
「完勝」という使い古された表現があるが、グランプリ新潟における森 勝洋のパフォーマンスは、まさしくそれにほかならなかった。
環境の大本命といわれた《けちな贈り物/Gifts Ungiven》デッキに、サイドボードから《山/Mountain》と《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》と《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》と《龍の牙、辰正/Tatsumasa, the Dragon's Fang》を搭載させるというアグレッシブなサイドボードプランを採用し、見事に優勝。しかも、彼に"Godo's Gifts"デッキをシェアされた二人の友人――大礒 正嗣と津村 健志――もともに決勝ラウンドへと進出するというおまけつきであった。ベスト8進出率は…100%だ。
かくて、チーム・マスターズを制し、シーズン新人王をも獲得した強豪が、待望の個人戦初タイトルを勝ち取った。それも、これ以上ない形で。
Congratulations to Katsuhiro Mori, Grandprix Niigata 2005 Champion !!
top 8 bracket
観戦記事
- Blog - 8:54 pm:決勝:有留 知広 vs 森 勝洋
by Yusuke Yoshikawa
- Blog - 8:23 pm: 準決勝:大礒 正嗣 vs. 有留 知広
by Kenji Matsui
- Blog - 7:55 pm: 準決勝:浅原 晃 vs. 森 勝洋
by Keita Mori
- Blog - 7:20 pm: 準々決勝:浅原 晃 vs. 尹 壽漢
by Yukio Kozakai
- Blog - 6:51 pm: 準々決勝:有留 知広 vs. 塩津 龍馬
by Kenji Matsui
- Blog - 6:27 pm: 準々決勝:津村 健志 vs. 大礒 正嗣
by Yusuke Yoshikawa
- Blog - 5:50 pm: The Top 8 Player Profiles
by Event Coverage Staff
- Decklists: The Top 8 Decks
by Event Coverage Staff
- Day 2 Blog Archive:Top Pro Play, 2日目進出者デッキ分布, Feature Matches, and Much More!
by Event Coverage Staff
- Decklists: 初日全勝デッキ
by Event Coverage Staff
- Day 1 Blog Archive: トッププロへのインタビュー, 神河ブロック環境考察, 石田 格 vs. 池田 剛, 来日アーティスト, and Much More!
by Keita Mori
- Info: Fact Sheet
by Event Coverage Staff
ベスト4最終順位
1. 森 勝洋 | $2,400 |
2. 有留 知広 | $1,700 |
3. 浅原 晃 | $1,200 |
4. 大礒 正嗣, | $1,000 |
5. 大澤 拓也 | $800 |
6. 津村 健志 | $800 |
7. 塩津 龍馬 | $800 |
8. 尹 壽漢 | $800 |
組合, 結果, 順位
BLOG
■森 勝洋/Katsuhiro Mori

――年齢・お住まいの都道府県・ご職業をおしえてください。
22歳。東京都在住。プロプレイヤー。
――おもなマジックでの戦績をおしえてください。
2001年度新人王(Rookie of the Year)。4人ドラフトで目下4連勝!
グランプリでのベスト8入賞はこれが9回目。
――今大会にむけてどのような準備をしましたか? プレイテストパートナーや所属チームを教えてください。
チーム"Rush"の大礒 正嗣、津村 健志と一緒に調整。
――使用デッキの『特徴』や『工夫点』を教えてください。
《けちな贈り物/Gifts Ungiven》コントロールが、サイドボードから赤を足して、《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》デッキになること。
――今大会で見かけたデッキの中で、あなたがもっとも感銘を受けたのは誰のどのデッキですか?
モリカツのデッキ
――来年度のプロツアースケジュールや、プロプレイヤークラブについてどのような感想・意見をもっていますか?
とくになし。
――予選ラウンドで印象に残っているエピソードを教えてください。
「けち」の同キャラ対決で、残り時間2分ではじまった勝負に勝ったこと。
■大礒 正嗣/Masashi Oiso

――年齢・お住まいの都道府県・ご職業をおしえてください。
21歳。広島県。大学生。
――おもなマジックでの戦績をおしえてください。
プロツアーベスト8入賞が5回。
グランプリでのベスト8入賞はこれが6回目。
――今大会にむけてどのような準備をしましたか? プレイテストパートナーや所属チームを教えてください。
チーム"Rush"のモリカツさん、津村 健志と一緒に調整。
デッキはモリカツさんにもらいました。
――使用デッキの『特徴』や『工夫点』を教えてください。
《けちな贈り物/Gifts Ungiven》コントロールが、サイドボードから赤を足して、《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》デッキになること。
――今大会で見かけたデッキの中で、あなたがもっとも感銘を受けたのは誰のどのデッキですか?
モリカツさんのこのデッキの強さにビビっています。
――来年度のプロツアースケジュールや、プロプレイヤークラブについてどのような感想・意見をもっていますか?
リミテッドのプロツアーが2回あって良かった。
リゾートプロツアー(ホノルル)は、休みが十分取れる人には良いかもしれませんけど、社会人にはあまり関係ないでしょうね。
――予選ラウンドで印象に残っているエピソードを教えてください。
フューチャーマッチでミスって負けてしまったこと。
(個人的にはレベル5に昇格できてよかった)
■浅原 晃/Akira Asahara

――年齢・お住まいの都道府県・ご職業をおしえてください。
26歳。神奈川県在住。旅人。
――おもなマジックでの戦績をおしえてください。
グランプリでのベスト8入賞はこれが5回目。
グランプリ松山2005優勝。グランプリ京都2003優勝。
ザ・ファイナルズ2004優勝。ザ・ファイナルズ2003優勝。
――今大会にむけてどのような準備をしましたか? プレイテストパートナーや所属チームを教えてください。
八十岡 翔太と一緒に練習しました。
――使用デッキの『特徴』や『工夫点』を教えてください。
《けちな贈り物/Gifts Ungiven》だが、大量のギミックを仕込んだこと。
――今大会で見かけたデッキの中で、あなたがもっとも感銘を受けたのは誰のどのデッキですか?
ヤソコン。八十岡 翔太の青単色デッキ。
――来年度のプロツアースケジュールや、プロプレイヤークラブについてどのような感想・意見をもっていますか?
レベル4あたりからは実に良いと思います。
――予選ラウンドで印象に残っているエピソードを教えてください。
《明けの星、陽星/Yosei, the Morning Star》コンボは一度も決まりませんでした。
■有留 知広/Tomohiro Aridome

――年齢・お住まいの都道府県・ご職業をおしえてください。
19歳。神奈川県藤沢市在住。学生。
――おもなマジックでの戦績をおしえてください。
とくになし。
――今大会にむけてどのような準備をしましたか? プレイテストパートナーや所属チームを教えてください。
浅原連合(浅原 晃を中心とした集まりのこと)で練習しました。
――使用デッキの『特徴』や『工夫点』を教えてください。
八十岡 翔太につくってもらいました。
――今大会で見かけたデッキの中で、あなたがもっとも感銘を受けたのは誰のどのデッキですか?
とくになし。
――来年度のプロツアースケジュールや、プロプレイヤークラブについてどのような感想・意見をもっていますか?
イイ!
――予選ラウンドで印象に残っているエピソードを教えてください。
「けち」の同キャラ対決で、残り時間2分ではじまった勝負に勝ったこと。
■尹 壽漢/Suhan Yun

――年齢・お住まいの都道府県・ご職業をおしえてください。
23歳。東京と在住。学生。
――おもなマジックでの戦績をおしえてください。
PT神戸参戦。
――今大会にむけてどのような準備をしましたか? プレイテストパートナーや所属チームを教えてください。
デッキ製作は尹 壽漢とチームUmenao。
パートナー:田中 久也、蔵上 俊、高木 佑維。
多くの人にデッキをまわしてもらい、感想をもとに調整させてもらいました。
――使用デッキの『特徴』や『工夫点』を教えてください。
サイドからカウンター。
――今大会で見かけたデッキの中で、あなたがもっとも感銘を受けたのは誰のどのデッキですか?
水谷 直生さんの赤単色。
――来年度のプロツアースケジュールや、プロプレイヤークラブについてどのような感想・意見をもっていますか?
とくになし。
――予選ラウンドで印象に残っているエピソードを教えてください。
八十岡 翔太戦。《邪魔/Hinder》を使って《落葉の道三/Dosan the Falling Leaf》を通して勝ったこと。
■塩津 龍馬/Ryoma Shiozu

――年齢・お住まいの都道府県・ご職業をおしえてください。
23歳。愛知在住。パチプロ。
――おもなマジックでの戦績をおしえてください。
男泣き。
(これが5回目のグランプリでのベスト8進出)
――今大会にむけてどのような準備をしましたか? プレイテストパートナーや所属チームを教えてください。
二週間の合宿。八十岡 翔太のデッキ。
――使用デッキの『特徴』や『工夫点』を教えてください。
とくになし。八十岡 翔太のデッキだから
――今大会で見かけたデッキの中で、あなたがもっとも感銘を受けたのは誰のどのデッキですか?
八十岡 翔太のデッキ。
――来年度のプロツアースケジュールや、プロプレイヤークラブについてどのような感想・意見をもっていますか?
どうせなら、ラウンジのケータリングサービスをもうちょっと美味しいものにしてほしい。
――予選ラウンドで印象に残っているエピソードを教えてください。
相性の悪い黒単色に4連勝できたが、得意なはずの「けちコン」戦で2勝3敗。
■津村 健志/Kenji Tsumura

――年齢・お住まいの都道府県・ご職業をおしえてください。
18歳。広島在住。プロプレイヤー。
――おもなマジックでの戦績をおしえてください。
プロツアーフィラデルフィア準優勝。
プロツアーアトランタ4位入賞。
2004年日本選手権準優勝。
――今大会にむけてどのような準備をしましたか? プレイテストパートナーや所属チームを教えてください。
チーム"Rush"のモリカツさん、大礒 正嗣さんと一緒に調整。
デッキはモリカツさんにもらいました。
――使用デッキの『特徴』や『工夫点』を教えてください。
サイドからの《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》と装備品。
――今大会で見かけたデッキの中で、あなたがもっとも感銘を受けたのは誰のどのデッキですか?
私のこのデッキ。
――来年度のプロツアースケジュールや、プロプレイヤークラブについてどのような感想・意見をもっていますか?
Good ! Good !
――予選ラウンドで印象に残っているエピソードを教えてください。
無敗の4引き分けです。
■大澤 拓也/Takuya Osawa

――年齢・お住まいの都道府県・ご職業をおしえてください。
20歳。神奈川県在住。プロプレイヤー。
――おもなマジックでの戦績をおしえてください。
グランプリ香港でベスト8入賞。
――今大会にむけてどのような準備をしましたか? プレイテストパートナーや所属チームを教えてください。
石田 格さん、浅原連合の仲間たち、名古屋勢の友人たち。
――使用デッキの『特徴』や『工夫点』を教えてください。
《けちな贈り物/Gifts Ungiven》だが、同系統と青コントロールに負けないような仕掛けを施してある。
――今大会で見かけたデッキの中で、あなたがもっとも感銘を受けたのは誰のどのデッキですか?
森 勝洋のデザインしたものをはじめ、《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》を効果的にタッチしていたデッキ各種。
――来年度のプロツアースケジュールや、プロプレイヤークラブについてどのような感想・意見をもっていますか?
プロツアーの大会数が減ったのはなによりも残念。
でも、プロプレイヤークラブは実に良い取り組みだと思う。
――予選ラウンドで印象に残っているエピソードを教えてください。
僕のマジック人生の中で、もっとも恥ずかしいプレイミスをおかしてしまいました…
内容はとても言えません
Sunday, July 24: 6:27 pm - 準々決勝:津村 健志 vs. 大礒 正嗣
大礒 正嗣 vs. 津村 健二のミラーマッチ
もはや広島、日本という一地域にとどまらない活躍を見せる二人が、ここでマッチアップされた。森 勝洋謹製の"Godo's Gifts"のミラーマッチとなったこの一戦のダイジェストをお送りしよう。
Game 1
序盤は順調にマナ基盤を伸ばす二人だが、唯一違う点があった。大礒は《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を設置していたが、津村はそうではなかったのだ。それは、ドローの内容の差となって大きく現れた。
《夜の星、黒瘴/Kokusho, the Evening Star》、《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》と畳み掛ける大礒。津村もこれに丁寧に対応していくが、《頭蓋の摘出/Cranial Extraction》によって《けちな贈り物/Gifts Ungiven》を抜かれてしまう。
場こそ平衡を保っているものの、大礒は《けちな贈り物/Gifts Ungiven》でエンジンを完成させ、除去された伝説のクリーチャーを次々に回収し始めた。
これでは、津村が追いつけようはずもなかった。
津村 – 0 , 大礒 – 1
Game 2
序盤のマナ基盤は完全な鏡打ち。だが、またしても先に《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を置いたのは大礒だった。2枚あっても損にはならないのがこのコマである。
しかし、負けじと闘志を見せる津村は先に7マナに到達して《霊光の追跡者/Ghost-Lit Stalker》の魂力能力を起動する。手札4枚の大礒はコマで手札を1枚だけ守る。それは…やはり《霊光の追跡者/Ghost-Lit Stalker》!
また平たくなった場だが、大礒が捨てた4枚には《死の否定/Death Denied》があった。そして、コマを利して《花の神/Hana Kami》《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》さらには《夜陰明神/Myojin of Night's Reach》と引き当てる。
津村は5/2は《不快な群れ/Sickening Shoal》で対処し、ようやくコマを引き当てるのだが、その頃大礒は《死の否定/Death Denied》でまた回収を開始。《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》、《けちな贈り物/Gifts Ungiven》で差を広げると、津村の《夜陰明神/Myojin of Night's Reach》《龍の牙、辰正/Tatsumasa, the Dragon's Fang》は間に合わなかった。
津村 – 0 , 大礒 – 2
Sunday, July 24: 6:51 pm - 準々決勝:有留 知広 vs. 塩津 龍馬

今回もおおかたの予想通り「けちコン」がベスト 8内の最多勢力(5名)、それに続く青単(2名)となっている。
青いデッキの矛先は「けちコン」に向いており、基本的にはベスト 8 に残ってしまえばこっちのモノ的なイメージであったのだが、ここ、有留対塩津の席は青対青の潰し合いとなってしまった。しかも、ともに八十岡 翔太のデザインした『ヤソコン』の同士討ちである。
「1 つ、組み合わせがずれればいいのにね」なんて会話を交わしつつ、勝負ははじまる。
有留今回というのはアマチュア・プレイヤーの若者で、すでにアマチュア首位の賞金の獲得が内定している。運だけでは勝ち進むことが出来ない現環境に措いて、これは快挙であろう。やはり、浅原 晃とその仲間たちに揉まれてきたからこそか。
一方、リミテッドのグランプリではちょくちょくベスト 8 で見かける事があった塩津だが、今回のような構築戦レギュレーションでのベスト 8 進出は初めてのこと。本人曰く、「自分の体質に合ったデッキだからこその結果」と語っているが、青で勝ち進むには大きな荒波を越えなければならないわけだから、流石の一言につきる。
Game 1
先手は塩津。
淡々と土地の並べあいを開始し、 3 ターン目にセットする塩津の《海の中心、御心/Mikokoro, Center of the Sea》が互いのドローを加速させる。
沈黙の中、土地を並べ合う二人。傍から見ている分にはただ土地を並べているだけのように見えるが、毎ターン毎ターン、いつ相手が隙を見せるかと様子を伺いながら緊張のゲームを進める。
そろそろ双方が土地の 15 枚目をセットしようかといったところで、塩津は満足いく手札を手に入れたのか、《巻物の君、あざみ/Azami, Lady of Scrolls》をキャスト。これを悩んで有留が《水面院の翻弄/Minamo's Meddling》でカウンターすると、塩津はそのまま手札を公開。もちろん多数のカウンターが溢れかえっており、無理矢理でも《巻物の君、あざみ》を通す事も可能だったろうが、今回はそれをぐっと我慢したというわけだ。そして、この塩津のアクションを皮切りに、互いにスペルをキャストし始める。
有留も《巻物の君、あざみ》や《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》を出してはカウンターされてを繰り返し、最終的に通ったのが…攻防がはじまって5 ターン後の有留の《曇り鏡のメロク》。
弾をほぼ撃ちつくした塩津は苦し紛れに《消耗の渦/Consuming Vortex》を《曇り鏡のメロク》に打つも、《密の反抗/Hisoka's Defiance》でカウンターされたところで投了となった。
有留 1 - 0 塩津
Game 2

サイドボードから《旅行者の凧/Journeyer's Kite》を投入し、見事これを 2 ターン目に設置できたのは有留だった。
この返しに塩津も《呪師の弟子》か《旅行者の凧》をセットできるといいのだが、それどころか土地が島 2 枚でストップ。もうどうしようもない状況である。即座に負けと言う訳でもないが、《旅行者の凧》を出された上にマナを引いてこないとは、全くゲームにならない。
正に真綿で首を絞めるような感じで、有留は淡々と土地を並べ、十分なマナを余らせたところで《曇り鏡のメロク》を展開。塩津投了。
今大会、久々のアマチュア優勝者が生まれるのだろうか ?
有留 2 - 0 塩津
QF Aridome.jpg
Caption:有留 知広
Sunday, July 24: 7:20 pm - 準々決勝:浅原 晃 vs. 尹 壽漢

松山に続いて決勝ラウンドのテーブルにつく事となった浅原。もはや、国内GPでは誰も浅原を止められないのではなかろうか。そう思ってしまうほどに、当然の如く予選ラウンドを駆け抜けた。
デッキ観点から見ると、「強いプレイヤーがしっかり回せば最強」と、PTQ・GPTから言われ続けていた事実は、GPでも何ら変わりはなかった。それはベスト8のメンバーとデッキを見れば一目瞭然。しかし、このテーブルにおいては若干異質な空気が流れている。
けち vs. レジェンド。
関東のPTQ・GPTで大暴れし、GP新潟でも高いパフォーマンスを誇っていたのが、「ユンデッキ」と名付けられた彼独自の構築による「レジェンド+ゲドン」デッキだ。これは、彼自身の確かな構築力とプレイングを充分に表現したものであり、彼をこのテーブルで戦わせている理由に他ならない。
日本を代表するデッキビルダーに、在野の原石が戦いを挑む。
まずはユンが走り出す。《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》《木霊の手の内/Kodama's Reach》と、マリガンを感じさせない注文通りの動きでベースを創り上げ、《山伏の長、熊野/Kumano, Master Yamabushi》をプレイ。浅原も返しに《けちな贈り物/Gifts Ungiven》でキーカード群を抜き出して、ゲームが慌しく動き始めた。
重厚なハンドを手に入れた浅原が、やっと一息入れようかというタイミングでユンが繰り出したのは《荒廃の思考/Thoughts of Ruin》!! しかし、追加の土地がなかなか出てこないユンに対し、浅原は順調に土地を並べ返して《初めて苦しんだもの、影麻呂/Kagemaro, First to Suffer》で逆にユンを投了へと追いやったのだった。
しかし、ユンは挑戦者の立場を忘れたわけではなかった。
2本目も《名誉に磨り減った笏/Honor-Worn Shaku》からの《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》で《龍の牙、辰正/Tatsumasa, the Dragon's Fang》を手繰り寄せて果敢に攻める。伍堂を失えば、今度は《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》と攻め手を休めず、名刀を手にしたメロクが浅原に切り掛かる。
加えて《山伏の長、熊野/Kumano, Master Yamabushi》をユンが戦線に加えたところで、浅原は《けちな贈り物/Gifts Ungiven》から《潮の星、京河/Keiga, the Tide Star》を展開し、《英雄の死/Hero's Demise》をそれに撃ち込む事で自軍に裏切りの英雄を配置し、《御霊の足跡/Footsteps of the Goryo》が伝説の山伏をも懐へと迎え入れて行く。
浅原の場は磐石。ユンは青息吐息。誰の目にもそれは明らかだったが、ユンの眼が死んでいないのは、独楽の先に見えた京河と既に場にある《嘆きの井戸、未練/Miren, the Moaning Well》の力だ。暴力的な数のマナを駆使し、奪われた熊野を奪い返しに行くが、浅原の手には更なる《英雄の死/Hero's Demise》。それでも、3度に渡って希望の芽を摘み取られたユンは、名刀を贄に援軍を待ち続けた。

《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》! 《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》!!
絶体絶命のユンが、まさに一太刀浴びせたゲームだった。
3本目は、先手から最速の「けちモード」で走る浅原に防戦一方のユン。今度は攻防逆転かと思われたが、「伍堂辰正定食」をしっかり決めてギアを切り替える。浅原も、怪獣に対しては怪獣で抗する。2度目のけちで晒された4枚は、いずれもフィニッシャー。その中から《夜の星、黒瘴/Kokusho, the Evening Star》と京河を手にした浅原も戦闘モードだ。
結局、除去のある分、直接の戦闘合戦では浅原に軍配が上がったが、2本目の攻防は見る者を魅了した、見応えたっぷりの戦いだった。
ユンはデッキビルダーとしての階段を。
浅原は連覇への階段を、しっかりと昇り始めた。
浅原 2-1 ユン
Sunday, July 24: 7:55 pm - 準決勝:浅原 晃 vs. 森 勝洋

2日あわせて25時間ちかい熱戦によって疲労もピーク。ボクシングで言うなら、おそらくは最終ラウンドを目前にしてチアノーゼを起こしはじめているような感じではないだろうか。
そんな中、二人の強豪が演ずるは、今週末すっかりおなじみの演目となってしまった《けちな贈り物/Gifts Ungiven》ミラーマッチ。ただ、双方ともに非凡なる使い手であることと、そのデッキに独特の工夫がしてあることとが印象的である。それらが彼らを勝ち組たらせ、栄光の決勝ラウンドへと導いたのだろう。
二人とも緑黒青という基本軸は変わらないものの、森 勝洋はサイドボードから赤マナを追加して《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》システムを実装し、方や浅原はメインボードから白き《明けの星、陽星/Yosei, the Morning Star》によるロックアップというパターンを持っている。ある意味で、この試合は《陽星》と《伍堂》が雌雄を決する試合と言ってよいかも知れない。
何にせよ、これは気力と体力の勝負である。
Game 1
疲労と緊張を感じさせる面持ちの両雄は、入念にデッキをシャッフルしてから一礼し、試合に臨む。こうして始まった初戦は、完全に《陽星》の、いや、浅原のものだった。なんと森 勝洋は痛恨の先手ダブルマリガンという憂き目なのである。
そんな一方で、順当にマナを伸ばした浅原が《夜陰明神/Myojin of Night's Reach》によって森のハンドを破壊し、フィニッシャーとして《潮の星、京河/Keiga, the Tide Star》を光臨させる。さらに、駄目押しとばかりに《夜の星、黒瘴/Kokusho, the Evening Star》を《頭蓋の摘出/Cranial Extraction》によって根こそぎにして、浅原は完勝をおさめた。
浅原 晃 1-0 森 勝洋
Game 2

《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》モードへと変形サイドボードを果たし、心機一転といきたかった森だったが、マナブーストなし、独楽なし、という重苦しい雰囲気のハンドをキープするハメとなる。後で聞いたところ「普通はマリガン」とのこと。つまり、普通のことをやっていたら浅原には勝てないということだ。
そんな森の台所事情とは対照的に、浅原は、順調なマナブーストから《けちな贈り物/Gifts Ungiven》を2発プレイして手札を肥やし、勝利の凱歌の先触れとなる《夜陰明神/Myojin of Night's Reach》へとアクセス。グランプリ連覇へ向けて、浅原はまさにブレーキが壊れたダンプカーを思わせる勢いだ。他方、森はマナこそ伸ばすものの、アクションらしいアクションなし。傍目には、なんとかマナだけは引き当てているといったような風にさえ見えた。
しかし、森 勝洋の目は死んでいなかった。浅原 晃のガードがわずかにさがることを期待して、じっと静かに待っていたのだ。そして、チャンスは唐突に訪れる。
すなわち、《夜陰明神》に神性カウンターをのせたまま、静かなジェスチャーで浅原がターンの終了を伝えたところで、森は《けちな贈り物》を詠唱。さらに、これにあわせて《不快な群れ》を《夜陰明神》へ叩き込んだのだ。
こうなると、浅原としては《不快な群れ》にレスポンスで《明神》のディスカード能力を起動するしかない。つまり、この一連のスタックを解決すると、一瞬だけ森の手札が空っぽになって、それから浅原の《明神》が墓地に行き、最後に《けちな贈り物》からの新しい2枚のカードを手に加えて、森のターンを迎えることになるのだ。
森 勝洋はこの《けちな贈り物》によって《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》と《夜陰明神/Myojin of Night's Reach》を手札に、《御霊の復讐/Goryo's Vengeance》と《花の神/Hana Kami》とを墓地に送り込むこととなる。もちろん、そうなれば《伍堂》はライブラリーからまさぐってきた《龍の牙、辰正/Tatsumasa, the Dragon's Fang》とともに戦場へと光臨するわけである。
何とか浅原 晃も《鬼の下僕、墨目/Ink-Eyes, Servant of Oni》をコストにした《不快な群れ/Sickening Shoal》で《伍堂》を葬り去ることに成功する。…が、しかし、なんと森はただちに2体目の《伍堂》を呼び出すという力強さだ!
かくて、《梅澤の十手》と《龍の牙、辰正》とをまとい、《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》は驚異的なビートダウンでゲームカウントをタイに戻した。
森 勝洋 1-1 浅原 晃
Game 3
そして、どうやら第2ゲームのビッグプレイが試合の趨勢を大きく決定付けたようだった。
浅原は先手マリガンし、さらにマナがなかなか成長してくれない。そこへ森は《頭蓋の摘出/Cranial Extraction》で《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》を指定し、さらに、素早く《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》を召喚して《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を場に出した。
浅原もなんとか《けちな贈り物/Gifts Ungiven》から手札に《御霊の足跡/Footsteps of the Goryo》と《死の否定/Death Denied》を、墓地に《花の神/Hana Kami》と《魂無き蘇生/Soulless Revival》とを送り込みつつ、《潮の星、京河/Keiga, the Tide Star》を呼び出すことに成功。なんとか、実質的に《京河》と《伍堂》は相討ち(十手のカウンターとあわせて)ということになる。

しかし、ここで森は波状攻撃だ。《夜陰明神/Myojin of Night's Reach》で浅原の手札を引き裂き、《長老》に《十手》を装備してアタック。さらに《夜の星、黒瘴/Kokusho, the Evening Star》を追加する。防戦一方となってしまった浅原も《独楽》から《夜の星、黒瘴》を見つけてなんとか対消滅させるが、抵抗はここまでだった。
森 勝洋は手札から《龍の牙、辰正/Tatsumasa, the Dragon's Fang》を展開し、これを真紅のレジェンドへと纏わせ、決勝への切符をつかんだ。
あと、ひとつ。
森 勝洋 2-1 浅原 晃
Sunday, July 24: 8:23 pm - 準決勝:大礒 正嗣 vs. 有留 知広

準決勝。初日の杞憂はどこへやら、大礒はこうやって今大会もベスト 8 に残り、準々決勝を勝ち進み、この準決勝の席でいつもの鋭い眼光を光らせる。
ところで、みなさんは前回のグランプリ松山を覚えているだろうか。大礒と浅原晃の 2 名がベスト 8 に残り、決勝戦で激戦を繰り広げ、結果浅原の勝利で幕を閉じたことを。
いま準決勝を行っている大礒と有留の反対側で、浅原と森 勝洋が戦いを繰り広げており、もしかすると前回と同じプレイヤーの決勝戦が見られるかもしれない。前代未聞の現象が目の前で起ころうとしている。
世界でも 5 本の指に入る実力者としても名高い大礒。そんな強者に立ち向かうは、アマチュア優勝を賭けた戦いを繰り広げる有留。
有留は、通称「ヤソコン」と呼ばれる八十岡 翔太デザインの青単コントロールデッキを使用し、今回のイベントをここまで勝ち上がってきた。コントロールデッキに対するピンポイントのカウンター。早いクリーチャーデッキに対する《不忠の糸/Threads of Disloyalty》や《消耗の渦/Consuming Vortex》。自分の土俵に無理矢理引きずり込んで、相手の行動を制限しつつゲームに勝利するデッキである。
前回の屈辱の解消と、初チャンピオンの栄冠を勝ち取らんが為、決勝まで上り詰めたい大礒と、アマチュア優勝を賭け、デッキデザイナーである八十岡に見守られつつ戦いに臨む有留。どちらの想いが届くのだろうか。
Game 1
後手 3 ターン目に《木霊の手の内/Kodama's Reach》をキャストする大礒を、《撹乱する群れ/Disrupting Shoal》を使いカウンター。コストとしてリムーブしたのは《不忠の糸/Threads of Disloyalty》。
大礒も激しい動きで行動してくるわけでなく、比較的ゆっくりなプレイ。そんなところへ有留の 5 ターン目、フルタップで《巻物の君、あざみ/Azami, Lady of Scrolls》を場へ。
これを除去したい大礒だが、それも適わずどんどん有留の土地と手札が充実していく。そんなさなかに《頭蓋の摘出/Cranial Extraction》を通す事が出来た大礒は、 Name a Card を《邪魔/Hinder》と指定して有留のデッキから抜き去るも、後続が続かない様子。
ゆっくりと落ち着いて手札と土地を増やす有留。引いてきた《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》を出し、これも《巻物の君、あざみ》の能力でドローエンジンと化し、勢い止まる事を知らない。
落ち着いて、《曇り鏡のメロク》の能力で 1 匹ずつトークンを生成し、少しずつ大礒のライフを削り始める。
《邪魔》を抜き去ったが、その後にアクションを起こせない大礒。とりあえず《夜の星、黒瘴/Kokusho, the Evening Star》を出してみたところ、これを有留が《水面院の翻弄/Minamo's Meddling》でカウンターすると、大礒はマズそうな顔をしながら手札を公開。
公開した 4 枚の手札には危険なカードは見当たらず、それならばと、有留の手札に残るもう 1 枚の《水面院の翻弄》用の 4 マナのみ残し、他すべての土地をトークンに変化させ、大礒は投了を宣言。
大礒 0 - 1 有留
Game 2
今回は勢いよく先手で《桜族の斥候》から始まり、《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》なども出して幸先の良い大礒。
がっちりマナベースを整えてゲームを進めようとするところで、有留も《旅行者の凧/Journeyer's Kite》を設置し、ゆっくりと戦う準備はこちらも完了。
《旅行者の凧/Journeyer's Kite》のせいで毎ターン土地の供給が可能な青に対して、そこまでゆっくりと戦う訳にもいかなくなった大礒は、有留のマナを気にしつつ《初めて苦しんだもの、影麻呂/Kagemaro, First to Suffer》を出してみたところ、これは《水面院の翻弄》でカウンターされる。続けて《頭蓋の摘出/Cranial Extraction》を打ち込み、有留のデッキから《水面院の翻弄》を抜き去る。
互いに手札も公開し、取れる行動がある程度把握されてしまってはと、有留は《曇り鏡のメロク》を場へ放つ。
トークンを数匹生成し、攻撃に移ろうとしたところで大礒は《けちな贈り物/Gifts Ungiven》を打ち、もってきたのは《不快な群れ/Sickening Shoal》、《花の神/Hana Kami》、《肉体の奪取/Rend Flesh》、《魂無き蘇生/Soulless Revival》。
熟考の末に有留が選んだのは、《不快な群れ》と《花の神/Hana Kami》を墓地へ。
これによって、大礒の手札にはいった《肉体の奪取》は有留の《曇り鏡のメロク》を打ち落とし、まだ勝負の行方は解らない。
《頭蓋の摘出》を食らった時に、手にある《抗い難い知力/Overwhelming Intellect》を大礒に晒しており、常に 6 マナは必ず立ててゲームをプレイする有留。
マナに関しては《旅行者の凧》のおかげで毎ターン土地が供給されるので気にせず時を待ち、 11 マナ揃った所で《巻物の君、あざみ》を場へ放つ。
そこで大礒が一気に動いた。《忌まわしい笑い/Hideous Laughter》を連携の頭にして、それに《魂無き蘇生/Soulless Revival》を繋げる。
これをカウンターできずに食らって《巻物の君、あざみ》が墓地に消え、返すメインターンに大礒は《魂無き蘇生》で《花の神》を回収。そのまま《花の神》をキャストすると、悩んだ結果有留は《抗い難い知力》でこれをカウンターしてタップアウト。有留 知広 そこへバンとたたきつけるのが、大礒の《鬼の下僕、墨目/Ink-Eyes, Servant of Oni》。大礒の場には《死の溜まる地、死蔵/Shizo, Death's Storehouse》もこっそりセットしてあり、このままでは畏怖がついたクリーチャーを止める事は出来ない。
もうなりふりかまってられず、《巻物の君、あざみ》でライブラリを掘り返し、引いてきた《呪師の弟子》もドローに変る。
だが引いてきたのは土地ばかりで、《鬼の下僕、墨目》の攻撃を通してしまい、先ほど葬られた《曇り鏡のメロク》が大礒の場へ現れる。
さて、どうしたものかと有留がドローを進めると、そこには《消耗の渦》と《真髄の針/Pithing Needle》。
まず《消耗の渦》で《曇り鏡のメロク》の返却を願い、続けて《真髄の針/Pithing Needle》で《死の溜まる地、死蔵》を止めて、死を免れた有留。いや《曇り鏡のメロク》を手にした事によって一気に攻勢へと立場が逆転。
再び《曇り鏡のメロク》を出してはブロッカーを生成し、《鬼の下僕、墨目》のブロックに充てつつ、《巻物の君、あざみ》エンジンがどんどん有留の手札を良質な物へと変えていく。
《時間停止/Time Stop》を筆頭に、《密の反抗/Hisoka's Defiance》、《撹乱する群れ》などとガッチリ手札を整え、これで止めと《潮の星、京河/Keiga, the Tide Star》を放つと、大礒は最後の抵抗とスペルを打つも、しっかりとカウンターに受け止められ、試合終了。
有留のアマチュア優勝まで後一試合。
大礒 0 - 2 有留
Sunday, July 24: 8:54 pm -決勝:有留 知広 vs 森 勝洋
タフな戦い。
これほどにも過酷なものになろうとは、誰が予想しただろうか。17時に始まった決勝ラウンドは、21時を過ぎてもなお戦いの熱に包まれていた。
今残るはただ2人。
東京から「元祖ルーキー」「モリカツ」こと森 勝洋。
神奈川から「浅原連合の秘蔵っ子」こと有留 知広。
彼らの構築した、あるいは託されたデッキが素晴らしいものであることは、これまでの戦いで十分に証明されている。あとは、プレイヤーとしての資質を示すだけだ。
数年前、森はルーキー・オブ・ザ・イヤーとして若手ナンバーワンの地位を射止めた。そして今や、彼は新鋭・有留の挑戦を受け止める立場にいる。
コントロール・コントロール。最も強きプレイヤーを、今、決めよう。
Game 1
グランプリ新潟、決勝戦
森の先攻から、序盤のゲームはスムーズに流れる。
このマッチアップの序盤は、けちコン側がうまくマナ基盤を拡張し、それに青コンがついていけるかが焦点になる。万が一どちらかがマナトラブルを起こすようだと、彼に次のステージは訪れない。
しかし、ここまで勝ち上がってきた彼らにそれは無縁だった。《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》から《木霊の手の内/Kodama's Reach》発進の森、第2ターンに《呪師の弟子/Jushi Apprentice》を呼ぶ有留。それを《不快な群れ/Sickening Shoal》で除去、2枚目も再び《不快な群れ》。ここまでは互角の形勢だ。
だが、勢いに乗る有留は3枚目の《呪師の弟子》をプレイ。この隙を突いた《けちな贈り物/Gifts Ungiven》も《邪魔/Hinder》で退ける。完璧といっていい充実ぶりである。
森も、もちろん黙ってはいない。フルタップの有留に襲い掛かる《頭蓋の摘出/Cranial Extraction》、宣言は《邪魔》である。ここで、《巻物の君、あざみ/Azami, Lady of Scrolls》《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》という強烈なクリーチャーが晒された。
有留が注文どおり《巻物の君、あざみ》を迎えてターンを返すと、森はここで《夜陰明神/Myojin of Night's Reach》。この間に《密の反抗/Hisoka's Defiance》を引けなかった有留は、これを通すしかない。
有留の通常ドロー後に《夜陰明神》で手札を流し、ウィザードによる追加の2枚にもカウンターがなかったため、森の《初めて苦しんだもの、影麻呂/Kagemaro, First to Suffer》が場を一掃した。
一瞬だけ平たい場になる。
だが、有留は都合4枚目の《呪師の弟子》で応える。苦笑いしながらも、決して退かない森はデッキ名にもなったサーチカードをプレイした。
《けちな贈り物/Gifts Ungiven》。
ここから導かれたのは《花の神/Hana Kami》《魂無き蘇生/Soulless Revival》《死の否定/Death Denied》というセットと《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》。有留はクリーチャー2枚を手札へ送ることを選んだ。
森の《曇り鏡のメロク》には《呪師の弟子》ドローからの《水面院の翻弄/Minamo's Meddling》で有留がきっちり対応。森は続けざま《花の神/Hana Kami》から《死の否定/Death Denied》を戻し、プレイするも《撹乱する群れ/Disrupting Shoal》(コスト:《不忠の糸/Threads of Disloyalty》)。とにかく、森の攻め手を阻む。
さらにさらに。森は確認していたライブラリトップから直接出すように《鬼の下僕、墨目/Ink-Eyes, Servant of Oni》。これが通ると、メイン投入の《霊光の追跡者/Ghost-Lit Stalker》をも場に送る。
強いドローである。
「結構ミラクル起こしてるよね」
と森は笑う。有留も、これには苦笑いで返す。場の緊張が、一瞬だけほぐれる。
しかし場は緊迫している。有留は、伝説の忍者に対抗するすべを見つけなくてはならないのだ。何か。
4枚目の《呪師の弟子》も、3枚目の《不快な群れ/Sickening Shoal》で失ってしまった。
…もう、答えは見つからなかった。
有留 – 0, 森 – 1
Game 2
アマチュア優勝を狙う有留 知広
またも有留は第2ターンに《呪師の弟子/Jushi Apprentice》を送る立ち上がり。しかし、これを《不快な群れ/Sickening Shoal》するのもお約束。続いて有留は新たなアドバンテージ・マシン《旅行者の凧/Journeyer's Kite》を設置する。
アドバンテージはアドバンテージを。《旅行者の凧/Journeyer's Kite》起動の隙にと、、森は《けちな贈り物/Gifts Ungiven》をプレイ、悩みつつも《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》《木霊の手の内/Kodama's Reach》、《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》《不快な群れ/Sickening Shoal》を導き、前者2枚が手札へと送られる。
ここから1度目のチャレンジ《曇り鏡のメロク》は《水面院の翻弄/Minamo's Meddling》。これにより手札に潜む2枚目の《曇り鏡のメロク》が明らかになる。
2度目は間をおいて、《木霊の手の内/Kodama's Reach》から《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》。これはどちらも通る。
「けちコン」側としては、特にサイドボード後において、《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》や《花の神/Hana Kami》などをすぐにサクリファイスせず、小さいながらも恒久的なダメージ源として使っていくことが重要になる。森はそれを実践すべく、《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》でこつこつと有留のライフを削っていく。
有留もこれまたこつこつと《旅行者の凧/Journeyer's Kite》で土地を集めていくが、しばらくして森は《引き裂く蔦/Rending Vines》。有留はこれを通し、続く《けちな贈り物/Gifts Ungiven》は《邪魔/Hinder》で阻む。
《真髄の針/Pithing Needle》を引き当てた有留は考えながらこれをプレイ。《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》と《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》がある場で、ミラクルを起こす元凶となるコマを指定する。
続いて、有留は手札を見つめる。ここまで身を守ってくれたカウンターは、ない。《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》は、いる。
しかし有留は、そのままターンを返した。
有利と言われていたマッチアップ。初めて体験する決勝の舞台。
その状況で、若き挑戦者が守りに入ってしまったその瞬間。
待ち受けていたのは、大きな落とし穴だった。
《霊光の追跡者/Ghost-Lit Stalker》が、その魂力で有留の希望を、眼の光を刈り取っていった。
もうデッキは応えてくれない。
先ほど見えた、森の《曇り鏡のメロク》が場に降臨し、トークンを生み出し続ける。
数分後、若き挑戦者の戦いはひとまず終わり、若き挑戦者と言われていた強豪が栄冠を手にした。
有留 – 0, 森 –2
有留は、綺羅星のごとくトッププレイヤーの揃う浅原連合にあって、最年少の存在としてかわいがられてきたという。もちろん、そこで磨かれた技術がこの舞台まで彼を導いたことは間違いない。
GP Niigata Champion!
一気の戴冠こそならなかったが、これを機会に彼はもっと成長するだろう。今度は、彼が綺羅星の1つとなる番だ。
そしてモリカツである。
意外なことに、団体戦では世界レベルのタイトルを数多く手にしてきた森だが、これが初めての個人戦タイトルとなった。
デッキをシェアしたすべてのプレイヤーがTOP8に残ったこと。圧倒的不利と考えられたマッチアップの決勝で素晴らしいパフォーマンスを見せて勝利して見せたこと。この新潟の地で起こった数々の事実が、森 勝洋というプレイヤーの類稀なる才気を証明している。
その才気は、今後も日本のマジックシーンを牽引し続けることだろう。
なにしろ、今や彼はチャンプなのだから。
おめでとう、"グランプリ新潟2005 チャンピオン" 森 勝洋!