Round 8: 渡辺 雄也(神奈川) vs.
宮島 淳一(新潟)

Posted in Event Coverage on June 23, 2012

By Wizards of the Coast

 ここまで。

 これほどまでに。

 マジック:ザ・ギャザリングという、確実に運の要素も強いゲームで、勝てるものなのか。

 7戦全勝、とりもなおさず無敗でフィーチャーマッチテーブルに現れたのは、つい先週マニラの地でトロフィーを掲げたばかりの渡辺だ。

 始まる前は「モダン練習してなさすぎてやばいんだけど」などと言っていたような気もするが、やはり地力が違うということなのだろう。こうなるとまさかの2週連続のグランプリ優勝も、一気に現実味を帯びてくる。

 そんな渡辺だが、テーブルに着くなり「さっき数えてみたら、先週(グランプリ・マニラ)から14連勝中なんだけど。そろそろ負けるっしょ。マジックそんなに勝てるもんじゃないよ」と嘯く。これはフラグを立てすぎることにより逆にフラグをへし折るという高等テクニックなのか。

 対し。

 こちらも全勝の宮島は、同郷の棚橋 雅康によれば『新潟のエース』らしいのだが、本人に聞いてみたら「いや、そんなことは全くないです(笑)」とのこと。しかし、環境理解度が試されるこのモダン環境でここまで勝ち残っているという時点で、フロックということはあるまい。

 渡辺の15連勝を、果たして宮島は阻めるのか。

R8_watanabe_VS_miyajima.jpg

 渡辺のデッキは、ここまで同じく全勝の尹 壽漢にシェアされた、4色《出産の殻》。対する宮島は白黒トークンである。

ゲーム1

 ダイスロールで渡辺が見事なピンゾロを出したことにより、先手は宮島。6枚スタートだが、《神無き祭殿/Godless Shrine 》からの《思考囲い》で渡辺の

 という充分形の7枚から、《思考囲い》を奪い去る。そして返す渡辺の予定調和の《極楽鳥》に対しては、《孤立した礼拝堂》を置いて2マナを立たせてエンドすると、続けてプレイされた《臓物の予見者》と《シルヴォクののけ者、メリーラ》に合わせて、あえて温存した《盲信的迫害》をエンド前にプレイ。1:2交換でマリガン差を即座に埋め戻す。

 さらに3ターン目、宮島は3枚目の土地が《変わり谷》で初手からあった《幽体の行列》はプレイできないものの、代わりに引き込んでいた《未練ある魂》で順調にアタッカーを置く。渡辺も《根の壁》《スレイベンの守護者、サリア》と、こちらもすぐに盤面を立て直すのだが、宮島は続けて《風立ての高地》を置きつつ《未練ある魂》をフラッシュバック。飛行4点クロックを形成しつつ、秘匿のプレッシャーで渡辺を徐々に追い詰めていく。

宮島 淳一

 ここで渡辺もX=3の《召喚の調べ/Chord of Calling》でサーチした《オルゾフの司教/Orzhov Pontiff 》により、手札は使い切りつつも宮島のスピリットトークンを一時的に全て薙ぎ払うのだったが、《幽体の行列》で一瞬で復帰されてしまってはあまり意味がない。

 それでも、その返しの《シルヴォクののけ者、メリーラ》《スレイベンの守護者、サリア》《オルゾフの司教/Orzhov Pontiff 》という3体の攻撃により、ここまでの地道なアタックと合わせて宮島のライフを7まで落とし込みはするのだが、ここにきて《地平線の梢/Horizon Canopy》のサクリファイス1ドローを含めてもなお土地がフラッドしてしまった渡辺は、後続を展開することができない。

 対照的にリソースの尽きない宮島。まずはスピリットトークンによる飛行3点アタックで渡辺のライフを7とすると、秘匿解除は《潮の虚ろの漕ぎ手》で空振りだが、戦闘後に2枚目の《風立ての高地》をセット。渡辺に残された時間は少ない。

 と、ここ一番で渡辺のドローが起死回生の《エレンドラ谷の大魔導師》。

 これによって《シルヴォクののけ者、メリーラ》との2枚コンボが完成し、返しの宮島のターンさえ凌げれば、トークン生成の大部分をインスタント・ソーサリーに依存する宮島のデッキをハーフロックできるはずだった。

 そう、『はずだった』のだが。

 エンド前に宮島のラスト1枚の手札=《流刑への道》が撃ち込まれると、土地が《新緑の地下墓地》しか立っていない渡辺は《繁殖池/Breeding Pool》をアンタップインしつつの《エレンドラ谷の大魔導師》の能力起動によるカウンターで、残りライフ4とせざるをえなくなり。

 合わせてこれによりフルタップとなった渡辺に対し、直後の宮島のスピリットトークン3体アタックからの2枚目の秘匿解除は、打点をぴったり2点上げる《清浄の名誉》なのだった。

渡辺 0-1 宮島

ゲーム2

 先手の渡辺が、土地4枚に《出産の殻》《イーオスのレインジャー》《召喚の調べ/Chord of Calling 》という若干頼りない7枚を、意を決してキープしたのに対し。

 宮島は同じく土地4枚なれど、《潮の虚ろの漕ぎ手》《盲信的迫害》《未練ある魂》とあるなかなかの初手をキープ。しかもそれに加えて、宮島の土地には《風立ての高地》が含まれているのだ。

 さらに2ターン目のドローも土地でノーアクションの渡辺の手札から、宮島の後手2ターン目の《潮の虚ろの漕ぎ手》が《出産の殻》を容赦なく奪い取る。その返しで渡辺は《極楽鳥》を引き込むが、宮島は予定通り《未練ある魂》。早くも秘匿解除条件を満たせそうだ。

 それでも渡辺は《イーオスのレインジャー》プレイから《臓物の予見者》2枚をサーチ、1体をプレイしてブロッカーを立たせてエンドするのだが、ここで宮島のビッグイニング。

 すなわち、返すターンにまず《清浄の名誉》を置いての3体アタック。そしてブロック前に秘匿解除でプレイされたのは、1ゲーム目と同様に渡辺の《極楽鳥》と《臓物の予見者》を薙ぎ払う《盲信的迫害》。さらに加えて、10点の殴り値が渡辺を襲う。

 懸命に生き残るプランを模索する渡辺は、残る《イーオスのレインジャー》でのチャンプブロックを、ここが正念場とばかりに時間をかけて思案するが、結局全部通してライフ7とする。その返しで《根の壁》《臓物の予見者》とプレイして《召喚の調べ/Chord of Calling》を構えてエンドとするが、宮島の尽きぬリソースを完璧に押し留める術がない。

 可能性があるとすれば。それは《シルヴォクののけ者、メリーラ》《出産の殻》デッキにのみ許された究極のちゃぶ台返し、無限ライフ/無限ダメージコンボしかない。少なくとも観戦者の立場からは、そう見えた。それほど絶望的な状況だったのだ。

渡辺 雄也

 しかし。

 それでもなお。

 自分にとって厳しい状況を常に想定する渡辺は、そんな安易なプランには乗らなかった。

 宮島のスピリットトークン2体による飛行4点アタックを通してライフを3とすると、まずエンド前に《隔離する活力/Sundering Vitae》で《清浄の名誉》を破壊。続けてメインにX=3で《召喚の調べ/Chord of Calling》からの《オルゾフの司教/Orzhov Pontiff》で命からがら宮島のトークンを薙ぎ払うと、《イーオスのレインジャー》で3点アタックする。

 どこまでも渡辺らしく、盤面を少しずつ優勢にしていくことを選択したのだ。

 それはカードをトランプのように揃えるだけの無限コンボのプランと違って、僅かなミスも許されない茨の道。

 だがそれを選択し続けてきたからこそ、渡辺は今現在もトッププロとして活躍しているのだ。それが理解できるワンプレイといえるだろう。

 しかし無情にも、宮島の手札と対応は完璧だった。

 《変わり谷》起動からの宮島の2枚目の《盲信的迫害》と、《オルゾフの司教/Orzhov Pontiff》の憑依先へと飛んだダメ押しの《流刑への道》により、渡辺のライフは綺麗に削りきられてしまった。

渡辺 0-2 宮島

 ゲームが終わった後で、渡辺はゲームを振り返り、負けた原因を検討する。

渡辺 「ミスったー。2ゲーム目で無限コンボは《流刑への道》だけで負けちゃうから諦めてクリーチャーを捌ききるプランとったまでは良かったけど、スピリットトークン2体で殴られたところは、どうせエンド前に《清浄の名誉》割るなら戦闘中に割るべきだし、テイクしたなら《出産の殻》止めてる《潮の虚ろの漕ぎ手》を割るべきだった。もしかしたら何とかなったかもしれないのに」

 負けたとはいえ、これだけの一方的なゲーム展開の中からでも敗着を見出し、次の機会に生かそうという姿勢。

 そう、だからこそ渡辺 雄也という男は恐ろしいのだ。既にプレーヤーとしては間違いなく日本最強クラス、世界に目を広げたとしても、並び立つ者は数えるほどしかいないというのに。

 この男、まだまだ強くなる。


By Atsushi Ito

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