Japanese Coverage of the 2008 Magic World Championships: Day 2

Posted in Event Coverage on December 11, 2008

By Wizards of the Coast

EVENT COVERAGE

  • Friday 20:35 : Feature Article : 二日目総括
    by Daisuke Kawasaki
  • Friday 19:45 : Limited Manual - 津村 健志の白緑マニュアル
    by Daisuke Kawasaki with Kenji Tsumura
  • Round 12 : 津村 健志(広島) vs. 渡辺 雄也(神奈川)
    by Daisuke Kawasaki
  • Friday 18:18 : Ask the Judge – 三田村 和弥(千葉)選手に失格裁定
    by Keita Mori
  • Round 11 : 大塚 高太郎(神奈川) vs. Samuel Black(アメリカ)
    by Daisuke Kawasaki
  • Round 10 : 処罰せよ
    by Bill Stark / translated by Sugaya Akio
  • Friday 17:15 : Photo Essay Round 10 : 場内の風景より
    by Keita Mori
  • Friday 16:16 : Second Draft Report : 心の中の2色目
    by Daisuke Kawasaki
  • Friday 14:25 : Photo Essay Round 9 : ライオンキング、一番卓全勝対決
    by Keita Mori
  • Friday 13:13 : First Draft Report – 危機管理意識(POD 1)
    by Keita Mori
  • Round 8 : 浅原 晃(神奈川) vs. Samuel Black(アメリカ)
    by Daisuke Kawasaki
  • Round 7 : 食らい尽くせ
    by Nate Price / translated by Sugaya Akio
  • Round 7 : Ryan Fuller(カナダ) vs. Justin Cheung(オーストラリア)
    by Daisuke Kawasaki
  • Friday 10:45: First Draft Report – 浅原 晃と大礒 正嗣(POD 1)
    by Keita Mori
  • Player List Day 2
    by Event Coverage Staff
  • Draft Viewer: Draft 1, Table 1
    by Event Coverage Staff
  • Friday 9:00: Draft Tech - さぁ、飛び込めアラーラの大地へ!...どこの?
    by Daisuke Kawasaki
  • Day1 Coverage
    by Event Coverage Staff

Draft Tech - さぁ、飛び込めアラーラの大地へ!...どこの?

by Daisuke Kawasaki

世界選手権二日目、本日は「アラーラの断片」によるブースタードラフトが6回戦おこなわれる。

さて、非常におもしろいけど、非常に難しいといわれるこの「アラーラの断片」ブースタードラフト。先日のグランプリ岡山でも、プレイヤーの数だけ戦略があるのではないか、と言われるくらいに、様々な戦略が存在した。

そのグランプリ岡山から日もたっていることだし、今回メンフィスにたどり着いた25人の日本人プレインズウォーカーが、5つの断片を持つこのアラーラという次元をどう攻略しようと考えているのかを、まずはプレビュー記事としてお伝えしよう。

まずは、このリストを見ていただこう。

Name Prefecture Standard Deck Day 1 Drafttech
浅原 晃 神奈川 青黒フェアリー 18 クソデック
八十岡 翔太 神奈川 青黒フェアリー 9 ジャンド
金子 真実 埼玉 青黒フェアリー 9 赤黒
栗原 伸豪 東京 青黒フェアリー 12 白緑
中村 修平 大阪 青黒フェアリー 9 エスパー以外
大礒 正嗣 広島 青黒フェアリー 18 とくになし
大塚 高太郎 神奈川 青黒フェアリー 15 ジャンド
高橋 優太 東京 青黒フェアリー 9 グリクシス
津村 健志 広島 青黒フェアリー 12 白緑
渡辺 雄也 神奈川 青黒フェアリー 12 白緑
平林 和哉 神奈川 青黒フェアリー 3 ジャンド
森 勝洋 大阪 青黒フェアリー 12 全部
彌永 淳也 東京 青黒フェアリー 15 グリクシス以外
中野 圭貴 大阪 赤黒ビートダウン 12 全部
北山 雅也 神奈川 赤黒ビートダウン 12 エスパー
藤田 修 大阪 赤黒ビートダウン 12 ナヤ
池田 剛 福岡 赤黒ビートダウン 15 青白
齋藤 友晴 東京 赤黒ビートダウン 6 全部
三原 槙仁 千葉 ユグドラシル 6 ナヤ
三田村 和弥 千葉 ユグドラシル 12 ナヤ
小室 修 東京 緑黒エルフ 9 ジャンド
重原 聡紀 山口 青黒フェアリー 12 赤黒
中島 主税 神奈川 白黒トークン 11 ナヤ
小池 貴之 栃木 白黒トークン 3 5色サイクリング
高桑 祥広 神奈川 ドラン 12 バント

みての通り、各プレイヤーにどのようなドラフトテックで今回のドラフトに臨むかをファーストドラフト前にインタビューして、まとめたものである。

まず、全勝で日本人ポールポジションである『AA Beam』のふたりだが...いきなりふたりとも断片を目指したドラフトをやっていない。

大礒 「いや、本当にわからないです、やってないんで」
浅原 「5色クソサイクリングから、サイクリングを抜いたクソデックを目指します」

もう、このふたりはこういうキャラなのであきらめよう。ふたりは結果ですべてを語ってくれるはずだ。

続いて、グランプリ岡山でもトップ8入賞し、今大会でも初日を5-1という成績で折り返した、今シーズン絶好調な池田 剛。

池田 「今回も、当然狙いたいのは白青!いや、結局いつも白青できないんだけどね」

今日こそは池田さんのところに青白のカードあつまったげて!と祈りたくもなるが、池田の言うとおり、ある程度決め打ちを考えたとしても、最終的にはまわりのプレイヤーとの棲み分けが大事になってくるのがドラフトというレギュレーションの常である。

それを推し進めたのが、森・中野・齋藤といったメンバーが掲げている「全部」というコンセプトだ。簡単に言えば「別にどれとか決めない」というコンセプトじゃないようなコンセプトだ。

齋藤 「どの断片とかじゃなくて、一番おいしいところがとりたい」

という考えかたは、たしかにドラフトの真理のいっぺんであるように思われる。

さて、他のプレイヤーの戦略に目を移してみよう。

断片別でみると、三原・三田村・中島という池田以外のグランプリ岡山トップ8のメンバーがそろってナヤを主張している一方で、ジャンドが人気を集めているのがわかる。

2色気味に見える主張をしている中でも、赤黒系を主張しているプレイヤーも、基本的にはジャンドで、ということだそうだ。

重原 「ティムが好きなので、ティムを多めにとりつつ...できればジャンドがいいですね」

そう、それくらいにグリクシス(赤黒青)は人気がない。彌永など、グリクシス以外ならどこでもいいといっているくらいだ。

POY獲得へ向けてドラフトで勝ち越したい中村 修平

藤田 「どんなにがんばってもね、《器用な決闘者/Deft Duelist》に賛美ついちゃうと、接死じゃとまらないからね...1手目2手目火力で、3手目根本原理ではじめて考えるくらいだよ」

と、もっぱら不人気街道まっしぐらなのが、グリクシスという断片のようだ。そこを積極的に狙っていきたいとこたえる高橋のようなストイシズムもいるにはいるが。

さて、断片別ではなく、2色系、つまり2色を足がかりに横にのばすという戦略で考えた場合、今回は白緑が一番人気のようだ。

これについては、どうやら津村が「白緑《巨大化/Giant Growth》」というアーキタイプを猛烈に宣伝しているのも大きい様子。

津村 「火力なんていらん!《印章の祝福/Sigil Blessing》と《破門/Excommunicate》だけもってこい!」

ということで、2マナ2/2を並べて《破門/Excommunicate》と《印章の祝福/Sigil Blessing》でバックアップするというテンポ戦略だそうだ。「理想は2色」とのことで、岡山の時の三田村の戦略ともかぶり、機会があればこちらは掘り下げて取材していきたいと思う。

最後に、ある意味世界選手権の主役であるPoY暫定首位の中村 修平にきいてみよう。中村と言えば、エスパー原理主義者というほどに、エスパー好きなのだが...

中村 「いや、もうエスパー以外で行きたいですわ」

と、ニヤニヤしながらこたえてくれた。きっと、今日もエスパーをピックすることだろう。しゃみしゅーに栄光あれ。


First Draft Report – 浅原 晃と大礒 正嗣(POD 1)

by Keita Mori

池田、ゴリア、大礒、浅原と並ぶ一番卓

初日のスタンダード6回戦を全勝ないし1敗という好成績で駆け抜け、三人の日本人プレインズウォーカーが金曜日の種目である「アラーラの断片」ブースタードラフトを栄光の一番卓(POD 1)で迎えることになった。

POD 1 PLAYER LIST
1.【JPN】 浅原 晃
2.【EST】 Hennes Kerem
3.【AUS】 Aaron Nicastri
4.【KOR】 Nam Sung-Wook
5.【USA】 Samuel Black
6.【JPN】 池田 剛
7.【ITA】 Patrizio Golia
8.【JPN】 大礒 正嗣(日本代表/王者)

三色の「断片」というカラーテーマをもった世界の中で、はたして浅原と大礒がどのようなサバイバル術を我々に見せてくれたのかをご紹介したい。

ピック譜に関しては、別途、一番卓の全員のピック内容がDraft Viewerとして掲載されるので、そちらをご参考いただこう。

■歴史と伝統のピック ― 浅原 晃の場合

初日スタンダードを自作の「ノン・テゼレット」で6連勝という好調ぶりをみせる「歴史と伝統の男」浅原 晃は、いつになく熱っぽい口調で思いのたけを語った。

浅原 「ドラフトポッドが発表された瞬間に、すでに何をドラフトすべきかは決まっていました。運命ですね。重要なドラフトの舞台で、隣にルーキー(※大礒 正嗣)。ああ、これは青黒に進めということなんだなって・・・」

2005年3月15日、松山。神河ブロックのリミテッド戦で行われたグランプリで、キャリアの最初のピークを迎えつつあった二人の伝説的プレイヤーが隣り合って決勝ドラフトを行うことになった。

大礒 正嗣と、浅原 晃だった。

当然のように予選ラウンドを勝ちあがってきた二人は、やはり当然のように決勝ラウンドでもライバルたちを次々となぎ倒し、決勝戦で刃を交えることになった。そして、青黒忍者デッキの浅原が、白緑の大礒をストレートでくだし、戴冠した。

Grandprix Matsuyama 2005 Event Coverage

浅原 「自然とそうなるかな、と、上家のルーキーが緑をやりそうな気もしていましたし、ドラフトを終えた実感としてはおそらくそうなっていますし、やはり、歴史は繰り返すのかもしれません。そういえば、グランプリ松山のあった年は、ルーキーも自分もいろいろありました・・・」

グランプリ松山が開催されたのは2005年。

大礒 正嗣は遠征日本勢としては初めて「母国」アメリカのグランプリでチャンピオンに輝くという偉業を成し遂げるかたちで最高のシーズンをスタートし、2005年の年間最優秀プレイヤー争いに最後の最後までからむ大活躍を見せた。年末にむかえた世界選手権横浜大会では、日本代表チームの一員としてトリプルクラウン奪取にも貢献し、ほとんどこの一ヵ年間の活躍だけで将来の殿堂入りを決定づけたとさえ言えるパフォーマンスだった。

浅原自身にとっても、彼のトーナメントキャリアにおける、最初で、そして現時点では唯一の、プロツアーサンデーの舞台を世界選手権の決勝ラウンドを2005年に横浜の地で踏みしめている。

はたして、浅原 晃は最初のブースターパックに封入されていた「もっとも強い青黒のカード」である《塔のガーゴイル/Tower Gargoyle》を迷うことなくピックし、大礒 正嗣から送られてきた第2パックからもこのフォーマットで青黒の最強コモンと考えられている《苦悶のねじれ/Agony Warp》を手にした。

現在のあるべき青黒の完成系のひとつ、「断片」世界におけるエスパー(青白黒)を進路と定めた彼は、いっさいの迷いを見せることなく、このアーキタイプを完成する道をまい進した。1パック目の12手目に流れてきた《圧倒する波/Resounding Wave》をうなずくようにピックしていた浅原は・・・おそらく、予感が確信に変わるのを実感していたのだろう。

実際のところ、卓上でエスパーに進んだのは浅原と対面のブラックだけ。かなり遅い順目のタップインランドや《急使の薬包/Courier’s Capsule》といったカードを着実にデッキに加え、彼は強力なデッキを完成させた。

浅原 「最初から決まっていたとは言え・・・こんなにもピックに迷うことなくドラフトできたのは久しぶりかもしれません」

■自然体のピック ― 大礒 正嗣の場合

自分の生活のほとんどすべてをマジック:ザ・ギャザリングというゲームに捧げることが許された数年前、間違いなく、大礒 正嗣は地球上でもっともすぐれたマジックのプレイヤーの一人であると賞賛される高みにのぼりつめていた。新人王というかたちでスタートした彼のキャリアは、団体戦世界一、六回のプロツアーサンデー、海外グランプリのタイトルといった賢覧豪華な肩書きで埋め尽くされている。

大礒 「ぜんぜん練習できていないですから、津村のアドバイスにしたがって白緑に進みたいなとは思っていましたけどね」

大礒 正嗣のライフスタイルはかわった。

研究者として、大学院生としての実生活を最優先し、広島から長野へと移り住んだ。プロツアー予選が長野で開かれたとしても、そこに遊びにいく程度の時間的余裕さえも捻出できないくらい、マジックからは遠ざかっているという。

しかし、そんな中でも「マジックが好きだ」というシンプルな思いが、彼とゲームを結びつけている。自然体のスタンス、それがいまの大礒とマジックの関係性である。

そんな多忙の中、なんとかスケジュールをやりくりして大礒は「サイドイベントでドラフトを練習する」という目的でグランプリ神戸に来場した。せめて日本選手権に出る前に、それなりのドラフトの練習をしておきたかったからだ。そして、その成果は日本選手権制覇という思いもかけない最高のかたちへと結実した。プレイヤーとしての最初のピークを迎えていた時期にはとどかなったタイトルだった。

かつての相棒、愛弟子、ライバルである津村 健志にアドバイスされたのは、あえて「断片」にこだわらずに白緑2色でビートダウンを組むというもの。奇しくも、下家の浅原 晃がイメージしていたドラフト像もピタリとあてはまるものだった。

しかし、大礒が開封したパックはそれを許さない内容だった。《ゴブリンの突撃/Goblin Assault》からジャンド(赤緑黒)へ、最終系としてはタッチ黒の赤緑といった仕上がりになった。自然と、落ち着くところに落ち着いた、といった印象を大礒自身も持っているようだ。

大礒 「《ゴブリンの突撃/Goblin Assault》は、赤緑に進むことになるのかな、と思ってピックしました。暴食メカニズムともかみあいますしね。まあ、パックが許してくれないんですから、白緑をやれないのはしょうがなかったですね。ドラフトを終えた実感としては、上とは完全にかぶっていて、下の浅原さんはエスパーでしょうね」

さすがは大礒、ドラフトした上流下流の内容はほとんど完璧に把握しきっている。ただ、上とかぶってしまっていると本人も認めるだけに、自身のデッキについては確固たる自信はない。

大礒 「正直、反対側がグチャってくれていたらラッキーだな、という他力本願な部分もありますね」

苦笑する大礒。しかし、大礒 正嗣はかつてこんなコメントを残しているではないか。

(構築とリミテッドどちらが好きか、と問われて)

「リミテッドが好きです。ドラフトする過程も、プレイも、どちらも甲乙つけがたいです。強いデッキを組み上げる過程も、弱いデッキになってしまったときに苦労しながらプレイするのも好きです」 


Round 7 : Ryan Fuller(カナダ) vs. Justin Cheung(オーストラリア)

by Daisuke Kawasaki

久々に登場するライアン・フューラー

さてさて、世界選手権も二日目が始まろうとしているが、今回は全体的に日本勢が好調な印象を受ける。

特に、初日を全勝中の「世界のISO」大礒 正嗣(広島)と「歴史と伝統の男」浅原 晃(神奈川)が今度こそライアンチャンス達成なるか!といったところが本日序盤の見所だろう。

ライアンチャンス、ライアンチャンスっていうけど、それって、何って?

ライアンチャンスを知らないと言うことは、おそらくRyan Fuller(カナダ)もご存じないと言うことだろう。

というわけで、ここで簡単にRyan Fullerとライアンチャンスの語につい説明しよう。

日本でもよくあることであり、最近でも齋藤 友晴(東京)が「Sexy Lobster」を立ち上げたように、プロプレイヤーと調整チームというのは切っても切れない中である。

しかしなが、際に「ひとつの調整チームの調整の結果がプロツアーを席巻した」という記録は、意外なことに、2つのチームしか存在しない。

ひとつは、ご存じ殿堂プレイヤーを3人生み出した名チーム「Your Move Games」通称YMGだ。プロツアー・ニューオリンズでのBenzoの衝撃と、翌年に開催されたプロツアー・ヒューストンでのトップ3独占という2年連続のエクステンデッドフォーマットでの活躍で、伝説のチームとなった。

それではもうひとつ?

それが、プロツアー東京でのAlphaBetaUnlimited.com、通称ABUだ。

藤田 剛史(大阪)のThe Ratsと、Zvi Mowshowitz(アメリカ)による、まさしく語源であるSolutionというふたつの環境を読み切った「ソリューション」デックによる殿堂プレイヤー同士の決勝戦がよく知られるが、しかし、スイスラウンド中に話題をさらったのはまったく別のデックであった。

それが、ABUの構築した赤緑ステロイドであった。

赤緑ステロイドは、この時のインヴェイジョンブロック限定構築において、メタゲームの中心中の中心のデックであり、前述のふたつのデックも、このデックを大きくメタったデックであった。

しかし、ABUは、逆に、メタゲームの中心のデックを最高の形まで調整するというアプローチをとり、結果として、トップ8に3人のプレイヤーを送り込むという快挙を成し遂げたのであった。

その中でも、カナダのRyan Fullerによる、スイスラウンド全勝(引き分け無し)というのは、以来誰ひとり成し遂げていない偉業として未だ語り継がれ、「ライアンチャンス」と呼ばれるようになった、というわけだ。

さて、そんなRyan Fullerだが、すでにトーナメントのトップシーンから引退して久しい。

しかし、そのFullerが、なんとこの世界選手権の会場に、レーティングで招待されてやっているというのだから、これはうれしくて飛び出していかないわけには行かないだろう。

というわけで、このラウンドでは、ライアンチャンス継続中の大礒・浅原がフィーチャリングエリアに呼び出されたのを尻目に、フィーチャリングテーブルについたFullerの戦いをお送りしよう。

Ryan Fuller(カナダ):バント
Justin Cheung(オーストラリア):バント

Game 1

オーストラリア代表チームのジャスティン・チェン

先手はFuller。

《森》を2枚セットしての《シーリアのエルフ/Cylian Elf》キャストがファーストアクション。対してCheungは2ターン目に《器用な決闘者/Deft Duelist》をキャストする。

これに対して《シーリアのエルフ》を突っ込ませ、《圧倒する咆哮》でうちとるFullerだったが、続いてでてきた《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》《ロウクスの突撃者/Rhox Charger》の《ロウクス/Rhox》コンビが厳しい。

《アクラサの従者/Akrasan Squire》《アニマのドルイド/Druid of the Anima》《天望の騎士/Knight of the Skyward Eye》と大量にクリーチャーを展開するものの、Cheungのロウクスコンビの壁は厚い。

ダメージレースに持ち込もうにも《ロウクスの戦修道士》の絆魂能力がそれを許してくれない。

なにより青マナがでない。だが、ついに念願の《島》を手に入れた時には、すでに取り返せないほどのライフ差がついてしまっていた。

Ryanはドロー後に、自分のライブラリートップをめくった。

Cheung 1-0 Fuller

Game2

チェンとフューラーのバント対決

今度は1ターン目に《アクラサの従者》と順当なスタートを決めるFuller。

しかし、お互いに《森》《平地》と並べたところで《アクラサの従者》のアタックを《クァーサルの伏兵/Qasali Ambusher》にキャッチされてしまう。

これは《印章の祝福/Sigil Blessing》で退けるものの、マナを使わされてしまった為、Cheungに先に3ターン目のアクションとして《カターリの金切り声上げ/Kathari Screecher》をキャストされてしまう。

Cheungは続く4ターン目には《ロウクスの突撃者》をキャストし、攻守を交代することに成功する。

Fullerも、《ヴァレロンに仕える者/Steward of Valeron》から《バントのオベリスク/Obelisk of Bant》《白蘭の騎士/Knight of the White Orchid》とつなぎ、アドバンテージを取りつつ、マナを加速することに成功するのだが、Cheungの場には《波掠めのエイヴン/Waveskimmer Aven》まで登場してしまい、この賛美ビートは容易にはとめられないものとなってしまう。

Fullerの渾身の《岩投げの小隊/Rockcaster Platoon》が《忘却の輪/Oblivion Ring》で消し去られてしまうと、Fullerは苦い顔をする。

勝負を一気に決める為に、Cheungは《ジェスの先導/Outrider of Jhess》で賛美をさらに追加しての《波掠めのエイヴン》アタックを仕掛ける。

Fullerがそれをサイクリングの《圧倒する静寂》でリムーブすると、Fullerの手札はすべて土地だった。

Cheung 2-0 Fuller

Fullerは、今年も一回グランプリに参加した程度で、ほとんどプロマジックには触れていないという。
しかし、今回、アメリカで開催され、なおかつ古い友人たちが集まるというので、このメンフィスの地にやってきたとのことだ。
離れていたプレイヤーでも、いつでも戻ってきてプレイできるという懐の深さがマジックにはあると、それがマジックの魅力であるとFullerは語った。

そんなFullerに、日本では、プロツアー東京での偉業に敬意を表し、「ライアンチャンス」という言葉があると伝えると、非常にうれしそうに笑顔を見せた。「そうやってファンの人がいてくれるのはうれしいよね。」

そして、なおも、デュエル中の浅原に、「がんばってくれって伝えてよ」と伝言を頼まれた。

この時点で、大礒はすでに2-0でゲームを勝利し、ライアンチャンスを継続中である。

それでは、ここで、Fullerの意志を継ぐものとして、浅原のマッチアップをお届けしよう。

■Sung-Wook Nam (韓国) vs. 浅原 晃(神奈川)

エスパー浅原

Game 1を事故で落とし、惜しくもスーパーライアンチャンスは逃してしまった浅原だったが、Game 2は相手の《圧倒する静寂》を《潮の虚ろの漕ぎ手/Tidehollow Sculler》できっちりと対処し、ゲームカウントをタイに戻し、ライアンチャンスへの希望をつないだ。

対戦するのは、今大会の国別対抗戦で絶好調の韓国、Sung-Wook Namだ。

浅原 晃:エスパー
Sung-Wook Nam:バントタッチ赤

Game 3

後手の浅原が《機械医師/Metallurgeon》をキャストするのに対して、Sung-Wookが《帰化/Naturalize》するのが、最初の攻防。

続いて浅原は。Sung-Wookがキャストした《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》を《破門/Excommunicate》するのだが、そうして稼いだ4ターン目のアクションは《エーテリウムの彫刻家/Etherium Sculptor》と《急使の薬包/Courier’s Capsule》といういまいちピンとこないもの。

この浅原の青マナがないすきに、Sung-Wookは《帰化》で《急使の薬包》を破壊するのだが、浅原は2枚目の《急使の薬包》をすぐさまキャストし、その能力を使用する。

Sung-Wookは《波掠めのエイヴン》を追加するが、浅原も《エーテリウムの彫刻家》を生け贄に捧げた《骨の粉砕/Bone Splinters》で《ロウクスの戦修道士》を破壊し、なんとか場に均衡をもたらそうとする。

浅原は、ふたたび《エーテリウムの彫刻家》をキャストすると、《カターリの金切り声上げ/Kathari Screecher》《塔のガーゴイル/Tower Gargoyle》と場に追加。だが、Sung-Wookも2体目の《ロウクスの戦修道士》をキャストし、賛美によって《塔のガーゴイル》と相打ちをとりにいく。

Sung-Wookはさらに《アミーシャの口づけ/Kiss of the Amesha》をキャストし、これでライフは39。一方の浅原はライフが4。

ここで《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》まで追加されてしまい、《骸骨化/Skeletonize》で飛行ブロッカーまで除去されてしまうと、浅原は今回もライアンチャンスをあきらめるしかなくなってしまったのだった。

Sung-Wook 2-1 浅原

こうして、Ryan Fullerから浅原 晃に継承されるライアンチャンスという物語は早くもここで終演を迎えてしまった。

しかし、なおも、「世界のISO」が日本代表チーム勝利の為に、ライアンチャンスを継続中である。

そして、きっと、「歴史と伝統の男」も、この世界選手権で、自身の為の新しい「歴史と伝統」を作り出してくれるだろうと、信じている。


Round 8 :浅原 晃(神奈川) vs. Samuel Black(アメリカ)

by Daisuke Kawasaki

エスパー対決に挑む浅原とサミュエル

さて、今年の世界選手権において、国別対抗戦が、始まる前から非常に盛り上がっていたということはすでにお伝えしたと思う。

昨日お伝えした他にも、Rookie of the Yearのかかったオーストラリア代表や、あのWily Edel(ブラジル)を擁するブラジル代表とタレント揃いなのだから。

しかし、アメリカ選手権が終わり、アメリカ代表が決まったときに、日本のプロプレイヤーの一部は、世界とは別の部分に大きく注目した。

「あのサムが残っている!」

すでにタカラトミー公式のスタンダードウォッチングでも伝えた気がするが、サムというのは、今年のアメリカ代表のSamuel Black(アメリカ)のことである。

なぜ、このサムがこんなに注目されているかというと、一時期日本の、主に古淵系のプロプレイヤーの間で爆発的に流行した「アクワイア」という名作ボードゲームで、プロツアー・クアラルンプールで対戦した相手だったからだ。

浅原 「いや、会場でアクワイアやってたら、参加したそうに見てるアメリカ人がいたんで誘ったんですよ」

と、あまりにも偶然に出会ったサムだったのだが、しかし、このサムが日本人とはまったく違うセオリーでゲームをしていた為、多くのプレイヤーが翻弄されたという。

無理矢理にマジックの戦略にたとえて説明すれば、日本人ではウィニーがセオリーだった中に、マナ加速からのファッティ1体で場を制圧する戦略を持ち込んできたようなものだったのだ。

「マジックよりアクワイアの方が得意」と断言する三田村 和弥(千葉)は、この日本の速攻よりの戦略に対抗できないファッティ戦略を持ち込んだアメリカ人に対して「これで4位は決まりましたね(アクワイアは4人前後でやるボードゲームである)」とゲーム開始直後に断言した。

しかし、三田村はサムに敗北した。

その三田村の雪辱を果たすべく、今、浅原 晃がアメリカ代表に挑む。

浅原 「いや、自分、サムには勝ってるんで、関係ないっすけどね」

浅原 晃:エスパー
Samuel Black:エスパータッチ赤

Game 1

先手の浅原は、2ターン目の《潮の虚ろの漕ぎ手/Tidehollow Sculler》でサムの《エスパーのオベリスク/Obelisk of Esper》をキャッチし、続いて《カターリの金切り声上げ/Kathari Screecher》をキャストする。

サムは《肉袋の匪賊/Fleshbag Marauder》で《カターリの金切り声上げ》を除去するのだが、続いて登場する《塔のガーゴイル/Tower Gargoyle》に対処する手段を持たない。

そして、浅原の2枚目の《潮の虚ろの漕ぎ手》が《骸骨化/Skeletonize》をキャッチしてしまうと、サムは、まるで13枚のTowerが2マスから育たなかったかのような表情でゲームを終了した。

浅原 1-0 Black

Game 2

先手はSamがキャストした《屑肉の地のゾンビ/Dregscape Zombie》を浅原が《水膨れ虫/Blister Beetle》で除去し、お互いが《エーテリウムの彫刻家/Etherium Sculptor》を並べるというスタート。

しかし、サムがキャストしたプレインズウォーカーで一気にゲームは動き出す。

Elspeth

《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》!

この10のContinentalが合併したかの様なインパクト。

サムはトークンを生み出しターンを終了する。

浅原は《潮の虚ろの漕ぎ手》をキャストするが、そこには《血流を飲む者/Vein Drinker》が。

これをキャッチし、事なきを得た浅原は《カターリの金切り声上げ》《潮の虚ろの大梟/Tidehollow Strix》と飛行クリーチャーを並べることで、《遍歴の騎士、エルズペス》の忠誠カウンターをどんどんと削っていく。

しかし、その間にもサムは兵士トークンを《遍歴の騎士、エルズペス》の能力で強化し続け、浅原のライフは8に。

《塔のガーゴイル/Tower Gargoyle》も並べ、ついに《遍歴の騎士、エルズペス》を追い詰めたところで、今度は《潮の虚ろの漕ぎ手》に《骸骨化》が。これで、次のターンには《血流を飲む者》が出て来てしまう。

一難去ってまた一難。

だが、これを対処できるのが浅原 晃と言う男。《聖域のガーゴイル/Sanctum Gargoyle》で《潮の虚ろの漕ぎ手》を回収し、またも《血流を飲む者》をキャッチする。まさに、接合タイルを押さえられてしまった形のサム。

急場しのぎに《聖域のガーゴイル》をブロッカーとして呼び出すサムだったが、《苦悶のねじれ》で除去されてしまうと、浅原の株買い占めをとめる手段は残されていなかった。

浅原 2-0 Sam

こうして、浅原は自身のサムへの「異種格闘技戦」連勝記録を伸ばすとともに、三田村の雪辱をはらすことになった。

このマッチを見守っていた、三田村。

そして、ゲーム終了後に、サムに声をかける三田村。

三田村 「今回はアクワイア持ってきているのかい?持ってきてたら、四日目にやろうぜ!」
Sam 「代表チームだから、約束はできないけどね!」

ひとしきり笑った後に、”We Love Aquire!”と意気投合する三人。

マジックは、ゲームは、国境を越えて人の心をひとつにする。

さて、一方では、大礒 正嗣と、浅原のスーパーライアンチャンスをとめた韓国のSung-Wook Namとの全勝対決がフィーチャリングされている。

はたして、ここで大礒は旧チームメイト(?)の仇をうつことができるのか。

■Sung-Wook Nam(韓国) vs. 大礒 正嗣(広島)

大礒 vs.サン

Game 2

筆者が席に着いたのは、ちょうど、Sung-Wookが《領土を滅ぼすもの/Realm Razer》をキャストしたところ。

ここで、大礒が《森》をトップデックし、このマナが《モストドン/Mosstodon》の能力を起動させたことで、Sung-Wookのライフは削りきられてしまったのだった。

大礒 2-0 Sung-Wook

もはや、書くまでもないほどの快進撃を続ける大礒が、浅原の雪辱をはらしつつ、全勝記録をまたひとつ伸ばした。


First Draft Report – 危機管理意識(POD 1)

by Keita Mori

先ほど浅原と大礒のドラフティングを簡単にご紹介したが、同じ一番卓で「ファイアーボール総帥」池田 剛が示唆にとんだドラフト処世術を披露してくれているので、ご紹介しよう。

画像をご参照いただければ一目瞭然。白緑にタッチ青という内容のバント「断片」のデッキを完成させているのが池田だ。しかし、これは最初から最後まで事前のプランどおりだったという先ほどの浅原のようなタイプのドラフトではなく、池田ならではの危機察知能力がはたらいた結果、色をシフトして作り上げたものなのである。

池田 「今回は赤緑なのかな、と最初のうちは思っていましたね。でも、第1パックの流れを自分の中で整理してみたときに、これは勝てないときの緑のコモンの流れだなって気がついたんですよ」

池田いわく、《宮廷の射手/Court Archers》と《エルフの幻想家/Elvish Visionary》というのはこの環境の緑色のコモンカードの四番手と五番手。第1パックのピックが終わった段階で、キャッチできた緑色のコモンカードのうち、あわせて3枚のこれらのカードだったというところが「ひっかかった」のだという。

池田 「そう、ひっかかるんです。四番手五番手のコモンしか流れてこないということは、上流のほうで明確にトップスリーコモンの独占、あるいは奪い合いがおこっているっていう可能性が、経験上非常に高いですからね」

実生活においても、フランチャイズのカードショップ「ファイアーボール」の経営者として成功している池田 剛。マジックプレイヤーとしても抜きん出た存在である池田のタレントのひとつが「危機管理意識」の高さとすぐれた嗅覚だ。

Sigiled Paladin

そして、迅速に決断は下された。

池田は、有力コモンの枚数が足りていないデッキによる凡庸な結果という可能性を察知し、第2パックから大きく経営方針を変更した。赤い最強コモン、《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》が出現した中で、これを流して《印章持ちの聖騎士/Sigiled Paladin》に進むことをファーストピックに選択したのだ。赤緑路線を放棄し、大きく白へと舵をきったのだ。

池田 「結果としては大正解でしたね。さっきの《宮廷の射手/Court Archers》にせよ、白緑の賛美系ビートダウンでは活躍できますし。白いカードの流れは悪く無くて、上位のコモン、それに強いアンコモンもちゃんと確保できましたから」

最終的に白緑タッチ青というかたちに落ち着いたのは、第3パックのかなり遅いタイミングで《バントの魔除け/Bant Charm》を確保できたからだ。そして、この《バントの魔除け/Bant Charm》が敵陣のドラゴンを屠り、池田に一番卓で二連勝(本稿執筆時点)という成功をもたらすことになるのである。

池田 「失敗したドラフトの、そのダメだった理由を自分なりに分析しておくのは(その後の危機管理に)とても有効だと思いますよ。第1パックの段階で気がつければ、方針転換しても残る2パックで挽回できますからね」

読者の皆さんも、次にドラフトする機会があればぜひとも意識的な「危機管理」を心がけてみてはいかがだろうか。


Photo Essay Round 9 : ライオンキング、一番卓全勝対決

by Keita Mori

先日のグランプリ岡山では《サルカン・ヴォル/Sarkhan Vol》2枚をドラフトしたミラクルなデッキを完成させ、見事に決勝ドラフトへと勝ち上がった「ドラゴンマスター」中島 主税をご紹介した。

そして、ここ世界選手権メンフィス大会のファーストドラフトでは、プロツアー準優勝経験もある藤田 修が2枚の《復讐のアジャニ/Ajani Vengeant》を投入した強力なナヤ(赤緑白)のデッキを完成させている!

「ライオンキング」藤田は順調に二連勝を飾り、ファーストドラフト全勝を賭けてオランダのフランク・カースティンとの試合を行うことになった。

しかしながら、カースティンも《若き群れのドラゴン/Broodmate Dragon》を擁する除去呪文満載の強力なジャンド(赤緑黒)のデッキを作り上げていた。

第1ゲームこそ接戦だったものの、第2ゲームでは12/12というサイズにまで膨れ上がった《残忍なハイドラ/Feral Hydra》を藤田がなんとかさばくものの、後続に《若き群れのドラゴン/Broodmate Dragon》という流れで一方的に押し切られてしまうこととなった。

藤田のライブラリーを確認すると、奥底に二枚の《復讐のアジャニ/Ajani Vengeant》が眠っているのであった。

栄光の一番卓の全勝を賭けた戦いは大礒 正嗣と池田 剛という二人によって争われることになった。赤緑タッチ黒のジャンドが大礒、白緑タッチ青のバントが池田だ。

1ターン目の《アクラサの従者/Akrasan Squire》からはじまる池田の「賛美」軍団のビートダウン攻勢に対し、後手に回りながらも後続を除去していくのが大礒。確実にダメージを蓄積させた後に、池田は《天空の先達/Welkin Guide》によってとどめをさすというゲームプランで先勝した。

日本王者の大礒も意地を見せて2ゲーム目を奪い返すが、やはり池田の「賛美」軍団の攻勢から《天空の先達/Welkin Guide》でのフィニッシュという必勝パターンが炸裂した。

かくて、危機管理意識の高さを見せて「ドラフト2パック目からの色変更」に成功した池田 剛が一番卓の全勝者に輝いた!

池田 「二日続けて5-1くらいで勝ち越せたら、サンデーも見えてくるかなあ・・・」


Friday 16:16 : Second Draft Report : 心の中の2色目

by Daisuke Kawasaki

二日目の「アラーラの断片」ドラフトも、折り返し地点の第2ドラフトとなった。

さて、本日の日本人プレイヤーの戦績については、最後にまとめてご紹介させていただくとしよう。

さて、森 勝洋(大阪)が4年連続トップ8をかけて戦っているということについては、昨日存分にお伝えしたとは思うが、連続トップ8をかけて戦っている日本人プレイヤーは何も森だけではない。

そう、昨年度世界選手権では、「スカージ」中野 圭貴(大阪)・「KTO」大塚 高太郎(神奈川)のふたりだ。

そして、このふたりが、今もなお、トップ8を視野に入れたラインで奮闘しているというのだから、これはチェックしないわけに行かないだろう。

特に中野は、先日「アラーラの断片」リミテッドでおこなわれたグランプリ・台北でも、小室 修(東京)の偽りの進撃を惜しくも食い止められなかったものの、準優勝という成績を残している。

個人的にもタイトルを手に入れてもらいたいプレイヤーナンバーワンである中野のドラフトをここでは追いかけてみよう。

■1st Pack

 

1st Pack ピックしたカード 他候補
1 Tar Fiend Executioner's Capsule・Kederekt Creeper・Tidehollow Strix
2 Jund Battlemage Rhox War Monk・Agony Warp
3 Wild Nacatl Windwright Mage・Savage Lands
4 Rockslide Elemental Resounding Roar・Jungle Shrine
5 Naya Battlemage Carrion Thrash
6 Dregscape Zombie Kederekt Creeper・Bant Battlemage・Grixis Battlemage
7 Excommunicate  
8 Court Archers Sigil Blessing・Incurable Ogre

まずは運命のファーストパック。

ここで最初にピックしたのは、《タールの悪鬼/Tar Fiend》。初手としては申し分のないレアカードだ。そして、2手目では《ジャンドの戦闘魔道士/Jund Battlemage》をピックと、環境最大人気のジャンドへと一直線といった感じのピックだ。

普通ならば。

中野 「いや、もう3手目の時点でいやなにおいをかいでいたんですよね...この環境、それだけは得意ですから」

いやなにおいというのは、上と色が大きくかぶっているのではないかという雰囲気のことだ。実際に中野は、3手目でジャンドカラーの出せる土地ではなく、《野生のナカティル/Wild Nacatl》をピックしている。

そう、ここで《野生のナカティル》が流れてきたことで、上がナヤでない雰囲気を感じつつ、赤黒系がかぶっているのではないかと予想したのだ。

これが大当たりで、実は中野の上はジャンドをやっていたのだ。

それが明確に出ているのが、5手目で、ここで中野は《ナヤの戦闘魔道士/Naya Battlemage》をピックしている。

中野 「本当は6手目も《バントの戦闘魔道士/Bant Battlemage》をとるべきだったんですけど、まだ確信はできてなかったんで...」

そして、中野はファーストパックの印象を語る。

中野 「この時点で、心の中の2色目は白に決めてましたから」

心の中の2色目?

たしかにこの時点でまったく白いカードをピックしていない中野だが、一体どういう意味だろうか。

その辺を踏まえて2パック目に進んでみよう。

■2nd Pack

 

2nd Pack ピックしたカード 他候補
1 Magma Spray Sprouting Thrinax・Hissing Iguanar
2 Vithian Stinger Violent Ultimatum・Resounding Thunder
3 Knight of the Skyward Eye Akrasan Squire
4 Wild Nacatl Rhox War Monk・Waveskimmer Aven
5 Mayael the Anima Blightning
6 Guardians of Akrasa Resounding Silence
7 Resounding Roar Mosstodon
8 Titanic Ultimatum Elvish Visionary

1手目・2手目と《芽吹くトリナクス/Sprouting Thrinax》《暴力的な根本原理/Violent Ultimatum》といったジャンドの超強力カードをピックせずに、受けの広い単色のカードをピックしている。

そして、《天望の騎士/Knight of the Skyward Eye》をはじめとしてピックしていく白いカードたち。

中野 「1パック目の序盤では青黒赤系のカードを相当流してるんで、下はたぶん白をやれていないはずなんですよ。なので2パック目で心の中の2色目である白をかき集めて、1パック目・3パック目で赤緑系のカードをあつめようかと」

なるほど。

たしかにこの環境のドラフトでは、逆回りで特定の色のカードに偏って流れてくるということが、通常のドラフト以上に多くあるように感じられる。

だからこそ、その流れをつかむ為の「心の中の2色目」を作っておくのだ。

たしかに、難しいテクニックかもしれないが、うまく応用できれば、一気にデックを強くできるテクニックだろう。

ちなみにこのパックでは、7ピック目で《モストドン/Mosstodon》ではなく《圧倒する咆哮/Resounding Roar》を優先してピックしている。

これについても質問してみた。

中野 「基本的に重いカード嫌いですから。でも一番の理由は火力がないから《巨大化/Giant Growth》系の呪文でねじ込まないと行けないんですよ。クリーチャーだけでは勝てないです、この環境」

さすがは対抗色ドラフトまでやり尽くしたという中野だけに、アーキタイプとして必要なパーツをきっちり集めている。

中野 「あと、《タイタンの根本原理/Titanic Ultimatum》は別に必要でもないですし、《エルフの幻想家/Elvish Visionary》の方がほしかったんですけど...うっかり上に流して紛れてしまったらいやなので...」

ここまで気をつかってドラフトをおこなってきた中野。

果たして、最後のパックは中野にほほえむか。

■3rd Pack

 

3rd Pack ピックしたカード 他候補
1 Battlegrace Angel Wild Nacatl・Vithian Stinger
2 Woolly Thoctar Cylian Elf・Soul's Fire
3 Jungle Weaver Stoic Angel・Fatestitcher
4 Jungle Weaver Gift of the Gargantuan
5 Akrasan Squire Elvish Visionary・Knight of the White Orchid
6 Topan Ascetic  
7 Steward of Valeron Sighted-Caste Sorcerer
8 Sigil Blessing  

 

Battlegrace Angel

強力コモンを押しのけて、当然の用にピックしたのが強力レアの《戦誉の天使/Battlegrace Angel》。ジャンドから白に逃げた中野の気持ちにパックが応えた形だ。

中野 「最初のパックででてほしかったですけどね...」

予定通り、白のカードはあまりピックできなかったものの、赤緑系のカードを中心にピックしていった中野。

中野 「火力ないのと色マナが不安ですけど...」

というものの、トップ8を期待してもいいレベルのデックができあがったのではないだろうか。

一方で大塚。

ナヤ派・ジャンド派・クソデック派と派閥のある古淵系のプレイヤーの中でも、ジャンド派に属する大塚は、当然この正念場でジャンド系のデックを構築してきた。

特に3枚の《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》と2枚の《芽吹くトリナクス/Sprouting Thrinax》が印象的だ。

大塚 「卓全体のパックが強かったっていうのもあるんですけど...1パック目の流れから、2パック目で赤をとる前提で動いていたのがはまってよかったです」

なんと、ここでも心の中の2色目が。

昨年トップ8の二人がオススメする「心の中の2色目」戦略。

ぜひとも、活用してみていただきたい。


Friday 17:15 : Photo Essay Round 10 : 場内の風景より

by Keita Mori

場内唯一の女性プレイヤーとして世界選手権で奮戦するアメリカの女性プレイヤー、メリッサ・ディトーラ(Melissa DeTora)。若くして経験豊富なホープだ。

「ハンター」栗原 伸豪がフランスの殿堂者ラファエル・レヴィ(Raphael Levy)との試合でフィーチャーエリアに招待された。第1ターンに登場した《アクラサの従者/Akrasan Squire》が軽快に「賛美」ビートを刻み、見事4ターン目にから4/4飛行の《塔のガーゴイル/Tower Gargoyle》を展開という完璧なクロック。もちろん確実なクロックだけでなく、その後のパーミッションにも抜かりないのが栗原。彼は決定打として《無知の処罰/Punish Ignorance》によるカウンターを《炎破のドラゴン/Flameblast Dragon》にお見舞いした!

栗原は続く第2ゲームでも《炎破のドラゴン/Flameblast Dragon》をきっちりと《圧倒する静寂/Resounding Silence》で討ち取り、一度は殺された《塔のガーゴイル/Tower Gargoyle》を《聖域のガーゴイル/Sanctum Gargoyle》で回収するという具合に上空にダメージソースを一気に展開して、大物ハントに成功!

はかなげに、プレイできなかった《暴力的な根本原理/Violent Ultimatum》を公開するラファエル・レヴィだった・・・

さきほどの藤田 修に続き、ここにもまた同じプレインズウォーカーを2枚ゲットする幸運に恵まれた日本人が存在した!

「不屈のストイシズム」高橋 優太は《災いの砂時計/Scourglass》で敵陣を一掃しつつ、墓地から《エーテリウムの達人/Master of Etherium》を《聖域のガーゴイル/Sanctum Gargoyle》で回収するというかたちで完璧にボードをコントロール。

《求道者テゼレット/Tezzeret the Seeker》はすでに一枚が墓地に落ちているわけだが、すでに圧倒的優位な場を築いている上に、ライブラリーの中にはさらに一枚...。

今回の高橋のリミテッドマニュアルは第1ドラフトがグリクシス(青黒赤)での2勝1敗。第2ドラフトのダブル・テゼレッターではどのような戦績を残せるだろうか?

「歴史と伝統の男」浅原 晃のパフォーマンスもまた素晴らしかった! ブラジルの強豪パウロ・ヴィッター・ダローサ(PV)とのナヤ(赤緑白)対決の3本目では、「山が引ければ満点」というハンドをキープして第1ターンの《アクラサの従者/Akrasan Squire》召喚からビートダウンを開始。土地が一瞬とまるアクシデント未遂もあったものの、キッチリ《山/Mountain》を引いて敵陣の戦力を逐一除去しながら「賛美」の2点クロックを刻み続けた。

最終的には5/1《不治のオーガ/Incurable Ogre》と《洞窟のソクター/Cavern Thoctar》を陣容に加えた上で、必殺の《ナヤの魔除け/Naya Charm》を詠唱! ブロッカーをタップアウトさせ、強烈な一撃を見舞って勝負を決めた。

ニヤリと不適に微笑む浅原は、実は手札に《タイタンの根本原理/Titanic Ultimatum》を温存していたのだった! (※厳密には1マナたりていない状況だが)

浅原 晃、ここまで9勝1敗。

つい先日のグランプリ台北で優勝し、アラーラブロックへの理解の深さを証明した「元・華麗なる天才」小室 修。この第10回戦ではアントワン・ルーエル(Antoine Ruel)とのプロツアー王者対決としてマッチアップされている。

ファッティ・マスターとしてもおなじみの小室はナヤ(緑赤白)の重量級クリーチャーを巧みに繰り出し、《熊手爪のガルガンチュアン/Rakeclaw Gargantuan》による「先制攻撃」と《モストドン/Mosstodon》による「トランプル」を得て、アントワンのジャンド(赤黒緑)軍を蹂躙した。

決意の「《山》待ちハンドをキープ」が報われた浅原。
ダブル《求道者テゼレット/Tezzeret the Seeker》デッキを完成できた高橋。

二人とも幸運にめぐまれたと大雑把に総括して良いかもしれないが、実のところ、第10回戦における真のラッキーマンは別の人物だった!

池田 「ここにきて、対戦相手が遅刻して、勝利! なんてラッキー!」

池田 剛、ここまで9勝1敗。


Round 11 : 大塚 高太郎(神奈川) vs. Samuel Black(アメリカ)

by Daisuke Kawasaki

二大会連続の決勝進出を狙う大塚 さて、先ほどのドラフト観戦記事では中野 圭貴(大阪)のピックを追いかけたが、それでは、記事中で触れた、もうひとりの連続トップ8候補である大塚 高太郎(神奈川)のデック派どのようなできばえなのだろうか。

一見、強そうなパーツがそろっているものの、マナ域に爆弾を抱えているこのデック。

しかし、マナ域の不安というのは、実戦で見てみないとわからない、というのが正直なところだろう。

というわけで、このラウンドではフィーチャリングテーブルに呼び出された大塚 高太郎(神奈川)のマッチをお届けしよう。

対戦するのは、すでに「ミスターアクワイア」としておなじみのSamuel Black(アメリカ)。

そうそう、大塚もアクワイアを楽しんでいるプレイヤーのひとりであり、サムにも「アクワイア、オッケー?と声をかけたりしていたことはお伝えしておこう。

大塚 高太郎(神奈川):ジャンド
Samuel Black(アメリカ):エスパー

Game 1

先手のサムは、2ターン目《急使の薬包/Courier’s Capsule》から3ターン目に《エスパーの戦闘魔道士/Esper Battlemage》という順当なスタート。さらに《エスパーのオベリスク/Obelisk of Esper》を2枚並べる。

一方の大塚は...2ターン目に《火山流埋め/Volcanic Submersion》をサイクリングし...そしてそのまま土地が2枚で止まってしまう。

その隙に、好きなように《エスパーの戦闘魔道士》で殴られ続け、そして、《雲荒れの原のドレイク/Cloudheath Drake》まで追加されてしまう。

たたきつけるようにカードをドローする大塚。

そのカードは念願の《森》。すかさず《枝分かれの稲妻/Branching Bolt》を《エスパーの戦闘魔道士》と《雲荒れの原のドレイク》に打ち込む。

一瞬落胆した顔をしたサムだったが、しかし、気を取り直して《命運縫い/Fatestitcher》を場に追加する。

ここで、大塚は自身のデックの肝である《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》を2枚連続でキャストする。

だが、しかし、この《ヴィティアのとげ刺しはサイクリングの《圧倒する波/Resounding Wave》で手札に戻されてしまうのだった。

サム 1-0 大塚

アメリカのサム・ブラックGame 2

後手を選択する大塚。

サムが《処刑人の薬包》を置き、お互いが《オベリスク/Obelisk》を並べあう展開になる。

大塚はまず《芽吹くトリナクス/Sprouting Thrinax》をキャスト。そして、サムが地上を固めるべくキャストしてきた《機械医師/Metallurgeon》を《魂の火/Soul’s Fire》で除去する。

大塚が《処刑人の薬包》、サムが《急使の薬包》と並べたところで、サムが《エスパーの戦闘魔道士》をキャストする。

しかし、ここでサムに場を支配させるわけに行かない大塚は、2体目の《芽吹くトリナクス》を追加する。

回答を求め、2枚目の《急使の薬包》を使用するサム。そして、今度こそは地上を制圧するべく《鋼覆いの海蛇/Steelclad Serpent》を場に出す。

今度は、サイクリングではない《火山流埋め》が勝負を決めた。

サム 1-1 大塚

Game 3

3ターン目に《島》を2枚のこし、不気味な形でターンを終了するサム。

大塚は《荒廃稲妻/Blightning》を打ち込むが、やはりというかこれは《取り消し/Cancel》される。

そして、サムはさらに《エスパーのオベリスク》でマナを加速し《鋼覆いの海蛇》を場に送り込む。

《芽吹くトリナクス》《ヴィティアのとげ刺し》と、大塚も決して悪い展開ではないが、しかし、盤面はきつく、深く息を吐く。

サムが追加した《エスパーの戦闘魔道士》は《帰化/Naturalize》で破壊するが、以前盤面は膠着したまま。

この膠着を破るべく、サムは《鋼覆いの海蛇》で攻撃し、《アンデッドのレオトー/Undead Leotau》で地上を固めつつ、《処刑人の薬包》を場に追加する。

だが、大塚はこの《鋼覆いの海蛇》を《芽吹くトリナクス》へと《ジャンドの魔除け/Jund Charm》を使用し、5/5とすることで討ち取る。

そして、今度は、この《芽吹くトリナクス》でクロックを刻みはじめる大塚。サムは《鋼覆いの海蛇》を再び場に送り出し、《鋼覆いの海蛇》と《アンデッドのレオトー》のダブルブロックで対処しようと試みる。

大塚の手札には《帰化》。サムはさらに一方的な損を強いられてしまう。

《アミーシャの口づけ》《エスパーの魔除け/Esper Charm》とドローを進め、なんとか《命運縫い》にたどり着いた。

大塚は、《骸骨のカターリ/Skeletal Kathari》をキャストし、この能力で《ヴィティアのとげ刺し》をサクリファイスすることで蘇生能力を活用し、タフネス2の《命運縫い》を除去。

無人の荒野を5/5の《芽吹くトリナクス》が走り抜け、見事サムの5点のライフを削りきった!

はずだった!

そう、大塚とサムのライフメモには1点の差があり、検証の結果、サムのライフは1点残ってしまったのだ。

しかし、たかが1点...と、ここでサムが2枚目の《アミーシャの口づけ》をキャストする。

絶体絶命!

どんどんカードを引き続けるサムだったが...大塚にとって幸いだったことに、《枝分かれの稲妻》対策に飛行を抜いてしまっていたサムには《骸骨のカターリ》をとめることができなかったのだ。

サム 1-2 大塚


Friday 18:18 : Ask the Judge – 三田村 和弥(千葉)選手に失格裁定

by Keita Mori

Toby Elliott, DCI Level 5 Judge第2ドラフトの最中に三田村 和弥(千葉)選手に失格裁定が下りました。

DCIおよび大会運営本部の要請を受け、事件の詳細について、大会ヘッドジャッジのトビー・エリオット氏(DCI認定レベル5ジャッジ/アメリカ)の特別インタビューを掲載さていただきます。

 「何が起こったのか、説明してくださいますか?」

エリオット 「わかりました。まず、前提として、世界選手権という舞台はもっとも厳格にルールが適用されるべき至高の大会であること、それを皆さんに知っていただきたいと思います。我々ジャッジも、DCIも、むやみやたらに厳しいというわけではありません」

 「はい。裁定の内容が失格という厳しい内容だとうかがいましたが・・・」

エリオット 「詳細をお話したいと思います。三田村さんが第2ドラフトのデッキ構築の最中に、ほかのプレイヤーにデッキ構築についての助言を求めている、という通報を受け、三田村さんと、もう一人の方に事情をおうかがいすることになりました」

 「もう一人の方というのは、どなたなのでしょう? 」

エリオット 「それは問題ではありません。調査の過程において、その方はとても協力的で、真実を話してくださいました。一方、状況証拠のある中で、三田村さんはジャッジに嘘をついてしまったのです。厳正な調査の結果、私の責任と権限における判断として、虚偽の申告を行った三田村選手を失格といたしました」

参考出典:DCI懲罰指針・手順書152. イカサマ ─ 詐欺行為
C: 有利を得、あるいは守る目的でスタッフにウソをついた。

 「ご説明ありがとうございました。三田村選手は・・・」

エリオット 「私からお話できるのは以上となります。その後のことについては、別途のDCIからの調査があると思います」


Round 12 : 津村 健志(広島) vs. 渡辺 雄也(神奈川)

by Daisuke Kawasaki

ご存知世界のアイドル、津村 健志 本日の成績をここまで4-1と好調にまとめてきている渡辺 雄也(神奈川)。

同じくドラフトを4-1中で、総合成績でも1敗と、7回目のプロツアートップ8も視野に入ってきた「世界のISO」大礒 正嗣(広島)の成績を考えても、日本代表チームの成績には期待ができるのではないだろうか。

渡辺 「高桑さんがどんどん固くなってますから」

勝ち数と負け数をクリーチャーのパワーとタフネスにたとえるのはよくある話ではあるが、果たして高桑のタフネスは今どれくらいなのだろうか。これは今日のまとめ記事をお待ちいただきたい。

対するのは、ご存じ世界のアイドル津村 健志(広島)。この世界選手権には、大きな思い入れをもって渡米してきたという。

この「アラーラの断片」ドラフトへは、「白緑《巨大化/Giant Growth》」というアーキタイプを作り上げ持ち込んできた津村だったが、セカンドドラフトで作り上げたデックは、ジャンド。

一方で、白緑教に入信した渡辺が構築したのは、当然《巨大化/Giant Growth》系多めのバントデック。

卓内全勝の座を、日本の若いふたりが争う。

津村 健志:ジャンド
渡辺 雄也:バント

Game 1

先手は津村。

2ターン目からの渡辺の《シーリアのエルフ/Cylian Elf》に対して、津村は3ターン目も《ジャンドのオベリスク/Obelisk of Jund》をキャストするのみ。

一方の渡辺は、《目明き階級の魔術師/Sighted-Caste Sorcerer》を追加し、バントとしては上々の序盤を展開する。

だが、津村が《腐肉団/Carrion Thrash》をキャストし、手札に追加の賛美クリーチャーがいなかったことで、渡辺は小考する。

結果、《シーリアのエルフ》でアタックし、《腐肉団》でブロックされたところで《印章の祝福/Sigil Blessing》を使用する。津村は土地が止まってしまったものの、2枚目の《腐肉団》をおかわりする。

渡辺は《天空の先達/Welkin Guide》で津村のライフを攻めていく。

津村は、《血の信徒/Initiate of Blood》を場に追加するが、渡辺が《宮廷の射手/Court Archers》をキャストし、賛美を追加しての《天空の先達》でライフは8になってしまう。

しかし、逆に言えば、まだ8もある。続くアタックでもまだライフを守れることを考え、津村は《荒廃稲妻》で渡辺の残る2枚の手札を刈り取りに行く。

渡辺は《天空の先達》での攻撃を続けて、津村のライフは4。

だが、ここで津村は《臓物を引きずる者/Viscera Dragger》をサイクリングから蘇生し、《骨の粉砕/Bone Splinters》で《天空の先達》を除去する。

《島》をひとつしか持たない渡辺は、《目明き階級の魔術師》すらも《血の信徒》に除去され、かなり厳しい状況となってしまう。

そして、ここで津村の秘密兵器が炸裂する。

その名は《下僕の反射鏡/Minion Reflector》!

《アンデッドのレオトー/Undead Leotau》・《骸骨のカターリ/Skeletal Kathari》と続々コピーされていくと渡辺は戦線を維持することができなくなってしまったのだった。

津村 1-0 渡辺

日本代表の大黒柱、渡辺 雄也Game 2

2ターン目に《天望の騎士》から、3ターン目に《目明き階級の魔術師》と順調に展開する渡辺だったが、なんと土地が2枚で止まってしまう。

一方で、順調に土地を引き続ける津村は《ヴィティアのとげ刺し》《不治のオーガ/Incurable Ogre》、そして《腐肉団》とキャストしていく。

《目明き階級の魔術師》が《ヴィティアのとげ刺し》に殺されたところで、ようやく2枚目の《島》をひいてきた渡辺だったのだが...ここで1枚しかない《平地》へと《火山流埋め/Volcanic Submersion》が打ち込まれたのだった。

津村 2-0 渡辺

津村 「白緑マスターからすれば、青が濃すぎて駄目だね」


Friday 19:45 : Limited Manual - 津村 健志の白緑マニュアル

by Daisuke Kawasaki with Kenji Tsumura

世界選手権二日目が終了した。

本日の最大のトピックのひとつが、藤田 修(京都)が言うところの「西軍」の大活躍だろう。

ここでいう「西軍」とは、「関ヶ原」より西のプレイヤーということで、具体的には以下の4人のプレイヤーを指す。

池田 剛(福岡)
藤田 修(京都)
中野 圭貴(大阪)
津村 健志(広島)

いずれも劣らぬ実力派プレイヤーで構成されたこの「西軍」だが、なんと二日目のドラフトを全員そろって5勝1敗という好成績でまとめ上げ、全員がトップ8を視野に入れる形で三日目を迎えるというのだから驚きだ。

さて、本日の西軍の躍進の遠因のひとつに、津村の提唱する「白緑《巨大化/Giant Growth》ドラフト」があるのは間違いないだろう。なにせ、4人が4人ともこの理論を支持しているのだから。

たとえば、大礒 正嗣(広島)と並び、日本人ポールポジションである2敗ラインに並ぶ池田の場合、ファーストドラフトでタッチ青、セカンドドラフトでタッチ赤という違いはあれど、ともにほぼ白緑の2色デックを構築しているのだ。

というわけで、この津村の白緑デック構築の秘密に迫ってみたい。

【写真】

津村 「どうでもいいですけど、なんで《ゴブリンの王/Goblin King》になってるんですか?」
-- 「いや、まだカバレッジで取り上げてませんでしたし」

Lesson One: 《巨大化》呪文をとりまくれ!

 

Sigil Blessing

まずは、なにはなくとも、このテクニックの軸となるのが、この《巨大化/Giant Growth》呪文を多くとるというコンセプトだ。

ここでいう巨大化呪文とは、《圧倒する咆哮/Resounding Roar》と《印章の祝福/Sigil Blessing》のことを言う。

津村 「この環境では、《巨大化》は除去より強いです」

こう、断言する津村。

津村 「この環境の除去は、ダメージ呪文が多いから、《巨大化》は除去を回避するのに使えるんです。当然、クリーチャー同士の殴りあいで使えれば、その分有利になるわけで、その分、除去より汎用性が高いんです」

そして、また、「除去する必要のあるクリーチャーが少ない」ことも、《巨大化》が強い理由としてあげている。

津村 「コモンだと、ティム (《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》)しかいないんですよ、システムクリーチャーが」

これには藤田も同意する。

藤田 「他の環境と違ってプリベンターみたいに除去しなきゃいけないシステムクリーチャーがいないから、普通だと負け色の白緑が成立するんだよ」

そうなのだ。つまり、システムクリーチャーとして排除するべきクリーチャーがいないのならば

津村 「ティムで負けないデックを作ればいいんです」

というわけで、次はクリーチャーの選択について見ていこう。

Lesson Two: クリーチャーは17体か18体

《巨大化》を戦略の中心にする以上は、できるだけ多くのクリーチャーが必要になる。

津村 「クリーチャーは、17から18は必要ですね」

という。前述の通り、ティムに負けないように

中野 「いかに禿げないか(《目明き階級の魔術師/Sighted-Caste Sorcerer》をピックしないですむか)が肝です」

とのことだが、マナ域を考えると、とらざるを得ないタイミングもあるようだ。

 

Elvish Visionary

津村 「2マナ域は重要ですからね。《天望の騎士/Knight of the Skyward Eye》《シーリアのエルフ/Cylian Elf》《ヴァレロンに仕える者/Steward of Valeron》を集めたいです。とくに《天望の騎士》を何枚とれるかが重要です」

また、タフネス1のクリーチャーでも別格として《エルフの幻想家/Elvish Visionary》の名前を挙げる。

津村 「除去をもった相手に、《エルフの幻想家》と賛美で攻めて、一度除去をうたせられれば勝てます」

また《野生のナカティル/Wild Nacatl》と《アクラサの従者/Akrasan Squire》もできるだけかき集めたいという。

津村 「1マナ域は神」

さて、ここまでの話だと、軽いクリーチャーでテンポ押しするのがメインの戦略に思われるが、さすがは津村。後半戦もきっちりフォローしている。

Lesson Three: 5マナ6マナを6枚入れろ

津村 「理想は、5マナが5枚で6マナが1枚ですかね」

当然、前半は一気に押していくのがポイントなのだが、そのままライフを押し切れない可能性が高いというのが、この手のデックの厳しいところ。

なので、後半でダメージを稼ぐ為にも、高いマナ域のカードをきっちりと確保しておくというのが重要だという。

そんな5マナ域の中でも、オススメは《モストドン/Mosstodon》と《天空の先達/Welkin Guide》だという。

津村 「《モストドン》はトランプルで、《天空の先達》は飛行と強化で最後の数点を削りきってくれますから」

《モストドン》はともかく、《天空の先達》は遅めの順目でも狙っていけるカードだけに、このカードで勝てるデックにできるのがいいという。

藤田 「今日なんて《魔力軟体/Manaplasm》ある状態で《天空の先達》だしたから、《樫の力/Might of Oaks》に飛行がついてくるようなもんやね」

というのは特殊な例だとしても、《天空の先達》は十分に可能性があるカードのようだ。

津村 「この環境は飛行でクロックきざむのが強いです。4マナ域がまったく無くなったりするので《聖域のガーゴイル/Sanctum Gargoyle》も、卓内に強いエスパーができるのを防ぐ為にピックしつつ、自分のデッキも強化できるのでできればとっていきたいですね」

この環境での飛行は、《枝分かれの稲妻/Branching Bolt》のいい的ではとも思うが、

津村 「そこは、《巨大化》で」

とのことだ。

また、同様に遅めの順目でも狙えるだめ押しカードとして、《破門/Excommunicate》の名前も津村は挙げている。

Lesson Four: 弱点をしろう。

ここまで、デックのメリットをあげてきたが、弱点を知り理解を深めることで、勝率はぐんとアップする。

当然、津村に弱点とその対策について語ってもらおう。

津村 「《蔓延/Infest》と《ジャンドの魔除け/Jund Charm》がつらいですね」

ティムには負けないタフネス2のクリーチャーをある程度以上並べるのが基本戦略なだけに、環境に存在する2点の全体除去が明確な弱点となっている。

津村 「これらを《印章の祝福》で避けられれば、勝ったも同然ですね。黒系の相手とは、常に意識してプレイするのが大事」

ということだ。

また、こちらの飛行が強いことの裏返しとして、やはりこちらも飛行をとめにくいということがある。

Court Archers

津村 「《宮廷の射手/Court Archers》は重要です。賛美もですけど、飛行をチャンプブロックできるのが大きいです。終盤のタイトなダメージレースをこれで制するんです」

《宮廷の射手》といえば、賛美。

津村 「0/4(《アクラサの守護者/Guardians of Akrasa》)はできれば入れたくない」

とは言うものの、賛美自体の重要性は高いと津村は語る。

津村 「賛美があれば《器用な決闘者/Deft Duelist》で止まらないですし、無駄に《巨大化》も使わないですみますから」

《天使の祝祷/Angelic Benediction》あたりがとれたりすれば、かなりラッキーとのことだ。

Lesson Five: タッチカラーも研究しよう

理想は白緑2色という津村だが、それではカードが足りなくなってしまうと言うのもドラフトの常。

そこではやはり色をタッチすることが重要だという。

白緑からタッチする色と言えば、ナヤの赤と、バントの青。

津村 「さっき、除去は弱いといいましたけど、《魂の火/Soul’s Fire》と《枝分かれの稲妻》は別格ですね」

とのことで、赤をタッチする場合は、これらの火力をタッチするというのがメインになるという。火力であれば、たとえば《圧倒する雷/Resounding Thunder》もオススメだとのこと。

津村 「あと、《長毛のソクター/Woolly Thoctar》は賛美するとまったく止まらないのでいいですよ」

逆に、青の場合はどうだろうか。

津村自身は、青タッチの方が好みだという。

津村 「青タッチするなら、青いカードは《波掠めのエイヴン/Waveskimmer Aven》だけで押さえたいですね」

《波掠めのエイヴン》は苦手な5マナ域を埋めつつ、このデックの弱点をほぼすべて補ってくれるカードだそうだ。

さて、以上5ポイント、ご理解いただけただろうか。

「西軍」のみならず、北山 雅也(神奈川)や渡辺 雄也(神奈川)のように、関東にも信者が増えている白緑《巨大化》ドラフト。

渡辺 「今回は、津村を信じて二回とも白緑でいきましたよ」

という渡辺も、最終戦で津村自身に負けるまで4勝1敗だったのだから、どうやらこのストラテジーは本物のようだ。

みなさんも、この「白緑マニュアル」を参考に、是非とも挑戦してみてはいかがだろうか。


Friday 20:35 : Feature Article : 二日目総括

by Daisuke Kawasaki

世界選手権も折り返し地点である二日目を終了した。

果たして、日本から参加した25人のプレインズウォーカーたちの戦績はいかに。

まずはこちらの表を見ていただこう。

 

Name Prefecture Day 1 Drafttech First draft First Result Second Draft Second Result Total
大礒 正嗣 広島 18 とくになし ナヤ 6 白緑 6 30
池田 剛 福岡 15 青白 緑白タッチ青 9 緑白タッチ赤 6 30
浅原 晃 神奈川 18 クソデック エスパー 6 ナヤ 3 27
彌永 淳也 東京 15 グリクシス以外 エスパー 6 ナヤ 6 27
大塚 高太郎 神奈川 15 ジャンド ナヤタッチ黒 3 ジャンド 9 27
中野 圭貴 大阪 12 全部 ジャンド 6 ナヤ 9 27
藤田 修 大阪 12 ナヤ ナヤ 6 ナヤ 9 27
津村 健志 広島 12 白緑 白緑タッチ赤 6 ジャンド 9 27
重原 聡紀 山口 12 赤黒 ナヤ 6 ジャンド 6 24
渡辺 雄也 神奈川 12 白緑 ナヤ 6 バント 6 24
小室 修 東京 9 ジャンド エスパー 6 ナヤ 6 21
栗原 伸豪 東京 12 白緑 ナヤタッチ黒 3 エスパー 6 21
森 勝洋 大阪 12 全部 エスパー 3 ジャンド 6 21
中島 主税 神奈川 11 ナヤ ナヤ 3 ナヤ 6 20
高橋 優太 東京 9 グリクシス グリクシス 6 エスパー 3 18
高桑 祥広 神奈川 12 バント グリクシス 0 バント 6 18
三原 槙仁 千葉 6 ナヤ バント 9 赤黒タッチ青緑 3 18
北山 雅也 神奈川 12 エスパー ナヤ 0 ジャンド 3 15
八十岡 翔太 神奈川 9 ジャンド ナヤ 3 ジャンド 3 15
三田村 和弥 千葉 12 ナヤ グリクシス 3 ナヤ - 15
小池 貴之 栃木 3 5色サイクリング ナヤ 9 5色クソサイクリング 3 15
中村 修平 大阪 9 エスパー以外 グリクシス 0 グリクシス 6 15
金子 真実 埼玉 9 赤黒 エスパータッチ赤 3 エスパー 0 12
齋藤 友晴 東京 6 全部 5色 3 赤黒タッチ緑 0 9
平林 和哉 神奈川 3 ジャンド ジャンドタッチ青 3 エスパー 0 6

さて、本日のメインのトピックは、やはり「西軍」の大躍進であろう。

日本人でトップの成績である5勝1敗という成績を収めたのが、ちょうどこの4人だけだというのだから、彼らの能力と団結力には驚かされる。

なお、5勝1敗した中から、津村 健志(広島)のドラフトテクニックについては、別項で特集記事を用意したので、是非ごらんいただきたい。

この表で注目いただきたいのが、最初にインタビューさせていただいた各人の狙いたい戦略と実際にとった戦略の差である。

もちろん、2回のうち1回は...といったプレイヤーが過半数ではあるが、1回もできなかったプレイヤーも少なくない。

逆に、狙った戦略と、2回のドラフトが完全に一致したのは「ドラゴンマスター」中島 主税(神奈川)けだというだから、この環境のドラフトで決め打ちはなかなかに難しい戦略であるようだ。

その中島も、3勝3敗という成績であり、狙い通り行ったからといってうまくいかないのがマジックというゲームの面白いところだろう。

それでは、個人の成績を見てみよう。

まず、ドラフトで大きく点数を稼いだ「西軍」の面々は、初日も5勝1敗であった池田が総合成績を10勝2敗とし、スタンディングの3位につけている。トップ8のラインが4敗1分当たりではないかと目算されているので、池田は明日のエクステンデッドで3勝2敗1分以上の成績でトップ8入りをほぼ確実にできるラインだ。

また、残りの西軍メンバーも、昨日の4勝2敗から、そろって3敗ラインという4-1-1という現実的な数字でトップ8を狙えるラインである。

是非ともこの勢いで、明日も西軍旋風を巻き起こしていただきたい。

さて、初日を全勝した「AA Beam」大礒 正嗣(広島)と浅原 晃(神奈川)はどうだろうか。

「2-4でいいですよ」とコメントしていた大礒は、4勝2敗という望外の成績を収め、日本人ポールポジションの2位。7度目のプロツアートップ8なるか。
浅原も、3勝3敗と失速した成績ではあったが初日の貯金が生きて、3敗ラインという2度目の世界選手権トップ8を目指せる位置に残している。

また、同じく3敗には中野と並んで二年連続のトップ8を目指す大塚 高太郎(神奈川)と、関東若手の意地を見せる彌永 淳也(東京)のふたりの名前が並ぶ。

トップ8圏内である4敗ラインには、Magic Onlineを突破した「SGGK」こと重原 聡紀(山口)と、日本代表渡辺 雄也(神奈川)が。

日本代表?

そう、日本代表の成績はどうなっただろうか。

前述の様に、大礒が30点、渡辺が24点である。

注目の高桑 祥広(神奈川)だが...

高桑 「ヤソ(八十岡)とのマッチ(Round 5)以来、呪われましたよ...」

と語るように、ファーストドラフトでは痛恨の0-3をたたき出してしまった「代表のユダ」だったが、セカンドドラフトでは2勝を果たし、二日目終了時の点数を18点とした。

これで、日本代表チームは、合計72点という個人戦の合計点数では国別でトップの成績となったのだ。

では肝心の順位は?

...これがなんと、5位なのだ。

そう、チーム戦という、勝利チームに9点、引き分けチームには3点が入るという、まるでクイズ番組であるかのようなジャンピングチャンスがあるのだ。

日本より上位のチームは、すでに2ラウンドおこなわれたチーム戦にて、2勝したチームばかり。一方の我らが日本代表チームは1敗1分。これは厳しい。

大礒の「代表優勝宣言」を達成するためには、明日に2ラウンドおこなわれるチーム戦で勝利することは必須!

明日のスケジュールは、個人戦のエクステンデッド6回戦...の前に、まずはチーム戦が2回戦おこなわれる。

日本代表チームの奮闘ぶりは、明日もこのサイトで是非チェックしていただきたい。


Round 7 : 食らい尽くせ

by Nate Price / translated by Sugaya Akio

カバレッジ側の見解として、世界選手権はその複数フォーマットならではの状況が面白い。普通の大会では、同じ相手と何度も試合することはない。西部劇の決闘(デュエル)みたいなものだ。一発勝負、リベンジマッチもなし。しかし、世界選手権ではこうだ。「銃では君の勝ちだ。次は剣といこうじゃないか」

国別対抗チーム戦、その緒戦において、Aaron Nicastriと大礒正嗣の全勝対決がエクステンド・フォーマットで行われている。聞こえた銃声は2発だけ、結果は引き分け。そして、今日の『アラーラの断片』ブースタードラフトでは互いの剣技を競うことになった。奇しくも、二人のデッキは赤緑ベースの似かよった構成で、Nicastriがナヤ色に手を広めたのに対し、大礒はあえてその選択肢を取っていない。

Aaron Nicastri。いい笑顔。Game 1

先行のNicastriは初手を上げて見せ、キープの意思を示す。大礒は7枚を見てしかめ面、ため息をつきながらデッキに戻す。沈思黙考、次の6枚で我慢した。

序盤は特に動きもなく、ともに2ターン土地を置くだけ。3ターン目に《平地/Plains》《森/Forest》《山/Mountain》とそろえたNicastriが《長毛のソクター/Woolly Thoctar》を場に出すが、大礒は何もできず。次のターン、《風切るイグアナール/Hissing Iguanar》を加え、Nicastriは《ソクター》をレッドゾーンに送り込んだ。

「ついでにこれも、ね」と、戦闘後に《森/Forest》と《野生のナカティル/Wild Nacatl》を追加するNicastri。あっと言う間の先制劇だ。

Aaron Nicastri 1 - 0 大礒正嗣

すっかりいい気分でデッキをシャッフルするNicasri、勢いあまって《屍からの発生/Necrogenesis》が大礒の前まですっ飛んでいく始末だ。笑顔で返してあげる大礒、もう片手で視界を覆うのも忘れない。

「ばれちゃった」笑いながらカードを戻すNicastri。

Game 2

第2ゲームは大礒が序盤から仕掛けた。2ターン目、3ターン目と《エルフの幻想家/Elvish Visionary》を連打する。

《エルフの幻想家/Elvish Visionary》はただの1/1だよ、と大礒にライフの間違いを指摘されるNicastri、「そんな強いはずないと思ってたんだ」

大礒は戦線に《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》を加えるが、《マグマのしぶき/Magma Spray》で対処するNicastri。「それ、キライやねん」口をすぼめてみせる。

《ジャンドの戦闘魔道士/Jund Battlemage》は困るらしく、Nicastriが場に置いて手を離した直後に《マグマのしぶき/Magma Spray》を使う大礒。場をきれいにしておいて、《ガルガンチュアンの贈り物/Gift of the Gargantuan》からの《切り裂き隊の壊し屋/Rip-Clan Crasher》と《森/Forest》をタップ状態で場に出し、このアタックでNicastriのライフは15点。

《ジャンドの戦闘魔道士/Jund Battlemage》を再装填できたNicastri、ここからは弾切れしないように大礒のクリーチャーを止めていく状態だ。その大礒は対抗する火力もなく、再び《ガルガンチュアンの贈り物/Gift of the Gargantuan》をプレイ、これまた同じ《切り裂き隊の壊し屋/Rip-Clan Crasher》と《森/Forest》のセットが場に現れる。ポカーンな顔のNicastri、先の兵力と合わせたアタックを受け、ライフは10点になった。

Nicastriの防衛線は4枚目の土地を引けるかどうか次第だったが、不運にも手札から《ジャンドのオベリスク/Obelisk of Jund》をプレイするのみ。1マナ増やすのに1ターンを無駄にしてしまった。ここぞとばかりに2体の《切り裂き隊の壊し屋/Rip-Clan Crasher》でNicastriのライフを6点まで減らす。さらに、戦闘後に《エルフの幻想家/Elvish Visionary》と《切り裂き隊の壊し屋/Rip-Clan Crasher》の片方を6/6の《茨団のヴィーアシーノ/Thorn-Thrash Viashino》に昇級させた。

Nicastriはターン終了時に《ジャンドの戦闘魔道士/Jund Battlemage》でトークンを作り、《風切るイグアナール/Hissing Iguanar》を徴集してなんとか合計6点分のパワーを用意する。轟きやって来る《茨団のヴィーアシーノ/Thorn-Thrash Viashino》を現勢力全てで迎え撃つ。
そして《枝分かれの稲妻/Branching Bolt》が《風切るイグアナール/Hissing Iguanar》を撃ち抜き、彼は投了した。これでNicastriも銃弾を一発受けたわけだ。薬莢に残るはあと一発。

大礒正嗣1 – 1 Aaron Nicastri

大礒正嗣「2枚も《贈り物》使って、もっと良いクリーチャーはなかったの?」Nicastriは思い切って尋ねた。大礒は肩をすくめ、にやりとするのみ。あるいは、《切り裂き隊の壊し屋/Rip-Clan Crasher》が一番良かったのかもしれない。傍から見ている分には、クリスマス前にまた同じ2枚を大礒がプレゼントするとも思えないが。

Game 3

《崩れゆく死滅都市/Crumbling Necropolis》から《切り裂き隊の壊し屋/Rip-Clan Crasher》と動くNicastri、一度だけアタックした後は大礒の同じクリーチャーと相打ちになる。続くターンはNicastriの2体の《ジャンドの戦闘魔道士/Jund Battlemage》を大礒が《枝分かれの稲妻/Branching Bolt》と《マグマのしぶき/Magma Spray》で除去する展開だ。大礒はさらに《腐肉団/Carrion Thrash》を2体場に出し、Nicastriの《ジャングルの織り手/Jungle Weaver》にも平然とアタックしていく。コンバットトリックを警戒してNicastriは8点のダメージを受け入れた。大礒は《エルフの幻想家/Elvish Visionary》を追加したが、のちにより大きな脅威の種となるのは間違いないだろう。

Nacastriのライフは8点、守りの要の《ジャングルの織り手/Jungle Weaver》も《骨の粉砕/Bone Splinters》で除去されてしまう。《エルフの幻想家/Elvish Visionary》はきっちりと役目を果たした。《圧倒する静寂/Resounding Silence》に用心して、大礒はアタックせずにターンを返す。Nicastriはこのチャンスに《圧倒する雷/Resounding Thunder》をサイクリングして《腐肉団/Carrion Thrash》の片割れを対象にする。2マナを支払い、先ほどの《エルフの幻想家/Elvish Visionary》を拾う。

大礒の攻勢を弱めたNicastriは《シーリアのエルフ/Cylian Elf》と《槍折りのビヒモス/Spearbreaker Behemoth》を場に加える。ライフが残り少ないので、ただのブロッカー扱いだ。さらに2ターンの間に《モストドン/Mosstodon》、《ジャングルの織り手/Jungle Weaver》、《エルフの幻想家/Elvish Visionary》が目の前に出てくるが、彼自身は土地を置くしかできない。大礒が《シーリアのエルフ/Cylian Elf》を《枝分かれの稲妻/Branching Bolt》で除去すると、相手の軍勢に対して《槍折りのビヒモス/Spearbreaker Behemoth》しか残っていないNicastriは、さらに手札に持っていた土地を落とし、握手の手を差し伸べた。

「さすがに土地を引きすぎだよ」嘆きながらカードを片付けるNicastri。

大礒正嗣2 – 1 Aaron Nicastri

「こっちのデッキのほうが大礒のよりちょっと上だと思ってたよ。少なくともカードは強いしさ」そう言うNicastriのデッキには《炎破のドラゴン/Flameblast Dragon》、《髑髏覆い/Skullmulcher》、《槍折りのビヒモス/Spearbreaker Behemoth》などの強力なカードが入っていた。
大礒のデッキも良くまとまった強さがあった。単独の強力なカードに頼る代わりに、貪食や《腐肉団/Carrion Thrash》の連携を生かす構成だ。

優秀な除去がこのシナジーの動きをサポートしていて、自分の準備が整うまでの時間稼ぎにもなるし、序盤から相手に守勢を強いることもできる。今のNacastriとの試合などはまさにコンセプト通りに動けたわけだ。「《ジャンドの戦闘魔道士/Jund Battlemage》さえ除去されなければ、《槍折りのビヒモス/Spearbreaker Behemoth》をブロッカーに回さなくても済んだんだけどね。」

 

Carrion Thrash

「《腐肉団/Carrion Thrash》が厄介なんだよ。あの場で《エルフの幻想家/Elvish Visionary》を戻したのは以外だったな。《切り裂き隊の壊し屋/Rip-Clan Crasher》でビートダウンを続けてくれたらなあ。」大礒のデッキの《エルフの幻想家/Elvish Visionary》は大活躍だった。とりあえずカードを引ける、貪食できる、《骨の粉砕/Bone Splinters》も使える。「このデッキにも2枚くらい欲しかったんだよね。このタイプでも、爆弾カードまでの時間稼ぎとしていいんだ」

「もっと早くナヤ色にしてたら良かった。3パック目のはじめの4手で、《ジャンドの戦闘魔道士/Jund Battlemage》が3枚と《長毛のソクター/Woolly Thoctar》がピックできて、さらにその後でもう1枚《長毛のソクター/Woolly Thoctar》が取れたんだから。」

1パック目の遅い順目でもナヤのカードは残っていたし、彼自身も路線変更の目を残していたのだ。2パック目の早い順目で《野生のナカティル/Wild Nacatl》と《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》を見た時に移れば、《ナヤの全景/Naya Panorama》も1枚か2枚は取れていたと言う。もう一色のタッチにこだわり、《バントの全景/Bant Panorama》、《ジャンドのオベリスク/Obelisk of Jund》、《崩れゆく死滅都市/Crumbling Necropolis》以外は基本土地頼みとなってしまったのだ。

ともあれ、それでもNicastriのデッキは卓内でも充分に強そうだ。大礒には後れを取ったが、残りは勝って成績を2-1とするだろうし、その大礒もこのデッキに勝てたのだから3-0は堅いだろう。


Round 10: 処罰せよ

by Bill Stark / translated by Sugaya Akio

日本の栗原伸豪、赤壁の戦いに臨む 栗原 伸豪は周りからも一目置かれている日本のプロ選手だ。この週末の第2ドラフト、10ラウンド目で相対するはフランス人選手Raphael Levy、殿堂入りプレイヤーである。果たして、この刺客を相手にどう立ち回るのか?

Game 1

二人は出目の小さい方でダイスロールをし、勝った栗原は1ターン目に《アクラサの従者/Akrasan Squire》と動くものの、その勢いはすぐに無くなってしまう。続く2ターンは土地を置くだけ、その間にLevyは色マナを揃えていく。栗原がようやくプレイできた二手目は《塔のガーゴイル/Tower Gargoyle》だが、Levyの《死の男爵/Death Baron》と比べると抜群の性能だ。栗原が4/4をレッドゾーンに送り込むと、Levyのライフは9まで減った。

Lveyは《魂の火/Soul’s Fire》で《アクラサの従者/Akrasan Squire》を倒してクロックを1点減らすもライフは残り9点と危険域に入っている。次のアタックで5点となったが、ここで怪物を投入するLevy。《炎破のドラゴン/Flameblast Dragon》だ!

栗原は待ったをかけ、しばし考えたのち、マナを数えて慎重にタップした。

「まさか、《無知の処罰/Punish Ignorance》?」そうたずねる相手に栗原は《吸収/Absorb》と《蝕み/Undermine》のハイブリッド呪文を見せる。Levyはただ笑顔でカードを片付けるだけだった。

栗原 伸豪 1 – 0 Raphael Levy

Game 2

栗原は第2ゲームも《アクラサの従者/Akrasan Squire》からスタートしたが、今回はLevyも1ターン目に《死を出迎える者/Deathgreeter》をプレイしている。おそらくは、栗原の早いエスパー構成に対抗するためにサイドボードから入れたのだろう。さらに相手の足を止めるべく、《エルフの幻想家/Elvish Visionary》もプレイして日本人選手の《器用な決闘者/Deft Duelist》に備える。

賛美される側の恩恵と比べて損なブロックしかできないLevyは、早くもダメージレースで遅れを取る格好だ。栗原は場をさらってしまおうと《エスパーの戦闘魔道士/Esper Battlemage》をプレイしたが、これは《帰化/Naturalize》で吹き飛ばし、ついでに《死を出迎える者/Deathgreeter》でちょっとだけライフを回復する。それでもブロックしても得にならないLevyは、逆に《エルフの幻想家/Elvish Visionary》と《死を出迎える者/Deathgreeter》でアタックして、2点だけ与えることにした。

4マナ揃った栗原、《塔のガーゴイル/Tower Gargoyle》が再登場。4/4を前にして実質独房入りのLevy、先の人生も、あのアーティファクトの怪物が姿を現した途端にうまく行かなくなったのだから。生き延びるすべもない以上、仕方なく《水膨れ虫/Blister Beetle》で《アクラサの従者/Akrasan Squire》を倒す。日本人選手は代わりの賛美として《暁の光の射手/Dawnray Archer》を置いてアタック、Levyは残り10点。

フランスのRaphael Levy、もうあとがない 座して死を待つわけにもいかないLevyは《炎破のドラゴン/Flameblast Dragon》をプレイする。これでタップアウトとなったが、返しのアタックはブロックできた。ライフは17対5と栗原リードのまま。さらにフランス人選手は5/5でアタックして、その誘発型能力で《塔のガーゴイル/Tower Gargoyle》を焼いたが、そこまで。栗原は《圧倒する静寂/Resounding Silence》でドラゴンを追放し、続けて《潮の虚ろの漕ぎ手/Tidehollow Sculler》をプレイ。頭をかかえて、文句をつぶやくしかできないLevyは《ジャングルの織り手/Jungle Weaver》を2/2にさらわれ、さっき以上の困難にすっかり弱った様子だ。ファッティなしでは逆転も望めない。

栗原は《聖域のガーゴイル/Sanctum Gargoyle》で《塔のガーゴイル/Tower Gargoyle》を取り戻し、2体目の《暁の光の射手/Dawnray Archer》をプレイする。これで次から4/5の《聖域のガーゴイル/Sanctum Gargoyle》でアタックできる。
残りライフ6点のLevyは解決策を見出せず、デッキの一番上が《オベリスク》なのを確かめると、敗北を認めた。

栗原 伸豪 2 – 0 Raphael Levy

試合後に互いのデッキを確かめる両者。
「デッキはいまいちだよ」と栗原、「カードは強いけど、マナが不安定で」
しょげた様子のLevy。デッキには何枚か爆弾級のカードがあったのだが、「マナばっかり20枚も引いたんじゃあ・・・」

Latest Event Coverage Articles

December 4, 2021

Innistrad Championship Top 8 Decklists by, Adam Styborski

The Innistrad Championship has its Top 8 players! Congratulations to Christian Hauck, Toru Saito, Yuuki Ichikawa, Zachary Kiihne, Simon Görtzen, Yuta Takahashi, Riku Kumagai, and Yo Akaik...

Learn More

November 29, 2021

Historic at the Innistrad Championship by, Mani Davoudi

Throughout the last competitive season, we watched as Standard and Historic took the spotlight, being featured throughout the League Weekends and Championships. The formats evolved with e...

Learn More

Articles

Articles

Event Coverage Archive

Consult the archives for more articles!

See All