Grand Prix–Okayama Coverage

Posted in Event Coverage on November 21, 2008

By Wizards of the Coast

EVENT COVERAGE

  • Info: Day 1 Undefeated Sealed Decks
    by Event Coverage Staff
  • Feature Match: Round 8 - 関根 清隆(群馬) vs. 池田 剛(福岡)
    by Naoaki Umesaki
  • Feature Match: Round 8 - 山田 裕樹(宮城) vs. 窪内 直樹(千葉)
    by Daisuke Kawasaki
  • Feature Match: Round 6 - 高橋 優太(東京) vs. 高橋 純也(神奈川)
    by Daisuke Kawasaki
  • Feature Match: Round 5 - 浅原 晃(神奈川) vs. 青木 良輔(東京)
    by Naoaki Umesaki
  • 19:19: Sealed Deck - 高橋 優太のリミテッドマニュアル - グランプリ・岡山編
    by Daisuke Kawasaki
  • 17:32: 達人の業
    by Brian David-Marshall, translated by Keita Mori
  • Feature Match: Round 4 - 黛 慎一(東京) vs. 三田村 和弥(千葉)
    by Naoaki Umesaki
  • 16:45: Ask the Pros – 今年の年間最優秀プレイヤーに輝くのは誰でしょう?
    by Keita Mori
  • Feature Match: Round 3 - 大内 章正(岡山) vs. 小宮 忠義(神奈川)
    by Naoaki Umesaki
  • Feature Match: Round 2 - 中村 聡(東京) vs. 藤井 俊和(香川)
    by Daisuke Kawasaki
  • 12:25: Ask the Pros – 「アラーラの断片」のリミテッドでお気に入りのカードを教えてください。
    by Keita Mori
  • 11:11 am: Surprising Award: ドラゴンマスター賞
    by Keita Mori
  • Friday Last Chance Trial Winner Decklist
    by Event Coverage Staff
  • Info: Fact Sheet
    by Event Coverage Staff

Friday Last Chance Trial Winner Decklist

by Event Coverage Staff

Daisuke Muramatsu

Kazunori Watabe

Takahiro Okai

Yutaka Samiso

Tetsuya Shimomura

Shingo Fukuta

Yuuya Yanagida


11:11 am: Surprising Award: ドラゴンマスター賞

by Keita Mori

第1ラウンド開始時にヘッドジャッジの宮坂 健氏から特別なアナウンス。

ヘッドジャッジ 「《サルカン・ヴォル/Sarkhan Vol》ないし何らかのドラゴンを試合中にプレイした方、先着一名にサプライズプレゼントがありますので、実現したら挙手をお願いします!」

それから約一分後、マナ加速から3ターン目に《サルカン・ヴォル/Sarkhan Vol》をプレイしたというプレイヤーが勢いよく挙手。

すると、来場していたゲスト・アーティストのDaarken氏がプレイエリアへと歩み寄る。

Daarken氏ご本人よりプレゼント!

ちなみに、ドラゴンを率いる「アラーラの断片」のプレインズウォーカー《サルカン・ヴォル/Sarkhan Vol》の原画を手がけているマジック・アーティストがDaarken氏。そして、そのDaarken氏による新作アートも収録された限定商品、”From the Vault: Dragons”(※日本国内1000個限定流通、発売後即完売)が特別サイン入りで贈られた。おめでとう、齊藤さん!

なお、今後も、グランプリをはじめとしたプレミアイベントでは今回のような「誰もが楽しめる」タイプのサプライズプレゼントを継続して実施する予定とのこと。

次にグランプリ・神戸2009でレアな賞品を貰えるのはあなたかもしれません!


12:25: Ask the Pros – 「アラーラの断片」のリミテッドでお気に入りのカードを教えてください。

by Keita Mori

Guillaume Wafo-Tapa – 《急使の薬包/Courier’s Capsule》です。不安定なマナベースが印象的な環境ですから、カードをドローしてゲームの流れを堅実なものにすることは僕にとってとても価値があるんです。 (意外なハイテンションで)

Olivier Ruel – 《取り消し/Cancel》とは! すなわち、インスタントタイミングでプレイできるッ、3マナのッ、しかも単色の《名誉回復/Vindicate》なのであるッ! (興奮気味に)

齊藤 友晴 – 《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》。3ターン目にこのカードが出せた試合の勝率の高さは異常ですから。《忘却の輪/Oblivion Ring》に次いで環境で二番目に強いコモンカードだと思います。 (淡々と)

中村 聡 – 好きなカードという意味なら、《波掠めのエイヴン/Waveskimmer Aven》ですね。後半までドラフトで流れてくれる傾向にあるので、遅めにピックしてデッキが引き締まることが多いです。...それにしても、今も昔もWizardsさんは青緑系のカードは微妙なラインナップが多いですね。おかげさまで僕はドラフトしやすくて助かりますが。 (微笑)

Feature Match: Round 2 - 中村 聡(東京) vs. 藤井 俊和(香川)

by Daisuke Kawasaki
伝説の「業師」中村 聡が帰ってきた!

非常に緊張した面持ちでフィーチャリングテーブルにあらわれたのは、岡山から海を隔てたすぐ近所である、香川からやってきた藤井 俊和(香川)。

藤井 「いや、まさか...最初同姓同名の別人だと思いましたよ」

藤井がそう思うのも不思議ではない。今、藤井の前の席に座っているのは「業師」「ハットマン」「NAC」のふたつ名で伝説として名前を残している中村 聡(東京)。まさか、あの伝説の巨匠が自分とマッチングされるなんて、想像もしなかったであろう。

それぐらいに、今大会での「業師参戦」は衝撃的なニュースなのである。

中村の戦跡について、多くを語る必要はないようにも思われるが、しかし、必要ないと思いつつも、思わずタイプする指が動いてしまう。

96年に最初の日本代表として世界選手権に参加し、当時のメタゲームの中心であった「ネクロディスク」に対抗するべく、「赤緑ステロイド」を持ち込み、また、タイプ1.5(レガシーの前身となるフォーマット)では《嵐の大釜/Storm Cauldron》と《Fastbond》による瞬殺デック「ストームドレイン」を生み出し、《Fastbond》を禁止カードに指定させたマジックの黎明期を語る上では欠かせないキーパーソンのひとりである。

また、98年に日本でおこなわれたAPAC(環太平洋選手権)では《ドルイドの誓い/Oath of Druids》と各種スパイクを組み合わせた緑単色土地破壊型コントロール「スパイクの誓い」を構築し、見事優勝しており、そのオリジナリティの高いデック構築能力は、後にもリス対立やターボランドといった名作デックをマジックの歴史に残している。

「ハットマン」のふたつ名が示すように、個性的な帽子を常に着用してトーナメントに臨むインパクトの強いキャラクターは、海外でも根強いファンを生んでおり、初めて世界的に広く認知された日本人プレイヤーであると言っても過言では無いだろう。

このように、黎明期の日本マジック界を牽引した巨匠であり、また、現在では超一流のゲームデザイナーであり「カードゲーム界のカリスマ」と知られる、中村であるが、その名をもっとも伝説たらしめているのは、「業師」のふたつ名が示す、その卓越した理論であろう。

藤井 「もう、『五輪の書』が発売されていた頃からのファンですからね」

中村と対戦する感動をこう表現する藤井。

『五輪の書』というのは、過去に中村が執筆し出版されたマジックの戦術書である。筆者を末席として日本にマジックに関係した文章を書く人間は数いるが、戦術書という分野で自著を出版したプレイヤーは中村ひとりであろう。

この『五輪の書』と、そのもととなった連載は、まだ経験が浅く、明確な戦術を持たなかった当時の日本のマジックプレイヤーの理論的な側面を間違いなく強化し、後のマジック理論の発達に大きく貢献したというのは違いようのない事実である。

予想外のフィーチャリングマッチに完全に緊張してしまっている藤井に対し、中村は笑顔を絶やさず「よろしくお願いいたします」と。

果たして、「業師」は色あせぬその技術をこの岡山の地で我々に披露してくれるのだろうか。

中村のデックは、黒以外の4色による賛美中心のデック。

対する藤井のデックは、赤黒を中心としたジャンドよりのデックである。

Game 1

藤井 俊和はあこがれのプレイヤーを相手にフィィーチャーマッチを戦う。

後手の藤井がマリガン。

2ターン目まで土地セットとエンドを繰り返す中村に対して、まずは藤井の《ドラゴンの餌/Dragon Fodder》がファーストアクション。

対して、中村は、ナヤの3種類の土地を3ターン目にそろえ...《宮廷の射手/Court Archers》をキャスト。そして、4ターン目には《島/Island》を引き込み「おぉ、すげぇ、ナチュラルに4色そろった」と。

《宮廷の射手》で攻撃した後に《魂の火/Soul’s Fire》で藤井がキャストした《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》を除去する。

《臓物を引きずる者/Viscera Dragger》をキャストする藤井に対して、中村は《モストドン/Mosstodon》をキャストする。《宮廷の射手》の賛美を考慮に入れると、中村の側に盤面の優位がある。

しかし、この優位を藤井は《崖崩れの精霊/Rockslide Elemental》のキャストから、「餌」であるゴブリントークンを生け贄に捧げての《骨の粉砕/Bone Splinters》で打ち崩す。

中村は《天空の先達/Welkin Guide》で軸をずらしたダメージレースをもくろむものの、これには《マグマのしぶき/Magma Spray》と藤井も優位を手放さない。

ここにきて、8:14と大きくライフレースでリードされた中村。しかし、ゆっくり落ち着いて自身の手札を見ると、まずは《エルフの幻想家/Elvish Visionary》をキャスト、続いて《トーパの苦行者/Topan Ascetic》を盤面に追加する。これで、中村の場には、合計3体のクリーチャーが並ぶ。

最大で3/3という軍勢をコントロールする藤井としては、この《トーパの苦行者/Topan Ascetic》を突破出来ない。うまい具合に引き込んだカードが《処刑人の薬包/Executioner’s Capsule》であったものの、キャストし能力を使用するのに必要な黒マナを2つ確保できない。

中村は《トーパの苦行者/Topan Ascetic》のダメージを通し《モストドン/Mosstodon》を盤面に追加。この《モストドン/Mosstodon》を《処刑人の薬包》で藤井が除去し、非常にタイトなダメージレースが展開される。

やはり、ゲームの鍵を握るのは、藤井の《崖崩れの精霊》と中村の《トーパの苦行者》のどちらが盤面を支配しうるサイズとなるか、に集約される。

しかし、ここで中村が《トーパの苦行者》の種として追加したクリーチャーが《ヴィティアのとげ刺し》であったことで、藤井は能動的に降着を打破しなければならない理由が出来てしまう。

この状況を打破するべく、藤井は《雷団の古老/Thunder-Thrash Elder》をキャストし、その貪食能力で、さらに残った「餌」トークンをサクリファイスし、盤面に4/4クリーチャーを追加しつつ《崖崩れの精霊》を5/5にまで増強させる。

こうして、なんとか見た目では有利そうな場を作り上げた藤井。しかし、手札は3枚すべてが土地。中村の手札がまだ3枚ある事を考えれば、まだまだ油断の出来ない状況である。ゆっくり考えつつ、意を決して攻撃宣言をおこなう藤井。

すると、その藤井の攻撃に対応し、自身の手札を見つめていた中村は、鋭く大きな声を上げる。「ジャッジ!」。

中村 「すいません...さっきのゲームのサイドボード戻し忘れてました...」

藤井 1-0 中村

中村 「1戦目の対戦相手がすごいエスパーだったから、アーティファクト破壊できるカードをいれてたんですけどね...」

と、微笑を絶やさず対戦相手に語りかける中村。

通常であれば、対戦相手に見せる事なくゲームを進めてごまかす事が出来ないかと邪な考えが頭をもたげてもおかしくない場面。

日本マジック界のフラグシッパーとして、競技者としてのあり方を見せ続けてきた中村だが、ここでも、しっかりと競技者としてのあるべき姿を見せてくれた。

中村 「いや、どっちにしろどうしようもない場だったので、デッキが早く投了しろって行ってきただけですよ」

さて、対する藤井は、大量のカードをサイドボーディングする。

メインボードではジャンドを中心に、《雷団の古老》や《茨団のヴィーアシーノ/Thorn-Thrash Viashino》による貪食の爆発力を求めた構築をしていた藤井ではあったが、しかし、サイドボード後は貪食のカードを抜き、《忘却の輪/Oblivion Ring》のために白を追加するサイドボーディングをおこなった。

藤井 「いや、貪食に頼りすぎると、《破門/Excommunicate》1枚で逆転されちゃうっていうアドバイスをもらったので...」

ちなみに、そのアドバイスをしたプレイヤーは...

藤井 「世界の、いや、宇宙のy...」

2006年日本代表の山本 昇平(広島)によるアドバイスによって、大きくデックを変更してきた藤井。

中村の10年後輩に当たる山本のテクニックは、はたして「業師」に通用するのか。

Game 2

Soul's Fire

続いて先手の中村は、今度は《野蛮な地/Savage Lands》と《バントの全景/Bant Panorama》とアラーラの多色支援の恩恵を最大限に受ける形でマナベースを充実させ、またも3ターン目に《宮廷の射手》をキャストする。

対して、藤井も《ジャングルの祭殿/Jungle Shrine》から《処刑人の薬包》のキャストを挟みつつ《崖崩れの精霊》をキャストするというまずまずの立ち上がり。

中村は2体目の《宮廷の射手》を場に追加し、まずは3点の強烈なダメージを。このうちの1体は《処刑人の薬包》の対象となり《崖崩れの精霊》の糧となるが、中村は後続として、《波掠めのエイヴン/Waveskimmer Aven》を追加し、賛美によるビートの手をゆるめない。

だが、藤井のデックは除去の固まりのようなデック。今度は《血焚きの精霊/Bloodpyre Elemental》によって《波掠めのエイヴン》を除去し、一気に《崖崩れの精霊》を2段階もパワーアップさせる。

この《崖崩れの精霊》をどうにかしない事には、ただただ除去をうたれ、チャンプブロックを続けられるだけで、どんどんダメージレースで不利になっていく中村。しかし、藤井が《エルフの幻想家》を大事にし《トーパの苦行者》を通した隙をつき、なんとかライフを8にする。

対する藤井は、手札に《圧倒する雷/Resounding Thunder》を握った状態で中村のライフを6にまで削りきり、7マナすべてをタップアウトして、蜘蛛をキャスト。万全の状態でターンを返す。

手札にはすでに1枚の土地があり、ターンさえ帰ってくれば、ゲームに勝利するのだ。

知ってかしらずか、最後のターンとなった中村は、すべてのクリーチャーでアタックする。このアタックで本体へとスルーされたクリーチャーは《宮廷の射手》の1枚。

手札からキャストされるのは、《印章の祝福/Sigil Blessing》。

そして《魂の火/Soul’s Fire》。

与えられたダメージはきっちり8点。

中村の華麗なるダメージプラン。

藤井 1-1 中村

Game 3

 

Waveskimmer Aven
先手の藤井は、1ターン目の《野生のナカティル/Wild Nacatl》に始まり、《エルフの幻想家》《ヴィティアのとげ刺し》と流れるようなマナカーブで展開する。土地も《山》《平地》とそろい、短期決戦を決めきれる状態だ。

たいする中村は、2ターン目に《機械医師/Metallurgeon》、3ターン目に《シーリアのエルフ/Cylian Elf》と盤面を堅めにかかるのだが、要となる《機械医師》を《忘却の輪》で除去されてしまう。

《ヴァレロンに仕える者/Steward of Valeron》を場に追加し、なんとか持ちこたえようとする中村。対して、藤井は、盤面では《野生のナカティル》が無双状態でライフを8まで削っていっているものの、土地がストップしてしまい《ナヤのオベリスク/Obelisk of Naya》をキャストする為だけに1ターンを費やす事となる。

中村は、藤井の《ヴィティアのとげ刺し》を《破門》でライブラリートップに送り込み、土地を引き込む余地を与えず、さらに、2体の2/2クリーチャーで《野生のナカティル》をブロックできる猶予を作り上げる。

ここで猶予を与えるわけに行かない藤井は、オベリスクも含めた4マナで《ロウクスの突撃者/Rhox Charger》をキャストし、4/4となった《野生のナカティル》で攻撃。

この《野生のナカティル》を2の2/2でブロックすると、藤井は2点ずつのダメージを割り振り、アドバンテージの獲得を狙う。

しかし、それでは「業師」の思うつぼ。

中村の手札からキャストされるのは《印章の祝福》。

これにより、2体ともクリーチャーを守られてしまった藤井は、頭をかき、舌を出す。

中村が2体の《波掠めのエイヴン》を続けて盤面に追加する事で、一気に攻守が入れ替わり、今度は中村が藤井のライフを削っていく。

《ヴィティアのとげ刺し》で中村へのカウントダウンを進めるものの、序盤の土地事故の反動として、未だ黒マナを用意できず、回答となりうる《処刑人の薬包》をまったくプレイできない状態である。

癌である《波掠めのエイヴン》のうち1体をなんとか《血焚きの精霊》で除去しつつ《藻のガリアル/Algae Gharial》を強化し、なんとか逆転への糸口を作ろうと画策する。

しかし、ここでタップアウトした隙を逃すような中村ではなかった。

初手から温存し続けた《ナヤの魔除け/Naya Charm》は、藤井に中村がレジェンドと言われる所以を知らしめるには十分なカードであった。

藤井 1-2 中村

藤井 「うーん...デッキは(山本のアドバイスもあって)強力だったんですけど、パイロットが...」

とゲーム終了後に語る藤井。

藤井 「普段はリミテッドまったくやらないで構築戦のグランプリしかいかないんですけどね...でも、めずらしくリミテッドのグランプリに参加して、いい思い出が作れた、って思えばいいですかね」

そう、グランプリの魅力のひとつである、トッププレイヤーとの対戦。そういう意味では、この伝説の巨匠との対戦は、グランプリ参加の思い出としては最強クラスのものだろう。

ところで、記事中の中村の写真を見て、古くからの中村ファンは少し物足りなく思った事だろう。当然同じことを、英語版記者であるBrian Davis-Marshalも考えたようだ。

BDM 「もっと、派手な帽子かぶらないのかい?」

中村は答える。

中村 「今はまだリハビリ中だから...リハビリが終わって、もっと大きなイベントに出るときは、考えておくよ」

来年度開催されるプロツアー・京都に向けての楽しみが、ひとつ増えた。


Feature Match: Round 3 - 大内 章正(岡山) vs. 小宮 忠義(神奈川)

by Naoaki Umesaki

伝説のブルーマスター、小宮 忠義が戻ってきた。Round 2のフィーチャーマッチで登場した”レジェンド”中村 聡に続いて、Round 3のフィーチャーマッチにも”レジェンド”が招待された。

かつて”ブルーマスター”と呼ばれ、日本選手権97・Finals98・グランプリ北九州・グランプリ台北などと数多くのプレミアイベント優勝経験を持つ小宮忠義である。

ここ数年はマジックから離れていたが、古くからのマジック友達との飲み会をきっかけに再びマジックがしたくなり、仕事や生活も落ち着いてきた時期ということで今回のグランプリに復活の参戦となったとのことである。

久方ぶりのグランプリ参加となる小宮は「昔と比べると、クリーチャーのスペックが凄く上がりましたよね。逆にスペルが弱くなっている印象で、随分とマジックも変わったなー」と感慨深げに語る

タイムシフトしてきた”レジェンド”小宮と、地元勢である大内の熱戦にしよう。

Game 1

ファーストアクションが4ターンの《鼓声狩人/Drumhunter》と若干遅い立ち上がりの小宮に対して、後攻の大内は2ターン目に《シーリアのエルフ/Cylian Elf》、4・5ターン目に《ジャンドの戦闘魔道士/Jund Battlemage》を連続でプレイして一気に畳み掛ける。

このまま大内が一気に勝負を決めるかと思われたのだが、小宮が《ジャンドの全景/Jund Panorama》で赤マナを供給して、6ターン目にプレイした《若き群れのドラゴン/Broodmate Dragon》によって場の状況は一変。

一気に寄り切りたい大内は返しのターンに《サルカン・ヴォル/Sarkhan Vol》を出し、その能力によって《若き群れのドラゴン》本体のコントロールを奪って3体の【1/1】トークンと共にアタックするのだが、小宮は冷静に【4/4】ドラゴントークンと《鼓声狩人》で【1/1】トークンのブロックを宣言。

大内の戦線は犠牲を払いながらも小宮のライフを6へと追い込むが、小宮は戦闘によって《サルカン・ヴォル》を除去した上で、《芽吹くトリナクス/Sprouting Thrinax》を場に追加して大内にターンを返す。

大内は次のターンも《災いの悪魔/Scourge Devil》をプレイしてアタックを試みるのだが、小宮のライフを削りきるにはあと一歩届かず。攻め手が切れた大内の投了となった。

大内 0-1 小宮

伝説のプレイヤーに地元勢の大内が挑むGame 2

大内は初手をキープ、小宮が1マリガンでゲームはスタート。

大内は、2ターン目に《シーリアのエルフ/Cylian Elf》を展開する先ほどのゲームと同じ立ち上がりから、《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》《サルカン・ヴォル》と展開。

そして、5ターン目には2体目となる《シーリアのエルフ》を出してから、《サルカン・ヴォル》の能力によって速攻+プラス修正を得てフルアタックという”ブン回り”である。

小宮は《グリクシスのオベリスク/Obelisk of Grixis》→《荒廃稲妻/Blightning》と打つ立ち上がりで、序盤の攻めには対応できず。 ようやく大内が追加で展開した《切り裂き隊の壊し屋/Rip-Clan Crasher》を《マグマのしぶき/Magma Spray》で除去して、盤面的には非常に厳しいながらもライフを3残したのだが。

大内は小宮をターゲットに《圧倒する雷/Resounding Thunder》。
小宮も苦笑しながら投了を宣言。流石に、この大攻勢はどうにもならなかったであろう。

大内 1-1 小宮

Game 3

1ゲーム目は寄り切れなかったが、2ゲーム目はパーフェクトゲームといえる内容で勝利を収めた大内。 “レジェンド”相手に気合が入る第3ゲームだったが、残念ながらダブルマリガンでのスタートとなってしまう。

1・2ゲーム目とは異なり、今度は小宮が2ターン目に《シーリアのエルフ/Cylian Elf》を展開して殴り始める。

土地が2枚でストップしまった大内に対して、小宮は順調に《切り裂き隊の壊し屋》《屑肉を引き裂くもの/Dreg Reaver》と連続で展開。

返しのターンで土地が引けなかった大内は、残念ここで投了。

小宮 「いつの時代も土地事故はね.....」

大内 1-2 小宮

久方ぶりの参加となったグランプリでBye1明けの初戦を勝利で飾った小宮。 残念ながら現在はカード資産が無く構築戦はプレイしてないというが、インターネットで勝っているデッキの情報などはチェックしているとのことで構築戦においての”ブルーマスター”復活にも期待が膨らむ。

最後に、構築戦における最近の”青”について一言頂いた。

小宮 「最近の青は、どないやねん! 《対抗呪文/Counterspell》が《取り消し/Cancel》ってさぁ(ため息」

Results 小宮忠義Win!


16:45: Ask the Pros – 今年の年間最優秀プレイヤーに輝くのは誰でしょう?

by Keita Mori

黒田 正城 – 応援している、という意味も含めてオリ(Olivier Ruel)に勝ってほしいね。今回も我が家にご招待して、一緒に会場まで来たんだよね。ちなみにWafo-Tapaはナカシュー(中村 修平)の家に泊まってるみたい。

中村 修平 – 皆さんおねがいです! どうか今年は獲らせて下さい! お願いします!

津村 健志 – ナックさん(中村 修平)のリードはすごいですけど、個人的にはLSV(Louis Scott-Vargas)に頑張って欲しいです。Paul Cheonとの友情タッグは、昔のKai BuddeとPatrick Melloを思い出すくらいイイ感じで、実際、PTベルリンでの「エルフ!」デッキの完成度も僕らの調整版よりかなり高かったです。そうそう、GPアトランタの決勝ドラフトでドラフトしたデッキも、この環境で今まで見た中で最高の内容でした。LSVにドラフト教わりにいきたいな...

八十岡 翔太 – どうせ、ナカシュー(中村 修平)でしょ。...っていうか、今年獲れなかったら一生獲れないし。

Feature Match: Round 4 - 黛 慎一(東京) vs. 三田村 和弥(千葉)

by Daisuke Kawasaki

スーパーGPTを制してやってきた黛 慎一今年の夏に、サマーシーズン、スーパーグランプリと銘打って開催されたグランプリ・神戸。

スーパーグランプリの名に恥じず、様々なサイドイベントに彩られたこの大会であったが、その中でももっとも話題を呼び、また参加者を集めたのが、スーパーグランプリトライアルと呼ばれた大会であった。

このスーパーグランプリトライアル、優勝者には、当然のごとく通常のグランプリトライアルさながらに不戦勝が3つ与えられるのだが、なにがスーパーかというと、なんと、グランプリ会場への交通費およびに宿泊費がウィザーズ社から支給されるのだ。

このスーパーグランプリトライアルの対象であったグランプリが、このグランプリ・岡山なわけで、当然のごとく、この会場には、通常の3倍くらいにはスーパーな3バイを獲得したプレイヤーがいるわけだ。

というわけで、すべてのバイが明け、全プレイヤーが顔を揃えるこのラウンド4では、深夜まで戦い抜いてそのスーパーな資格を獲得したプレイヤーに登場してもらおう。

そのプレイヤーとは、黛 慎一(東京)である。

せっかくなので、黛にはウィザーズ社から支給された今回のホテルの泊まり心地について聞いてみよう。

 「そうですね...駅から近いですしいいですよ」

なんにしろ、東京から岡山までの遠征ともなれば、その費用も馬鹿にはならない。その費用を負担してもらえるとなれば、やはり魅力的であるといわざるを得ないだろう。

と、散々スーパーグランプリトライアルを褒めちぎったところで、なんと偶然にも明日の9:00~10:00の受付で、今度は先日発表されたばかりのグランプリ・神戸での交通費と滞在費をかけておこなわれるというではないか!よし!これは行かなくちゃ!

筆者のキャラがよくわからなくなってきたところで、対戦相手は三田村 和弥(千葉)である。

三田村 「今日は早く負けると思って、早くよんだんでしょ!」

そんなことは、けっして、ない。ない。

Game 1

さて、ペアリングが発表され、フィーチャーリングテーブルにふたりが呼ばれ、シャッフルが開始される。

と、シャッフル中の黛が違和感に気がつく。

デッキが39枚しか...ない?

当然、ふたりとも3バイあけの初戦であるため、何かしらの事故が黛にあったことは間違いない。

結果、デッキチェックも十分におこなわれている今大会では、黛の失われたミッシングカードは発見されたのだが、試合開始時間に試合を開始できる状態に無かったということから、通常の遅刻と同じく、ゲームロスの最低が黛に下される事となったのであった。

三田村 1-0 黛

日本屈指の知性派プレインズウォーカー、三田村 和弥Game 2

という紆余曲折を経た結果、黛は後手を選択する。

やはりこの環境は緑を中心としたデックの構築がひとつのキーとなるのか、三田村は《森》《平地》、黛は《森》《山》と土地を並べていく。

黛は2枚目の《山》を置いて《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》をキャスト、対する三田村は、3枚目の土地として《山》を置いた後に、4枚目の土地として《島》をセットする。

ここに来て、同じ緑系でも、お互いのデック構築の方向性の違いが明らかになってきた。

黛はさらに《平地》をセットし《風切るイグアナール/Hissing Iguanar》をキャスト。三田村が《モストドン/Mosstodon》《熊手爪のガルガンチュアン/Rakeclaw Gargantuan》と巨大クリーチャーを展開するのに対して、《熊手爪のガルガンチュアン》を《魂の火/Soul’s Fire》によって《風切るイグアナール》の魂を力に変えて除去する。

三田村はお返しとばかりに《モストドン》のパワーを《魂の火》へと変えて、《風切るイグアナール》を除去する。

黛は《エスパーのオベリスク》から《処刑人の薬包/Executioner’s Capsule》をキャストするが、その隙にも淡々と《モストドン》は黛のライフを削り続け、残りはついに5となってしまう。

追加の戦力として《雲荒れの原のドレイク/Cloudheath Drake》が盤面に追加されてしまい、非常に苦しい表情をする黛。

熟考の末、6マナ中の5マナを使用して《熊手爪のガルガンチュアン》をキャスト。1マナを残す事で《モストドン》を牽制する。

《雲荒れの原のドレイク》の攻撃で黛のライフは2。

三田村は《藻のガリアル/Algae Gharial》と《ヴィティアのとげ刺し》を盤面に追加。この《ヴィティアのとげ刺し》は、さきにキャストしていた《ヴィティアのとげ刺し》によるダメージで除去するのだが、蘇生を持っているが故に、黛のライフは実質1。

しかし、ここで《沼》を引き込んだ黛は長考の兆候を見せる。

そして、まずは《熊手爪のガルガンチュアン》で攻撃。これは当然ブロックしない三田村。そして、《ヴィティアのとげ刺し》で1点のダメージを《モストドン》へ。

ここで《ジャンドの魔除け/Jund Charm》をキャストする黛。

三田村の《モストドン》と《藻のガリアル》は墓地に置かれ、《雲荒れの原のドレイク》は蘇生した《ヴィティアのとげ刺し》のダメージで続けて墓地へ。

こうして《処刑人の薬包》を温存したまま自身の《熊手爪のガルガンチュアン》のみが生き残る場を作り出すというビッグプレイを見せつけた黛。

三田村が返しでキャストした《破片撒きのスフィンクス/Sharding Sphinx》を《処刑人の薬包》で処理すると《峠のラネット/Ridge Rannet》《モストドン》と盤面に追加する。

三田村の手札に残っていたのは《アクラサの従者/Akrasan Squire》というなの白い《さまようもの/Wandering Ones》。

三田村 1-1 黛

Game 3

先手の黛はダブルマリガン。

対する三田村も、いわゆる「決まり手はマナフラッド」な手札をマリガンする。

しかし、マリガン後の手札は「決まり手がマナスクリュー」になってしまいそうな手札。
ここで土地を引けないようではほされてしまうとばかりにキープを宣言する三田村。

一方の黛。3枚の『全景』と《海辺の城塞/Seaside Citadel》となんとかマナをそろえるものの《処刑人の薬包》をキャストするのみと、展開が出来ず、この隙をいかせない。

しかし、三田村も深刻だ。《秘儀の聖域/Arcane Sanctum》をドローしたものの、手札のすべてが3マナ以上。

三田村 「お願いお願い!」

しかし、ドローは無情にもスペル。仕方なく《カターリの金切り声上げ/Kathari Screecher》をディスカードする。ギャラリーからは、早くも三田村のマナスクリューに対して笑い声が。

だが、この三田村の事故に対して、黛も決して余裕があるわけではない。

 「なんかひけよー」

そう、十分なマナに恵まれ、5色すべてのマナを生み出せるにもかかわらず、黛は《血の信徒》をキャストする以上のアクションを起こせない。有り体に言えば、マナがフラッドしている。

典型的マナスクリューとマナフラッドの対戦。コレこそまさに三田村のゾーン。

完全に三田村のゾーンに取り込まれた形になってしまった黛。そして、この状況で先にアクションを起こしたのは、泥仕合に強い三田村だった。

ついに3枚目の土地を引き込み《宮廷の射手/Court Archers》をキャストする。この《宮廷の射手》による攻撃を、《ジャンドの魔除け》による+1/+1カウンターを2つ乗せる効果と《血の信徒》自身のパワー+能力で対処しようと画策する黛ではあったが、これを《枝分かれの稲妻/Branching Bolt》でさばく三田村。そして《ガルガンチュアンの贈り物/Gift of the Gargantuan》で手札をさらに充実させはじめる。

 

Mosstodon
《モストドン》同士がにらみ合う場になるが、とにかく手札にはスペルが溢れている三田村は、さらに《藻のガリアル》を追加する。

しかし、ここに来て黛もついにクリーチャーを引き当てはじめる。《熊手爪のガルガンチュアン》を盤面に送り込むと《処刑人の薬包》を《モストドン》に使用し、ダメージレースを開始する。

三田村は《熊手爪のガルガンチュアン》を《忘却の輪/Oblivion Ring》で除去することで、完全にタイトで対等なダメージレースが開始される。

マナに不自由する三田村は脅威を圧倒的に展開する事が出来ないが、しかしマナのあまりがちな黛は脅威を展開し続ける事が出来ない。

しかたなく《モストドン》で攻撃し《血焚きの精霊》を能力を使用するのではなく、クリーチャーとして場に残す。

このタイミングで三田村はついに待望の6枚目の土地を引き当て、《猛きセロドン/Bull Cerodon》をキャストし、攻防一体のアタック。この《猛きセロドン》の賛美にスタックした《魂の火》で対処と厳しい対応を求められてしまう黛。

これで黛の手札は完全に空に。だが、ここでの黛のドローは《ヴィティアのとげ刺し》と、現状のダメージレースをおこなっている状況では非常に力強いもの。

《モストドン》と《藻のガリアル》が相打ち、黛が《ヴィティアのとげ刺し》を追加する一方で、三田村も、7枚目の土地を引き込み《熊手爪のガルガンチュアン》を追加する。

攻守ともにやっかいな《熊手爪のガルガンチュアン》を除去する為に、ついに温存してきた《血焚きの精霊》を使用する黛。

だが、三田村は《圧倒する咆哮》で応戦する。黛は、《肉袋の匪賊》を絡めて《ヴィティアのとげ刺し》を蘇生こみで2回使用する事で《熊手爪のガルガンチュアン》を除去する。

完全にトップデック勝負となってしまっている黛も、ここまではなんとか堪え忍んできた。だが、三田村がまだまだ有り余る手札から《ジェスの浸透者/Jhessian Infiltrator》《波掠めのエイヴン/Waveskimmer Aven》《天望の騎士/Knight of the Skyward Eye》と圧倒する展開を見せると、黛は手札を置き、手を差し出した。

三田村 2-1 黛

三田村 「最後、トップデック勝負に見えるかもしれませんけど、 (対戦相手の黛が)序盤に『全景』を大量に使用して、デッキの土地を減らしているので、有効カードを引く確率は上がっていたはずですよ」

ゲーム終了後、手札が無くなったあとの黛の粘りについて検討を求むと、こう返答した三田村。たしかに、マナベースが重要な環境故に、マナフラッドは必要悪として起こりうるため、それを緩和する要素がある『全景』は、想像以上に重要なファクターとなることも多いのではないだろうか。

しかし、この手札を消費しきったターンについて、黛は逆の感想を持っていた。

 「《ジャンドの魔除け》の使用も焦り過ぎだったと思うけど、やっぱり、あそこで《猛きセロドン》だされて、《魂の火》を使わされてしまったのが痛かったですね...あれでなんとか一気に削りきれるプランもあったのに...」

攻防一体となった圧倒的な制圧力をもつ《猛きセロドン》。

マナフラッドやマナスクリューでの泥仕合的なゲーム展開がどうしても増えてしまうのが、このアラーラの断片リミテッド。

そんな状況があるからこそ、やはり緑の大型クリーチャーが中心の環境となっているのだろう。


17:32 p.m.: 達人の業

By Brian David-Marshall, translated by Keita Mori

あれ!? このグランプリの一番の見所は年間最優秀プレイヤー(以下PoY)争いの行方...じゃありませんでしたっけ? 

実際、これまでに私が取り上げてきた英語版イベントカバレージの内容はほとんどPoYに関する話題ばかりで、脱線といっても一回だけ新人王争いについて触れたという程度でした。この第5回戦に関しても、私はPoY関連の話題をさがすために会場をうろついていたのですが、フィーチャーマッチエリアからはずいぶんと離れたところにやたらと大きな人だかりを見つけたので、そちらに足を向けて見ることにしました。すると、日本マジック界のシンボルとも言うべき将来の殿堂入り候補(その年のトップ当選ほぼ確定と思われる)プレイヤー、すなわち大礒 正嗣がグランプリ広島チャンピオンである東 大陽と熱戦を繰り広げていたのです。東も日本国内ではよく知られた強豪で、二人とも地元勢ということで多くの観衆が見守っています。

多くの観衆が名勝負を見守った。

先ほどの私の記事で、オーストラリアからやってきた新人王候補のAaron Nicastriが、マジック上達のための手段として最上級のプレイヤーの試合を観戦するということの意義、達人の業を「見てぬすむ」ことについて強調していました。まさしく、大礒 正嗣は観衆の前で実技指導を行っていたのです。

大礒は土俵際まで追い詰められた第3ゲームにおいて、それでも冷静に《グリクシスの戦闘魔道士/Grixis Battlemage》でライブラリーを掘り進み、ギリギリのタイミングで《破片撒きのスフィンクス/Sharding Sphinx》を探し当てました。ラウンド終了時間が迫り、敵陣上空には《骸骨のカターリ/Skeletal Kathari》という脅威が存在する中、大礒は《戦闘魔道士》の能力起動を「赤い」方にスイッチし、ビートダウン・モードへと移行します。気がつけば、大礒が《戦闘魔道士》のブロック妨害能力によって東に不利なブロックを強制し、盤のアドバンテージを獲得していくという展開へともつれこんでいたのです。

なるほど、こんな風にして大礒 正嗣は日本の新しい世代に「いかにして不利な状況から逆転勝利をつかみとるか」の実演指導を行い、生徒たちは達人の業をその目に焼きつけるというわけでした。


19:19 p.m.: Sealed Deck - 高橋 優太のリミテッドマニュアル - グランプリ・岡山編

By Daisuke Kawasaki

635人という大勢の参加者を集めたグランプリ・岡山。

リミテッドマニュアル執筆者としてもおなじみの高橋 優太この参加者の多さから、またおそらく別記事で触れられるであろう復帰プレイヤーの多さからも、「アラーラの断片」でのリミテッドが非常に人気があるフォーマットであることが伺えるだろう。

「アラーラの断片」のシールド戦について多くのプロプレイヤーの意見を集約していくと、ほとんどふたつの要素でできあがっているという事が明らかになる。

それは「カードパワーが高いため、パックの強弱が極端である」ということと「多色環境ゆえに、色バランスが悪いパックの時に構築が難しい」という点である。

「安定した勝率」を絶対的にみるプロプレイヤーからすれば、これらの要素は不安要素なのかもしれないが、しかし、これらは裏を返せば「カードパワーが高く、色のかみ合ったパックを渡される事がある」という事である。概して、そのパックを得る事ができたプレイヤーは、一日を楽しく過ごし、自身の幸運に感謝する事になるだろう。

つまり、パックが配られた時点で、自分のパックに対する期待感を過去もっとも楽しめるエキスパンションである、とも考えられるわけだ

この自分のパックに対する期待感の高さこそが、この環境のシールド戦が人気を集めている理由なのではないだろうか。

さて、そんな話は置いておいて、グランプリ・岡山である。

このグランプリ・岡山、はっきり言って、取材する側としても困ってしまうほどに見所がありすぎてしまって、端的にいえば困ってしまっている。大切な事なので2回いってしまうくらいだ。

たとえば、今年殿堂入りをすでに決めている「世界最強の親日家」Olivier Ruel(フランス)はもちろんの事ながら、なんと普段は日本のグランプリにほとんど遠征してくる事のない「世界最強の構築屋」Guillaum Wafo-tapa (フランス)まで来日してきているのだ。

また、圧倒的リードを稼ぎながらも、この数週間で当然の追い上げムードに「いや全然まだ余裕のリードがあるはずなのに、なんでこんなにあおられているんですかねぇ」と不安の色を隠せない中村 修平(大阪)を中心としたPlayer of The Yearレース関係の動向も当然、目が離せないトピックでもあるし、また、「伝説の業師」の復活についても是非とも一項もうけたいと考えている。

しかし、何を置いても、まずは国内グランプリであることを鑑みて、この男へのインタビューを掲載するべきであろうと、考える。

「不屈のストイシズム」高橋 優太(東京)。

高橋の前にたちはだかる634名のライバルたち静岡・神戸と、国内で開催されたふたつのグランプリを連覇中の高橋。この岡山は、高橋の国内グランプリ3連覇がかかった大会であり、この「帝王」Kai Budde(ドイツ)に迫る偉業は、やはり注目点の多い本大会でも屈指のトピックであろう。

これまで高橋が戴冠したふたつのグランプリは、スタンダード・ブロック構築という違いはあるものの、どちらも構築戦であり、そして、高橋はどちらも青黒フェアリーという同じアーキタイプを使用していた。

しかし、このアラーラというプレインには、高橋の相棒であるフェアリーが存在しない。

ある意味で、この岡山でのグランプリは、青黒フェアリーが強かったのか、高橋 優太が強かったのかというひとつの疑問に対する回答となるのではないだろうか。

なんだか、よくわからない事を長々とかきすぎたせいで、よくわからなくなってきてしまったので、この辺で前置きは終わりにして、実際に高橋のシールド構築を取材することとしよう。

高橋といえば、タカラトミー公式サイトで「高橋 優太のリミテッドマニュアル」を絶賛連載中である。今回、是非開封したいパックについても、先日掲載されたばかりの自身の記事を引用し、

高橋 「グランプリ・パリの初日全勝デッキの中でも、Menno Dolstraのデッキのような、安定したマナベースでパワーカードを使えるデッキがいいですね。タップインランドは出来れば4枚以上ほしいです」

と語る。この環境は前述の様に、開封したパックによって戦術の幅が大きく制限される事も多い。高橋としては、出来るだけ広い戦略をとれるパックを希望したいというところだろうか。

というわけで、高橋、ワクワクドキドキのパック開封タイムのスタート。

開封されたパックからは、希望していたタップインランドは《野蛮な地/Savage Lands》の1枚のみ。

高橋の期待していたパックとはほど遠い内容。

だが、しかし、それが不運とは言い切れないのが、この「アラーラの断片」シールドの面白いところ。

デッキの核となりうるカードをマナコスト順に並べていったところで、高橋がぽつりと一言。

高橋 「あれ?これって、普通にナヤで組めちゃいますね」

そう、なんと、高橋の受け取ったパックは、強いカードがナヤに集中しており、マナコスト順に並べてしまっただけで、ほぼデッキが完成してしまうと言う、「バランスがよい」という意味で幸運なパックだったのだ。

高橋 「いいカードプールですねぇ...構築が簡単すぎて申し訳ありません」

と、誰に謝っているのかわからないが、それはそれとして、デックの微調整をはじめる高橋。

呪文は、赤と白の強力な除去スペルが6枚に《圧倒する咆哮/Resounding Roar》と《タイタンの根本原理/Titanic Ultimatum》がそろった潤沢なもの。

さらに、マナベースを充実させる手段として、色のきっちりかみ合った《ナヤのオベリスク/Obelisk of Naya》までそろっている。

あとは、クリーチャー部分にメスをいれる事となる。

高橋がこの時点で並べていたカードは以下の通り。

2 DROPS 3 DROPS 4 DROPS 5 DROPS 6 DROP
Elvish Visionary Guardians of Akrasa Rhox Charger Mosstodon Bull Cerodon
Cylian Elf Guardians of Akrasa Drumhunter Scourge Devil Cavern Thoctar
Cylian Elf Court Archers   Welkin Guide  
Knight of the Skyward Eye Topan Ascetic      
Dragon Fodder Qasali Ambusher      
  Woolly Thoctar      

註:《ドラゴンの餌》はクリーチャー扱いで束にされていた。

全体を見渡した高橋は、パワー5以上のクリーチャーが十分な数いると判断し、《太陽の種の育種士/Sunseed Nurturer》を3マナ域に追加する。これは、検討の結果、やはり採用されない事となる。

現状、スペル9枚に対して、クリーチャーが18枚の合計27枚と、多少枚数をオーバーしている状態。ここから、カードパワーに劣るカードをそぎ落として、シェイプアップする事となる。

高橋は、4枚のクリーチャーを抜く事を判断する。

ここで、抜き取ったクリーチャーは

《ドラゴンの餌/Dragon Fodder
《災いの悪魔/Scourge Devil
《天空の先達/Welkin Guide
《アクラサの守護者/Guardians of Akrasa

の4枚。そして、除去の中に《圧倒する雷/Resounding Thunder》がある事を踏まえ、サイクリングの為に《ナヤのオベリスク》を《ジャンドのオベリスク/Obelisk of Jund》に変更すると、一言。

高橋 「もう、ほとんどできちゃいましたね」

とはいうものの、まだ構築時間が残っている為、デッキ全体のバランスを最後まで詰める作業を行う高橋。

スペルが9枚に対して、クリーチャーが14枚と少々スペル偏重な構成に対して、不安を抱く。

高橋 「たぶん、抜くのが、《タイタンの根本原理》で、代わりに入れるのが《災いの悪魔》か《天空の先達》なんですよね。序盤攻められなくて膠着した場合の事を考えるなら《天空の先達》かなぁ...」

しかし、最終的に高橋は《タイタンの根本原理》を採用する。

高橋 「せっかくだし、うってみたいじゃないですか」

果たして、この選択が吉と出るか、凶と出るか。

最後にマナバランスを考えて、土地を構成してデッキが完成する。マナバランス構成のポイントを聞いてみた。

高橋 「序盤のパーマネントが必要とする枚数にあわせますね。逆に除去は後半でも強いですし」

今回の高橋のパックは、序盤のパーマネントが緑に偏り、除去が赤と白に散らばるという、非常にバランスをとりやすいパックだったという。

最後に、パックの評価と、3連覇への意気込みを聞いてみた。

高橋 「強いデッキですね。いいパックがもらえてよかったです。3連覇ですか...(小考の後)もちろん、しますよ」

果たして、高橋の前人未踏の快挙は成るのだろうか。

期待して注目したい。


Feature Match: Round 5 - 浅原 晃(神奈川) vs. 青木 良輔(東京)

by Naoaki Umesaki

絶妙な(奇怪な?)手札の動きで対戦相手やギャラリーを幻惑させる浅原 晃自由度が高い多色環境ゆえか、『アラーラの断片』のシールド戦は人によってデッキ構築の方法は様々である。

その一例として、浅原は色を無視して使いたい強いカードをマナコスト順に並べて、その中から不要なカードを抜いたりして大まかに仮デッキを組み、土地バランスを考えたりしながら細かい点を調整してデッキを構築してゆくのだという。

今回の『グランプリ岡山』では、多色戦略をサポートする特殊地形をまず確認して、許される色バランスの中で無理をせずデッキ構築を行うというプレイヤーが多い印象があったが、浅原が行ったような土地カードに縛られないデッキ構築方法も有効なデッキ構築の1つなのかもしれない。

「あまり色を増やしすぎるとカラートラブルが不安じゃないですか?」とクエスチョンに対しては、「大体のパックは3色でデッキを組むと弱いカードが入っちゃったりカードが足りなくなるから、4色が基本じゃないかな? 3色で難無く組めるパックはラッキーでしょう。喜んでいいですよ」と浅原。

さらに、「普段の環境で考えたら均等気味の3色デッキとか異常なんだから、4色も変わらないよ。カラーサポートもあるし。でも、《オベリスク》は弱いから嫌いデッキに入れたくない」とも付け加える。

『アラーラの断片』のシールド戦は、今までのブロックで培ってきた構築の考え方の常識を全てとっぱらって大胆な構築を行う必要があるように改めて感じた。

さて、話題変わってこのラウンドのフィーチャーマッチとなっている浅原vs.青木。つい2ヶ月程前に『日本選手権2008』のサイドイベントとして開催された『プロツアーベルリン予選』決勝戦が同様のマッチアップとなっていたが、その時は浅原が既に『プロツアーベルリン』への参加権利を有していたので、権利を持たない青木に浅原が権利を譲るで投了を選び、試合は行われなかった。

そんな経緯もあるからか、テーブルからは何処となくぎこちない空気を感じたりもする。幻と消えたあの決勝戦が、いよいよ決着!?

Game 1

ダイスロールで勝利した浅原は、後攻を選択。

先攻となった青木は、《秘儀の聖域/Arcane Sanctum》《崩れゆく死滅都市/Crumbling Necropolis》とタップイン3色ランドを連続でセットして、3ターン目に《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》をプレイ。

浅原も《エルフの幻想家/Elvish Visionary》でドローを進め、《命運縫い/Fatestitcher》《芽吹くトリナクス/Sprouting Thrinax》と順調にクリーチャーを展開し始まるのだが、青木が返しのターンで《血の信者/Blood Cultist》をプレイする。

青木の場には《血の信者》と《ヴィティアのとげ刺し》が並び、浅原にはタフネス2以下のクリーチャーの生存を許さない状況だ。
盤面上厳しい状況に追い込まれた浅原は、《モストドン/Mosstodon》に加えて《命運縫い/Fatestitcher》で土地をアンタップして《屍からの発生/Necrogenesis》をプレイしてターンを返す。

青木は《ゴミあさりのドレイク/Scavenger Drake》出してから、自身のターン内で《血の信者》《ヴィティアのとげ刺し》の能力を起動して《命運縫い》を除去。 有利な場とするのだが、ここで青木を待っていたのは浅原の《ジャンドの魔除け/Jund Charm》。

青木のクリーチャーが全滅して、浅原の場には《モストドン》と《芽吹くトリナクス》が残ると効果は絶大だ。そして、浅原は《モストドン》《芽吹くトリナクス》によるアタックに加えて《屍からの発生》でのトークン製造。

青木は後続として《火炎地のオーガ/Fire-Field Ogre》を出すも、浅原が《命運縫い》を蘇生によって墓地からプレイして《火炎地のオーガ》をタップしてのフルアタックを確認すると投了となった。

浅原 1-0 青木

浅原は《茨団のヴィーアシーノ/Thorn-Thrash Viashino》などの微妙なクリーチャーをサイドアウトして、《呪文摘み/Spell Snip》2枚をサイドイン。

浅原 「世間の評価は低いみたいですけど、《呪文摘み》は意外とやりおるカードですよ。」

東京勢が誇るマジック・エリート、青木 良輔Game 2

浅原が2ターン目に《エルフの幻想家/Elvish Visionary》をプレイした以外、お互いに土地を置く他に目立つアクションが無く、青木が《グリクシスのオベリスク/Obelisk of Grixis》をプレイ、浅原が《呪文摘み/Spell Snip》をサイクリングするのみの序盤戦であった。

浅原は第6ターンに《モストドン/Mosstodon》をプレイとようやくそれらしいアクションを起こすが、これは青木が《枝分かれの稲妻/Branching Bolt》で除去。

続くターンに、浅原が《髑髏覆い/Skullmulcher》(貪食で《エルフの幻想家》をサクリファイス)、青木が《藻のガリアル/Algae Gharial》とお互いにクリーチャーを展開して、ようやくゲームが動き始めた。

浅原は続けて《洞窟のソクター/Cavern Thoctar》を展開するのだが、青木はすぐさまこれを《圧倒する波/Resounding Wave》でバウンス。
浅原が再び《洞窟のソクター》をプレイして《髑髏覆い》で2回目のアタックをしたところで青木のライフが8となるのだが、青木は《血の信者/Blood Cultist》をプレイして3マナ残した状態でターン終了を宣言する。

浅原が【4/4】の《髑髏覆い》と《洞窟のソクター》でアタックし、青木が《洞窟のソクター》を《血の信者》でブロックする。浅原はダメージスタック前に《髑髏覆い》に対して《圧倒する叫び/Resounding Scream》を打ち、戦闘ダメージを解決。

この戦闘でライフが1となった青木に対し、浅原は《荒廃稲妻/Blightning》を打ちこんで勝利を収めた。

浅原 2-0 青木

 

Jund Charm
さて、終始不自然な流れを感じるゲームの展開だったが、2人の手札では一体何が起こっていたのだろうか?

まず、浅原は最序盤から《ジャンドの魔除け》を持っており、余裕を持って動いていた。

そして、青木は《暴力的な根本原理/Violent Ultimatum》持っており、途中のターンで《エスパーの全景》で《沼/Swamp》を持ってきたら、次のターンにデッキの中で唯一青マナが2個必要な《破片撒きのスフィンクス/Sharding Sphinx》を引いてきたり、《暴力的な根本原理》のプレイに必要な最後の1マナが待っても来ない為に不自然な動きになっていたとのこと。

場の状況だけを見ると、青木がほぼ何もせず負けたように見える試合だったが、実は青木が逆転する可能性がじゅうぶんにある紙一重の勝負だったというのだ。『アラーラの断片』はカードパワーが高い環境と言われており、一見して有利な場だとしても、その実、簡単にひっくり返る。 いつもより大味ともいえる環境。それが『アラーラの断片』シールド戦の魅力の一つでもある。

Result: 浅原 晃Win!


Feature Match: Round 6 - 高橋 優太(東京) vs. 高橋 純也(神奈川)

by Daisuke Kawasaki

「ラッシュ」という二つ名で親しまれる高橋 純也多くのプレイヤーが集結し、それぞれがアツい物語を紡ぎ上げているグランプリ・岡山。

非常に魅力的なマッチアップばかりが並ぶペアリング表だが、ここでは初日全勝を目指してポールポジションを奪い合っている4つのマッチアップをフィーチャリングした。

まずは「ブルーマスター」小宮 忠義(神奈川)と、プロツアー・ベルリンに続いて3連休を利用しプレミアイベントへと復活した森田 雅彦(大阪)のチームアクアソウル対決。

昨年度世界選手権トップ8の中野 圭貴(大阪)と、中村 修平(大阪)とともにSSDとして過去にチーム戦グランプリでの準優勝経験を持つ窪内 直樹(千葉)。

その中村 修平と、グランプリ・松山での準優勝の戦績で知られ、黎明期の多摩地区のマジックを支えたベテランプレイヤー田中 久也(東京)。

と、非常に魅力的かつ、面白そうなマッチアップが並ぶ事となったが、その中でも、今回はこのマッチアップをお届けしよう。

グランプリ3連勝にむけて全力投球中の「不屈のストイシズム」高橋 優太(東京)と、関東マジックコミュニティのデック構築ご意見番、「ブレーキの壊れたデックビルダー」こと高橋 純也(神奈川)による「最強高橋」決定戦である。

グランプリ2連覇中の高橋 優太と名字が、そして、偶然にもその前のグランプリである北九州優勝者の彌永 淳也(東京)と名前の音が同じある事をネタにされがちな高橋 純也ではあるが、しかし、浅原 晃(神奈川)や石川 練(神奈川)といった神奈川勢が「ラッシュ四天王」を名乗るほどに、根強いファンがいる。

もちろん、この一戦の結果を持って、どちらの高橋が最強であるかと安易に結論づけるわけにもいかないが、是非とも、このタカハシ、そして、ジュンヤのムーブメントに便乗する形で高橋 純也にも今回のグランプリを制してもらいたいものだ。

そのためには、まず、目の前に座る、グランプリ3連覇を目指す男を倒さなければならない。

時には調整仲間として、ともに研鑽を積むふたりだが、果たしてアラーラという環境はどちらに勝利を呼び込むのだろうか。

なお、文中表記として「高橋」表記では、どちらの行動かまったくわからなくなってしまうので、以下、「優太」「純也」表記とする事をご了承いただきたい。

Game 1

先手は優太。互いにマリガンは無し。

「環境はテンポ」と豪語する優太は、2ターン目に《シーリアのエルフ/Cylian Elf》から3ターン目に《アクラサの守護者/Guardians of Akrasa》という流れるようなビートダウンを展開。

対する純也は2ターン目こそ《ドラゴンの餌/Dragon Fodder》をキャストしたものの、賛美で強化された《シーリアのエルフ》をブロックする事もかなわず、また、攻撃も《アクラサの守護者》にとめられてしまい、主導権を奪われてしまう。

さらに厳しい事に、純也は土地が3枚で止まってしまった上に緑マナがでないという、ダブルの事故に陥ってしまう。

優太も、赤マナが足りない状態で土地が4枚で止まってしまったものの《鼓声狩人/Drumhunter》と《トーパの苦行者/Topan Ascetic》によってドローを進める事で、強引に《山》を引き当てる。

なんとか、体勢を整えるまで《ドラゴンの餌》のトークンで耐えきりたかった純也だったが、しかし、優太の《モストドン/Mosstodon》がその希望を断ち切ったのだった。

優太 1-0 純也

妖精の王、高橋 優太Game 2

追って、後手を選択する純也。

1ターン目《ジャングルの祭殿/Jungle Shrine》、2ターン目《秘儀の聖域/Arcane Sanctum》と今度は順調に土地を伸ばす。

だが、優太はダイレクトにナヤの3種類の基本地形をおきつづけ《長毛のソクター/Woolly Thoctar》をキャストする。

これには失笑する純也ではあったが、ライブラリートップから降臨した《忘却の輪/Oblivion Ring》でこれをしっかりと対処、優太の増援が《アクラサの守護者》であったこともあり、望み通りの遅いゲーム展開に持ち込むことに成功する。高い除去体勢を持つ《骸骨のカターリ/Skeletal Kathari》を盤面に送り出し、優太の体勢が整う前に勝ちきってしまうプランか。

とにかく、攻勢に回りたい優太は《エルフの幻想家/Elvish Visionary》でカードを求め、純也の《モストドン》に対しては、《洞窟のソクター》で対抗する。

純也は、さらに《トーパの苦行者/Topan Ascetic》《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》を追加し、徐々にではあるが、場の主導権を固めはじめる。

しかし、優太が突然7マナをフルタップしてキャストしたのは、青天の霹靂としか言いようのない《タイタンの根本原理/Titanic Ultimatum》!

純也 「ぉえぇ!」

なんとも言えない声を上げる純也に思わずギャラリーの注目も集まってしまう。

即死は免れたものの、絆魂ふくめて、14点×2の2点のライフ差をつけられてしまった純也。

残ったライフは4点ではあるが、しかし、盤面での優位は圧倒的に確保されている。

優太が《洞窟のソクター》《エルフの幻想家》《アクラサの守護者》しかコントロールしていないのに対して《骸骨のカターリ/Skeletal Kathari》《モストドン》を攻撃に回しつつ《ゴブリンの死の略奪者/Goblin Deathraiders》《トーパの苦行者》を防御にまわし、苦しいながらも、なんとかダメージレースの体面を保つべくプランニングをする。

このプランは、《圧倒する咆哮/Resounding Roar》により崩壊し、《ゴブリンの死の略奪者》と《トーパの苦行者》は一方的に墓地に送られてしまう。さらに、優太は《天望の騎士/Knight of the Skyward Eye》《トーパの苦行者》と追加展開をし、一気に4点を削りに行く。

しかし、ここで純也は狙い澄ましたかのような《ジャンドの魔除け/Jund Charm》。《ヴィティアのとげ刺し》の1点を《洞窟のソクター》にあたえつつ、《骸骨のカターリ》の能力のコストにする事で、優太の場のクリーチャーを《トーパの苦行者》《アクラサの守護者》だけにすることに成功する。

対して、純也は《骸骨のカターリ》と《モストドン》を続けてコントロールする上に《血の信者/Blood Cultist》を追加する。このまま、優太が直接火力を打ち込んでこなければ、純也はじわじわと《タイタンの根本原理》のディスアドバンテージを取り返せるのだ。

しかし、優太の手に握られていたのは、《魂の火》。

優太 2-0 純也

優太 「やっぱり、《タイタンの根本原理》で正解でしたね」

グランプリ3連覇に向けて順調に道を歩み続ける高橋 優太。

対する高橋 純也。

純也 「うーん、もう、あれだけブン回られちゃうと、どうしようもないよ...」

と、自身の不運を嘆く。嘆くが、しかし、こう続ける。

純也 「でも...Game 2はどうにかなったかも...《タイタンの根本原理》を完全に失念してたのが敗因だった。あそこで調子にのって全部展開するんじゃなくて、《ジャンドの魔除け》を構えて《ヴィティアのとげ刺し》だけキャストしていれば、《タイタンの根本原理》のダメージも回復も最小限に抑えられたね...それなら勝ててたかも。」

敗北から学ぶプレイヤーは強くなる。


Feature Match: Round 8 - 山田 裕樹(宮城) vs. 窪内 直樹(千葉)

by Daisuke Kawasaki

ここまで七連勝で駆け上がってきた山田分断されたアラーラの謎を解明する戦いでもある、このグランプリ・岡山。

第1段階であるシールド戦において、ひとつのソリューションと言える答えが見つかろうとしている。

本日のRound 7終了時点での全勝者7名、および1敗者1名がこのフィーチャリングエリアに呼ばれているわけなのだが、そのうちの7名が緑を選択している。さらに言うと、赤緑をほとんどのプレイヤーが選択しているのだ。

初日を抜けられるデック、というとまた話は変わってくるのかもしれないのだが、少なくとも初日全勝を狙うデックを構築するとなれば、緑を、しかも限りなく赤緑に近い緑を選択する事が、もっといえば、その色を選択できるパックを手に入れるという事が、初日全勝へのマスターピースであると言えるだろう。

そんな、どちらを見ても東西南北緑色の中でひとり気を吐いているのが、山田 裕樹(宮城)である。

2枚の《塔のガーゴイル/Tower Gargoyle》に代表される航空戦力と、2枚の《苦悶のねじれ/Agony Warp》に代表される除去を中心とした、高いカードパワーのエスパーデック。

白と言えば、緑の相方、黒と言えば赤の相方という風潮をあざ笑うかのようなデックを使用し、バイ無しからスイスラウンド7回戦を7-0で駆け抜けた。

山田 「近所の店が閉店してしまったので、今はもっぱら友人の家でマジックをやっていますね。リミテッドの方が、手軽に出来ていいですよね」

と語る山田。今回、予想を大きく超える動員となったグランプリ・岡山であったが、復帰組や、普段の空いた時間を利用してちょっとマジックを、といった層にリミテッドが浸透している事も理由のひとつであると考えられるのではないだろうか。

さて、エスパー単騎でこの全勝緑帝国に立ち向かう山田の前に立ちはだかるのが、窪内 直樹(千葉)である。

Round 6の記事中でも触れたように、現在PoYレースを独走中の中村 修平(大阪)とSSDというチームを組み、グランプリ名古屋を準優勝したほどの強豪である。

大阪から関東に引っ越してきてからもマジックを続けていた窪内ではあるが、最近大きく生活環境が変わり、練習に時間を費やす事が出来なくなってしまったという。

窪内 「(本来自分は)練習して強くなるタイプやからねぇ...」

と、今回の練習不足を嘆く窪内ではあったが、しかし、今回窪内に与えられたパックは、まさに前述のソリューションを体現するナヤの強パーツがそろったパックであった。

窪内 「カルマ(業)がたまってるとパック強いってほんとやね」

果たして、山田が非緑の代表として、緑以外の唯一の全勝者となるのか。

それとも、窪内が日常でマジックを出来なかった鬱憤をここではらすのか。

Game 1

先手は窪内。

2ターン目に《アニマのドルイド/Druid of the Anima》によるマナ加速から、山田に2ターン目のアクションが無かった事を確認し《サルカン・ヴォル/Sarkhan Vol》をキャストする。

これに対して山田は眉をひそめつつ《ナヤのオベリスク/Obelisk of Naya》をキャストする。

窪内は、4ターン目に5マナから《熊手爪のガルガンチュアン/Rakeclaw Gargantuan》をキャストすると《サルカン・ヴォル》の能力を起動し、6点アタック。

山田は《サルカン・ヴォル》の一番下の能力のために必要な忠誠コストを確認すると、なすすべがない事を確認した。

窪内 1-0 山田

窪内は《サルカン・ヴォル/Sarkhan Vol》とともに駆け抜けた!Game 2

山田は後手を選択する。

窪内は2ターン目に《切り裂き隊の壊し屋/Rip-Clan Crasher》、3ターン目に《地獄の雷/Hell’s Thunder》と速攻軍団で一気に山田のライフを削る。

その間に山田は《エスパーの全景/Esper Panorama》を利用し、色マナを充足させ、3ターン目には《ナヤのオベリスク》をキャストし、マナ加速を試みるが、しかし、またも窪内の場には《サルカン・ヴォル》が。

またも5つの忠誠カウンターが乗った《サルカン・ヴォル》を前に《精神の誓約/Covenant of Minds》をキャスト。ここでめくれた3枚のカードは、すべて土地。

この瞬間に窪内の初日全勝が確定したのだった。

窪内 2-0 山田

敗北した山田も、笑うしかないような圧殺劇。

関東・関西に友人を多く持つ窪内を、通りがかったプレイヤーたちが賞賛していく。

そんななかでも、盟友中村が、窪内のデックをチェックする。

中村 「すごいね、このデッキ。この発想はなかったわ」

窪内のデックは、2枚の《野生のナカティル/Wild Nacatl》をはじめとして、序盤から厚くビートする、高橋 優太(東京)も提唱する「テンポデック」のお手本のようなデックである。

しかし、中村は、この環境でのテンポデックの存在に対して、疑問を投げかける。

中村 「3色4色が当たり前な事を考えると、『全景』を使う事が前提となるマナベースになるわけじゃないですか。そうすると、序盤のターンには出来る限り『全景』を起動するってアクションを優先したいわけです。なので、ジャンドかグリクシス系の中速のコントロールよりのデッキを構築したいんですよね。『全景』にマナを使う行動と、ナヤ系のビートはかみ合わないので、安定したデッキを構築する事を考えると、ビートは選択肢に無かったですね」

世界を回り、アベレージでの成績も問われる中村こその、安定したデックを構築する為の方法論である。

しかし、中村は窪内の方法論で構築されたテンポデックを否定するわけでなく、むしろ、自身の糧とせんとばかりに、窪内と意見を交換している。

そして、そのまま、翌日のドラフトについての意見を交わしあうふたりを前にこの記事を終えようと思う。その意見交換の成果をふたりが明日見せてくれるであろう事を信じて。


Feature Match: Round 8 - 関根 清隆(群馬) vs. 池田 剛(福岡)

by Naoaki Umesaki

群馬から遠征してきた関根 清隆1日目の最終ラウンドとなった第8ラウンド目、関根(6勝1分)vs.池田(7勝全勝)のマッチアップをお届けする。

全勝者のデッキともなると、一般的に「強いパック」と言われるようなカードプールである場合がほとんどだが、そういった「強いパック」の中でも飛びぬけて強いと評判の池田のデッキは、他の全勝デッキと一味違う。

『アラーラの断片』は多色環境であり、「3色で綺麗に強く組めるパックはラッキー」と言われているような中で、池田のデッキは除去あり優秀生物ありの赤緑2色に《忘却の輪/Oblivion Ring》だけがタッチされているという構築デッキを思わせるような出来のデッキなのである。

池田「このパックは劇的に凄いですね。《炎破のドラゴン》等の爆弾カードもあり、《野生のナカティル》《圧倒する雷》などの強力コモンも2枚か1枚必ずあり、ほぼ2色で《忘却の輪》だけタッチとか凄いですよ。事故りたくないから、《猛きセロドン/Bull Cerodon》など普段は絶対に抜けないようなカードでもサイドに落ちてたりするくらいです。まぁ、サイド後は入れてることが多いですけどね。」

もちろん恵まれない内容のパックで上手く上位に食い込んでいる人もいるが、勝ってた人が使っている強いパックがどのようなものなのか、後ほど更新される初日上位デッキリストを是非ご覧いただければと思う。

Game 1

関根が3ターン目にプレイした《血の信者/Blood Cultist》を、池田が《マグマのしぶき/Magma Spray》で除去。池田の《宮廷の射手/Court Archers》を、関根が《肉袋の匪賊/Fleshbag Marauder》で除去。 という応酬から、関根が《腐肉団/Carrion Thrash》を場に展開する。

池田も《茨団のヴィーアシーノ/Thorn-Thrash Viashino》《災いの悪魔/Scourge Devil》と展開するも、返しのターンで関根は2枚目となる《腐肉団》をプレイして場で優勢に立つ。

池田は、関根のマナが立っていない今の間にと《茨団のヴィーアシーノ》と《災いの悪魔》でアタックを慣行。関根は《腐肉団》で《災いの悪魔》をブロックするのだが、池田の手札からは《圧倒する咆哮/Resounding Roar》。《腐肉団》が一方的に討ち取られる。

続くターン、関根はフルタップで《骸骨のカターリ》を展開するも、これも関根のマナが立っていない間に池田が《圧倒する雷》で除去。

関根の攻めを凌ぎきったところで、池田は満を持して《炎破のドラゴン/Flameblast Dragon》を場に投下して相手に回答を迫る。

関根、残念ながら解決案なし。 次のアタックで、《炎破のドラゴン》はまだ二桁あったはずの関根のライフを一気に削られた。

関根 0-1 池田

池田 「今日、始めて《炎破のドラゴン》の火吹き能力使いましたけど、流石に強いですね(笑」

どうやら、《炎破のドラゴン/Flameblast Dragon》が活躍していなくても、ここまで全勝という程に池田のデッキは強いらしい。

ファイアーボールグループ総帥、池田 剛Game 2

池田は2ターン目に《エルフの幻想家/Elvish Visionary》という立ち上がり。

関根がプレイした《トーパの苦行者/Topan Ascetic》を《圧倒する雷》除去すると、関根の手札からは2枚目となる《トーパの苦行者》が出てくるのだが、池田も2枚目となる《圧倒する雷》でそれを除去。

関根が《アニマのドルイド/Druid of the Anima》《宮廷の射手》、池田《モストドン/Mosstodon》とお互いに第2陣を展開すると、今度は関根が《圧倒する雷》で《モストドン》を除去。

池田 「お互いですけど、やっぱり勝ってるデッキは除去がしっかりしてますよね」
関根 「そうですね(笑 」

除去合戦が一段落し、池田は《鼓声狩人/Drumhunter》を展開するのだが、返しのターンに関根の手札からプレイされたのは《マイコロス/Mycoloth》!
貪食で《アニマのドルイド》を生贄に捧げ、【6/6】として場に登場する。

先ほど《圧倒する雷》を2発打ち、流石に池田の除去はもう無いかと思われたのだが、池田はここで《炎破のドラゴン/Flameblast Dragon》という回答を提示。

更に、池田は次のターンには関根の《宮廷の射手》+コンバットトリックを警戒して、《炎破のドラゴン》の能力によってでは無く《忘却の輪/Oblivion Ring》で関根の《マイコロス》を除去するという余裕を見せつける。

関根 「まだあるのかぁ(苦笑」

関根のデッキも相当に強いはずなのだが、池田は圧倒的な強さで初日を全勝で駆け抜けた!

関根 0-2 池田

Result: 池田 剛Win! 


Saturday, 9:30 p.m.: Day 1 Undefeated Sealed Decks

by Event Coverage Staff

Tsuyoshi Ikeda

Naoki Kubouchi

Akimasa Yamamoto

Daisuke Muramatsu