神河物語の世界へようこそ

Posted in Event Coverage on November 17, 2004

By Keita Mori

マジックが描く「和」の世界

マジック・ザ・ギャザリングというゲームが生まれて 11 年。これまで、マジックの世界を彩ってきた拡張セット(エキスパンション)では実に様々な世界が描かれてきた。たとえば、文字通りに極寒の氷河時代を描いたのが Ice Age、熱帯のジャングルをモチーフとしたジャムーラを舞台にしたのがミラージュ(Mirage)。歴史をもっと遡れば、マジック初の拡張セットであった Arabian Nights にも千夜一夜物語という明確な(見たまんまの)テーマが存在していた。そして、とうとうマジックは日本を題材としたセットで勝負をしかけてきた。2004 年 10 月に発売されたばかりの新エキスパンション、神河物語だ。

この神河物語、実は英語版では "Champions of Kamigawa" という風にネーミングされているのだが、今回はこれまでのような英語名の単純なカタカナ表記(例:Fifth Dawn フィフス・ドーン)にはならず、日本語としての意味合いを尊重した(意訳的な)タイトルが与えられた。もちろん、これはマジック史上ではじめてのことだ。

そんな神河の世界では「侍」や「狐」、それに「鼠」といったクリーチャー達が登場し、新しい能力としても「武士道」などがフューチャーされている。また、妖怪伝承や神話的な描写、そして武士道世界といったジャパネスクなニュアンスを物語に活かすべく、近年では例にないほどの量の「伝説のパーマネント(Legend)」が登場することとなった。そして、それに伴って長く親しまれてきた「レジェンド・ルール」が改定されていることも大きなトピックだ。

実際にこのセットには《義理に縛られし者、長雄/Nagao, Bound by Honor》や《風見の本殿/Honden of Seeing Winds》のような強力なレジェンドがアンコモンなどにも収録されており、久々にマジックに触れるというグランプリ参加者は(今更ながら)要注意だろう。付け加えると、「反転」したことによって伝説化するクリーチャーなども少なくない。そう、「レジェンドといえばレア」という昔懐かしい感覚は神河世界では通用しないのだ。

レジェンド・ルールの刷新 (Hobby Japan 公式ページより)

神河物語 の登場に合わせてこれまでの「レジェンド」に関するルールが変更になりました。今までは同じ名前の伝説のパーマネントが複数場に存在した場合、後に出たカードが墓地に置かれました。今後はこのような状況になったとき、すべてのカードが墓地に置かれることになりました。つまり、2 枚目以降の同名の伝説のパーマネントは、場の同じ名前のものを自分自身も含めすべて破壊する効果を持つことになります。

参照URLhttp://www.hobbyjapan.co.jp/magic/products/expansion_sets/kamigawa_block.html

神河的リミテッドの世界

一年前にリリースされたミラディン・ブロックは悪名高き「親和(Affinity)」というシステムをフューチャーした革新的なセットだった。その「アーティファクト」だらけというミラディンの挑戦的な世界観に比べると、システム的な意味での神河世界は(今のところ)古きよき香りが漂うものと言えそうだ。実際にパックを開封してみると、驚くほどアーティファクトは稀少で、対照的なほどエンチャントメントをよく見かけるはずだ。横行するコンバットトリックや除去魔法にも「伝統の香り」を感じさせてくれるカードが実に多く、初手《粉砕/Shatter》ピックが十分ありえた時代とは大違い。もっとも、伝説のパーマネントも不思議なほどに存在しているわけで、そのあたりは斬新な切り口だ。

さらに、オンスロート時代ほどではないにしても、特定の種族を集めることによって相乗効果を得られるようなカードも神河には多い。そして、それを前提とした上で有効活用されそうなシステムカードも意外なほど強力だ。例えば、《狐の易者/Kitsune Diviner》などは「スピリット」以外の種族に対しては実に無力な存在だが、環境の半数近いクリーチャーが「スピリット」であるため、各色に一匹ずつ配備された「伝説のドラゴン」たちをも制御することも可能だ。他方、「スピリット」を活かす側のカードにも、《貪る強欲/Devouring Greed》のような立派なフィニッシュブローたりうるカードが用意されている。

また、そういった「種族」にからむ攻防だけでなく、「秘儀」呪文と「連携」するシナジーを活かしてのコンバットトリックや除去呪文、といった新しい駆け引きも注目だ。《木霊の力/Kodama's Might》や《氷河の光線/Glacial Ray》は、間違いなくこの週末の主役を張るだろう。

「武士道」もクリーチャー戦闘がゲームの主役となるリミテッドでは十分な活躍を見せてくれるはずで、オールドファンならば、3 ターン目に召喚される《浪人の犬師/Ronin Houndmaster》に《スークアタの槍騎兵/Suq'Ata Lancer》の面影を見出すかもしれない。

Olivier Ruel

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ところで、現在の神河のリミテッドで特筆すべきは、ドラフトにおける「緑系多色」デッキの(意外なほどの)強さだろう。私個人がイベント取材の先々でプロプレイヤーたちから神河についての雑感を聞いてまわったところでは、「緑はあまりやりたくない」という意見が支配的であったのだが、実際のトーナメントシーンで結果を残してしまっているのがその「緑系」デッキなのだ。

論より証拠。ヘルシンキブリスベーンで(横浜と同じ)神河フォーマットでのリミテッド戦グランプリが開催されたのだが、奇しくも、その双方で栄冠を掴み取ったプレイヤーがドラフトしていたデッキが…緑を基盤として青と赤を加えた三色だった。そう、昔風にいうなれば、3cG だ。

実際のところ、神河世界における緑という色には、《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》、《木霊の手の内/Kodama's Reach》、《大蛇の葉詠み/Orochi Leafcaller》といった優良な多色化支援ツールがコモンに用意されている。これらをうまく活用してグランプリ・ヘルシンキでチャンピオンに輝いたオリヴィエ・ルエル(フランス)などは、《森/Forest》9 枚+《島/Island》4枚+《山/Mountain》4 枚という大胆なマナベースのデッキを作っており、ダブルシンボルの強力なカードを堂々とタッチしていたのだ。一方、ルエルに比べれば、ブリスベーンチャンプのウィル・クープマン(オーストラリア)のデッキはマナしか供給できない場合でも戦えそうな「おとなしい」構成だが、彼にしても神河環境での緑という色が 3 色以上に進む可能性を再確認させてくれたことには違いない。

まぐれあたりの一発屋ならともかく、これは優勝賞金 2400 US ドルをかけたグランプリで 2 大会連続してのことなのだから、皆さんも心しておくべきだろう。

ところで、ここでご紹介したデッキリストが完全でない(ともにメインボードが 39 枚)のは、引用元のリストの段階で不完全なデータだったためである。大変申し訳ないが、概要としてどのようなデッキが栄冠を勝ち取ったのかを掴んでいただけたら幸いだ。

Will Copeman

Download Arena Decklist

注目のプレイヤー

さて、せっかくのグランプリなのだから、トッププレイヤーたちが目前で繰り広げる熱戦に魅入られてみるのも悪くないだろう。いまではプロツアーごとに日本人から誰かしらが決勝ラウンドへと勝ち進むようになったわけで、フューチャーマッチ・エリアでは驚くほどハイレベルな戦いが繰り広げられているはずだ。強豪ならではというテクニカルなプレイだけでなく、洗練されたアーキタイプならではのカードパワー(一見弱そうなカードが特定の状況下で意外なほどの力を発揮することは少なくない)というのを目撃できるかもしれない。

ここでは、今が旬という強豪たちを少しだけご紹介したいと思う。

・コロンバス・トリオ

つい先日、ちょうどアメリカ大統領選挙の直前にオハイオ州コロンバスで行われたエクステンデッドのプロツアーでは、トップ8に日本勢3名が勝ち進むという快挙が実現した。まさにノリにノっているであろう彼らをご紹介したい。

有田 隆一(写真右)は昨シーズンのプロツアー・シアトルでチーム S.A.I.(有田 隆一/射場本 正巳/志村 一郎)の一員として決勝ラウンドに勝ち上がったことで注目を集めたプレイヤーで、コロンバスでは 2 回目のプロツアー・サンデーとなった。職業プロプレイヤーとしてマジックの道へ大きく踏み込んだ彼は、これまでのキャリアでもっとも充実した時間を過ごしているはずだ。そんな彼がコロンバスでプレイしていたのは相棒の射場本 正巳がデザインした「無限ライフ」デッキ。大きな声と陽気な(やかましいくらいの)パフォーマンスが印象的な彼だが、実は、これには精神的な面での「別の顔」をカムフラージュするための要素も大きいそうだ。慎重すぎるほどに慎重、実は大胆さからは程遠いところにあるという有田の内面を、もしかしたらあなたも見ることができるかもしれない。

大礒 正嗣(写真中央)は、その凄まじいキャリアからは想像もできないほどに謙虚な若者だ。しかし、ひとたびデッキを片手にプレイマットの前へと着席すると、それまでの姿からは想像もできないほどの力強さと老獪さを漂わせ、途端に日本きってのスタープレイヤーのたたずまいとなる。少し猫背で上目遣い、やや神経質なくらいに自陣のカードたちを綺麗にレイアウトする彼は、盤面に大きなアクションを起こすときに実に独特の仕草を見せる。グランプリ横浜のフューチャーマッチ・エリアで彼がそんな「大礒流」の仕草を見せたとき、周囲を囲むギャラリーからはいくつのため息が漏れることになるだろうか。ちなみに、通算4度のプロツアー決勝進出というモンスター・パフォーマンスは、当然日本人ではダントツのトップ。国際舞台で世代交代が進んでいることもあり、「世界有数の強豪」というコピーが決して大袈裟でないというトッププレイヤーだ。

中村 修平(写真左)は一時は「三味線の修平」こと「しゃみしゅー」というニックネームとキャラクターですっかり定着していた大阪の強豪だ。しかし、最近の中村からは正統派、実力派としての十分な説得力とオーラとが醸し出されるようになってきたことを強調せねばなるまい。中村 修平は 2004 年度日本代表もつとめ、コロンバスでは日本勢最上位となる準優勝を飾った。そう、今やドメスティックな「強豪」はワールドワイドな「トッププレイヤー」へと鮮やかな変貌を遂げたのだ。プロツアー・コロンバスでは師匠格の藤田 剛史(大阪)のデザインした「Red Deck Wins」をシェアされ、決勝ラウンドでは、準々決勝での「Reanimater」戦、準決勝の「Scepter Control」戦と、立て続けに下馬評を覆す力強さをアピールした。

・力強き日本王者

いまでこそ「(プロツアーでの)ベスト 8 あたりまえ」というほどに世界トップとの実力差を縮めることに成功した日本勢だが、その最初の一歩までは本当に長い道のりで、それこそ涙なしでは語れない苦闘の歴史だった。そんな時代を切り開いた開拓者、今も昔も大阪から日本のマジックを支えてきたのが藤田 剛史(大阪)だ。そう、プロツアー東京で準優勝を果たした藤田は、日本における「生きた伝説」とも言うべきプレイヤーなのだ。今や、彼が率いる大阪勢トップチームのコミュニティには黒田 正城(PT 神戸優勝/Mastersヴェニス優勝)、藤田 修(PTアムステルダム準優勝)、中村 修平(PT コロンバス準優勝)、森田 雅彦(Masters ヴェニス優勝)といった日本を代表する強豪たちがひしめきあっており、その誰もが彼らの成功は「ローリーさんのおかげだ」と強調する。最近の戦績という意味では、藤田 剛史自身も今年度の日本選手権で初優勝を飾っており、世界選手権サンフランシスコ大会とプロツアーコロンバスでツアー 2 大会連続のマネーフィニッシュを果たすという好調ぶりだ。よほどの悪運が初日のシールドデッキ構築で彼を悩ませない限り、日曜日のドラフト巧者ぶりに期待がかかるプレイヤーといえるだろう。

飛び込み参加、大歓迎!

さて、このプレヴュー記事が掲載された段階だと、グランプリ横浜本番までは残すところ数日くらいという時期だろうか。しかしながら、当日の滑り込み参加も可能なのがこのグランプリ横浜だ。サイドイベントでの催し物や本戦の諸注意確認なども含めて、下記URLを是非ともチェックしていただきたい。

参照URLhttp://www.wizards.com/default.asp?x=grandprix/yokohama04/facts,,ja

ご覧のとおり、充実のサイドイベント、たとえば神河物語のフォイルカードのコンプリートセットが提供されるオリジナル・カードのコンテストなどの催し物も今回のグランプリの大きなトピックだ。また、来場するアーティストのサイン会も、神河ブロックで活躍中の日本人たちをフューチャーするという新しい試みだ。

そんなわけで、プロツアー名古屋への挑戦を夢見るトーナメントプレイヤーはもちろん、カジュアルなプレイスタイルを好む方、コレクターの皆さんにも是非ともご来場いただきたいイベントがグランプリ横浜なのだ。

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