6ラウンドにわたる金曜日のチーム・シールドと土曜日に行われた5ラウンドのチーム・ロチェスター。11ラウンドにわたる死闘を通算で9勝2敗以上というすばらしい戦績を収める事が出来たものたちだけが栄光の決勝ラウンドへと勝ち進むこととなった。実に厳しい通過ラインだっただけに、著名なプレイヤーたちによる強力なチームばかりがラインナップされている。
ところでみなさんはチーム・プロツアーの決勝日に関する面白いエピソードというかジンクスをご存知だろうか? それは、以下の通りである。
・Phoenix Foundationが優勝する。
・鳳凰たちが決勝で見えるのは4チームの中でもっとも無名なチームである。
・準優勝に輝いた無名のチームはその後一年間にブレイクする。
「鳳凰財団」Phoenix Foundationが結成して以来すべてのプロツアーでこれらのジンクスはいきているわけで、つけ加えるなら「無名のチームに準決勝でやられてしまう役」というのがGary WiseやAlex Shvartsmanといった著名なライターのいるチームであるということも言及しておいたほうがいいかもしれない。ともあれ、今大会のベスト4にもこの方程式がピタリとあてはまってしまいそうなところがまた面白い...というかそらおそろしい。
-Zabutan Nemonaut(International)
A:Mike Turian
B:Gary Wise
C:Eugene Harvey
スイス式予選ラウンドを首位で通過したのはアメリカ大陸選抜チーム的なイメージもあるZabutan Nemonautだった。これはチームCMUの首脳ともいうべきTurianとHarveyというコンビにGary Wiseが合流したというかたちのスペシャル・ユニットである。国籍表記がInternationalなのはWiseだけカナダで、CMUの二人がアメリカだからだ。
ところで、CMUにWiseが合流することになったのはちょっとしたニュースだったわけだが、WiseとTurianの長年の友誼を知るものたちにとってはさほど驚くべきことでもなかったようだ。なぜなら、WiseはTurianとともに結成したPotato Nationでプロツアー・ニューヨークに優勝しているからだ。そして、別に彼らは喧嘩別れしたわけでもないのだから。
たしかに、昨年のWiseはCourtney's Boysの一員としてボストンで決勝ラウンドに進出していたわけだが、基本的にはNeil ReevesとBob Maherが出場停止中だったDave Williamsの代わりとなる三人目として「臨時に」Wiseを起用しただけと考えられていた。すなわち、Gary WiseがWilliamsのマジック復帰に伴って再びフリーランサー(チーム戦浪人)となることは想定範囲内のことだったのだ。そして、懐かしのチームへとWiseは戻ることとなる。今ではScott Johnsが(子供が生まれたのを機に)プロ・マジックの最前線から退いているためにPotato Nationの完全復活とはならなかったが、全米王者にも輝いたHarveyという強力なチームメイトとともに...Potato Nationの生き残りたちは優勝を狙っている。
-Phoenix Foundation(Germany)
A:Marco Blume
B:Kai Budde
C:Dirk Baberowski
プロツアー史上をくまなくさがしたとしても、今現在のPhoenix Foundationがこのフォーマットで見せ付ける反則的な強さほどに「圧倒的な強さ」という表現のふさわしい例もみつからないことだろう。
彼らは2年連続でチーム・プロツアーに優勝し、このフォーマットで争われたマスターズでも優勝を飾っている。そして、なんとも衝撃的なことに...それらのイベントで、彼らはドラフトでは1マッチも落としていないのだ。そして、三巨頭はとうとうドラフト17連勝という凄まじい大記録を打ち立ててしまった。この記録はマスターズ・ヴェニスでPanzer Huntersに敗れてしまったことでストップしてしまったもの、彼らの圧倒的な強さにかげりは見えない。
今大会でも鳳凰財団は完璧な強さで予選ラウンドを席巻した。なぜなら、最終順位こそ2位となっているものの、彼らは9連勝したあとZabutan NemonautとThe Brockafekllersとのマッチに投了しただけに過ぎないのだ。つまり、プロツアーにおけるPhoenix Foundationはいまだに「ドラフト無敗」というまさしく不死身の強さを誇示しているのである。
鳳凰が挑戦しているのは比類なきツアー三連勝という大記録である。
-The Brockafellers(USA)
A:Brock Parker
B:William Jensen
C:Matt Linde
近頃の「Budde Finkel以外での世界最強は誰だろう?」という論議の際に必ず最有力候補の一人としてあげられるのが"Huey"ことWilliam Jensenである。そう、Bob MaherやDirk Baberowskiといったツアー優勝経験もあるスター・プレイヤーたちに比肩するほど、Jensenのプレイには定評がある。
そんなJensenのチームは「ウマのあう仲間と組む」という基本的なスタイルを一貫している。その場かぎりのユニットも少なくないプロツアーにおいて、「いつもの面々」がならぬというのはそれだけでちょっとしたことなのだ。LindeやParkerはプロツアーやグランプリでも活躍している強豪たちで...その潜在能力には疑う余地がない。三人仲良く《機知の戦い/Battle of Wits》デッキでグランプリに出場していたりもする仲良し三人組である。
-Original Slackers(International)
A:Lovre Crnobori
B:Jake Smith
C:Rickard Osterberg
今大会の決勝ラウンドにおけるダークホース。それが彼らである。
Osterbergはグランプリ・ワルシャワ(IBC)で優勝を飾った経験があるものの、SmithとCronoboriというのは今のところ国際的には無名そのものである。つまり、一昨年のLes Plus Classや昨年の2020のような「今大会のシンデレラボーイ」といった役回りというとだ。過去二年間、ダークホースは決勝戦で鳳凰に蹴散らされ、そしてそのプロツアーシーズンでブレイクすることとなったわけだが、はたしてSlackersは無敵の鳳凰たちを打ち倒すことでその名を歴史に刻み込むことができるだろうか?
ちなみに、このチームのもともとの名前は「Team Norway」だったそうだ。Lovre Crnoboriがノルウェー在住のスイス人、Jake Smithがノルウェー在住の英国人、そしてRickard Osterbergはスウェーデン人で近々ノルウェーに移住する予定であるのだそうだ。つまり、「全員ノルウェー在住外国人」ということになるからそう命名したのだ。このチームのプロフィール欄は「International」となっているわけだが、彼ら自信に言わせれば「Norway」と表記してほしかったりもするらしい。
また、Osterbergは今大会にむけて並々ならぬ決意をもって望んでいるようだ。Olle RadeとMorgan Karlssonと組んだチームですでにボストンいきの切符をつかんでいたのにもかかわらず...OsterbergはLovreとJakeと新しいチームを組み、そしてPTQを勝利してボストンへとやってきたのだ。
つまり、生きた伝説でもあるOlle Radeよりも、Jake SmithとLovre Cronoboriという男たちにOsterbergは惹かれたということだろう。