Article : 八十岡×川崎のスタンダードウォッチング プロツアー京都トップ8編

Posted in Event Coverage on March 1, 2009

By Daisuke Kawasaki

世界中から集結したプレインズウォーカーたちが思考による至高の戦いを繰り広げたプロツアー京都。

二日間14回戦にわたる予選ラウンドを経て、ついに決勝ラウンドを残すのみとなった。

決勝戦に残ったメンバーを見てみると、最新型ジャガーノートLSVことLuis Scott-Vargas(アメリカ)によるプロツアー2連覇(世界選手権のぞく)がやはり最大の注目点となるのだろうか。

一方、デックテックに目を向ければ、やはりGabriel Nassif(フランス)の持ち込んできた、5色コントロールが、多くの驚きと感嘆を与えてくれた。

Jon Finkel(アメリカ)・Kai Budde(ドイツ)の二大巨頭に次ぐ「第三の巨頭」は誰かという議論がここ数年積極的に行われているが、このふたりのどちらかが京都のタイトルを獲得すれば、おそらくだが、それがそのままこの議論の結果となるだろう。

新たな時代が、この京都の地で幕を開けるかもしれない。

新たな時代、というトピックに目を向けるならば、我らが日本勢の活躍も触れないわけにはいくまい。

山本 明聖(和歌山)
棚橋 雅康(新潟)

ともに、初参加のプロツアーでトップ8入賞を果たしたこのふたりが、世界に日本の層の厚さと、新しい時代のムーブメントを見せつけてくれた。

久しく日本にもたらされていなかった「プロツアーチャンピオン」というタイトルを、このふたりがもたらしてくれるかもしれない。

非常に見所満点の決勝ラウンドが今まさに開始されようとしている。
ウェブキャストで、そして会場で、ぜひとも新たな時代の生き証人に!

と、ここでひとつご提案。

トップ8メンバーたちの使用するデックについて知っておけば、もっとこの決勝ラウンドを楽しめると思いませんか?

お任せください!

惜しくもトップ8入賞を逃したものの、12位というすばらしい成績を残した「鬼神」八十岡 翔太(東京)が、トップ8スタンダードデックを解説してくださいます!

川崎 「というわけで、サム(Samuel Black(アメリカ))率いるアメリカ勢と、津村 健志(広島)さん、中村 修平(大阪)さん、浅原 晃(神奈川)さん、窪内 直樹(千葉)さんが交流を暖めているカラオケボックスからお送りするスタンダードウォッチングです」

八十岡 「というわけで、ってどういうわけだよ!」

川崎 「様々なスケジューリングの結果です。それでは2008年Player of The Yearと2005年Player of The Yearの歌うエリック・クラプトンをBGMにスタンダードウォッチングスタートしましょう」

■準々決勝:Luis Scott-Vargas vs. 棚橋 雅康

川崎 「さて、デックテックももちろんなんですが、せっかくなので、対戦相性をメインに分析して、優勝予想もしてもらっちゃおう、と今回は考えているのですが」

八十岡 「うーん、勝負はデッキだけで決まるわけでも・・・」

川崎 「まぁ、だからこそ、デック相性を把握していれば、プレイヤーのスキルやドラマが味わえるんじゃないですか!さて、まずは、今大会でその勢いを存分に見せつけてくれたLSVと、「新潟の星」棚橋さんのマッチアップです」

八十岡 「青黒フェアリーと白黒トークンのマッチアップだね」

Luis Scott-Vargas


川崎 「さて、今回のスタンダードで注目するべきデックテックはふたつありまして、そのひとつ目がこのLSVのデックなんですけど・・・日本だとほとんど姿を見ない白黒トークンを持ち込んできましたね、LSVは」

八十岡 「そうだね。白黒トークンは赤白GAPPOの下位互換だっていったと思ったけど、最終的に全体のメタゲームをみると、白黒トークンにも十分にメリットがあったね。実際、白黒トークンは悪くない選択肢だった」

川崎 「といいますと?」

八十岡 「コンフラックスで《流刑への道/Path to Exile》が入ったことと、フェアリーの《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》・赤白GAPPOの《運命の大立者/Figure of Destiny》が理由だと思うんだけど、環境の除去が単体除去よりになってたんだよね」

川崎 「そうすると赤白の優位である《運命の大立者》のメリットが低下すると」

八十岡 「そうそう。《目覚ましヒバリ/Reveillark》と《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》のシナジーももちろんあるんだけど、序盤の動きが弱い、っていう白黒トークンのデメリットを《運命の大立者》を使えることでフォロー出来るのが赤白の最大の優位点だったわけだから」

川崎 「そこが無くなると、むしろ《苦花/Bitterblossom》を採用できる部分が優位点になると」

八十岡 「そういうことなんだろうね」

Masayasu Tanahashi


川崎 「この最新型ジャガーノートに対するのが、新潟の、そして日本の期待の星、棚橋さんが使用する青黒フェアリーですね。結果、フェアリーはトップ8に棚橋さんひとりでしたね」

八十岡 「これは、あんちゃん(高橋 優太(東京))タイプのフェアリーだね」

川崎 「《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》不採用、くらいですか、メインのトピックは」

八十岡 「うん。青黒コントロールよりのフェアリー、だね」

川崎 「そういや、高橋君が『《苦花》と《思考囲い》をサイドアウトするゲームばっかだった』っていってたんですけど、それすでにフェアリーじゃないじゃん、って話じゃないですか?」

八十岡 「いや、結局《苦花》ないと、《苦花》に勝てないから。我々パーミッション好きがなぜフェアリー使うかって、《苦花》じゃないと《苦花》に勝てないからなんだってば」

川崎 「あぁ、だから八十岡さんのプロツアーハリウッドのデックみたいないびつなデックもできあがると。《苦花》と《思考囲い》抜くのは、ライフ守るためですか?」

八十岡 「この環境、想像以上のダメージレース環境だからね。《思考囲い》の2ライフは実はすごいキツイ。実際、LSVの白黒トークンには《思考囲い》入ってないでしょ。メインもサイドも」

浅原 「さすがルイスはマジックわかってますねぇ」

川崎 「さて、では実際のマッチアップの相性なんですけど」

八十岡 「さっき言ったようにタイトなダメージレース環境だし《苦花》デッキ同士なら、それはなおさらなんだよね。だから、LSVの《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》は勝負のキーになる1枚ではある」

川崎 「でも、《思考囲い》ないんですよね」

八十岡 「そうなんだよね・・・対フェアリーの時だけはそれがマイナスだよね・・・。実際、LSVのデッキはサイドボードからいれるものがほとんど無いんじゃないかと思う。決勝ラウンドが3本先取でサイド後のゲームの方が多いことを考えると、事実上弱体化してるっていえるよね」

川崎 「じゃあ、実際のマッチアップ相性は・・・」

八十岡 「6:4くらいでフェアリーが有利、なはず。ただ、プレイヤーがLSVなのがなぁ・・・。棚橋さんが弱いっていうんじゃなくて、LSVが強すぎる。特にプロツアーレベルのイベントでの経験値の差が5戦やるなら大きく出るんじゃないかなぁ」

川崎 「そのへんは棚橋さんに期待する、ってことで。じゃあ、このマッチアップはでフェアリーの棚橋さんが勝利の予定、でいいですかね」

八十岡 「デッキリストから判断するなら、ね。ルイスはやばい」

■準々決勝: Jan Ruess(ドイツ) vs. 山本 明聖(和歌山)

川崎 「続いて、日本人プレイヤーのマッチアップを続けて見ていきましょう。続いては山本さんとJan Ruessのマッチアップですね」

八十岡 「赤白の同型対決だね」

Jan Ruess


Akimasa Yamamoto


川崎 「この同型対決のキーってなんですかね?」

八十岡 「いや、基本は先手ゲーでしょ。先手とれるかとれないかが重要」

川崎 「ビートダウン対決だから、そりゃそうですよね」

八十岡 「それもそうなんだけど、このマッチアップだと、4マナと5マナにどちらが先にたどり着けるかがポイントなんだよね。具体的には《復讐のアジャニ/Ajani Vengeant》を先に出せるかと、《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》を出した後に先にアンタップできるかのふたつ」

川崎 「《復讐のアジャニ》は対消滅してしまうから、先に出して能力使える方が強いと」

八十岡 「それだけで、1枚得だからね。で、そう考えるとヤンのデッキ、すごい不利な点があるんだ。《精神石/Mind Stone》入ってないでしょ」

川崎 「あ、本当ですね」

八十岡 「これが、同型だとすごい大きいはず。4マナ5マナの先手ゲーなのに、後手に先に4マナ5マナにいかれちゃうんだから。少なくともこれで勝負決まるゲームがひとつあるんじゃないかなぁ」

川崎 「しかも、山本さんは《神の怒り/Wrath of God》採用してますね」

八十岡 「そこに《確実性の欠落/Lapse of Certainty》が刺さるか、って感じかな。あと《炎族の先触れ/Flamekin Harbinger》も大きい。先手ゲーと別に《目覚ましヒバリ》ゲーになる展開も想像されるんだけど、そうなったとしたら《炎族の先触れ》使い回しで《目覚ましヒバリ》連打できるからね。《神の怒り》打つならなおさら」

川崎 「じゃあ、相当山本さん有利だと」

八十岡 「7:3くらいあるんじゃないかな」

川崎 「日本人、準々決勝は好調じゃないですか!」

八十岡 「ただ、相手がどちらも超ベテラン強豪なのがねぇ・・・」

川崎 「いや、山本さんにはぜひともJan Ruessをたおして、PTベルリンでの中村さんの仇をとってもらいましょう!」

■準々決勝: Gabriel Nassif(フランス) vs. Matteo Orsini Jones(イングランド)

川崎 「さて、でてきましたね。トップ8最大のデックテック、Gabriel Nassifのデックが」

八十岡 「これはすごいよね」

Gabriel Nassif


Wall of Reverence

川崎 「《崇敬の壁/Wall of Reverence》ですか」

八十岡 「《羽毛覆い/Plumeveil》はナベ(渡辺 雄也(神奈川))のスワンにもはいってたけど、ここまで固くすると、そうそう突破できないね」

川崎 「これだけ壁があれば《神の怒り》はいらないと」

八十岡 「それもそうだけど、《火山の流弾/Volcanic Fallout》で十分だって言うのが大きいんだろうね。環境のほとんどのデッキに《神の怒り》代わりになる」

川崎 「ましてや、白黒トークン相手なら、ですか」

八十岡 「だからこそ、ゲームのキーは《栄光の頌歌/Glorious Anthem》になるだろうね。これで《火山の流弾》じゃひっくり返せなくなれば・・・ただナシフのデッキ、《エスパーの魔除け/Esper Charm》で一応《栄光の頌歌》割れるんだよね」

川崎 「じゃあ、ここはナシフ有利だと」

八十岡 「これも7:3くらいだろうね。プレイヤーもナシフなんで、この相性差をひっくり返すのは厳しいはず」

Matteo Orsini Jones


川崎 「Matteo Orsini Jonesが勝つ展開はどんな感じですかね?」

八十岡 「さっきもいったけど、まずは《栄光の頌歌》。あと《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》と《遁走の王笏/Scepter of Fugue》も影響与えるだろうね。でも、まぁ、ナシフでしょ。俺のトップ8の芽を無くしたナシフには優勝ぐらいしてもらわないと困る」

■準々決勝:Brian Robinson(アメリカ) vs. Cedric Phillips(アメリカ)

川崎 「トップ8の最後はアメリカ対決ですね」

浅原 「あ、このスーツ、トップ8入賞したんすか!」

八十岡 「浅原さん、ずっと注目してたもんね」

浅原 「とにかく、見た目が強そうっす。見た目気合いはいってるヤツは違いますよ。スーツは神です」

川崎 「とにかくすごいヴィジュアルですよね、前にいるだけで負けた気になる」

サム 「でも、2~3年前にPTQにでてた頃はもっと小さくてかわいいヤツだったんだよ」

浅原 「マジっすか」

サム 「ここ数年で一気にふくらんだ」

川崎 「まぁ、スーツ的に勝ちそう、っていうのは置いておくとしてデックみていきましょうか」

八十岡 「Cedric Phillipsは当たって負けたんだけど、赤白キスキンだよね。GAPPOじゃなくて」

Cedric Phillips


八十岡 「使用しているプレインズウォーカーがドランに強いから、ドラン相手には強いよね、ドラン相手には」

川崎 「ドラン・・・ですか」

Brian Robinson


川崎 「ドラン、なんですか、これ?」

八十岡 「ドラン対キスキン、って考えればキスキンが有利なんだけど、これ《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》入ってるからねぇ・・・ドランではないよ」

川崎 「《貴族の教主/Noble Hierarch》のおかげでできあがった夢のデックだと」

八十岡 「このマッチアップは相性とかの問題かなぁ・・・コガモー(津村)、このデッキまわると思う?」

津村 「このデッキやばいっすね!無理でしょ!」

浅原 「りーむー(無理)」

八十岡 「っていうゲームじゃないかと」

川崎 「じゃあ、ほとんどBrian Robinsonがまわるかまわらないかのゲームになると」

八十岡 「まぁ、うっかりまわれば勝てるかもね。あと、一応いっておくと、《ガドック・ティーグ/Gaddock Teeg》もキーになるかもしれないね。《幽体の行列/Spectral Procession》とプレインズウォーカーが止まっちゃうんで、地味に強い」

川崎 「スーツ効果も含めて、Cedric Phillipsの勝利、ってことでいいですかね」

浅原 「スーツは神」

■準決勝予想

川崎 「さて、それでは、トップ4まで決まった所で、準決勝の予想に進みましょうか。なお、現在収録会場では、アメリカ勢と日本勢が揃ってクィーンのボヘミアン・ラプソディを合唱しています」

八十岡 「まずは、棚橋さんのフェアリーと、Cedric Phillipsのキスキンだっけか。うーん・・・これ相当厳しいよ・・・棚橋さんのデッキ、《蔓延/Infest》も《誘惑蒔き/Sower of Temptation》もないでしょ」

川崎 「そうですね・・・実際、その辺がLSV戦でも仇になって勝てない可能性もありますからねぇ」

八十岡 「そうだね。対キスキンだと、世界選手権のコガモみたいな展開が十分に考えられるよ」

津村 「世界がやっと追いついてきただけっすよ」

川崎 「実際、津村さんのチューンが今はメインですものね。そうすると、棚橋さんはかなり厳しいと・・・」

八十岡 「うん。よくて7:3とかでしょ」

川崎 「棚橋さんには、ぜひともその相性差を覆すミラクルを期待したいところです。続いて、Gabriel Nassifと山本さんですね」

八十岡 「いや、これはナシフの準々決勝とまったく同じでしょ。とにかく《栄光の頌歌》が機能するか、と、まぁ、《復讐のアジャニ》がまにあうか、だね。結局《栄光の頌歌》をナシフがメインから割っていけるのがキツイよ」

川崎 「ってことは、これも7:3くらいですか・・・ナシフ、有利なマッチアップ多いですね」

八十岡 「うん。ナシフはデッキもいいんだけど、とにかくマッチアップに恵まれているんだ。このトップ8だとナシフが本当にキツイのはフェアリーなんだけど、フェアリーとは決勝まで当たらない上に、フェアリー側は厳しいマッチアップばっかだから、決勝までくるとは考えにくいんだ。もう、これ、ナシフ優勝でいいでしょ」

川崎 「ちょっと、ちょっと、進行無視しないでください。というわけで、決勝いきましょう」

■優勝の予想と希望

川崎 「というわけで、今のところの予想では決勝戦はCedric Phillipsのキスキンと、ナシフの5色コントロールのマッチアップですね」

八十岡 「同じ理由で、7:3」

川崎 「もうちょい細かいテクニックでの変化とかないんですか?」

八十岡 「正直な話をすると、今、デッキリストだけみての話だから、多少の見落としはあるかもしれないんだけどね。でも、それでもナシフと白系の相性を劇的に改善するカードは見あたらない気がする」

浅原 「いや、Cedric Phillipsはやってくれますよ」

川崎 「とにかく浅原さんがCedric Phillips好きなのはわかりました」

浅原 「あいつやばいですよ、オーラでてます」

川崎 「八十岡さんは、やっぱりナシフが予想でも希望でも一番と」

八十岡 「まぁ、ナシフに負けてるからね・・・今回は手応えあったからもう少し上狙いたかったけど、最低限の目標は達成したから、あとは俺に勝ったナシフに優勝してもらうしかないね。あと、LSVにも負けてるからLSVでもいいか。LSVは強い」

川崎 「なるほど。観戦記事書く僕としては、やっぱり日本人のどちらかに勝利していただくのが一番嬉しいですけどね。そういや、さっきから思ってたんですけど、やけにナシフプッシュしますけど、トップ8で八十岡さんたおしてるプレイヤーって実は結構多くないですか?」

八十岡 「そりゃ、まぁ。今回全部で4敗だけど、戦って負けた相手のうち4人がトップ8はいってるからね」

川崎 「ちょっと、それすごいじゃないですか。八十岡をたおした=トップ8入賞ってことですか」

八十岡 「とんだラッキーマンにさせられたよ・・・」

というわけで、4敗オポーネントマッチパーセンテージトップの八十岡さんによるスタンダードウォッチングは今回はここまでです。

果たして、八十岡さんの予想はあたるのか?

それとも、ドラマティックな結末が待ち構えているのか?

ぜひとも、あなたのその目でお確かめください。

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