三原が複雑な顔で筆者に話す。

三原:もちろん嬉しいですよ、諸藤が勝つのは。でも……記事は厳しく書いちゃっていいですからね。

三原が複雑な顔をするのも仕方がない。
2デュエル目の最後のミスだけでなく、《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》の使い忘れや、スペルの使用の前後など、細かいミスがあまりにも目だつ。

これも緊張のせい…というのはちょっと諸藤にとって都合がよすぎる解釈か。

Game 3

acquire

同様にドロー操作とサーチに奔放する両者。
セットランドした状態で《森の占術/Sylvan Scrying》で3種類目のウルザランドである《ウルザの塔/Urza's Tower》を手にいれ、トロン成立に諸藤がリーチをかけた次のターン…遂に大礒がこのマッチで始めてウルザトロンを完成させる。

すぐさま必殺の《接収/Acquire》!

しかし、諸藤の対応は大礒にとって予想を超えたものだった。

諸藤:そのカード何?

大礒:え!知らないの!?

《精神隷属器/Mindslaver》を諸藤のライブラリーから持ってきて、即起動。
その後、《トリスケリオン/Triskelion》《精神隷属器/Mindslaver》と連続キャストして鮮やかにライフを削りきった大礒だったが、何か釈然としないものが残った。

諸藤 2-1大礒

と、ここで、もう片方の準決勝の決着がつく。
友人であり、決勝を戦いあいたいと思っていた志村 一郎(茨城)の敗北を知る。

がっかりした思いと負けられないという気持ちを強くした大礒は思わず顔を歪める。

Game 4

そんな大礒の思いは天には届かない。

順調にマナを伸ばす諸藤に対し、手札が悪い大礒は《落葉の道三/Dosan the Falling Leaf》が場に出る事を許してしまう。

そして次のターンに《刈り取りと種まき/Reap and Sow》によって場にはウルザトロンがそろってしまう。まだ4ターン目にもかかわらず、諸藤の場には9マナ分のマナ発生源が並び、手札の中では《落葉の道三/Dosan the Falling Leaf》の加護のもとで《歯と爪/Tooth and Nail》が今か今かと出番を待っている。

《落葉の道三/Dosan the Falling Leaf》も土地もどうにもできない大礒は《知識の渇望/Thirst for Knowledge》を撃つ事しかできない。

次のターン、大礒の魂に《歯と爪/Tooth and Nail》が突き刺さり刈り取られる……と思われたが、諸藤の場に《歯と爪/Tooth and Nail》であらわれたのは《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》と《隔離するタイタン/Sundering Titan》。《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》と《永遠の証人/Eternal Witness》で《刈り取りと種まき/Reap and Sow》を使い回せば、大礒に逆転の目は無くなるのに、だ。

ここに希望を見出した大礒はウルザトロンをそろえ、土地4枚から起死回生の《精神隷属器/Mindslaver》、そして起動。諸藤の手札と《刈り取りと種まき/Reap and Sow》の効果でライブラリーの中身を吟味しながら複雑なパズルを組み上げる。次のターンにもし、もしも自分がもう一枚《精神隷属器/Mindslaver》を引く事ができたなら、そうすれば逆転勝利できる。そんなプランを組み上げた。あいてがプレイミスをして隙をつくった以上、自分はそのミスで勝てるドローをするしかない、そう考えた。

そして、運命のドロー。

大礒 正嗣

そして、《トリスケリオン/Triskelion》のキャストで時間を稼いだ次のドロー…どちらも《精神隷属器/Mindslaver》ではなく、大礒に残された選択肢は投了する事しかなかった。

2戦目に続いて、またしても大礒は相手のミスにつけこめるだけのドローに恵まれなかったのだ。

試合終了後に三原は腕を叩きながら語る。

三原:なんといってもコレが違いますから。

諸藤は三原の仇を取り、日本選手権の決勝へと向かう。

初めて日本選手権に参加した時に「マジックは規模がでかいなー」と思わせる要因になったあの決勝の席へ。

諸藤 3-1 大礒

試合終了後に「どうしても勝ちたかったですよ」と語る大礒の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

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