Translated By 森 慶太
「
:対象のクリーチャーはターン終了時まで +0/+1 の修正を得る」
このようなカードが構築戦プロツアーのデッキに投入されているのを目撃することになるなんて…あなたには想像できたでしょうか? それでは、+0/+1 のかわりに +1/+0 修正だったらどうでしょう? はたまた、0/2 飛行、ほかに何の能力ももたないクリーチャーなんていうのは?
みなさん、「親和(アーティファクト)」という名の狂った世界へようこそ。
ウィザーズ社の開発部がカードのマナコストをディスカウントさせるたびに、どうやらそのアーキタイプはスタンダードとブロック構築の両方のフォーマットを席巻するデッキとなってしまうようです。そう、たとえばマッドネスや親和というのは、それ自体がエンジンどころかメインテーマになってしまいました。過去数年間を見ても、《夜景学院の使い魔/Nightscape Familiar》、《サファイアの大メダル/Sapphire Medallion》といったカードたちがしばしば有力なデッキに登場してきたわけで、どうやら「ものごとを安くすませてしまおう」というコンセプト自体がとても魅力的であるというのは間違いないでしょうね。
《アクローマの復讐/Akroma's Vengeance》という強大な天敵がいるにもかかわらず、今日のスタンダード・シーンで親和というアーキタイプは何度と無く成功をおさめています。ここで昨日の Last Chance Qualifier(直前最終予選)を見事に勝ち上がったデッキリストを見てみましょう。
Hideaki Maeba
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ここでは一般的に 0 マナでプレイされているスペルが 18 枚使われています。それらに加えて 4 枚の《マイアの処罰者/Myr Enforcer》というのも今では一般的なビルドでしょうか。親和に絡まないスペルのマナコストも 2 マナ以下で徹底されており、このデッキにおけるすべてのドローは爆発的な意味を持ち続けるようになっています。そして、安いスペルだらけという構造にもかかわらず、《頭蓋骨絞め/Skullclamp》という名のとどまることを知らない供給能力により、このデッキは息切れも滅多におこしません。さらに、徹底した低目のマナカーブのおかげで、たった16枚の土地でもこのデッキは機能するようになっています。
このデッキはゲームのかなり早い段階から直ちにプレッシャーをかけ続けることになります。一枚の《電結の荒廃者/Arcbound Ravager》が場に出ていれば、それはすなわちすべてのアーティファクトクリーチャーが致命的な脅威であるということになるのです。《チス=ゴリアの歯/Tooth of Chiss-Goria》や《チス=ゴリアの鱗/Scale of Chiss-Goria》のおかげで、《羽ばたき飛行機械/Ornithopter》でさえもただの邪魔者では終わりません。また、複数の4/4や2/2クリーチャーをすばやく展開する方向で実にすばやいクロックを作り上げてしまうことも。
とにもかくにも、プロツアー神戸で話題の中心となるデッキがこの親和アーキタイプであることは、もはや当たり前といっていいでしょう。ここで取り上げたデッキを見渡した限りでは、ブロック構築では使えないカードはメインデッキの 3 枚とサイドボードに 5 枚だけです。ですから、今日のトーナメントで多くのプレイヤーがこれとほとんどかわらないデッキをプレイしていたとしても驚くに値しないのです。
唯一考えるべき点があるとしたら「スタンダードカードの部分をどのようなブロックカードで置き換えるか」ということでしょう。まず、《マナ漏出/Mana Leak》にかわるオプションに関してですが、これは《アクローマの復讐/Akroma's Vengeance》がもはや存在しないフォーマットである以上、カウンター呪文のスロットを潰しても良いという結論に至るでしょう。それではそこは何で代用しましょうか? まあ・・・たぶん、《電結の働き手/Arcbound Worker》あたりでしょうね。この1/1クリーチャーというのは使用にたえうるレベルのものですし、《頭蓋骨絞め/Skullclamp》と《電結の荒廃者/Arcbound Ravager》というこのデッキの二枚のキーカードともすばらしいシナジーを織り成してくれるからです。
みなさんも考えてらっしゃるとおり、4枚の《ダークスティールの城塞/Darksteel Citadel》も間違いなくデッキに投入されることになるでしょう。《酸化/Oxidize》や《爆破/Detonate》が満載されたフォーマットですから、最初にプレイしたランドが確実に生き残れるということはほかのフォーマット以上に評価されてしかるべきだからです。まあ、マナベースのあり方自体(総量も含めて)がスタンダードとブロック構築では事情が違うということもあるかもしれません。チームCMU-TOGIT連合のプレイヤーたちなどは青と黒の二色のみにしているようですし、ほかでは黒赤二色という例もあるようです。青赤もきっといるだろうと思ってあたりを見あたしてきたのですが、いまのところ見つかっていません。やはり、《大霊堂の信奉者/Disciple of the Vault》を使わない、というのが選択肢としてはありえないということでしょうか。
まあ、そういったいくつかの違いさえおいておけば、このスタンダードデッキはほとんどそのままブロック構築での有力なデッキです。《頭蓋骨絞め/Skullclamp》とのシナジーや除去への対抗といったニュアンスで《マイアの回収者/Myr Retriever》を使用しているデザインもいくらかあったようでした。ちなみに、私が今まで見てきた限りでもっとも驚かされたカードは《霊気の薬瓶/AEther Vial》です。まあ、このカードの有用性に対する見解はさまざまでしょうが、とにもかくにもこのカードが 1 マナのアーティファクトであるということだけは動かしがたい事実。それに、「黒マナがないときでも《大霊堂の信奉者/Disciple of the Vault》を場に出せる」という感じで、いわゆる「遅い手札」を解消してくれるかもしれませんし、2体目の《電結の荒廃者/Arcbound Ravager》をすばやく展開してくれるかもしれません。
サイドボードとして考えるすべての選択肢に言及するのはちょっと荷が重いですが、色にかかわらず有効なカードは使われるだろうということは断言してしまっても問題なさそうです。《空僻地/Glimmervoid》がメインデッキであり(アーティファクト除去満載の相手との対戦ではサイドから土地を足すというのもありそうです)、実質的にサイドボードの可能性は無限大に近いでしょう。ちょっと例を出してみると、《起源室/Genesis Chamber》、《恐怖/Terror》、《ゴブリンの修繕屋スロバッド/Slobad, Goblin Tinkerer》、《酸化/Oxidize》、それに《炉のドラゴン/Furnace Dragon》といったようなカードたちをプレイヤーは 15 枚のカードパッケージの中につめこんでいるようです。
「The Obvious Deck」。すなわちメタの中心に定められる運命の「間違いなく存在するデッキ」である以上、いかにこの親和デッキが優れていようとも、それが今大会で最良のチョイス足りうるとはいえません。なぜなら、誰もが狙いをつけ、対抗手段を満載してくるに決まっているからです。事実、親和以外のデッキをプレイするプレイヤーたちは《酸化/Oxidize》、《粉砕/Shatter》、《爆破/Detonate》、《解体/Deconstruct》、《ヴィリジアンの盲信者/Viridian Zealot》、それに《残響する破滅/Echoing Ruin》といったカードを実際にメインデッキに投入しています。こういったヘイトカードの山々を親和デッキのパワーとスピードは果たして克服できるものでしょうか?
CMU-TOGITやYMGといった巨大チームの面々は「できるだろう」と考えたからこそ親和デッキを今ここでプレイしています。私たちは・・・審判が下るのを待つのみですね。