特集:ワールド・マジック・カップにようこそ

Posted in Event Coverage on August 17, 2012

By Nate Price

A longtime member of the Pro Tour and Grand Prix coverage staff, Nate Price now works making beautiful words for all of you lovely people as the community manager for organized play. When not covering events, he lords over the @MagicProTour Twitter account, ruling with an iron fist.

 胃に穴が空くような感覚……極度の緊張状態。これまで経験した中で、マジック最大のイベント。どこを見回しても、DailyMTG.comの大見出しに散見されるプレイヤーばかり。おいおい、あっちにはブライン・キブラー/ Brian Kibler……そっちは中村修平……それにパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/ Paulo Vitor Damo da Rosaも……

 パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサは、今回のワールド・マジック・カップでチームを率いる殿堂顕彰者のひとりだ。

 うぐぐ……誰か胃薬を持っていないか?

 クソッ。他にも殿堂顕彰者が交じっているのを忘れていた。あっちにいるのはラファエル・レヴィ/ Raphael Levyとイェルガー・ヴィーガーズマ/ Jelger Wiegersmaじゃないか。

 入念に会場を見回し、新参プレイヤーをたくさん目にして、いくらか落ち着いてくると、はっきりと、この週末にかかる重圧を理解する。そう、君たちはマジック界の全てを相手にし、国を代表してここにいるのだ。

 こんな規模の大会に――大きさから観ても、難しさから観ても、重大さから観ても――出たことはなくとも、その強大さに十分見合うくらいには、これまでにないくらいシャッフルとプレイの準備をしてきた。これほどの昂ぶりを感じたことはない。たとえ今は世界が君たちのことを知らなくとも、この大会が終わる頃には知ることになるのだ。

 ワールド・マジック・カップにようこそ。

 ここには初めてのワールド・マジック・カップ予選を勝ち抜いた、A(アルゼンチン)からZ(ウェールズ……おや、Zはなかったね。すまない)まで71ヵ国の代表284人がいる。派手な面々を揃えるベルギー代表のように飛びぬけて強そうなチームがある一方、プロ・ツアー経験のあるプレイヤーがひとりしかいない、というチームも多い。ここはほとんどの人が不慣れな戦場だ、と考えられるかもしれないが、予選のプロセスによりチームの構成については洗練された結果が得られる。代表者の枠を勝ち取る機会は4つあるので、国内の強豪プレイヤーたちには多くのチャンスがある。さらに適応力や知識による全体的な有利さが、4つのイベントの範囲を越えてより多くの優位性をもたらしてくれる。加えて、それぞれの予選で勝ち抜いたプレイヤーはその後の予選に参加できないので、強力なライバルを戦場の外に出し、強いプレイヤーを挫折させるような越えがたい障害を取り除くことになる。リッチ・ハーゴン/Rich Hagonが「いままで目にした中でも最高だ」と言っているように、この方式によって蓄積された結果が、今年のチームの強さの平均値だ。国を代表してイベントに参加するのは初めて、という国もあることを考えると、この方式は説得力があるのだ。

マジック基本セット2013のすべてがここにある。

 それでは、君たちが284人のうちのひとりであるとしよう。最初のワールド・マジック・カップのタイトルを勝ち取る、という目標にたどり着くためには、乗り越えるべきさまざまな困難がある。イベント会場に到着し最初にやるべきことは、卓のひとつに向かいマジック基本セット2013ブースタードラフト3回戦を行うことだ……個人戦として。君たちがひとりで動員できるドラフト技術のすべてを引っぱり出した後に、3−0できるに違いないと信じて使うデッキを構築する段階で、チームは君たちにアドバイスを送ることができる。とにかく、君たちを手助けするカードは君たちがひとりで得るもので構成されるのだ。うまくドラフト部門を3−0で終えたら、構築戦4回戦に向けてスタンダードのデッキを用意しなくてはならない。そして再び、己の技術を頼りにすることになる。試合の間チームに助けを求めることはできず、外部の情報は何も得られない。続くチーム構築戦では別のスタンダードのデッキを使うことができるので、デッキ選択に関しては他の人からの助言を受けることになる。ただ貴重な情報を公開し、チームの人が使おうと考えているデッキを取り上げるだけになるのか、それとも別のデッキを用意するのか? 君たちが下す決断はともかくとして、君たちはここへ楽しみにきた。国の仲間と共に輝く楽しさを掲げ、そしてワールド・マジック・カップを頭上に抱え上げる最初のひとりとなるために。君たちは構築戦を難なく4−0で終えた。初日7−0というひと際優れた成績を収め、しかるべき休息を取りにホテルへ帰ることができる。

 よく休んでリフレッシュしたので、君たちは大会2日目の第1ステージ――マジック基本セット2013チーム・シールド――に早く行くことにした。マジック基本セット2013のブースター12パックのカード・プールで3人のプレイヤーが一斉にデッキ構築に取りかかる、というチーム・シールドは、競技マジックのイベントでは非常に珍しいものだ。プレイヤーたちは戦略について話し合い、共にデッキ構築に取りかかり、ひとつの部隊として機能することが許されている。ワールド・マジック・カップでの本当のチーム・イベントはここからだ。スティーブ・セイディン/Steve Sadinが、デッキ構築の間君たちのやり方を貫く際、心に留めるべき戦略的考察を列挙する素晴らしい記事を書いた(リンク先は英語)。嬉しいことに、君たちはそれを隅から隅まで読んでいた。

 さらにありがたいのは、初日に見せた素晴らしい成績とチームのプランだ! 初日の最後に、各チームはチーム・メンバーが得た勝ち点のうち高い順に3つを合計する。上位32チームが2日目に進出し、勝ち点の高かった3人が代表となる(そう、キャプテンがコーチの帽子を手に控え席に座ることもあり得るのだ)。それから、合計勝ち点によって1位、16位、17位、32位でひとつのグループ、2位、15位、18位、31位でまたひとつのグループ、といったように、4チームひと組でグループに分けられる。そして、グループ内の他のチームとそれぞれ戦った後、各グループ上位2チームが次のステージへと進出する。同点になることも珍しいことではなく、その場合は初日に上位だったチームが先に進む。シードが伴う他のイベントと同様に、シードは重要な意味を持ち、シードで優位にある者が勝利を得やすいのが常だ。できるだけ多くの勝利を得ることがチームの利益となるのは間違いないので、初日の試合を完全に制するということは、毎試合感じていた不安に見合うものなのだ。

 チーム・シールドが終わると、32チームはきっちりふたつに分けられる。それから同じように4チームひと組でグループが作られる。2日目の第2ステージでは、ひとりはモダン、ひとりはスタンダード、そしてもうひとりはイニストラード・ブロック構築で戦う、フォーマット別チーム構築戦に参加する。4人目のメンバーはコーチ役となり、試合中アドバイスを送ったり、チーム全員が状況を把握できるようにしたりする。このステージにおいては準備が非常に大切で、たとえば実地訓練によって精通しているチームや、わずかでも練習しているチームは、多彩を極めるフォーマットを越えて先に進む最高のチャンスを得ることだろう。

 幸運なことに、君たちはマジック・オンラインを用いて、デッキリストと結果を見て回ったり、豊富にテストしたりと、実質的に絶え間なく準備している状態だった。その苦労が報われることに疑問の余地はない。君たちのチームはこのステージを抜けてトップ8に行くだろう。2日目が過ぎるにつれて、君たちはよりリラックスした状態になった。しかし、初めてのプロのイベントでトップ8に入った、という他愛のない意識が、不安を少し呼び戻してしまった……

 各グループの上位2チームが勝ち残って会場を後にするのに伴い、戦場はトップ8に向けて正式に絞り込まれる。シングル・エリミネーションが始まる前のひとときの、心地良い夜だ。この時点をもって、君たちはフィーチャー・マッチ・エリアで戦うことが決まる。君たちが収めようとしている成績を実現している中で、フィーチャーされないままということはない。光を感じる。ビデオカバレージの中で君たちのプレイを分析したりする多くの人たちの視線を感じる。インタビューを受けると、あちこち突っつかれた。このあたりから、君たちはどれもこれも真新しさを感じなくなっていたかもしれない。準備ができた、ということだ。

 さあ。

 日曜日。ライトはより明るくなり、監視の目はより強くなり、カメラは君たちと君たちのチームに集中し、そして、他に7つのチームが君たちの夢を阻もうとしている。君たちはもう、大多数の中にいる無名のプレイヤーではない。この大会で最後まで残った32人の内のひとりで、ワールド・マジック・カップを最初に手にするチャンスを持った8つの国のひとつなのだ。

 準備は万端だ。

 君たちは目標に達するため、今一度構築デッキを用意して過酷な3回戦を戦わなくてはならない。それぞれが戦うフォーマットを変えることはできるが、デッキは2日目と同じものを使わなければならない。この時のために様々なできごとが役に立ってきたのだ、とはっきりと分かる。良い流れを台無しになんてするわけないだろう? ひとつずつ時計の針が落ちて、ひとつずつターンが終わって、ひとつずつゲームが記録されて、ゴールへと運んでくれる。わずか3試合で、世界中のマジック・プレイヤーが、君たちがワールド・マジック・カップ初代チャンピオンだと知る。君たちの国が、国際的なマジック・シーンで一目置かれる勢力である、ということを。

ベルギー代表は君たちが日曜日まで進めば対峙することになるであろう強力なチームのひとつだ。

「……ワールド・マジック・カップ選手のみなさん、第一試合にようこそ。試合時間は55分間です。始めてください」

 そんな感じで、君たちは現実に引き戻される。マリーン・リバート/Marijn Lybaertか……ルイス・スコット=バーガス/Luis Scott-Vargasか……あるいは君たちの周りで君たちのようにイベントの規模に目を見開いていたプレイヤーの、向かいの席に戻る。先ほどの道のりを思い出すなら今この瞬間だ。容易な道ではない。しかし誰かが先駆者にならなくてはいけない。もうすでに、君たちの「最初」を迎える日となった。「最初」がもうひとつ増えるくらい、なんだって言うんだ? 笑顔で、自己紹介をして、こっそり相手の右肩越しに視線を送ろう。カップの方向に向かって。

 ハロー・アンド・グッドラック。


(Tr. Tetsuya Yabuki)

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