準決勝: Patrick Chapin(アメリカ) vs. Gabriel Nassif(フランス)

Posted in Event Coverage on December 31, 1969

By By Daisuke Kawasaki

Chapin:赤単ドラゴンストーム
Nassif:赤単ドラゴンストーム

「マジックはビジネスだから」

そう語ったのは、アメリカの英雄だったMark Justice(アメリカ)だったか。世界選手権の決勝ラウンドにスーツであらわれたJusticeは、その理由を尋ねられてこう答えた。

「マジックはビジネスだから」

4年後。

決勝ラウンドの会場に、スーツであらわれたJon Finkel(アメリカ)は、理由を尋ねられてこう答えた。

「テレビマッチなんだからちゃんとした格好してくるものだろ?」

アメリカで英雄と呼ばれてきた男達は、みんなそろってスーツ姿で決勝ラウンドに姿をあらわしている。

マジックの中心がアメリカだけでなくなってから、どれくらいになるだろう。そのJon Finkel以降、アメリカ人の世界チャンピオンは生まれていない。その状況に、アメリカのマジックファン達はむずがゆい思いをし続けてきた。

「アメリカに王冠を」

そして、そんな思いを背負った英雄が、決勝ラウンドにスーツ姿であらわれた。

理由を尋ねられて、Patrick Chapin(アメリカ)はこう答えた。

Chapin 「理由?そんなことより、スーツにつけようとしたらピンマイクがこわれちまったよ。まったく、こんなことになるならスーツ着てくるんじゃなかったな。」

Game 1

圧倒的に先手が有利なこのマッチアップ。当然ダイスロールの手にも気合いが入る。むしろ、ダイスロールでゲームが決まると言っても過言ではない。

Chapinは15とまずまずの出目に満足げ。対するNassifのサイコロの目は1。今日のNassifのバイオリズムは不調気味なのか。

このダイスロール対決を制して、大喜びのChapin。トップページのNassifの写真のポーズをまねて喜びを表現する。Nassifはただ苦笑い。

Chapinは、《冠雪の山/Snow-Covered Mountain》(以下、《山》)が2枚に、《背骨岩の小山/Spinerock Knoll》《紅蓮術士の刈り痕/Pyromancer’s Swath》《炎の儀式/Rite of Flame》《裂け目の稲妻/Rift Bolt》《ぶどう弾/Grapeshot》という手札をキープ。

そして、《背骨岩の小山》をセットすると、そこには《ドラゴンの嵐》が。

2ターン目に《睡蓮の花/Lotus Bloom》をドローし、準備は万端である。

Nassifも、《睡蓮の花》を待機から、貯蓄ランドにカウンターを乗せ続け、マナを充実させるのだが、肝心の《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》が手札にこない。

Chapinは、《睡蓮の花》の待機があけるのに、《裂け目の稲妻》の待機をかぶせ、ストームを稼ぐ準備を。一方のNassifは、《睡蓮の花》の待機があけても何もプレイできないままターンを返す。

そして、Chapinは手札をみせ、Nassifに投了を促したのだった。

Chapin 1-0 Nassif

Game 2

Chapinが手札を晒した瞬間、会場で本当に、本当に大きな歓声が響き渡る。それは、隔離されたフィーチャリングテーブルにまで聞こえてくるほど。

その大歓声のなか、Chapinは盛んにNassifに話しかける。舌戦によって、Nassifの集中力を奪う作戦なのか、それとも緊張を隠すためか。

だがしかし、シャッフルする手が震えるのまでは隠せない。

先手のNassifが《背骨岩の小山》をセットする。めくった4枚には《ドラゴンの嵐》はなかったが、かわりに《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》が。

一方のChapinは《山》に貯蓄ランド3枚。《裂け目の稲妻》《ショック/Shock》《タール火/Tarfire》というハンドをキープして、《ドラゴンの嵐》をドロー。だが、Nassifも負けずに《ドラゴンの嵐》を手にしていた。Chapinがストームを稼ぐ手段を得られないうちに、Nassifがコンボスタート。

2枚の《炎の儀式/Rite of Flame》でマナを加速して、ストームを2つ稼いだ《ドラゴンの嵐》。だが、Nassifはすでに《背骨岩の小山》で《ボガーダンのヘルカイト》をリムーブしてしまっているため、場には2体しか《ボガーダンのヘルカイト》を追加できない。

この隙を生かして何とか逆転したいChapin。だが、まだ、マナが足りない。貴重な1ターンを稼ぎ出すために、《ボガーダンのヘルカイト》を1体《裂け目の稲妻》と《ショック》の合わせ技で除去する。

だが、返しのターンで、Chapin自身が同じ合わせ技をくらってしまうのだった。

Chapin 1-1 Nassif

Game 3

さきほどまで、あんなにNassifに話しかけていたChapinが、ゲームを落とした瞬間に、急激に黙ってしまう。先ほどまでと同じ調子でNassifが話しかけても、無視してシャッフルを続ける。Nassifは苦笑いをするしかない。

そんなChapinは《ボガーダンのヘルカイト》が2枚に、《ぶどう弾/Grapeshot》《紅蓮術士の刈り痕》《ショック》と土地が2枚という初手をキープ。

一方のNassif。土地が4枚に《ショック》が2枚。《炎の儀式》という手札をキープ。だが、そこから《ボガーダンのヘルカイト》《ドラゴンの嵐》こそ手に入れたものの、マナ加速も《背骨岩の小山》もダメージソースすら引き込まない。

Chapinは2枚の《背骨岩の小山》を連続して手に入れ、セットランド。それぞれ《ドラゴンの嵐》《記憶の点火/Ignite Memories》と秘匿する。そして、《裂け目の稲妻》を引いたところで、マナとダメージの量を計算。《裂け目の稲妻》を待機する。

《裂け目の稲妻》の待機は、コンボスタートの予告である。百も承知のNassifは、少なくとも《記憶の点火》はケア出来るように、土地をセットしないで、手札全体の平均マナコストを下げる。そして、《ボガーダンのヘルカイト》をディスカードし、さらに下げる。

だが、Chapinは《記憶の点火》も《ドラゴンの嵐》も必要としなかった。

《裂け目の稲妻》で本体にダメージを与えた後に、《炎の儀式》でマナを加速しつつストームを稼いで《紅蓮術士の刈り痕》をキャスト。そして、《ショック》《ぶどう弾》と続けると、Nassifのライフはゼロを下回った。

Chapin 2-1 Nassif

Game 4

Chapinが勝利するたびに、会場を歓声が包む。無理もない。念願のアメリカ人の世界王者が誕生するかもしれないのだ。ナショナリズムの強いアメリカ人が熱狂しないわけがない。

ましてや、席に着いているのは伝説的な強豪Patrick Chapin。しかも、彼がトップ8に残ったプロツアーは、96年NYと98年LA。そう、彼はアメリカでこそ勝ってきた男なのだ。

勝利した後のゲームは、機嫌良くトークを始めるChapin。そして、その彼のトークは、Nassifが土地7枚のハンドをマリガンしたことでさらに加速する。

続くNassifのハンドは貯蓄ランド含む2枚の土地と《紅蓮術士の刈り痕》《記憶の点火》に、2枚の《ボガーダンのヘルカイト》。あきらかなマリガンミスでGame 3を落としているだけに、慎重に考えるNassif。結果、マリガン。

そして、Nassifが3回目のマリガンをするに至って、Chapinの勝利を確信した観衆が、すでに大歓声を挙げている。Chapinはカメラ越しに会場をあおり、観客はさらに呼応する。

だが、勝負は終わってみなければわからない。Chapinが伝説の強豪ならば、Nassifは、あのFinkelと肩を並べうる、現在進行形で伝説を作っている強豪なのだ。

Nassifは、貯蓄ランドに《裂け目の稲妻》《ぶどう弾》《炎の儀式》という手札をキープ。Chapinは土地が多めのハンドを、余裕の表情でキープ。

Nassif 「マリガンしなくていいのかい?」

勝ちを確信しているChapinは笑顔で答える。

Chapin 「もちろんさ」

手が狭いNassifにとってもっとも現実的な勝ち手段であった《記憶の点火》をファーストドローしてガッツポーズのNassif。懸念材料だったマナソースも、《背骨岩の小山》《睡蓮の花》と引き当てる。

一方のChapinは淡々と土地をセットするのみ。ターンエンドに《タール火》を打ち込むという、ドラゴンストームとしては明らかに不調な動きに対して、もう一度NassifがChapinに。

Nassif 「マリガンしなくてよかったのかい?」

だが、Chapinには手札3枚分のアドバンテージがある。Nassifの《睡蓮の花》の待機があける前に、《裂け目の稲妻》を待機し、コンボスタートの準備が整ったことをNassifに伝える。Nassifは、1ターン間に合わず、《睡蓮の花》にあわせて《裂け目の稲妻》を待機。Nassifも次のターンになれば、《記憶の点火》をChapinに打ち込めるのだ。

Chapinは、《裂け目の稲妻》を打ち込み、《炎の儀式》をキャスト。《タール火》を本体に。さらに《ぶどう弾》を重ねてNassifのライフを9にしてからの《記憶の点火》。

5つの《記憶の点火/Ignite Memories》がスタックにつまれ、Nassifの手札からランダムにカードが選ばれる。ランダマイザーにはサイコロが選ばれる。

まず、3回連続で《ぶどう弾》がめくられ、Nassifのライフは3に。すでに勝利を確信したChapin。だが、Nassifの目はまだ可能性を信じている。

続いてサイコロが選択したカードは...《炎の儀式》。Nassifはぎりぎりで生き残りの道を残す。マナコストが1のカードがあることすら知らなかったChapinは、驚きの色を隠せない。

Nassifの手札は3枚。そして、そのうち1枚が《炎の儀式》。文字通り、サイコロでマッチの結果が決まるという前代未聞のゲームとなった。

Nassifは、サイコロが選んだカードを机にたたきつける。

《炎の儀式》

歴史に残る逆転劇に、会場のボルテージはマックスに。

Chapin 2-2 Nassif

Game 5

これほどまでに会場が、解説席が、そしてプレイヤーが盛り上がったのは、昨年の三原 槙仁(千葉)の劇的なトップデック以来だろうか。ドラゴンストームというデックは、ドラマを生み出す力があるのかもしれない。

この逆転劇でNassifは完全に流れをものにした。ドローも含めて、1ターン目に《睡蓮の花》を3枚待機する。《ドラゴンの嵐》も手札にあり、あと4ターンでゲームに勝利する。

そのことはChapinもよく理解している。Chapinも1ターン目の《睡蓮の花》待機。先手なので、Nassifよりも先に待機があける。そのアドバンテージを生かして勝つしかない。

Nassifは《睡蓮の花》の待機あけにあわせて《裂け目の稲妻》を待機する。Chapinは手札をみて、長考をする。あれほどまでに大騒ぎだった会場が、不思議と静まりかえる。みな黙ってChapinの勝利を祈る。会場のほとんどがアメリカ人なのだ。

そして、Chapinは意を決する。《ショック》《ぶどう弾》でNassifのライフを削り、ストームを3つ稼いだ《記憶の点火》。

次のターンにNassifの勝利がほぼ確定している以上、このサイコロで決勝進出者が決まると言っても過言ではない。なんという運のゲーム。だが、これもマジック。

最初に選ばれたカードは《ショック》。Nassifは神に愛されているのか。だが、会場中のアメリカ人がChapinを応援している。必死の祈りは神に届くのか。

神はサイコロを振らない。サイコロを振るのはChapinである。

サイコロが選んだのは、《ドラゴンの嵐》。

そして、《ボガーダンのヘルカイト》。

Chapin 3-2 Nassif

マジックのすべてが運によって決まってしまうわけではない。だが、このマッチアップは確率的な分があったとはいえ、運で決まったマッチなのは間違いない。

運命に導かれ、アメリカの期待を背負ったChapinが決勝戦へ。

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