Deck Tech:
尹 壽漢のメリーラ・ポッド

Posted in Event Coverage on June 23, 2012

By Wizards of the Coast

 会場で、一躍話題になっているデッキが有った。
 やれあのスハンがとても強いデッキを引っさげて帰ってきただとか、現役日本最強の渡辺雄也が使っているだとか、なんだかんだ二人ともまだ全勝だとか。そんな噂が流れ、あっという間に話は広まった。

 あの渡辺をして「このデッキは本当に強い。」と言わせる噂のデッキの秘密に迫ってみよう。

Balancing Act
Crypt Champion

 尹 壽漢(ユン スハン)は関東の有名なデッキビルダーで、過去にはあの中村修平や栗原伸豪といった面々にもデッキをシェアしていたことがある。膨大な練習に裏打ちされた綿密なデッキ構成には信頼を寄せるトッププレイヤーも多い。プロツアーでの自身の大きな活躍こそ無いものの、彼の作ったデッキがプレミアイベントのトップ8を戦ったことは数知れず。自身もオリジナルデッキでのプレミアイベントトップ8入賞経験がある。代表作は「バランス」「プロジェクトX」など。

―― デッキの基盤自体はいわゆる「メリーラ・ポッド(《シルヴォクののけ者、メリーラ》-《出産の殻》)」デッキですが、かなり独自のチューンとなっていますよね。このようなチューンになったキッカケは何でしょうか

シルヴォクののけ者、メリーラ
出産の殻

ユン 「もともと一般的なメリーラ・ポッドが、相手の妨害をしっかりするわけでもなく、かといって最速でコンボが決まるわけでもなくで、非常に中途半端なデッキだと感じていました。なので、もっと相手への干渉要素を増加させたメリーラ・ポッドを検討していました。

 そんな中、海外で開催されたグランプリ・トリノのデッキリスト(ページ下部)に、青が濃いメリーラ・ポッドが有ったんですよ。グランプリ自体の結果は確か初日7-1の2日目は0-6とかだったかな?(笑) ただ、《エレンドラ谷の大魔導師》の採用による妨害、《幻影の像》の柔軟性など、もともとやりたいことと合致していました。なので、とりあえずコピーして使ってみたのがスタートです。」

エレンドラ谷の大魔導師
幻影の像

 もともと現状存在したメリーラ・ポッドに不満を持っていたというユン。コンボ自体が環境最速とは程遠いばかりか、速度だけで言えば普通のビートダウンよりも遅い3枚コンボ。それなのに、相手のやりたいことにほとんど干渉することもできない、中途半端なデッキに感じていたという。せっかく《出産の殻》の柔軟性が有るのだから、もう少し相手に干渉できないものかと考えていた。そこで注目されたのが、《エレンドラ谷の大魔導師》をはじめとした青のカード達だった。

ユン 「《エレンドラ谷の大魔導師》のプレッシャーは本当にすごくて、このカード一枚で完封できる相手も存在しました。《シルヴォクののけ者、メリーラ》と揃えばもはやロック状態で、複数の青マナがある状態で決まってしまえば、環境に抜け出せるデッキはほとんどありません。このために土地構成を変更して青マナを増加したくらいです。

 《幻影の像》に関しても非常に柔軟性が高く、《出産の殻》で《極楽鳥》といったマナクリーチャーから持ってこれるのが非常に強力でした。環境に《聖トラフトの霊》が増えているのも追い風でした。

 一般的にメリーラ・ポッドにクローン系クリーチャーで採用されているのは《ファイレクシアの変形者》なのですが、これでは《聖トラフトの霊》への対処が間に合わないこともあります。しかし《幻影の像》なら引いていても《出産の殻》からでも間に合う場合が多いです。どちらに関しても一般的なメリーラ・ポッドには入っていないカードなため、対戦相手が想定していない、いわゆる『わからん殺し』で勝つことも多かったですね。」

 青白《聖トラフトの霊》系デッキをはじめとしたクロックパーミッションデッキや、3ターン目の《解放された者、カーン》を前提としたトロンの増加などにより、環境に合致していない構成になっていたメリーラ・ポッド。それに伴い使用者も減っていったが、ユンはデッキ構成自体に手を入れていき、環境に適応していった。デッキビルダー/チューナーの強みといえるだろう。

 また、独自構成のデッキは情報量という点で圧倒的優位に立つことができる。そしてプレイに選択肢が多ければ多いほど、情報量の優位を生かしていくことができる。メリーラ・ポッドというデッキはそれに最も適したデッキといえるだろう。必須パーツの少なさは環境でも随一であり、《出産の殻》パーツをはじめとして環境に合わせて入れ替えられる枚数が多い。そしてクリーチャーであれば少し入れ替えるだけで、《出産の殻》によって大きな影響を生み出すことができる。そこから生まれた選択肢の多さは、相手より多くの情報を持つことによって優位をとっていくことに繋がる。相手が想定しないカードが入っている、そのこと自体が既にアドバンテージなのだ。

―― どのような環境で調整を重ねていったのですか?

ユン 「対人での練習は勿論ですが、店舗の平日トーナメントも含めてかなりの数の大会に出場しました。少しずつチューンしていって今回の構成になっています。直前に少し変えたりもしましたけれど、全体の構成には非常に満足しています。」

 綿密に練られた構成は、膨大な練習に裏付けされしっかり検討された内容だった。デッキビルダーは思いつきで大会前日にデッキを作っているわけではない。考えたことをすぐに行動に移し、次を考えてまた行動に移し、繰り返してデッキを洗練させていくのだ。
シェアされた渡辺に訊いても「構成には非常に満足してます。変更を加えるとしても好みの問題じゃないかな?」と語ってくれたことからも、デッキの完成度の高さが伺える。

―― 特にサイドボードなのですが、《出産の殻》用のクリーチャーだけでなく呪文にも1枚挿しが多いのはなぜでしょうか?

ユン 「現在のモダンという環境が、様々なデッキが存在する環境です。多くのデッキに対応するために、同じような役割のカードはできるだけ種類を散らして選択肢を増やせるようにしました。例えばアーティファクト破壊っていう枠なら《化膿》《大渦の脈動》《隔離する活力》《罪+罰》を分けたり。色々なカードを使ってみての発見も多かったですね。《罪+罰》なんかは、最初は《》で使うつもりで、《大祖始の遺産》や《墓掘りの檻》、《倦怠の宝珠》が並んだ時に対処できるカードとして入れたんですけど、意外と《》が同型相手に強かったりとか。カードの役割を意識するのも重要ですが、それだけに囚われないことも大切です。」

107285
87927

 ユンもまた、八十岡や行弘が話していた「なんでもいる平坦な環境」を意識していた。カードの種類を散らすことにより選択肢を増やし、デッキ構築と情報量、そしてプレイにより優位を取る。環境の理解と練習量に自信のあるユンらしい選択だ。デッキビルダーとして環境のスパーリングを繰り返した強みといえるだろう。トッププレイヤー達がスケジュールの関係で実際の経験を積むことができなかったりする中で、こういったアプローチが取れるのはそれだけでアドバンテージだ。

 カードの新たな一面を発見できるというのもまたデッキビルダーの強みだろう。想定されないカードを使うアドバンテージに加え、そのカードを最大限に活かすことができる。カードプールの広いモダン環境には、まだまだ眠っている強力カード達が存在するのだ。

 全体を通して、ユンの膨大な練習と試行錯誤、そして長いマジック経験に裏打ちされたデッキ構築論を感じることができた。多くの強豪プレイヤーがデッキをシェアしてほしいというのも頷ける。そんなユンのデッキは、プレイヤーが強ければさらに輝きを増す。一見複雑な構成に見えるがそれぞれのカードにしっかり意味があり、それを感じることができれば非常に強力な武器となるだろう。

 デッキビルダーの叡智が詰まったこのデッキ、それぞれのカードの意味を感じてみてはいかがだろうか?

なお、ユンはこのグランプリ・横浜の初日を9-0の全勝、シェアされた渡辺も8-1の好成績で終えている。

Yoon, Soo Han

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