Japanese Coverage of the 2008 Magic World Championships: Day 1

Posted in Event Coverage on December 11, 2008

By Wizards of the Coast


初日全勝プレイヤーに日本人の名がふたつ。

まずは、「デッキはジャージ、心はタキシード」の気分で、まさかの青黒フェアリーを持ち込み、結果全マッチを2-0で勝利と圧倒的な快進撃をみせる「歴史と伝統の男」浅原 晃(神奈川)。

もうひとりは「日本チームを優勝させます」宣言を達成すべく、日本チャンピオンとしての責務を果たした、こちらも青黒フェアリーを使用する「世界のISO」大礒 正嗣(広島)。

そして、チャンピオンの奮闘に応えるべく、高桑 祥広(神奈川)・渡辺 雄也(神奈川)も4勝2敗と十分な成績にまとめ上げ、結果、日本チームをスイスラウンド終了後に2位に押し上げた。

だが、今年の世界選手権では「初日から」国別対抗戦がおこなわれるのだ。

この国別対抗戦2ラウンドで、日本代表チームは1敗1分という苦い結果を突きつけられ、順位を8位まで一気に落とすことになってしまった。

果たして日本チームはこの結果に心折れてしまうのだろうか。

いや、負けず嫌いが3人集まったこのチームだからこそ、明日以降は今日以上の躍進をしてくれると期待しようじゃないか。

世界選手権での最大のトピックと言えば、Player of The Yearレース。

世界選手権開始前は、中村 修平(大阪)が独走状態のまま戴冠するだろうというのが、大方の予想であった。

しかし、本日の中村が3勝3敗という成績であり、なおかつ、中村を追うルイス・スコット=バルガス(アメリカ)が5勝、国別対抗戦でのポイントも見込める「最新殿堂プレイヤー」オリヴィエ・ルエル(フランス)が4勝1分という好成績で初日を終えたことで、一気に混戦の可能性が現実のものとなろうとしている。

日仏米というマジック世界三大強国がPoYと、自国の覇権をかけて争う形となった。

勝負の続きは、明日の「アラーラの断片」ブースタードラフト6回戦に引き継がれる。

果たして、この5つの断片に分かれた次元は、57の国のプレインズウォーカーにどのような物語を与えるのか。

この物語の続きは、明日も引き続きこのページで掲載していく予定だ。

あなたも歴史の証人になろう!

EVENT COVERAGE

  • Translated Additional Thursday Update ・スタンダード・メタゲーム アーキタイプ・ブレイクダウン
    by Bill Stark / Translated by YONEMURA “Pao” Kaoru
  • Deck Tech: Wakefield氏に幸あれ!
    by Marc Calderaro / Translated by Sugaya Akio
  • Round 6: 『 ダイスマン 』
    by Bill Stark / Translated by Sugaya Akio
  • Round 2: 花の蜜は甘いとは限らない
    by Nate Price / Translated by Sugaya Akio
  • Thursday 21:35: Feature Article : 八十岡×川崎のスタンダードウォッチング:世界選手権速報編
    by Daisuke Kawasaki with Shouta Yasooka
  • Team Round 2: 日本代表 vs. ウクライナ代表
    by Daisuke Kawasaki
  • Team Round 1: 日本代表 vs. オーストラリア代表
    by Keita Mori
  • Feature: 6-0 Standard Decklists
    by Event Coverage Staff
  • Round 6: 大礒 正嗣(広島) vs. Paulo Vitor Da Rosa(ブラジル)
    by Daisuke Kawasaki
  • Round 5: 八十岡 翔太(神奈川) vs. 高桑 祥広(神奈川)
    by Daisuke Kawasaki
  • Round 4: 浅原 晃(神奈川) vs. Helmut Summersberger(オーストリア)
    by Keita Mori
  • Round 3: Jon Finkel(アメリカ) vs. 森 勝洋(大阪)
    by Daisuke Kawasaki
  • Round 1: 彌永 淳也(東京) vs. Uri Peleg(イスラエル)
    by Daisuke Kawasaki
  • Thursday 11:25: Photo Essay Round 1 : 日本代表チームの序盤戦
    by Keita Mori
  • Thursday 9:48: Feature Article – さまざまな伏線
    by Keita Mori / Daisuke Kawasaki
  • Hall of Fame Profile: Dirk Baberowski
    by Brian David-Marshall
  • Hall of Fame Profile: Mike Turian
    by Brian David-Marshall
  • Hall of Fame Profile: Jelger Wiegersma
    by Brian David-Marshall
  • Hall of Fame Profile: Olivier Ruel
    by Brian David-Marshall
  • Hall of Fame Profile: Ben Rubin
    by Brian David-Marshall
  • Hall of Fame: Complete Coverage
    by Event Coverage Staff
  • Feature: Going to Memphis
    by Zac Hill
  • Preview: Worlds on our Doorstep
    by Brian David-Marshall
  • Info: Fact Sheet
    by Event Coverage Staff

Blog - Thursday, 9:48: Feature Article – さまざまな伏線

by Keita Mori / Daisuke Kawasaki

2008年のマジックシーンを締めくくる世界選手権メンフィス大会。すべての物語がクライマックスをむかえる激闘の四日間が、今まさにはじまろうとしている。

観戦記事をお届けする前に、まずはディスプレイの前の皆さんとともに、このイベントをむかえるにあたって注目すべき様々なトピックを共有させていただこう。

■年間最優秀プレイヤー争い/Player of the Year Race

マジック:ザ・ギャザリングの年間最優秀プレイヤー(Player of the Year/以後POYと表記)とは、一カ年間にわたるトーナメントシーンにおけるプロポイントの獲得総量がもっとも多かったプレイヤーに贈られる賞である。「誰かしらの主観」に左右されることのない、厳然たるポイントの積み重ねのみをもってMVPを決めようという趣旨のタイトルである。やはり、シーズン最終節となる世界選手権で、このタイトルの行方が決まるのだ!

ここしばらくの年間最優秀プレイヤー(Player of the Year/以後POYと略)受賞暦をふりかえると、脅威の三年連続受賞というカイ・ブッディ(Kai Budde)時代が続き、2004年をガブリエル・ナシフ(フランス)、2005年からの三年間を日本勢が三年連続受賞(2005年=津村 健志、2006年=八十岡 翔太、2007年=齋藤 友晴)という流れとなっている。

2008 Season Player of the Year Race Standings before the Worlds 2008

Name Country Points
Shuhei Nakamura Japan 64
Olivier Ruel France 49
Tomoharu Saitou Japan 48
Luis Scott-Vargas USA 47
Marcio Carvalho Portugal 45
Raphael Levy France 39

そして、この2008シーズン最終節を迎えた段階で、POYレースの暫定首位は中村 修平(大阪)。15点という大きなリードを二位以下につけていることも事実だが、アメリカのLSV(ルイス・スコット=バーガス)、フランスのオリヴィエ・ルーエル、世界を巡業する戦友でもある齋藤 友晴(東京)の三名がシーズン終盤に見せている驚異的な追い上げは特筆モノ。

逃げ切りたい中村は「人事を尽くして天命を待つのみです」と神妙な面持ちを見せ、追いすがる齋藤は「ここに来て二年連続が見えてきました!」と鼻息も荒い。

ちなみに、「最終盤のどんでん返し」が起こった実例という意味では、「日本の時代」の幕開けとなった2005シーズンも、大礒 正嗣とオリヴィエ・ルーエルという二人のライバルを津村 健志が一気に抜き去ったというエキサイティングな幕切れを迎えている。

はたして今年は・・・?

■「帝王」カムバック!

前人未到の世界選手権四大会連続ベストエイトを狙うモリカツ

世界選手権と言えば、そのシーズンの締めくくりとして、POYが決定する大会...というのがその(本来の)存在意義ではない。

そう、世界選手権は、まさに文字通りに「世界王者」を決める為の戦いなのだ。

Jon Finkel(アメリカ)・Kai Budde(ドイツ)というマジック史に名を残す2大巨頭をはじめとした、文字通り世界最強の個人を決めるタイトル。

この最強の個人タイトルを目指して、数多くのドラマが繰り広げられる。

過去に日本人でも、「帝王」森 勝洋(大阪)と「魔王」三原 槙仁(千葉)のふたりがこの最強の個人タイトルを獲得している。

また、昨年の中野 圭貴(大阪)・大塚 高太郎(神奈川)をはじめとして、世界選手権でのトップ8に入賞した日本人プレイヤーは、その名声を確固たるものとしている。

ちょっとまて。

そんな世界選手権トップ8連続入賞記録を、3年連続で更新中のプレイヤーがいるではないか。

そう、2005年世界王者の「帝王」森 勝洋(大阪)である。

2007年以降、国内のプレミアイベントには顔を出すものの、事実上プロプレイヤーとしての活動は引退状態であった「帝王」が、この世界選手権のためにメンフィスの地にやってきた。

なんの為に?

 「当然、トップ8の席はひとつ予約しておきますよ」

過去に多くのドラマを生み出してきた世界王者というタイトルを巡る戦い。

そして「帝王」の前人未踏のトップ8入賞。

これは三日間スタンディングから目が離せない!

■過去最強クラスの日本代表チーム誕生!

開会式に国旗を掲げた日本王者の大礒 正嗣

さて、ここまで一年間を通したPoYレースの締めくくりとして、そして、個人戦としての世界選手権について触れてきた。

しかし、世界選手権で一番盛り上がる要素を忘れちゃいませんか?

そう、国別対抗戦だ!

激戦である各国選手権を戦い抜いてきた各国の代表たちが、自分の国のマジックのすべてをかけて争う国別対抗戦が盛り上がらないわけがないじゃないか!

日本で開催された2005年の世界選手権。

自国で開催されたこの大会において、見事国別対抗戦を勝利し、日本に初の「国全体としての」タイトルをもたらしたとともに、PoYの津村 健志、世界王者の森 勝洋とともに、日本3冠という偉業を成し遂げた日本代表チーム。

この時に、チームの牽引役として、そして火薬庫として活躍したのが、「世界のISO」大礒 正嗣(広島)であった。

その大礒が、代表チームに帰ってきた!しかも、日本チャンピオンとして!

この大礒ひきいる日本代表チームが、なんというか、過去最強レベルに強まりまくっているともっぱらの評判なのだ。

筆者の非常に個人的な意見ではあるが、歴代の日本代表チームの中でも、過去最強だったチームをあげろと言われれば、タイトルを獲得した2005年代表チームと悩むところではあるが、2004年の日本代表チームをあげざるを得ないと思う。

「2007年殿堂入り」 藤田 剛史(大阪)
「2005年PoY」 津村 健志(広島)

そして、「暫定」2008年PoYの中村 修平という、個人タイトルは個人タイトルでも、そんじょそこいらじゃ手に入らないようなタイトルをもった3人によるこのチーム。

しかし、今年の日本代表チームは、この2004年代表チームに勝るとも劣らないというのだから、驚きだ。

ひとりは、2007年Rookie of The Yearを獲得し、日本の若手の中でも筆頭株としての地位を固めた渡辺 雄也(神奈川)。
2006年ファイナルスでブレイクした彼だが、もはや彼の実力を疑うプレイヤーはおらず、国内でも、齋藤・中村というサーキット組のふたりが全幅の信頼を置いていることでも知られる実力派だ。

日本代表チームの最後の席を埋めるのは「連合のユダ」高桑 祥広(神奈川)だ!

高桑ほど、多くのプレイヤーからまさしく「賛否両論」な評価を受けているプレイヤーも少ないだろう。ある人間はそのキャラクターを大絶賛し、そして、ある人間は「ユダ」と罵る。

しかし、その評価にも一点だけ共通しているところがある。

筆者は高桑を「マジックが弱い」と評価しているプレイヤーに出会ったことがないのだ。

いかにユダであっても、プレイスキルがケンシロウであれば、なにも問題無い。

だが、過去最高レベルの代表チームで今大会に臨んでいるのは、日本だけではない。

「アメリカの新世代の巨星」Paul Cheon(アメリカ)を擁するアメリカ代表チーム。

「現役最強殿堂プレイヤー」Olivier Ruel(フランス)を擁するフランス代表チーム。

そう、日仏米という、マジック三強国すべての「過去最強」代表チームが集結したのだ。

この対戦が、過去最強にならないわけがない!

そして、今大会では、変則的に1日目・3日目で国別代表戦がおこなわれるのだ!

このもうひとつの世界最強のタイトル戦を見逃す手はない。

■不運?幸運?

さて、そんな見所満載でお届けする2008年世界選手権ではあるが、初日である本日の見所として、ひとつのトピックをお届けしよう。

本日は、スタンダード6回戦+国別対抗戦2回戦がおこなわれる。

構築戦であるスタンダードを前に、会場と隣接するホテルでは、国籍を問わず多くのプレイヤーがデックの調整をしたり、足りないカードを探しまくったりと、最後のツメに奔走している。

プレミアイベント前日によく見る風景だ。

しかし、そんななかで、明らかに目の色を変えて、カードを探しまくっている日本人プレイヤーが5人。

「不屈のストイシズム」高橋 優太(東京)
「魔界の番人」三田村 和弥(千葉)
「略して神」金子 真実(埼玉)
「PTヴァレンシアトップ8」小池 貴之(東京)
「2007年日本王者」北山 雅也(神奈川)

ひとりの日本王者と、4人のプロツアーサンデー経験者という壮絶なメンバーが、ホテルのロビーを拠点として、日本人プレイヤー・スタッフの宿泊する部屋のドアというドアを片っ端から叩いてまわっているではないか。

果たして、彼らほどのプレイヤーがこの段階でどれほどのカードを必要としているのか?これは、もしやこの5人による新プレイテストチームが設立され、新たなシークレットテックが開発されたのか?

これは是非ともインタビューしなければと突撃してみた。

北山 「飛行機降りたら、荷物が無かったんです」

え?

そう、なんと、飛行機乗り継ぎ時のトラブルにより、彼らが預けた荷物はこのメンフィスの地まで届かなかったのである。

そして、荷物の中にデックを入れていたこの5人は、まず第0ラウンドとして「スタンダードデッキをでっちあげろ」というミッションをクリアしなければならなくなってしまったのである。

小室 「デュエリストたるもの、デッキを肌身離さないのは基本中の基本」
浅原 「そーなのかー」

と、同じ飛行機に乗りつつも、手荷物にデックを入れていたため、難を逃れた小室 修(東京)・浅原 晃(神奈川)は語る。

なんにせよ、今後、海外渡航するプロプレイヤーの為の注意書きとして「デッキは手荷物に」の一文が追加されるのは間違いないところではあるが、それはそれとして、とにかく目下彼らはカードを集めなければならないのだ。

高橋 「仮に同じリストでカードがそろっても、愛用していた《苦花/Bitterblossom》じゃないと...」

そんなことを言っている場合じゃない!

ぶつけようのない怒りをその理性で押さえている三田村を後に筆者はロビーを後にしたが、果たして、彼らは第0ラウンドをクリアできたのだろうか。

そして、この不運の反動として、本日のスタンダードラウンドを6-0で駆け抜ける幸運を手に入れることができるのだろうか?

是非ともご注目いただきたい!

かくて、さまざまな伏線がはりめぐらされた中、世界中から大望を胸に秘めたプレインズウォーカーたちがメンフィス・クック・コンベンションセンターへとやってきた。

これから四日間、物語の行方を森 慶太と川崎 大輔がここメンフィスより熱戦の模様をお届けします。


Blog - Sunday, 11:25: Photo Essay Round 1 - 日本代表チームの序盤戦

by Keita Mori

昨年度同様、殿堂入り祝賀セレモニーが第1ラウンド開始前に執り行われた。

「スーパーマン」ベン・ルービン(アメリカ)
「生涯獲得プロポイント世界2位」オリヴィエ・ルーエル(フランス)
「ミスター・ハイアベレージ」イェルガー・ヴィーガーズマ(オランダ)
「ドラフトマスター」マイク・チューリアン(アメリカ)
「鳳凰の一翼」ダーク・バブロウスキー(ドイツ)

・・・という、そうそうたる顔ぶれ(写真左から)がセレモニーに出席し、記念リングを授与された。

そして第1回戦スタート!
57カ国、329名のプレインズウォーカーの戦いがはじまった。

記念すべき第一回戦のフィーチャーマッチに招待されたのは、昨年度王者のユーリ・ペレグ(イスラエル)と彌永 淳也(日本)の一戦。詳細は川崎 大輔によるレポートをお待ち下さい。

「可能な限り」という条件付きだが、この世界選手権メンフィス大会より、各国の代表チームのチームメイト同士は隣り合って着席できるようにペアリングが配慮されるようになった。そのため、大礒 正嗣、高桑 祥広、渡辺 雄也の三名は、まるで国別対抗団体戦であるかのように個人戦第1ラウンドをむかえることになった。

日本代表の使用デッキは、それぞれ渡辺と大礒が「青黒フェアリー」、高桑が緑白黒トークン&ドラン「長岡スペシャル」。

不本意なドロー内容により渡辺があっという間に2本落としてしまうことになったが、大礒と高桑がそれぞれ見せ場を作った。

大礒は「世界最高峰の構築屋」ギョーム・ワフォ=タパ(Guillaume Wafo-Tapa)の5色クイックントーストを相手に2-1で辛勝。高桑も、対戦相手のフェアリーデッキが《剃刀毛のマスティコア/Razormane Masticore》のアップキープ維持のために手札を捨てた瞬間に《雲打ち/Cloudthresher》で敵陣上空を一掃するという快心のプレイを決め、延長最終ターンにピッタリと対戦相手のライフを削りきるというゲームプランを完遂して2-1での勝利。

激戦続く中、場内でただ一人不戦勝(Bye)を獲得した本日のラッキーガイも存在した。

記憶に残る記録を残す男としておなじみ、「略して神」金子 真実(埼玉)だ!

金子 「とりあえずペアリングで世界一とれましたね」


Round 1 : 彌永 淳也(東京) vs. Uri Peleg(イスラエル)

by Daisuke Kawasaki

物語を紡ぐ事とデュエルをする事は同じだ。

人と人との意志のぶつかり合いが物語を紡ぐとすれば、デュエルをする事も物語を紡ぐ事と同意といっても大げさではないだろう。

すべてのテーブルに物語があるといっても過言ではない、すべてのプレイヤーが自分自身の物語を背景にデュエルを行っている。

2005年の世界選手権。

この年に、日本代表チームが国別対抗戦を制したことはすでにプレビュー記事として述べたと思う。

諸藤・志村・大礒というこの年の日本代表チームは、マジック:ザ・ギャザリングという大きな物語にその名を刻むことになった。

だが、この年の日本選手権で準優勝したプレイヤーの名前を忘れてはいけない。その物語を忘れてはいけない。

そのプレイヤーは彌永 淳也(東京)。

昨今の関東若手プレイヤーブームというムーブメントに先駆ける形で、2005年日本選手権で準優勝という成績を収め、ブレイクした彌永だったが、学業を優先する為に、代表チームを辞退し、そして、しばらくトーナメントシーンから姿を消した。

だが、復帰後「(PTQヴァレンシアを指して)しばらすがに勝てなかった」とは語るものの、昨年のグランプリ北九州での優勝と、セカンドブレイクを果たし、その副賞としてプロツアー・クアラルンプールに出場。

その後、ハリウッド・ベルリンと今シーズンのプロツアーのすべてに「何らかの理由でプロツアー権利をもぎ取って」参加するという無双っぷりを見せつけてくれた。

そして、今シーズン最後のプロツアーであるこの世界選手権にも当然のように参加している、というわけだ。

使用デックは、青黒フェアリーである。

物語を紡ぐ事とデュエルをする事は同じだ。

人と人との意志のぶつかり合いが物語を紡ぐとすれば、デュエルをする事も物語を紡ぐ事と同意といっても大げさではないだろう。

しかし、物語を紡ぐのは、人と人の意志のぶつかり合いだけではない。

人と人が意志を受け継ぎ、継承していくこと自体がひとつの大きな物語となる。

そして、この世界選手権という場は、その「バトンを受け渡し物語を紡いでいく場」としても機能してきた。いや、世界選手権そのものが壮大な物語なのである。

昨年、その物語のバトンを継承したのが、彌永の対戦相手であるUri Peleg(イスラエル)である。

Pelegの使用デックは緑に黒と白をタッチした親和エルフ。

「イスラエル人として初めての世界王者」という物語のバトンは、果たしてどのような物語へと受け継がれていくのだろうか。

Game 1

先手のPelegが《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》というスタート。

対して、彌永は1ターン目から、小考しつつ《コショウ煙/Peppersmoke》でこれを除去する。

このプレイングが功を奏し、Pelegは2ターン目に土地がとまった状態で《自然との融和/Commune with Nature》で《エルフの幻想家/Elvish Visionary》を手札に加えにとどまる。

彌永は2ターン目に《苦花/Bitterblossom》をキャストし、フェアリーとしては最上の立ち上がりを魅せるが、Pelegも《樹木茂る砦/Wooded Bastion》を3ターン目にドローし、《エルフの幻想家》からゲームプランを構築できるところまで持ち込むことに成功する。

そして、続くターンに《樹木茂る砦》から緑マナを2つだしての《遺産のドルイド/Heritage Druid》。これを《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》で打ち消させてからの《ラノワールのエルフ》キャストで、マナベースを安定させる。

そして、今度は、逆に彌永の土地が3枚でストップしてしまう。

彌永はダメージレースによる短期決着のプランを選択。《呪文づまりのスプライト》を含む2体の妖精で攻撃をしかけると《ウーナの末裔/Scion of Oona》でダメージ量を倍にする。

この隙にと、一気にアグレッシブなアクションを起こしたいPeleg。《自然との融和》を2発連続でキャストし《遺産のドルイド》と《ラノワールのエルフ》を手札に加え、ダメージランドを使用しつつ、この中から《ラノワールのエルフ》をキャストする。

これで、続くターンに《威厳の魔力/Regal Force》のキャストからの物量攻撃で彌永を圧倒する体勢を全に整える。そう、続くターンが彌永の実質的な最後のターンになるのだ。

しかし、彌永が2枚の《ウーナの末裔》をキャストし、11点のアタックでPelegのライフをきっちり削りきってしまったことで、Pelegにターンが回ってくることはなかった。

彌永 1-0 Peleg

Game 2

先手のPelegは、1ターン目からの《イラクサの歩哨/Nettle Sentinel》キャストという立ち上がり。これに対して、彌永は《沼》をセットしてターンを返すのみ。

Pelegは続いて《献身のドルイド/Devoted Druid》をキャストすると、3ターン目には《思考囲い/Thoughtseize》で彌永の手札を丸裸にする。

後悔された手札は《地底の大河/Underground River》《変わり谷/Mutavault》という2枚の土地に、《瞬間凍結/Flashfreeze》《コショウ煙》《謎めいた命令/Cryptic Command》に2枚の《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》と比較的アクションが重たいもの。

ここで、Pelegは大きくテンポを稼ぐ為に《瞬間凍結》をディスカードさせる。

だが彌永はここで強引に《苦花》をつもってきた。

大きくテンポを失うことなく、ゲームプランを構築することに成功した彌永ではあったが、しかし、Pelegの続くアクションは、フェアリー殺しとも言われる《カメレオンの巨像/Chameleon Colossus》。

だが、彌永は手札の《霧縛りの徒党》をキャストし、Pelegに後続を許さない。Pelegはアップキープにタップされる土地からのマナを《カメレオンの巨像》に注ぎ込む。

この8/8というちょっとした《幽体の魔力/Spectral Force》を、彌永は一度は通して、ライフは5。この時点で《苦花》は《霧縛りの徒党》によって覇権しているので《苦花》による逆クロックはないものの、厳しい状況。

彌永は、フェアリートークンと《霧縛りの徒党》でアタックし、Pelegのライフを8まで削る。

そして、続くPelegのターンのアップキープに2枚目の《霧縛りの徒党》をキャストする。

ここで長考に入るPeleg。

Pelegは、ダメージランドからのダメージを受けつつ、《雲打ち/Cloudthresher》を想起でキャストする。これで、Pelegのライフは5。彌永は3。

彌永は、この状態で《霧縛りの徒党》の覇権を解決していいか確認する。Pelegはこれを快諾する。

彌永は《変わり谷》をクリーチャー化し、これを覇権する。

...

あわてて、《イラクサの歩哨》をアンタップしようとするPeleg。そう、ここで《イラクサの歩哨》をアンタップしなければ、続くターンの彌永の攻撃を防ぐことが出来ないのだ。

むしろ、この《イラクサの歩哨》のアンタップのための《雲打ち》キャストだったのだ。

だが、時はすでに遅い。

すでに、スタックでは下にある《霧縛りの徒党》の覇権が解決してしまっているため、《イラクサの歩哨》の効果は「パスされた」と見なされるのだ。

失意の中《カメレオンの巨像》で攻撃し、予定調和的に《霧縛りの徒党》にブロックされ、《変わり谷》が場に戻る。

すでに《変わり谷》と《霧縛りの徒党》のアタックでPelegのライフが削りきられてしまうことは確定している。

では、Pelegは《イラクサの歩哨》をアンタップしていれば勝利していたのだろうか。

そんなことはない。

Peleg自身も、彌永が《謎めいた命令》を握っていることはすでに確認済なのだから。

彌永 2-0 Peleg

Pelegのダメージランドによるダメージまでも考慮してきっちりライフを削りきっていくというすばらしいプレイングを魅せてくれた彌永。

彌永 「モリカツ(森 勝洋)が、昨日このデッキが強いっていってたので練習していたから、勝てましたよ」

2005年世界王者から、受け継がれた意志で、2007年世界王者を打ち破った彌永。

彌永、自身初めての世界選手権で、まずは、1勝。


Round 3 : Jon Finkel(アメリカ) vs. 森 勝洋(大阪)

by Daisuke Kawasaki

この世界選手権という舞台で、これ以上の対戦が存在するだろうか。

ひとりのマジックファンとして、この対戦を観戦する機会に恵まれたことを、マジックの神に感謝したい。

2000年世界王者、「英雄」Jon Finkel(アメリカ)

2005年世界王者、「帝王」森 勝洋(大阪)

このふたりほど、プロフィールを列挙することがむなしくなるプレイヤーは、他にKai Buude(ドイツ)しか思いつかない。

ただただ存在自体が「マジック:ザ・ギャザリング」。

使用するデックは、森が会場最大数と目される青黒フェアリー。

対するFinkelは、フェアリーメタを追求した形にチューンナップされた5色コントロールである。

Finkelといえば、今シーズン最初のプロツアー・クアラルンプールでその健在ぶりを示している。

だからこそ、森の4年連続トップ8の障壁としてふさわしいとも言える。

事実上の決勝、いや、マジックというゲームのエッセンシャルな結晶とも言えるこのマッチアップ。

余計な前置きはこれくらいにして、ゲームを心行くまで満喫しよう。

Game 1

後手のFinkelが2枚の鮮烈土地を並べているうちに、森は2ターン目に《苦花/Bitterblossom》をキャスト、そして、3ターン目にも《思考囲い/Thoughtseize》で《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》をディスカードさせつつの2枚目の《苦花》という短期決戦を視野に入れた好スタート。

Finkelもトップデックしてきた《エスパーの魔除け/Esper Charm》によって《苦花》を1枚破壊するものの、森は3枚目の《苦花》をキャストする。

しかし、ここはさすがは「英雄」Jon Finkel。《ロウクスの戦修道士》を引き戻し、キャストする。

土地がつまり気味の森にとって、この絆魂もちのクリーチャーはダメージレースをひっくり返しうるだけに非常に厳しい相手。

そして《雲打ち/Cloudthresher》を《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》でカウンターし、マナがなくなった隙を突いての《ジャンドの魔除け/Jund Charm》によって、一気に大量のフェアリートークンを失ってしま。

だが、この絶体絶命のぎりぎりのタイミングで森は4枚目の土地をドロー。そして、《ロウクスの戦修道士》のアタックを《霧縛りの徒党》で完全にとめる。ナイスブロック!

ライフの残り少ない森にとって、懸念材料でもあった《苦花》を処理することにも成功。

森のプレイングのスピードが加速する。

戦闘中に《霧縛りの徒党》を覇権したことで、実質1ターンの優位を手に入れた森は、続くFinkelの想起無しでの《熟考漂い》を《謎めいた命令/Cryptic Command》でカウンターし、さらなる優位を獲得したかと思えば、そのまま《ウーナの末裔/Scion of Oona》によって一気にFinkelのライフを削りきってしまったのだった。

先攻だけに、閃光のような森の勝利。

森 1-0 Finkel

Game 2

2枚の鮮烈土地セットの後の3ターン目に《ロウクスの戦修道士》キャストという先攻のFinkelのファーストアクション。

これを《砕けた野望/Broken Ambitions》で打ち消し、ライブラリーのトップにめくれた《苦花》をボトムにうつしたかと思いきや、そのまま《思考囲い》をキャストし、《苦花》をディスカードさせる森。

そして、なおもプレイが加速していく森。

Finkelのターンエンドに《ウーナの末裔》をキャストすると、クロックを刻みはじめ、Finkelの《エスパーの魔除け》を《謎めいた命令》でカウンターしたまま、ドローをしようとライブラリーに手をかけ、確認を求める。

これはFinkelが《否認/Negate》でカウンター。

そして、メインターンには《雲打ち》が降臨してしまう。さらに《苦花》まで追加するFinkel。

一度に、すべての戦力をうしなってしまった森。のみならず、圧倒的な脅威にさらされることとなる。

だが、森のプレイングのスピードは落ちていない。なおもトップギアのままゲームを進行する。

土地が4枚で止まっている森は、一度は《雲打ち》の攻撃を《呪文づまりのスプライト》でチャンプブロックする。こうして稼いだ1ターンで土地をドローすると、5マナで《リリアナ・ヴェス/Liliana Vess》をキャストし、その能力で《雲打ち》への対抗策をサーチする。

ライブラリーを手に取るやいなや《恐怖/Terror》を手に取る森ではあったが、ライブラリー内の《謎めいた命令》と見比べて、珍しく長考をする。

結局《恐怖》を積みこむ。

Finkelは《リリアナ・ヴェス》の存在など関係ないとばかりに森のライフを一気に削りにかかるが、続くターンには《雲打ち》を《恐怖》されてしまう。

だが、Finkelも森を楽にはさせない。フェアリートークンに《ジャンドの魔除け》でカウンターを乗せ、森のライフを攻めるとともに《ロウクスの戦修道士》を戦線に追加する。

一方の森は、後攻だけに、堂々と腰をすえ《リリアナ・ヴェス》の能力で、1枚、また1枚とFinkelの手札を減らしていく。

フェアリートークン2体で攻撃するFinkelにたいして、ブロック用に《呪文づまりのスプライト》をキャストし、これに《霊魂放逐/Remove Soul》を「使わせた」うえでの《苦悶のねじれ/Agony Warp》で3/3のフェアリートークンを排除し、Finkelの手札をゼロにした森は、《リリアナ・ヴェス》による完璧なゲームプランを構築しはじめる。

手札に《くぐつ師の徒党/Puppeteer Clique》を持つ森は、まずは《霧縛りの徒党》をトップに積み込み、そのまま《くぐつ師の徒党》をキャストする。

これにより、Finkelの墓地の《ロウクスの戦修道士》をつり上げた森は、アタックによって、貴重な3点のライフを獲得しつつ、ターンを終了し、Finkelの攻撃に備える。

Finkelはもちろん2体のフェアリートークンと《ロウクスの戦修道士》で攻撃。この《ロウクスの戦修道士》を《くぐつ師の徒党》でチャンプブロックし《雲打ち》をつり上げることでフェアリートークンを一掃する森。

だが、ここで森の緻密なプランにフェイタルなバグがあったことが判明する。

そう、森のプランではここで戻ってきた《くぐつ師の徒党》を《霧縛りの徒党》で覇権し、攻守を交代するプランだったのだが、森の予想に反して《くぐつ師の徒党》は《雲打ち》の能力により墓地に送られてしまったのだった。

屈せず、予定通りに《リリアナ・ヴェス》にのった最後の忠誠カウンターをふたつ使い《霧縛りの徒党》を積み込み、覇権用にキャストした《苦花》と《変わり谷》を覇権することで、盤面をタイに戻していく。

そして、プランミスを取り戻すべく《苦花》を設置。ブロッカーを用意することで、《謎めいた命令》、もしくは《霧縛りの徒党》をトップデックすることでFinkelを《苦花》死に追い込めるプランを構築する。

なにより、このプランであれば、相手が何もできなければ、先に殴りきれる展開すらあるという、圧倒的に勝率の高いプランなのだ。

しかし、緻密なプレイングであればFinkelも負けていない。

落ち着いて、2体目の《ロウクスの戦修道士》をキャストし《霧縛りの徒党》へとチャンプアタックをすると、これで獲得したライフと《霧縛りの徒党》一回分のアタック分得したライフを守ることで、逆に森にトップデック条件を押しつける。

両面待ちの片方をつぶされた森は、ライブラリーのトップを確かめ続ける。

しかし、そこに《謎めいた命令》も《霧縛りの徒党》も存在しないのだった。

森 1-1 Finkel

Game 3

過去の森のマジックでは、森が最高速で完全なるプランを構築したとき、ライブラリーはそれに応える形で、必要条件を満たすカードを森に与えてきていた。

そこまで含めての「帝王」モリカツだったのだが、ブランクのせいか、もしくは「英雄」相手だからか、Game 2では珍しくトップデック条件を満たせなかった森。

だが、マジックという物語は、別の形で森に応えることとなる。

2ターン目に《苦花》をキャストした時点ですでにトークンに手をかけるほどの最高速を維持し続けている森。

だが、森の土地が2枚でストップしてしまう。

このまま、溢れる手札をディスカードし続けることになってしまった森だったのだが、しかし、カードをディスカードし続けていたのは森だけではなかった。

Finkelもまた、土地が2枚でストップしてしまったのだ。

合計4枚の土地の前で、延々と増え続けるフェアリートークン。

Finkelは、ディスカードのためにカードに触れ続けていた手を、最後は森の手を握る為に使用した。

森 2-1 Finkel

 「せっかく、1本目も2本目もいいゲームできていたのに、3本目事故ゲーでもったいなかったね...」

と語る森。

 「でも、Finkelよりプレイングがうまいことが確認できてよかった」

最盛期のFinkelであれば、また、わからないことであるし、今の森が本当にFinkelを上回るプレイヤーであるかは、筆者にはわからない。

森は、それを証明すべく世界選手権4年連続トップ8を目指す。


Round 4 : 浅原 晃(神奈川) vs. Helmut Summersberger(オーストリア)

by Keita Mori

セレモニー会場のセットが撤去され、第4回戦から特設フィーチャーエリアが用意された浅原 「・・・マジックはビジネスなのに・・・」

うなだれる「歴史と伝統の男」浅原 晃。

(ふたたび)尊敬するMark Justiceにあやかって盛装すべく、スーツとネクタイをトランクに入れて出国したはずの浅原。しかし・・・貨物がメンフィスに届かなかった。やむなく、着の身着のまま、ラフなセーター姿でフィーチャーマッチに登場となってしまったという次第である。

「なんだよ、別にそれくらい!」

モニターの前で、思わずツッコんだ方も少なくないだろう。

たしかに、デッキそのものを制限時間までに完成させるために奔走する羽目になった同行者たちに比べれば、浅原が被った損害というのは「まだマシ」といったあたりだったかもしれない。

さまざまな意味で誤解を招いてしまいがちな浅原 晃だが、マジック:ザ・ギャザリングの持つ歴史と伝統を尊敬し、愛する気持ちは実に深い。加えて、見事に決勝ラウンドへと勝ち進み、往時のMark Justiceへのリスペクトを全身で表現した2005年度世界選手権(横浜大会)は、彼のトーナメントキャリアにおける、最初で、そして現時点では唯一の、プロツアーサンデーの舞台となっている。

自らをふたたび奮い立たせるため、浅原は、彼にとっての原点に立ち戻った。マジックの歴史と伝統を敬い、それを全身で表現することに決めたのだ。

そんな中で、その思いは航空会社の荷物紛失という不手際によって水泡に帰してしまったのだ。浅原の無念さは、察するにあまりある。

ここで傷心の浅原と対峙するのは、オーストリアのエルムート・ズマースバーガー(Helmut Summersberger)。グランプリ優勝経験や世界選手権ベスト8入賞歴もある古豪である。

エルムートは環境の最大最強勢力と言われている青黒のフェアリーを駆ってここまで三連勝。一方の浅原も、オリジナルデザインの自信作だという「ノン・テゼレット」でここまで三連勝。二人とも悪くない立ち上がりを迎えている。

Game 1

「歴史と伝統の男」浅原 晃先手マリガンながら、第2ターンに《苦花/Bitterblossom》を咲かせる「ノン・テゼレット」浅原。後手のエルムートは第2ターンの《思考囲い/Thoughtseize》で浅原の手札が土地だらけであることを確認しながら《恐怖/Terror》を捨てさせた。

エルムートも盤上に《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》を送りだすが、浅原はこれを《コショウ煙/Peppersmoke》でいなし、ワンドロー。「ノン・テレゼット」と本人は強く主張するものの、どう見ても本当に・・・どうやら、青黒フェアリーの浅原。エルムートはこのゲーム2枚目となる《思考囲い/Thoughtseize》をプレイし、浅原はレスポンスで「瞬速」《ウーナの末裔/Scion of Oona》召喚。エルムートはこれを《砕けた野望/Broken Ambitions》でカウンターしつつ、浅原の手札から《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》を捨てさせた。

しかしながら、戦場に咲いている花は一輪だけ。すなわち、浅原には絶え間なく攻防自在の1/1飛行クリーチャーが毎ターン追加されていく中で、エルムートはただひたすら土地だけを引き続けると言う不本意な展開。

エルムート 「《思考囲い/Thoughtseize》が1ターン目だったら・・・」

自嘲気味に笑みをうかべ、オーストリア人はカードを片付けはじめた。たった一枚のエンチャントの有無が、ミラーマッチの結果を左右したというわけである。

Game 2

エルムート・ズマースバーガー今度は、先手後手ともに《苦花/Bitterblossom》を第2ターンにプレイする立ち上がりとなった第2ゲーム。ここから先手エルムートは浅原の2枚目の《苦花/Bitterblossom》を《思考囲い/Thoughtseize》で捨てさせるものの、マリガンしたことが響いてか、土地が2枚でしばらくストップしてしまう。対する浅原は《変わり谷/Mutavault》を2連続でセットし、こまめに殴ってダメージをかせぎながら、土地を伸ばしていく展開。

浅原は上空で火花を散らすフェアリー・トークンたちの攻防で《苦悶のねじれ/Agony Warp》を巧みに使用し、これを嫌うエルムートが《謎めいた命令/Cryptic Command》を使ったところへ、浅原は《ウーナの末裔/Scion of Oona》を送り込んだ。トリッキーな攻めを見せ、ライフレースを優位に押し進める浅原 晃。

末裔による強化(+1/+1修整)を得て、浅原はトークンと2体の《変わり谷/Mutavault》による全軍突撃でエルムートのライフを一気に減らしにかかった。

最後の希望を託した《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》をプレイしてくるエルムートに対し、浅原は冷静に、そして、悪魔のようにささやいた。

「テラー (Terror)」

完勝だった。

浅原 「ノン・テゼレット、ここまでフェアリー四連戦四連勝ですね」

メインボードに《コショウ煙/Peppersmoke》を入れるために《思考囲い/Thoughtseize》を抜くという決断を下したこと、また、それが正しかったという感想を静かに語り、浅原は仲間たちの輪へと歩み去った。

浅原 「今日中にスーツが届くかどうか、勝負の分かれ目ですね・・・」


Round 5 : 八十岡 翔太(神奈川) vs. 高桑 祥広(神奈川)

by Daisuke Kawasaki

「連合のユダ」高桑 祥広さて、急遽本日の日本勢の最大のトピックとなった、「荷物届いていないからデック組めないんだけど」事件。

昨夜、カードを探し回っていたのはすでにご紹介した5名だが、実はもうひとり、この事件に巻き込まれていたプレイヤーがいた。

本年の日本代表にして、「連合のユダ」のふたつ名を持つ男、高桑 祥広(神奈川)である。

高桑 「ラッシュ(高橋 純也(東京))に赤白GAPPOという最強のデッキをシェアしてもらったんですけど...荷物が届かなかったんで使えませんでした...」

という高桑だが、そうそうに藤田 修(京都)から、デックを借りることに成功し、昨夜は代表チームの練習に専念することができたという。

そんな日本代表チームをすくった、藤田のデックが、長岡 崇之(京都)が構築し、藤田 剛史(大阪)がアドバイスしたという、最強布陣のドランデック。

高桑 「いやぁ、本当にラッシュのデッキ使いたかったんですけど、事故じゃしかたないですよねぇ...ラッシュごめん!」

八十岡 「言ってくれれば、パーツ全部あったけどね」

と、見事なユダっぷりを発揮する高桑にコメントするのは、ご存じ「鬼神」八十岡 翔太(神奈川)。

タカラトミー公式サイトにて連載されている「スタンダードウォッチング」にて、今年ある意味ブレイクした八十岡。
最新回で「フェアリーに勝てるデックは?」「ないよ」とコメントした責任を果たすべく、八十岡としては珍しいくらいにメタゲームのど真ん中の青黒フェアリーを持ち込んできた。

いわゆる浅原 晃(「ノーテゼレット」同様に、メインから《コショウ煙/Peppersmoke》を積んだチューンナップとなっている。

原点は同じカードショップであり、旧知の中でもあるこのふたり。果たして、勝負の行方は。

高桑 「今回、カルマたまりまくったんで、勝てますよ」

「鬼神」八十岡 翔太Game 1

先手は高桑。

2ターン目に《苦花/Bitterblossom》をキャストする高桑だったが、八十岡もまけじと2ターン目に《苦花》。

高桑 「ヤソが2ターン目に《苦花》?」
八十岡 「あぶねぇ、トップした!」
高桑 「っていうか、事故ったんだけど...」

と、2ターン目に土地がとまってしまい、《極楽鳥/Birds of Paradise》をキャストするのみにとどまる高桑。

その《極楽鳥/Birds of Paradise》に打ち込まれる《コショウ煙/Peppersmoke》!

高桑 「つか、なんでメインなんだよ!」

高桑の《安寧砦の精鋭/Safehold Elite》も《霊魂放逐/Remove Soul》でカウンターし、これには八十岡もご満悦。

ようやく2枚目の《つぶやき林/Murmuring Bosk》をドローし、高桑は《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》をみせつつ、アンタップインし、《幽体の行列/Spectral Procession》をキャストする。

八十岡は《ウーナの末裔/Scion of Oona》をキャストし、高桑の《幽体の行列》に対抗する。

《安寧砦の精鋭》《極楽鳥》とさらに戦線を追加する高桑ではあったが《極楽鳥》は《恐怖/Terror》され《苦花》でそろそろ自身のライフが厳しくなってきてしまい《ウーナの末裔》による不利なブロックを強要されてしまう。

渾身の《復讐のアジャニ/Ajani Vengeant》も《呪文づまりのスプライト》され、もはや高桑には対抗策がなかった。

八十岡 1-0 高桑

Game 2

またも、土地2枚で事故ってしまう高桑。

そして、希望の《極楽鳥》は、八十岡の《変わり谷》をクリーチャー化しながらの《コショウ煙》で除去されてしまう。

そて、八十岡は続いて《思考囲い/Thoughtseize》で高桑の《潮の虚ろの漕ぎ手/Tidehollow Sculler》を確認しながら、《薄れ馬/Wispmare》をディスカードさせ、《苦花》を着地させる。

高桑 「うーへ、そんなことすんの?」
八十岡 「ここで白マナひかないと(そして《潮の虚ろの漕ぎ手》キャストしないと)本当にゲーム終わるよ」

ここはなんとか白マナを引き込んで、無事《潮の虚ろの漕ぎ手》をキャストする高桑。

開示された八十岡の5枚の手札は以下の通り。

《霊魂放逐/Remove Soul
《謎めいた命令/Cryptic Command
《呪文づまりのスプライト》
《瞬間凍結/Flashfreeze
土地

高桑 「絶望なんだけど、ふざけてる」

《呪文づまりのスプライト》をキャッチし、短気なら投了状態でもあきらめずに、フェアリートークンを2枚の《名も無き転置/Nameless Inversion》で除去しながらの《潮の虚ろの漕ぎ手》アタックを続ける高桑。

八十岡 「ライフだけはなくなってきたよ」

ついに2体のフェアリートークンが並んでしまい《樹上の村/Treetop Village》での攻撃に切り替える高桑。

1体目は《変わり谷》との合わせ技にて討ち取られ、2体目は《謎めいた命令》でバウンスされてしまう。

この《謎めいた命令》を《耳障りな反応/Guttural Response》でカウンターし、《瞬間凍結》を使わせた高桑。

一方の八十岡、完全に盤面を支配しているようにみえるものの、なかなか決定打をひかず、防戦に回させられている。

高桑は、2体のフェアリートークンに向かって《潮の虚ろの漕ぎ手》を突っ込ませる。これを当然2体でナイスブロックする八十岡だったが、高桑は八十岡の当たり牌を完全にとめている。

《名も無き転置》をトークンを対象に。

これに高桑のまだみていない《謎めいた命令》を打ち込んだ八十岡だったが、高桑はここで2枚目の《耳障りな反応》をキャストする。

そして、派手な攻防が繰り広げられたのはここまでだった。

このあとは、なにもないまったりとしたデュエルの中で、じわじわと《苦花》で八十岡のライフがなくなるだけだったのだ。

八十岡 「土地しかひかないんだけど」

八十岡 1-1 高桑

Game 3

八十岡と高桑の一戦1ターン目に《風立ての高地/Windbrisk Heights》をセットする高桑。

八十岡 「珍しいランドセットしたね」
高桑 「本日初登場ですよ」

そして、2ターン目《苦花》から3ターン目《幽体の行列》という、これまでの2ゲームが嘘のような展開を見せる。

というか、デックがドランから白黒トークンにかわっている。

これが長岡クオリティか。

高桑 「マジすんませーん」

一方の八十岡は、2枚の《フェアリーの集会場/Faerie Conclave》に《島》と黒マナがでない。

《ジェイス・ベレレン》をキャストし、ドローを進めるが、ひいてきたカードは...3枚目の《フェアリーの集会場》。

八十岡 「なんだよ、これー」

とたたきつけるようにセットランド。

高桑は《ジェイス・ベレレン》にトークンたちを攻撃させ、《風立ての高地》から《潮の虚ろの漕ぎ手》をキャッチ。

黒いカードだらけの八十岡の手札から《コショウ煙》を捨てさせると、未だ黒マナを引けない八十岡にむかってトークン全軍で攻撃。

《フェアリーの集会場》をクリーチャー化してライフを守ろうとする八十岡に対して、そうはさせじと《名も無き転置》で除去しようと試みる高桑。

これをトップデックしていた《呪文づまりのスプライト》でカウンター。八十岡、珍しくトップが強い。

続いて、念願の黒マナとして《沈んだ廃墟/Sunken Ruins》をドローした八十岡は《静月の騎兵》をキャストするが、飛行用のマナを確保できない為、高桑のフルアタックがとめられない。

八十岡のライフは8。しかも、手札のうち2枚は《苦花》だ。

6枚目の土地として《島/Island》をひいた八十岡は《苦花》をキャストし《霧縛りの徒党》で覇権する。

これもとわず高桑はトークンで全突撃を加え、八十岡のラフを3まで減らす。

八十岡は、ふたたび土地をセットする。

高桑 「手札3枚?」
八十岡 「3枚」
高桑 「なんかあったっけな...」

すでに《潮の虚ろの漕ぎ手》で八十岡のすべての手札を知っている高桑は、とりあえず全軍でアタックする。

これに対して、冷静にブロック割り振りをする八十岡。

高桑 「え、なに、なに?なにがあんの?」

なにもない。

八十岡 1-2 高桑

高桑 「ヤソが2ターン目に《苦花》置いちゃったら、カルマ使い果たしちゃうに決まってるじゃん」

もはや、ちょっとした新興宗教の「教祖」と化している高桑だが、カルマの甲斐もあって4勝目をあげることに成功する。


Round 6 : 大礒 正嗣(広島) vs. Paulo Vitor Da Rosa(ブラジル)

by Daisuke Kawasaki

さて、世界選手権でのフィーチャリングエリアと言えば、その開催地にあわせて趣向が凝らされることでよく知られている。

せっかくなので、ここで今年のフィーチャリングエリアのコンセプトについてご紹介しよう。

もちろん、エルビス生誕の地メンフィスでの世界選手権なのだから、コンセプトはロックンロール...というわけではない。

マジックのマナの色である5色で彩られた5つの席が、5角形のフィーチャリングエリアのそれぞれの角に設置されている。

そう、今年の世界選手権のフィーチャリングエリアのコンセプトは、そのものずばり、「アラーラの断片」なのだ。

各断片で、プレインズウォーカー同士が戦いを繰り広げるという、まさにアラーラの世界観をこの世界選手権で現実のものとしたというわけだ。

そして、このスタンダードラウンド最終戦であるラウンド6において、断片のうち、4つまでが日本人プレイヤーによって締められることとなった。

主に航空事故に代表されるように紆余曲折あり、この4人が実は同じ人物から多かれ少なかれカードを借りており、その人物が最近結婚したことによる幸せパワーのお裾分けとしてフィーチャーされるほどの好成績を残しているという噂もあったりなかったりするが、それは余談として置いておこう。

そんな第6ラウンドでフィーチャーするのは、黒に彩られた「グリクシス」のシャードで対戦する「世界のISO」大礒 正嗣(広島)と、「ブラジル新世代の旗手」Paulo Vitor Da Rosa(ブラジル)という両国を代表するプレイヤーによる初日全勝をかけたマッチアップだ。

会場最大勢力である青黒フェアリー同士のマッチアップを制し、初日を全勝で飾るのはどちらか。

Game 1

先手は大礒。

2ターン目に《苦花/Bitterblossom》を着地させることに成功するものの、土地が2枚でストップしてしまう。

一方で対するPauloは順調に土地を伸ばし、大礒のターンエンドに《苦花》をバウンスするべく《謎めいた命令》をキャストする。

そして、大礒に《砕けた野望/Broken Ambitions》を使わせ、フルマナタップ状態のところで、《変わり谷/Mutavault》でアタックしつつ、《ウーナの末裔/Scion of Oona》で増強する。

すでに激突で確認していた3枚目の土地を手札に入れ、自身のメインターンに《苦悶のねじれ/Agony Warp》で《ウーナの末裔》を除去する大礒。

だが、このマナがないタイミングでPauloは《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》をキャストし制空権を握ろうとする。

どうにか土地をひかなければならない大礒は、これに対してX=0で《砕けた野望》をキャストし、ライブラリートップの《ジェイス・ベレレン》を底へと送り込む。

その甲斐あって、大礒は4枚目の土地をトップデックする。

トークンすべてでアタックし、《霧縛りの徒党》にブロックされたトークンを覇権して《霧縛りの徒党》をキャストする。

こうしてかなりタイトなダメージレースが展開されることとなってきた。

まず盤面を大きく動かしてきたのはPaulo。

大礒の《霧縛りの徒党》を《誘惑蒔き/Sower of Temptation》で奪う。

大礒はこの2体の《霧縛りの徒党》による攻撃を2体のフェアリートークンでチャンプブロックし、ターンエンドに《ウーナの末裔》をキャストする。

そして、これが《謎めいた命令》でカウンターされた隙に、《苦悶のねじれ》で《誘惑蒔き》を除去し、見事《霧縛りの徒党》を奪い返す。

この奪い返した《霧縛りの徒党》が《謎めいた命令》でバウンスされてしまうとマナでも手札でも差をつけられている大礒は、慎重なゲームプランを求められてしまう。

大礒は、まずは《ウーナの末裔》をキャストすると、Pauloの《霧縛りの徒党》をフェアリートークンでチャンプブロックしたタイミングで《霧縛りの徒党》をキャストする。

これは《砕けた野望》でカウンターされるが、かわりに2体目の《ウーナの末裔》をキャストすることに成功する大礒。

この状態で《ジェイス・ベレレン》までキャストされてしまうと、Pauloに対抗するすべはなかった。

大礒 1-0 Paulo

Game 2

後手大礒の《苦花》をPauloが《砕けた野望》でカウンターするのがファーストアクション。

そして、Pauloは3ターン目に《苦花》をキャストし、自分だけ《苦花》状態を作り出す。

たいして、大礒は《ジェイス・ベレレン》をキャストし、アドバンテージを稼ぎにいく。

この《ジェイス・ベレレン》を《謎めいた命令》でバウンスするPauloだったが、この隙に《思考囲い》を通してしまう。

《呪文づまりのスプライト》
《ジェイス・ベレレン》
《恐怖/Terror
《島》

という手札から《呪文づまりのスプライト》をディスカードさせる大礒。つづいて《ジェイス・ベレレン》を再び降臨させる。

Pauloは、フェアリートークンで《ジェイス・ベレレン》の忠誠カウンターを減らしながらのドローエンゴー。

大礒は、Pauloが《地底の大河/Underground River》をセットしたのを確認して、安全に《苦花》を着地させる。

今度はPauloが《思考囲い》をうつ番だ。

《呪文づまりのスプライト》を《謎めいた命令》でカウンターするというプロセスを経て、公開された大礒の手札は、2枚の《謎めいた命令》に《ウーナの末裔》と2枚の土地。

Pauloはここから《謎めいた命令》をディスカードさせる。

大礒は、2枚の《変わり谷》をクリーチャー化させると、一気にアタック。Pauloのライフをけずりつつ、2枚目の《苦花》をキャストする。

どうしても《ジェイス・ベレレン》の忠誠カウンターを減らすために大礒のライフを削っていけないPaulo。しかし、ここで2枚目の《苦花》がキャストされたことで、一気の大礒のライフを削っていくことにプランを変更せざるを得ない。

とにもかくにも、《思考囲い》で2枚目の《謎めいた命令》をディスカードさせると、大礒のアップキープに《霧縛りの徒党》をキャストする。

大礒は、手札に《ウーナの末裔》を握りながらも、これをキャストするタイミングではないと、土地をタップする。

この隙に打ち込まれる《思考囲い》によって、大礒の手札が《ウーナの末裔》以外が土地であることが明らかになってしまう。

Pauloは、ここで安全確認の後にジェイス・ベレレン》を対消滅させる。

そして、フルアタックしてきた大礒の《変わり谷》に対して《恐怖》。

ここで大礒が魅せる。

なんと《ウーナの末裔》をトップデックしていたのだった。

観戦していたブラジル勢から、歓声が上がる。

Pauloは2枚目の《ジェイス・ベレレン》でドローをし、大礒に手を差し出した。

大礒 2-0 Paulo

大礒 「世界選手権では日本代表を優勝させますよ」

日本選手権で優勝を決めた直後に大礒は力強く語った。

その言葉を裏付けるがごとき6連勝。

続く国別対抗戦2ラウンドにも期待が高まる。


Team Round 1 : 日本代表 vs. オーストラリア代表

by Keita Mori

個人戦スタンダード6回戦を終えて、日本代表チームとしての全体順位は暫定2位。大礒が6連勝、高桑と渡辺が4勝2敗という好成績をおさめている。そんな中で、チームメンバーの戦績がトータルで15勝3敗という驚異のハイアベレージをたたき出しているオーストラリア代表が暫定トップ。当然のように、日本代表対オーストラリア代表がフィーチャーマッチに選出された。

 

  日本代表 オーストラリア代表
Standard 渡辺 雄也/青黒フェアリー Brandon Lau/赤白ヒバリ
Extended 大礒 正嗣/青黒ウルザトロン Aaron Nicastri/青黒ウルザトロン
Legacy 高桑 祥広/白単スタックス Justin Cheung/青黒緑グッドスタッフ

団体戦で配布されるマッチポイントは、単純に個人戦の3倍に相当する。つまり、個人戦では3人揃って勝たないと獲得できない9点のマッチポイントを、団体戦であれば2勝1敗という成績でも獲得できるという点は個人戦との大きな違いと言えるだろう。(※個人戦だと2勝1敗だと6点のマッチポイント)

なお、今年度の団体戦の試合形式は、スタンダード、エクステンデッド、レガシーという三つの異なる形式の構築フォーマットのデッキをそれぞれの代表チームが持ち寄って戦うというシステムである。つまり、世界選手権個人戦では適用されていない競技形式であるレガシーが採用されているという点が、この国別対抗団体戦のキーポイントであり、見所でもある。

レガシーを担当する「ユダ」高桑 祥広レガシーとは、過度に強力な一部のパワーカード(※《Black Lotus》など)を使用禁止とし、残るすべてのマジック:ザ・ギャザリングのカードによってデッキを構築してよいという、広く、深いフォーマットなのである。

そんな中、2008年度日本代表でレガシーを任された高桑 祥広(神奈川)は、直前まで青黒ないし青黒赤の「アド・ストーム」デッキの使用を真剣に検討していた。「アド・ストーム」とは、11月にグランプリ岡山と併催された岡山レガシーオープンの決勝でも驚異の2ターンキルを披露している高速コンボデッキだ。文字通り、《むかつき/Ad Nauseam》をキーカードとしてマナ加速呪文やゼロマナ・アーティファクトを大量展開し、そこから超大型の嵐(※「ストーム」)を引き起こして《苦悶の触手/Tendrils of Agony》などでフィニッシュする。

岡山オープンでチャンピオンに輝いた齋藤 悠(神奈川/DCI認定レベル2ジャッジ)の強力なデッキレシピをほとんどそのままコピーする可能性も濃厚だった日本代表チームだが、直前になってデッキ選択を白単色のスタックスに変更している。

「スタックス」というのは、ヴィンテージで広く知られた《煙突/Smokestack》を悪用するデッキの名称で、これをレガシー仕様にチューンしたバージョンが《ハルマゲドン/Armageddon》や《戦の惨害/Ravages of War》といった「ゲドン」6~8枚体制によるマナ拘束を意図した白単色という次第である。

高桑 「まず、とても僕一人の力では必要なカードを用意できませんでしたから、サポートしてくれた皆さんにお礼を言いたいです。なぜ、直前になってデッキ選択を変えたかと言うと、アド・ストームは四連勝も十分有り得るけれど、メタられていて全然勝てないという可能性もまた大きいだろうってチームで判断したんです。チームとしては、レガシーは通算2勝2敗あたりの安定した戦績をとれそうなほうにしようということで、スタックスになったんです」

《精神の願望/Mind’s Desire》でならした大礒 正嗣と、赤単ストームで日本選手権準優勝という栄光を勝ち取った高桑 祥広。「ストーム」というメカニズムを利用したコンボの強さと脆さとを熟知した日本代表だからこその、直前のデッキ変更という賭け。

はたして、のるか、そるか?

Legacy Match Report : 高桑 祥広 vs. Justin Cheung

ジャスティン・チェンはスタンダードで6戦全勝を飾っている運よく先手を獲得できた高桑は、祈るように初手を開く。しかし、土地と重いスペルしか見当たらない7枚をやむなくマリガン。続いて、マナソースの無い6枚をマリガン。苦しい5枚のハンドをキープすることになった。

そして、やはり、というか・・・

先手ながら第1ターンにセット《不毛の大地/Wasteland》のみ、2ターン目には土地もおけない、という明確なマリガントラブルからのマナアクシデントを起こしてしまう高桑。一方、チェンは淡々と4枚のオンスロートのフェッチランド(※《汚染された三角州/Polluted Delta》と《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》)をセットし、一気に4枚を起動してから《墓忍び/Tombstalker》の召喚へとつなげた。

高桑に出来たことといえば、X=1の《虚空の杯/Chalice of the Void》と《亡霊の牢獄/Ghostly Prison》をプレイしたくらいのもの。《Force of Will》をしっかりと手札にかかえながら、チェンは悠々と毎ターン2マナを支払ってのビートダウンを達成した。

チェン 1-0 高桑

気を取り直して、ふたたび先手を迎える高桑。今度は2ターン目に《古えの墳墓/Ancient Tomb》によるマナ加速から「変異」(※裏向きで3マナ2/2として)状態の《賛美されし天使/Exalted Angel》を送り出すが、チェンは淡々とフェッチランド起動からの《目くらまし/Daze》でこれを打ち消す、という流れ。

高桑は潤沢なマナに裏打ちされた《煙突/Smokestack》を3ターン目に設置し、「スタックス」デッキの本領を観衆の前で発揮しようと試みる。しかし、冷静にチェンは時間稼ぎの生贄用に《タルモゴイフ/Tarmogoyf》をプレイし、まもなくサイドインした《クローサの掌握/Krosan Grip》で《煙突/Smokestack》を粉微塵にする。

ならば、と《世界のるつぼ/Crucible of Worlds》を置いてからの《ハルマゲドン/Armageddon》によって両陣営のマナを一掃してゲームを再構築にかかる高桑だったが、ここでキーポイントとなったのは高桑には《不毛の大地/Wasteland》がなく、前述のるつぼとの土地破壊ループで相手をロックするモードには移行できなかったのである。

他方、運よく土地のドローに恵まれたチェンは、かわるがわる2体の《タルモゴイフ/Tarmogoyf》を送り出してビートダウンをスタート。高桑もフィニッシャー兼ライフ獲得要員である《賛美されし天使/Exalted Angel》を1枚展開できたのだが・・・《古えの墳墓/Ancient Tomb》を繰り返し使用しすぎていたためにライフに余裕が無く、敵陣のダブル=タルモゴイフは5/6という巨大さで、さらに無為なドローばかりが続いてしまうという不運。

無念にも、高桑 祥広はストレートで星を落としてしまった。

高桑 2-0 チェン

しかしながら、チームメイトたちが奮闘。「一人が皆のために、皆が一人のために」という側面も団体戦ならではの醍醐味だろう。フェアリーを駆る渡辺 雄也が2-0でスタンダードに勝利(対”Gappo”赤白ヒバリ)し、青黒ウルザトロンの同系対決となった大礒 正嗣が時間いっぱいでの引き分けというスコアを記録した。ちなみに、大礒の引き分けと言うのは、三試合ともに対戦相手のアーロン・ニカストリが先にウルザ=トロンをそろえるという厳しい展開の中で「つかみとった」ものであることを記しておきたい。

かくて、日本代表は引き分けによる勝ち点3点獲得という、悪くもない、しかしながら凡庸な国別対抗団体戦のキックオフということになった。


Team Round 2 : 日本代表 vs. ウクライナ代表

by Daisuke Kawasaki

渡辺 vs Igor初戦を引き分けと、出鼻をくじかれる形となってしまった日本代表チーム。

続いて対戦するのは、4位のウクライナ代表チームである。

スタンダード:Igor Gurov:青黒フェアリー
エクステンデッド:Yuri Babich:赤単
レガシー:Dmitry Kholyavko:青単Dreadstill

このマッチアップの中でも、「スタンダードキング」としてチームメイトから信頼され、まっさきに担当フォーマットが決まった渡辺 雄也(神奈川)による青黒フェアリーの同型マッチをお届けしよう。

対戦相手のIgorは、とにもかくにも、笑顔でよく喋る。

■渡辺 雄也(神奈川) vs. Igor Gurov(ウクライナ)

Game 1

先手の渡辺が、マリガン後のIgorに《思考囲い/Thoughtseize》。

ここで《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》が2枚に《恐怖/Terror》という手札から、《呪文づまりのスプライト》を捨てさせると、2ターン目に《苦花/Bitterblossom》という最上の立ち上がり。

早くもトップデック期待で、ライブラリーをたたきつけるようにドローし続けるIgorだが、思い通りのカードが引けないようで、みるみる顔から笑顔が消えていく。

場のフェアリーの数を稼ぐ為に、とりあえず《呪文づまりのスプライト》を場に送り出すIgor。土地は止まってしまうものの、渡辺のアップキープに《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》をキャストし《謎めいた命令/Cryptic Command》でカウンターさせることで、メインターンにマナを使わせることに成功する。

しかし、そのメインターンに使用するべき呪文がない。

《静月の騎兵/Stillmoon Cavalier》をブロッカーとして用意したIgorだったが、《ウーナの末裔/Scion of Oona》の前に屈することとなった。

渡辺 1-0 Igor

この時点で、大礒が1ゲーム落とし、高桑はGame 1で《行き詰まり/Standstill》を前に延々と土地を並べ続けるという長期戦の様相を見せている。

Game 2

先手のIgorは2ターン目からの《変わり谷/Mutavault》アタックとアグレッシブなゲームプランでスタートするが、渡辺はこともなしに2ターン目に《苦花》。

これぞ、まさにスタンダードキング。

だが、Igorも3ターン目に、《呪文づまりのスプライト》対策としてフェアリートークンが生み出される前に《ヴェンディリオン三人衆》をキャストする。

開示された渡辺の手札は、2枚の《コショウ煙》に《苦花》《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》に《謎めいた命令》というもの。

これにはウクライナチーム一同苦笑い。

渡辺は《コショウ煙》で《ヴェンディリオン三人衆》を除去すると、2枚目の《苦花》を設置する。

ここでなんとか待望の黒マナである《沼》をひいたIgorは《思考囲い》をキャストする。

開示された手札は、先ほどの手札に《呪文づまりのスプライト》が増えたもの。

《謎めいた命令》をディスカードさせるものの、2枚の《苦花》から生み出され続けるフェアリートークンに対して、Igorは終始苦い顔をし続けることしかできないのだった。

渡辺 2-0 Igor

大礒 vs Yuriさて渡辺に先んじて、大礒が0-2で星を落としているので、チームとしては1-1のタイ。

というわけで勝負の行方は高桑にゆだねられることになる。

Game 1を勝利した高桑が、Game 2で《相殺/Counterbalance》をだされつつも、《幕屋の大魔術師/Magus of the Tabernacle》でビートダウンを続けているところから観戦記事をスタートさせよう。

高桑と対するDmitry Kholyavko(ウクライナ)の使用するデックは、本人曰く「Dreadstill」という、青単の《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》と《もみ消し/Stifle》のコンボに《行き詰まり》と《相殺》という軽量アドバンテージエンジンを加えたデックだ。

■高桑 祥広(神奈川) vs. Dmitry Kholyavko(ウクライナ)

Game 2

《幕屋の大魔術師》でのビートを続ける高桑。

しかし、ここでDmitryの大技が決まる。

《ファイレクシアン・ドレッドノート》をキャストし、その誘発効果を《もみ消し》したのだ。

デック名の根幹ともなるこのコンボによって、わずか2マナで12/12トランプルという化け物が場に降臨することとなる。

これに対処するべく《忘却の輪/Oblivion Ring》をキャストした高桑だったが、Dmitryの手札からは、2枚目の《もみ消し》。

高桑 1-1 Dmitry

Dmitryが星をタイに戻し、両チームの命運はこのマッチにかかることとなる。

Game 3

高桑 vs Dimitry先手の高桑の1ターン目に《古えの墳墓/Ancient Tomb》からの《虚空の杯/Chalice of the Void》を《渦まく知識/Brainstorm》をリムーブしての《Force of Will》で打ち消すDmitry。

土地が1ターン止まってしまう高桑だったが、なんとか3ターン目に《平地》をドローし、《賛美されし天使/Exalted Angel》を変異でキャストする。Dmitryはこれに《目くらまし/Daze》をキャストする。

そして、その返しで、《ファイレクシアン・ドレッドノート》に《もみ消し》。手札は1枚まで減ってしまったDmitryだが、しかし、高桑に2ターンのクロックを突きつける。

高桑は執念の《トロウケアの敷石/Flagstones of Trokair》引きで《沈黙のオーラ/Aura of Silence》をキャストし、これを通すが、能力の起動に対して...またも《もみ消し》。

高桑 1-2 Dmitry

圧倒的なカードプールを誇るレガシーでも、最強カードの一角として知られる《もみ消し》。

だが、日本代表チームの闘志まではもみ消すことはできない。

是非とも、明日のドラフト6回戦、そして3日目の8回戦を戦い抜き、日曜日に三人で姿を見せてくれることを信じたい。


Thursday 21:35 : Feature Article - 八十岡×川崎のスタンダードウォッチング:世界選手権速報編

By Daisuke Kawasaki with Shouta Yasooka

世界選手権初日。

スタンダードによる6回戦が終了した。

果たしてこのメンフィスの会場に日本から渡米してきた25人のプレインズウォーカーたちは、どのようなデックを使用し、そして、どのような物語を紡いでいったのだろうか。

ここでは、タカラトミー公式サイトにて「スタンダードウォッチング」を好評連載中の「鬼神」八十岡 翔太(神奈川)に、この世界選手権でのスタンダード環境の雑感を語ってもらうとともに、日本勢の初日の戦いを紹介していこう。

八十岡 「いつもと、ずいぶん文体違うよね。使い分けてんの?」

川崎 「余計なお世話です。と、まぁ、そういうわけで、せっかくヤソもいるんだしというボスの鶴の一声で急遽この会場でおこなう事となったスタンダードウォッチングですが」

八十岡 「わざわざプレスリーの前でやる必要あるの?」

川崎 「せっかくメンフィスですし、たしかまだこの人形についてはカバレッジで触れていなかったと思うので。それでですね、世界選手権全体のメタゲームについては、タカラトミー公式サイトでまたじっくりやるとして、今日は初日の日本勢の戦いを振り返りつつ、軽く日本勢の使用デックをみていこうかと、そういうコンセプトでどうかなと」

八十岡 「筆遅いから、普通にやったら、おわんないもんね」

川崎 「余計なお世話です。では、まずは、一気に参加日本勢の使用デックと初日の成績の一覧表を見てみましょうか」

 

Name Prefecture Standard Deck Designer Day 1
浅原 晃 神奈川 青黒フェアリー 佐々木 将人 18
大礒 正嗣 広島 青黒フェアリー 渡辺 雄也 18
彌永 淳也 東京 青黒フェアリー 彌永 淳也 15
池田 剛 福岡 赤黒ビートダウン 中野 圭貴/藤田 剛史 15
大塚 高太郎 神奈川 青黒フェアリー 佐々木 将人 15
栗原 伸豪 東京 青黒フェアリー 浅原 晃 12
津村 健志 広島 青黒フェアリー 津村 健志/森 勝洋 12
渡辺 雄也 神奈川 青黒フェアリー 渡辺 雄也 12
高桑 祥広 神奈川 ドラン 長岡 崇之 12
三田村 和弥 千葉 ユグドラシル 清水 直樹 12
森 勝洋 大阪 青黒フェアリー 森 勝洋 12
中野 圭貴 大阪 赤黒ビートダウン 中野 圭貴/藤田 剛史 12
北山 雅也 神奈川 赤黒ビートダウン 彌永 淳也 12
藤田 修 大阪 赤黒ビートダウン 中野 圭貴/藤田 剛史 12
重原 聡紀 山口 青黒フェアリー 平林 和哉 12
中島 主税 神奈川 白黒トークン 佐々木 将人 11
高橋 優太 東京 青黒フェアリー 高橋 優太 9
八十岡 翔太 神奈川 青黒フェアリー 八十岡 翔太 9
小室 修 東京 緑黒エルフ 相澤 恵司 9
金子 真実 埼玉 青黒フェアリー 金子 真実 9
中村 修平 大阪 青黒フェアリー 渡辺 雄也 9
齋藤 友晴 東京 赤黒ビートダウン 齋藤 友晴 6
三原 槙仁 千葉 ユグドラシル 清水 直樹 6
小池 貴之 栃木 白黒トークン ―― 3
平林 和哉 神奈川 青黒フェアリー 佐々木 将人 3

 

Bitterblossom

川崎 「一見してわかることですが、やっぱり、最大勢力は青黒フェアリーですね。まだ正確なブレイクダウンはでていないんですけど、僕が会場をブラブラ見学した感じでもやっぱり青黒フェアリーがダントツで多かった印象があります」

八十岡 「まぁ、予想通りでしょ」

川崎 「八十岡さんや浅原(晃)さんすら青黒フェアリーという状況ですからね」

八十岡 「それくらいデッキパワーに差があるんだよ。正直、同型対決は、《苦花》を両方おけるか、もしくはどちらもおけないか、という段階を超えて初めてプレイングの勝負になるくらいのゲームではあるんだけど、それでも青黒フェアリーを使用したいというくらいにデッキパワーが違いすぎる」

川崎 「実際のところ、成績にも大きく幅がありますからね。日本人初日全勝のふたり(浅原・大礒)も青黒フェアリーですし、5-1ラインの3人のうち、ふたり(大塚・彌永)が青黒フェアリーな一方で、八十岡さんをはじめ、色々厳しい成績になってしまった人も少なくないですからね」

八十岡 「土地しかひかないんだよ...」

川崎 「あ、一応八十岡さんの名誉の為にフォローしておくと、実際に八十岡さんは土地しかひかなくなって負けてることが非常に多いです。カバレッジとっていて、結びの文を「八十岡は土地しかひかなかったのだった」でまとめること多いですもんね」

八十岡 「逆に浅原さんは、4回フェアリーとあたってるけど、1回も『対戦相手だけ《苦花》』という状況にならないで、全マッチ2-0での6-0だから」

川崎 「スーパーライアンチャンスだ!励みになります!って大喜びしてましたからね。まぁ、フェアリーについてはここで今触れることは、あまりないですか」

八十岡 「ナベ(渡辺 雄也)がスイスラウンドの結果を見て、国別対抗のデッキのメインに《コショウ煙》を増やしたとかそんな話あるみたいだよ」

川崎 「もともとそういうチューンの浅原さんや八十岡さんの「ノーテゼレット」フェアリーはメタ的には勝ち組だったと。そして、日本人で5勝している最後のひとりである池田さんですが、これがフェアリーメタの最右翼である赤黒ビートダウンですね」

八十岡 「ローリーさん(藤田 剛史(大阪))のデッキだね。浅原さんとかルーキー(大礒)みたいにプレイングでねじ伏せようって考えれば青黒フェアリーでもいいけど、会場に来る前にまずはデッキで勝とうって考えれば、赤黒ビートはいい選択肢だと思うし、実際それがはまった形になったね」

川崎 「実際、使用者5人中4人が4勝以上と安定した勝率をみせていますね。ただ、齋藤さんが...」

八十岡 「これが赤黒ビートダウンの弱点でもあると思うんだけど、メタ外というか、そういうデックに当たると、フェアリーのようにデッキパワーでゴリ押せないから一気に厳しくなる。トモハル(齋藤)の一回戦の相手なんて《薄暮の大霊/Oversoul of Dusk》入りの白緑ビックマナだったらしいからね」

川崎 「序盤で勝てないと厳しいと」

八十岡 「そうでもないけどね。池田さんも最終戦で比較的メタ的に薄い赤白ヒバリ踏んで、メインからの《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender》に痛い目に遭ったらしいから」

川崎 「あぁ、その赤白ヒバリ、先週おこなわれた50$トーナメントでトップ8に3人を送り込んだことで、一気に注目されましたね。以前から調整していたと主張するラッシュ(高橋 純也)は非常に悔しがっておりましたが」

八十岡 「クワ(高桑)が使わなかったことで、日本人ひとりも使ってないけどね」

川崎 「あぁ、高桑さんね...えっと、この赤白ヒバリはどうなんですか?結果的に初日全勝者にひとり送り出してますけど」

八十岡 「あんまり回したことないから、いまいち自信がないんだけど、渡米前日50$の結果見て一応作ってみた中島さんの話だと、結構動きがちぐはぐらしいよ」

川崎 「マナ域のバランスが危ういですからね。でも、パーツパーツでみると、たしかにメタゲーム上のデックほとんどに良さそうにもみえますよ」

八十岡 「パーツは強いよね。そういう意味でもラッシュっぽいデッキではあるね」

川崎 「で、そのラッシュをユダって高桑さんが使用しているのが「教祖」長岡 崇之(京都)作成による...えっと一応ドランって分類されてますね」

八十岡 「これって、The Finalsスペシャル予選・近畿で長岡さん本人が使用していたデックの調整版でしょ。これって、ドランって言うよりは、白黒トークンに緑入れて、《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》をタッチしたっていうほうが正確かもしれないね」

川崎 「あぁ、たしかにそれがしっくり来ますね。さっきフィーチャリングマッチとらせてもらってますけど、八十岡さんが負けたデックですね」

八十岡 「土地しかひかなかったからねー」

川崎 「はいはい」

八十岡 「ちなみに、普通の白黒トークンに比べると、《極楽鳥/Birds of Paradise》が入っているうえに、フィルター土地が増やせて《つぶやき林/Murmuring Bosk》もいれられるから、事故りにくい...っていう話だよ」

川崎 「なんか、めずらしく自信のないコメントですね」

八十岡 「いや、このデッキは本当にわからないから。長岡さんにきいておいてよ」

川崎 「がんばります。しかし、白黒トークンは事故が一番の弱点と言われているだけに、そこを克服しているのは興味深いですね。他に白黒トークンを使っているプレイヤーというと...中島さんと小池君ですか。小池君は...例の事故でいきなりなれないデックになってしまっただけに仕方ないって話ですかね」

八十岡 「まぁ、白黒トークンのメリットは6-0できないけど、3-3や4-2は比較的安定してできるって言う丸いデッキだってところだからね」

川崎 「優勝狙うならともかく、中島さんみたいに確実にプロポイント1点上乗せしたい人にはいいデックだと」

八十岡 「まさにその通りだね」

川崎 「同じように、今大会でのプロポイント2点上乗せを目指す「華麗なる天才」小室さんは、緑黒エルフですね。緑黒エルフはどうですか?」

八十岡 「今日エルフに負けてから、一気に引きが悪くなった」

川崎 「きっと世界中のエルフ使いからの呪いですね。そういや、今期エルフで相当プロポイントを稼いだ中村さんはめずらしく青黒フェアリーを使ってますね」

八十岡 「ぎりぎりまで、コムシュー(小室)と同じタイプのエルフ使おうか悩んだらしいけど、結局フェアリーにしたみたいだね」

川崎 「これだけフェアリーがいるとどうしても...ってなりますよね。フェアリー相手と言えば、ラウンド3で森勝洋さんが対戦してたFinkelの使用しいた5色コントロールみなタイプのデックはどうですかね」

八十岡 「うーん...雰囲気ではあんまり勝っていなかったような気がするんだけどなぁ」

川崎 「まぁ、その辺が実際どうだったかっていう答え合わせは、注目スタンダードデックと併せて、日本に帰国してからのタカラトミー公式でのスタンダードウォッチングで改めて細かくやる、ってことでどうですかね」

八十岡 「宣伝好きだね。じゃあ、そういう感じでいこう。大体のデッキの解説も終わったし、そろそろ帰るね」

川崎 「あ、八十岡さん!ユグドラシル、ユグドラシル!」

八十岡 「ユグドラシル?なにそれ?」

 

Mistmeadow Witch

川崎 「清水(直樹)さんの《ミストメドウの魔女/Mistmeadow Witch》入りの青白緑ヒバリですよ。日本勢では、三原さんと三田村さんが使ってます」

八十岡 「でもみたむー(三田村)はフェアリー使うつもりだったのに、例の事故で仕方なく、って感じでしょ」

川崎 「結構影響大きいですね、あの事件。で、このデックはどうですか?日本勢では高桑さんに続いて個性的なデックを使ってることになりますけど」

八十岡 「あー、うーん...フェアリー以外には強い、かなぁ...いや、マッキー(三原)は白単と赤単に負けてるんだけどさ」

川崎 「かわりに、三田村さんが初戦でいきなりフェアリーに勝利してますけどね」

八十岡 「みたむーだから勝てた、ってのはあるかもね。あと、一応まったくわからないデッキなんで、対戦相手のミスを誘いやすいっていう利点はあるかもしれないね。あと、これはシミチンのデッキに共通した特徴だけど、ブン回ったときのトップスピードだけはすごい」

川崎 「かみ合った時に強い、ってことですか」

八十岡 「重いパワーカードのコンボデッキだしね。そういう意味では、たまたまとはいえ、千葉のふたりがこのデッキを使ってるのは運命的かもしれない」

川崎 「言われてみると、千葉っぽいデックかもしれないですね...そういや、このデックについて三原さんに相談されたんですけど」

八十岡 「マジックのことで川崎さんに相談することなんてあるの?」

川崎 「いや、デック名で」

八十岡 「あぁ」

川崎 「清水さんは三原さんに、デックシェア料はいらないから、デック名だけはリスペクトしてくれ、って言われたらしいんですよ」

八十岡 「へぇ」

川崎 「あんまり露骨に興味ない態度を見せないでくださいよ、そのせいで、今回も僕らユグドラシルってこのデックを呼んでるんですから。で、清水さんが以前から公表していたデック名なんです...最後のRとLが間違っていたせいで、ユグドラシルじゃなくてユグドラサーなんだけどどうしたらいいかって」

八十岡 「...本当にどっちでもいいよ」

なお、八十岡は、インタビュー終了後に「明日はドラフトで6-0しますよ...土地さえひきすぎなければ。負けられない戦いがある!」と宣言してくれた。

初日を好調で折り返したプレイヤーも、スタンダードでは本調子を出せなかったプレイヤーも、まだまだ油断には早い。なにせ世界選手権はまだあと二日もあるのだ。

明日はブースタードラフト3回戦×2の6回戦。

こちらも、本日に引き続きレポートをしていくので、期待してお待ちいただきたい。


Round 2: 花の蜜は甘いとは限らない

By Nate Price / Translated by Sugaya Akio

ちょっとしたタイトル・マッチとも思える試合です。渡辺 雄也は昨年度の新人賞獲得選手で、今年の日本代表チームのメンバーでもあります。彼はそのマジック歴の早いうちから素晴らしい成績をおさめている若手の一人でしょう。一方、その点では、対戦相手に関しては何も言うことはありません。イェルガー・ ウィグラーズマはこの10年来で最も堅実にマジックで成績を残している選手です。もしも、どこかのトーナメントでイェルガー選手の姿がTop16以内にみられなかったとしたら、それは彼が参加していないからですよ。もう、これは伝説級でしょう。

この大会はイェルガー選手にとって記念すべきイベントでもあります。その飛びぬけて優秀で堅実な年月が同輩たちにも認められ、投票の結果、見事2008年度の殿堂入り選手となったのです。お洒落な縦縞スーツ姿で祝典セレモニーに参加した姿は、そこらのTVキャスターなどよりも立派に見えましたよ。

Game 1

去年の新人賞獲得の渡辺 雄也選手、対するは殿堂入りを果たしたばかりのイェルガー・ ウィグラーズマ選手

イェルガーがダイスロールに負け、初手も6枚にせざるを得なくなったところを見ると、マジックの神さまはあまりファッションに興味がなさそうです。ひょっとしたら、そのセンスが羨ましくなってハンデをつけたのかもしれませんけどね。初手には一枚しか土地がありませんでしたが、デッキは2マナを用意させてくれて、渡辺の3ターン目の《ウーナの末裔/Scion of Oona》は無事に《霊魂放逐/Remove Soul》、続くターン終了時の《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》も同様に打ち消します。それでも渡辺は隙を見つけて二枚目の《ウーナの末裔/Scion of Oona》を滑り込ませて、ビートダウンを開始しました。

小さなフェアリーがライフを削るのを気にせずに、イェルガーは渡辺のターンに《エスパーの魔除け/Esper Charm》でカードを引きます。《紅蓮地獄/Pyroclasm》と小うるさい飛行クリーチャーとを交換したあとは、お互いにドローとディスカードと失笑の繰り返しとなりました。こんな『ドロー・ゴー』もありなのでしょうね。

そんななかイェルガーは《エスパーの魔除け/Esper Charm》で渡部に2枚ディスカードさせましたが、手札は単体除去ばかりで、攻めに転じることができません。どちらもクーチャー不足の様子です。ようやくイェルガーが《熟考漂い/Mulldrifter》で仕掛けるも、渡辺は《謎めいた命令/Cryptic Command》で対応し、相手の土地がタップしている隙に《苦花/Bitterblossom》を場に出しました。イェルガーの《霊魂放逐/Remove Soul》が効かない唯一の攻め手です。

さて、トークンでアタックする時間の始まりです。イェルガーは《雲打ち/Cloudthresher》を試しますが、渡辺は次の《謎めいた命令/Cryptic Command》を持っていて、まず1点のダメージが入りました。次は渡辺のアップキープに、トークンが場に出てからお伺いをたてます。

《謎めいた命令/Cryptic Command》は切らしていましたが、X=4の《砕けた野望/Broken Ambitions》で止めようとする渡辺。《霊魂放逐/Remove Soul》の相方の《否認/Negate》を引いていたイェルガー、無理やりに巨大なエレメンタルを通しました。

渡辺は《思考囲い/Thoughtseize》で《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》を落とします。《ジャンドの魔除け/Jund Charm》、2枚の《霊魂放逐/Remove Soul》、《糾弾/Condemn》が手札に残りました。これで渡辺のライフは14となり、《雲打ち/Cloudthresher》のアタックでさらに半分になってしまいました。次のイェルガーのターンに《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》をプレイしますが、これは見ている《霊魂放逐/Remove Soul》で打ち消されただけでした。トークンでチャンプブロックを続けますが、残り少ないライフが1点ずつ減っていくばかりです。

さらに渡辺はブロックしたトークンの覇権を試みますが、《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》はイェルガーの手札に残った《霊魂放逐/Remove Soul》を無くすのみです。イェルガーは《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》を加え、とどめをさしにかかります。

さらなる《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》がようやく《苦花/Bitterblossom》を安全な場所に追いやりましたが、いずれにせよ渡辺はブロックしないといけないのだからと、イェルガーは強気にアタックします。《変わり谷/Mutavault》と《フェアリーの集会場/Faerie Conclave》を起動して、両方とも《雲打ち/Cloudthresher》の前に出し、渡辺は《苦悶のねじれ/Agony Warp》をプレイしました。それぞれのカードが墓地に行き、これで渡辺は相手のライフを意識する余裕ができました。ライフを2に減らしながら《思考囲い/Thoughtseize》をプレイして、《エスパーの魔除け/Esper Charm》を選びます。《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》、《ジャンドの魔除け/Jund Charm》、《糾弾/Condemn》が残りました。

イェルガーは攻め続け、《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》に《ジャンドの魔除け/Jund Charm》を使って渡辺の《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》を倒すと、《苦花/Bitterblossom》が場に戻ってしまいました。2ターンの猶予がありましたが、渡辺は何もできませんでした。

イェルガー・ ウィグラーズマ 1- 0 渡辺 雄也

ゲームの序盤に攻め手を用意できなかった渡辺、おかげで6枚の初手でも勝てたイェルガー・ ウィグラーズマでした。デッキの《霊魂放逐/Remove Soul》を引ききったのもなんのその、ですね。

Game 2

渡辺 雄也をご存じないのですか!?

イェルガー・ ウィグラーズマが初手を取った時に筆者に見えたのは、5色デッキの重要参考人と呼べるカードばかりでした。《火の灯る茂み/Fire-Lit Thicket》、《鮮烈な》土地が何枚か、《苦花/Bitterblossom》・・・はて、《苦花/Bitterblossom》?確かに、毎ターン飛行トークンを生み出すエンチャントに対抗するには、同じく毎ターン飛行トークンを生み出すエンチャントなのでしょうけど。《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》でライフ面を補うのも、プランとしては悪くなさそうです。

渡辺の立ち上がりは強力でした。2ターン目に《苦花/Bitterblossom》、それに《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》が続きます。コントロールデッキ相手の《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》は本当に強力で、直接ダメージを与える手段が少ないために、なかなか除去されません。渡辺はさらに4ターン目にトークンを《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》に変えてWiegersmaを追い詰めます。
対抗してWiegersmaは戦闘ダメージの後に《雲打ち/Cloudthresher》を想起し、《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》にも2点を与えて場と一緒に流します。《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》とトークンのやり取りののち、場はほぼ均衡しました。

そんな場で渡辺に与えられたのは《くぐつ師の徒党/Puppeteer Clique》ですが、このカードが信じ難いスタックの連鎖を作り出します。Wiegersmaはその《霊魂を放逐》しようとし、対して渡辺が《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》で止めようとします。クリーチャー呪文は解決されますが、能力の解決の前にWiegersmaが《ジャンドの魔除け/Jund Charm》で《苦花/Bitterblossom》を残して場をきれいにしてしまうと、能力は打ち消されて、《くぐつ師の徒党/Puppeteer Clique》はくずかご行きとなりました。

Wiegersmaは《熟考漂い/Mulldrifter》で、先ほどのやり取りで失った手札を補充します。しかし渡辺はその隙を逃さずに2枚目の《くぐつ師の徒党/Puppeteer Clique》で《雲打ち/Cloudthresher》を奪ったのでした。《雲打ち/Cloudthresher》の能力で場を流し、頑強の《くぐつ師の徒党/Puppeteer Clique》で今度は《熟考漂い/Mulldrifter》を場に戻して手札を補充し、全軍で攻撃をしかけたら、Wiegersmaの残りライフは3となりました。Wiegersmaは《エスパーの魔除け/Esper Charm》でちょっとだけデッキを掘り進めましたが、何も見つからなかったようです。そうして、渡辺は、フェアリー使いなら誰もが望む、相手の『《苦花》死』を見届けたのでした。

渡辺 雄也 1 - 1 イェルガー・ ウィグラーズマ

渡辺の立ち上がりはほぼ理想的だったと言えるでしょう。相手が《否認/Negate》できる前に《苦花/Bitterblossom》をプレイできていますし、《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》もうまいこと使えていますしね。

Game 3

カードの上のダイス。トースト使いはサイコロが無いと落ち着かないらしいですよ

渡辺は今回も《思考囲い/Thoughtseize》と好スタート、イェルガーが2枚目の土地を置く前に《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》を奪い、《ジャンドの魔除け/Jund Charm》や《霊魂放逐/Remove Soul》などを残しました。安全を確認したうえで、再び《苦花/Bitterblossom》を場に出します。次々とトークンが生まれ、攻勢を掛け始めました。2ターン後にイェルガーも同じカードを引き当てましたが、もう手遅れで、トークンの数で追いつく前にライフが無くなってしまいそうです。《苦花/Bitterblossom》の前に《ジャンドの魔除け/Jund Charm》で場を流すだけでは充分とは言えません。イェルガーはもう一回だけ耐えてライフが8点になりました。次のアタック時に《ジャンドの魔除け/Jund Charm》でリセットを図ると、渡辺が《謎めいた命令/Cryptic Command》で対応してきたので、それを《否認/Negate》で打ち消しました。

ですが今やイェルガーは前門のトークン、後門のライフと追い詰められています。加えて渡辺は《変わり谷/Mutavault》と《フェアリーの集会場/Faerie Conclave》が場に出ていて、《ジャンドの魔除け/Jund Charm》で討ち取るしかありません。《変わり谷/Mutavault》のアタックでドイツの殿堂プレイヤーのライフは4点に、渡辺はさらにイェルガーのアッキープに《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》で2マナと《霊魂放逐/Remove Soul》を使わせます。トークンで土地のアタックをチャンプブロックするだけのイェルガーは、もはや《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》を引いても時間稼ぎにしかならず、最後のドローも解決となりませんでした。

渡辺 雄也 2 - 1 イェルガー・ ウィグラーズマ


Round 6: 『 ダイスマン 』

Bill Stark / translated by Sugaya Akio

完璧なプレイを演算中の機械人間ことフランク・カースティン

中村修平とフランク・カースティンの二人が、木曜の個人戦では最後のラウンドの席に着いた。二人ともあまり喜ばしい成績ではない。こざっぱりしたスーツとタイ姿の中村は、大会開始前に行われた殿堂入り祝賀セレモニーと国旗掲揚の時点では、年間最優秀プレイヤーの最有力候補だったのだが、早くもトロフィーまでの道のりが厳しくなってきている。

テーブル向かいのカースティンは自分のフェアリーデッキをシャッフル中だ。以前にプロツアーで病気の体調不良をおして最後まで参加したことから、彼はちょっとしたタフガイ呼ばわりされている。この世界選手権のスタンダードでもなんとか勝ち越しているが、不幸なことに、デッキ調整は実を結ばなかったらしく、そこらじゅうのスタンダードの大会と変わらない結論が出てしまったようだ。それでも誰かが彼のデッキを普通のフェアリー扱いしようものなら、間違いなく一枚一枚のカードの役割について、小一時間は語ることだろう。メインボードに一枚だけ入れている《思案/Ponder》なども実に興味深い。ともあれ、そんな彼がプロプレイヤーのコミュニティ内で尊敬される立場にいるのは確かな事実である。

Game 1

ダイスロールに負けたカースティンは、マリガンをするべきか悩んだ。「丁ならキープ、半ならマリガンだ」言いながら6面体を振る。半の目、手札を戻して6枚にした。中村は《変わり谷/Mutavault》から《島/Island》、3ターン目に《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》と展開したが、フランクの2ターン目の《苦花/Bitterblossom》に負けないためには、より堅強な展開が必要だ。こうしてみると、フランクのマリガンはもっともに思えてくる。

ドイツ人は中村のプレインズウォーカーをアタックで排除しにかかる。対抗する《誘惑蒔き/Sower of Temptation》はカウンターすると、あとは軍勢が増えるに任せてのんびり構え、後方から日本人の抵抗をかく乱して防ぐだけだ。

しかしフランクはただ座するだけでなく、自らも《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》を使い、5枚目の土地を求める。そして、軍勢をプレインズウォーカーの守りに回した。これを好機ととらえたか、中村は2体の《変わり谷/Mutavault》を送り込んでフランクのトークンを消し去るが、《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》は残ってしまう。
結局、2ターン目の《苦花/Bitterblossom》のフェアリー・ならずものが止まることはなく、中村も最後まであがこうとするも、フランクが《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》をプレイした時点で、手の内をさらすよりはと投了したのだった。

フランク・カースティン 1- 0 中村 修平

Game 2

初手にデッキ内全ての《謎めいた命令/Cryptic Command》、さらに一枚も土地が無いのを見た中村は苦笑いしてデッキに戻す。向かいのフランクは冷やかすようにサイコロを振っているが、ひょっとしたら、さっきと同じようにマリガンで悩んでいるのかもしれない。

「マリガン?」問いかける中村。
「たぶんね・・・」曖昧なフラク。

2ゲーム目も、カーステンは2ターン目に《苦花/Bitterblossom》があったが、今度は中村も対抗できた。《砕けた野望/Broken Ambitions》で部族エンチャントを打ち消すと、3ターン目は《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》だ。カースティンが3ターン目に2枚目の《苦花/Bitterblossom》を場に出すと、中村は対象なしで《誘惑蒔き/Sower of Temptation》でターンを返した。

カースティンは《地底の大河/Underground River》をタップして、3点受けながら《思考囲い/Thoughtseize》。2枚の《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》、《誘惑蒔き/Sower of Temptation》がもう1枚、そして《思考囲い/Thoughtseize》の中からソーサリーを選び、フランクはアタックせずにターンを終了する。

中村は《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》の忠誠カウンターを3個にしてお互いにカードを引くことにして、呪文も土地も無いままターンを返す。ドイツ人の《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》を《謎めいた命令/Cryptic Command》で打ち消しながら《苦花/Bitterblossom》を戻そうとするが、フランクは《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》でカウンターし返す。これで《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》は墓地に行ったが、続く中村の《霧りの徒党/Mistbind Clique》が止まらなかった。ライフ差が20対11とリードされている以上、カースティンは自身の《苦花/Bitterblossom》をどうにかしないと負けてしまう。

逆境の中、カースティンは《深水の底引き/Fathom Trawl》でカードを3枚手に入れるが、トークンで《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》をチャンプする守勢は変わらない。さらに《誘惑蒔き/Sower of Temptation》でカースティンのトークンを奪いにかかる中村、カウンター合戦の末、フランクの《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》が場に出てきた。

青色にどっぷり浸かって見える中村修平

二人のポジション争いの結果、クリーチャーになれる土地が大きく勝負に関わりそうになってきた。中村は《フェアリーの集会場/Faerie Conclave》と2枚の《変わり谷/Mutavault》、フランクは《変わり谷/Mutavault》が3枚ある場だ。《ウーナの末裔/Scion of Oona》は場に出せたものの、変わらず《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》をチャンプブロックし続けるフランク、と言うのも覇権しているのが《誘惑蒔き/Sower of Temptation》だからだ。

ライフが4点まで減った時点でフランクは《思考囲い/Thoughtseize》を《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》させて相手の手札を空にし、《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》をプレイして自分自身を対象にした。前のターンに《苦花/Bitterblossom》を置いた中村はトークンを加え、、《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》は打ち消されたものの、さほど気にした様子もなく、ターンを終了した。そこで、フランクは思い切ってしかけた。《謎めいた命令/Cryptic Command》で相手の軍勢をタップさせ、《フェアリーの集会場/Faerie Conclave》をバウンスすると、総攻撃をかける。2体の《変わり谷/Mutavault》でしかブロックできない中村は、ちょうどライフがなくなるのを確かめると、苦笑してうなずいた。

「すげぇ、さすがに負けると思ったよ!」観戦席からフランクに声が飛ぶ。
「うん、僕もそうだったよ・・・」フランクは安堵のため息をついた。

フランク・カースティン 2- 0 中村 修平

「ねぇ、サイコロ振るところは記事にしてくれた?」試合が終わってから、フランクに聞かれた。「あのやり取りなんだけどね、ルーク・ラインハートの『ダイスマン』って本から取ったんだ。何でもかんでもサイコロを振って決める主人公の話なんだけどね、びびっと来たんで、もう少し試してみようと思うんだ」

Frank Karsten

Shuhei Nakamura


Deck Tech: Wakefield氏に幸あれ!

by Marc Calderaro / Translated by Sugaya Akio

ラウンド5時点での上位卓を見て回ると、スタンダードのメタゲームはすっかり安定していました。そこには大抵のデッキタイプが見受けられました。青黒フェアリー、黒白トークン、赤単、赤白ウィニー、赤白中速、緑黒エルフ、5色コントロール、といった具合です。

つまり、《苦花/Bitterblossom》か《幽体の行列/Spectral Procession》、あるいは両方、それか5色のカードを使っているわけですね。《運命の大立者/Figure of Destiny》、《復讐の亜神/Demigod of Revenge》、《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》や《若き群れのドラゴン/Broodmate Dragon》なども散見されます。

そんな中、ひときわ目を引いたのが《尊原初/Primalcrux》でした。シンボルむっつ、14/14!!緑色の後光がさして見えそうです。

しかも、そのデッキのプレイヤーは、《自然との融和/Commune with Nature》も使っていたのです。なんとまあ!

最後に赤単を食って4勝1敗だったこのプレイヤー、オーストラリアのGlen Shanleyさんを捕まえて、デッキ診断としゃれ込んだのは言うまでもありません。

Glenn Shanley's Army of Teeg (Green-White Midrange)

みなさんが考えていることはわかりますよ。こんな感じでしょう?
A;Jamie Wakefield氏への貢物 (訳注)
B;ブロック構築の緑白デッキの変型
C;そこら辺のFNMで見かけたデッキアイディアを採用した
あるいはそうかも知れませんが、Shanleyさんはメタゲームを良く考えて、一点読みで今回の成績を収めたと言えるでしょう。

Shanleyさんが練り上げたこのデッキはクリーチャー35枚入り、コンセプトは明確です。まず、《ガドック・ティーグ/Gaddock Teeg》を場に出せれば、大抵のコントロールデッキは沈黙するでしょうから、そうしましょう。《否認/Negate》を無駄にさせるのも狙いです。こうして見れば、《自然との融和/Commune with Nature》が採用されているのも納得できますね。万一相手がティーグ君をやっつけても、残りの34体のクリーチャーで頑張りましょう。

Shanley曰く、「ちゃんと、正しいプレイがあるんですよ」

一見ばか正直なこのデッキですが、各マッチアップを意識してどのカードも選ばれています。プロテクション黒のカメコロとメイン2枚の《雲打ち/Cloudthresher》はいわずと知れた苦々しい花から生まれるフェアリー用ですし、赤単相手には《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》と《レンの地の克服者/Wren’s Run Vanquisher》でゲームを長引かせればこちらのものです。キスキンは辛いですが、ティーグ君が白色の主戦力《幽体の行列/Spectral Procession》を止めてくれますね。言うまでもなく、《萎れ葉のしもべ/Wilt-Leaf Liege》も良い仕事をしてくれます---《極楽鳥/Birds of Paradise》が1/1の飛行トークンに負けなくなりますよ。

サイドボードには、色んなカードがちょっとずつ用意してあります。《忘却の輪/Oblivion Ring》ではなくて《至福の休息/Recumbent Bliss》を選んだのはビートダウン同士の対戦を意識して。《ルーンの光輪/Runed Halo》よりも《掻き集める梢/Raking Canopy》を優先したのは、《地獄の雷/Hell’s Thunder》が意外と多そうだったから。相手はこっちのデッキ構成の想像がつかないでしょうし、Shanleyさんによれば、《尊原初/Primalcrux》が登場する度に、相手があえぐ様がたまらないそうです。

さて、良い結果で初日を終えたShanleyさんですが、ここメンフィスに来るまでも大変だったそうです。地区予選と本戦を通して《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》とストームバーンのハイブリッドのデッキで戦った彼は、オーストラリア選手権で7位に終わったんだそうです。普通、その順位では国の代表にはなれませんが、なんと、上位の3人が世界選手権に参加できないということで、幸運にもオーストラリアのチーム入りとなったのでした。

今日、幸運は彼とともにありました。果たして、この週末の残りも一緒にいてくれるのでしょうか?

#訳注。Jamie Wakefield氏は、緑色のおおきいクリーチャー(※いわゆるファッティ)がだいすきなひと。エクステンド・フォーマットのSecret Forceのデッキデザイナー。Mark Rosewaterと一緒にコラムを書いたりも。


Translated Additional Thursday Update ・スタンダード・メタゲーム アーキタイプ・ブレイクダウン

By Bill Stark / Translated by YONEMURA “Pao” Kaoru

スタンダード・メタゲーム アーキタイプ・ブレイクダウン
By Bill Stark / translated by YONEMURA “Pao” Kaoru

ここ世界選手権でも、スタンダードのメタゲームの中心はやはりフェアリーだった。今週末フェアリーを使っていたのは89人、他のどのデッキよりも多かった。有名プレイヤーの中でも、ベテランのパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサや多くの日本人トップ・プレイヤーがこのデッキを選択している。

黒白トークンは、フランク・カーステンとマニュエル・ブッチャーがインターネットに発表してから人気を博したデッキだ。50人ほどのプレイヤーがこのデッキを評価して今週末に持ち込んでいる。キスキン・デッキでも使われていたトークン製造器(《幽体の行列/Spectral Procession》《雲山羊のレインジャー/Cloudgoat Ranger》)に黒の《苦花/Bitterblossom》《潮の虚ろの漕ぎ手/Tidehollow Sculler》《湿地の飛び回り/Marsh Flitter》までも投入したデッキだ。

5色コントロールの使用者は39人、この《反射池/Reflecting Pool》を軸にしたデッキも人気がある。「《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》か《連絡/Tidings》か」という疑問に対し、世界選手権のプレイヤーは《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》を選んだのだ! 《連絡/Tidings》しか入れていないプレイヤーはたった1人で、大多数は《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》しか入れていなかった。なお、両方を1枚ずつ入れる日和見主義者も何人かはいた。

 4番目と5番目のデッキはキスキンだ。赤を散らして《復讐のアジャニ/Ajani Vengeant》などを入れたデッキと、古典的な白単で《平地/Plains》《ひなびた小村/Rustic Clachan》《風立ての高地/Windbrisk Heights》だけを使っているもの、どちらが結果を残せるのだろうか?

 

Archetype Number Percentage
Faeries 89 27.05%
Black-White Tokens 48 14.59%
Five Color Control 39 11.85%
Red Kithkin 28 8.51%
Kithkin 21 6.38%
Red-Black Aggro 17 5.17%
Blue-White Merfolk 14 4.26%
Rock 14 4.26%
RDW 9 2.74%
Doran 5 1.52%
Elves 5 1.52%
EsperLark 4 1.22%
Elves! 4 1.22%
Jund Ramp 4 1.22%
Black Kithkin 3 0.91%
Five Color Elementals 2 0.61%
Planeswalkers 2 0.61%
Blue-White Reveillark 2 0.61%
White-Blue-Green Reveillark 2 0.61%
Black-White Reveillark 1 0.30%
Green-White Aggro 1 0.30%
Green-White Elves 1 0.30%
Quillspike 1 0.30%
Red-Blue-Black-White Reveillark 1 0.30%
Red-White Aggro 1 0.30%
Red-White Reveillark 1 0.30%
Tezzerator 1 0.30%

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