シールドという迷宮

Posted in Event Coverage on March 1, 2013

By Masami Kaneko

 シールドのデッキ構築。数多のプレイヤーが迷い込んだ迷宮。

 果たして何色を使うべきなのか。強いレアを優先するのか。マナカーブか、カードパワーか。土地のバランスは。

 その迷宮は数多くのプレイヤーを飲み込み、翻弄していった。そう、それこそトッププロ達さえも、何度も飲まれていった。

 一度迷い込めば抜け出せないこの迷宮に、今回も2297人ものプレイヤーが迷宮に挑戦している。

 そんな迷宮の、最も出口に近いと思われるプレイヤー。迷宮の解答を知っていそうな人間。

 この会場でそんなプレイヤーを何人か探してみた。

 クリスティアン・カルカノ/Christian Calcano。

 中村修平。

 津村健志。

 今日はグランプリ本戦のパックとは別に仮想で共通のパックを用意し、彼らにデッキを組んでもらった。

 迷宮の攻略に絶対の正解は無いかもしれない。しかし、彼らの構築から学べることは多いはずだ。

 迷宮に挑むために、彼らの話を聴いてみよう。カードプールはこんな内容だ。


2 《従順なスラル
1 《徴税理事
2 《宮廷通りの住人
2 《ギルド嘲笑いの護法印
1 《天駆ける進撃
1 《天使の布告
1 《債務者の演壇

オルゾフ
1 《ヴィズコーパの聴罪司祭
1 《処刑人の一振り
1 《千叩き


1 《スラルの寄生虫
1 《聖堂の金切り声上げ
1 《欄干のスパイ
1 《ディミーア家の恐怖
1 《煙の精霊
1 《肉貪り
2 《真夜中の復活
1 《精神的蒸気

ディミーア
1 《死教団のならず者
1 《夜帷の死霊
1 《心理的打撃
1 《囁く狂気


1 《雲ヒレの猛禽
1 《鍵達人のならず者
1 《すがりつくイソギンチャク
1 《心見のドレイク
1 《交通渋滞
1 《外出恐怖症
1 《散乱する電弧
1 《盗賊の道
1 《最後の思考
1 《道迷い

シミック
1 《シュラバザメ
2 《水形
1 《予想外の結果


1 《尖塔なぞり
2 《旧き道の信奉者
1 《緑側の見張り
1 《殺戮角
1 《キヅタ小径の住人
1 《強制順応
1 《帰化
1 《野生林の再誕
1 《真似るスライム
1 《遮り蔦

グルール
1 《炎樹族の使者
1 《スカルグのギルド魔道士
1 《ザル=ターの豚
1 《瓦礫鬼
2 《闘技
1 《激情の耕作


1 《爆弾部隊
1 《ヴィーアシーノの軸尾
1 《そびえ立つ雷拳
1 《強盗
1 《頭蓋割り
1 《反逆の行動
1 《大規模な奇襲
2 《ブリキ通りの市場
1 《構造崩壊

ボロス
1 《ウォジェクの矛槍兵
1 《ボロスの反攻者
1 《破壊的一撃
1 《軍部の栄光

アーティファクト
1 《装甲輸送機
1 《千年王国のガーゴイル
1 《予言のプリズム
1 《幻術師の篭手
1 《ボロスの魔鍵
1 《シミックの魔鍵

土地
2 《ディミーアのギルド門
1 《グルールのギルド門
1 《演劇の舞台

 

Christian Calcano の場合

 昨年のグランプリ・ミネアポリスで優勝した売り出し中のCalcanoが構築したのは、以下のようなデッキ。

 クリーチャーの優秀なグルールに《天使の布告》のみをタッチした形だ。

 《千年王国のガーゴイル》の枠は《そびえ立つ雷拳》でかなり迷っていたようだが、飛行クリーチャーを優先。地上の4/4よりも2/2飛行のほうが強いという考えのようだ。

 特徴的なのはそのマナバランスで、軽い2マナクリーチャーがしっかりあるにも関わらず18枚の土地を用意している。そして、たった1枚のタッチカード《天使の布告》のために平地が2枚と《予言のプリズム》。なんともゆとりを持ったマナ構成だ。どうしてこのような構成に至ったのか、少しインタビューしてみよう。

――このマナ構成に至った理由を教えて頂けますか?

「緑のカードは全部シングルコストだからね、緑マナは8枚で十分さ。それよりも5マナ域の多さに注目してくれよ。こいつらを安定してプレイするためには、18枚の土地が必要だね。土地が18枚有るからこそ、平地も3枚入れられるのさ。18枚目の土地が平地の2枚目。」

――ギルド門侵犯のシールドで一番大事なことは?

「マナが安定していること。カードパワーも重要だけど、何よりも安定していることが重要だね。プレイできないカードばっかり手札に抱えてもしょうがないからね。だから、『ギルド門』や『魔鍵』はとても重要だ。」

 なるほど、土地18枚に、各色の必要枚数計算のうえでの土地バランス。納得の方針である。

 なお、今回組んでもらったデッキについてどう思うか訊いてみたところ、「悪くないと思うよ。」という上々の回答が帰ってきた。

「――でも。」ニヤリと笑いながら続ける。「今回の俺のデッキのほうが、強力だね。」

 本戦での彼の活躍に期待しよう。

中村修平の場合

 生けるプレインズウォーカーこと中村の選択は、純正のグルールだった。

 最初に各色のカードを並べ、緑に使用に値するカードが多いことを確認すると、まずはシミックを並べた。そのうえで赤のカードをタッチする形でデッキを構築するも、不満だったようで、すぐに解体。

 その後並べたのは純正のグルールで、こちらにはだいぶ満足したよう。

「このデッキなら十分戦える」とは中村の談。カルカノがマナ域や構成について懸念し解決策を用意していたのに対して、少しタイトなマナ構成のデッキを作った。

「デッキが早い構成になってるから、《予言のプリズム》は入れたくないね。そんな事してる暇が有るならクリーチャー並べたい。別にタッチしたいカードが有るわけじゃないしね。」

 目標はビートダウン。遠回りしている暇は無いという判断か。

 中村が迷っていたのが最後の一枚。《帰化》と《野生林の再誕》で迷っていたが、結局《帰化》に決めたようだ。「どちらも裏目があるカードなんだけど、帰化のほうが少し裏目が少ないかな、と。シールドだから《千叩き》とかもよく見そうだし。」と環境を見渡したうえでの選択理由を教えてくれた。

「このデッキ?まあ自分のデッキとどっこいどっこいかな。」と話す中村のデッキは「デッキどう?」のほうで話してくれた通り70点〜のデッキであることから、このデッキは十分に戦えると考えているようだ。

津村健志の場合

「この環境のシールドで大切なことは?」と訊かれて「マナの安定が大切ですね。極力2色で組みたいです。」とCalcanoと同様のことを口にしていた津村。

 殿堂入りプレイヤーの津村は、カードをひと通り見て、パッとグルールのカードを抜き出した。「概ねこれですね。」とすぐにデッキが浮かぶ当たり、環境の理解が伺える。実際相当量の練習を積んだそうだ。

 グルール以外のカードで一旦青黒白を組んでみたりするも、すぐに「これは無いですね。」と言って片付け、グルールの調整に入った。

 調整の末に《債務者の演壇》をタッチするかかなり考えていたが、結局タッチはせずにメインのカードはグルールのカード。……そして、《ボロスの魔鍵》?

 《ボロスの反攻者》がいる関係で《予言のプリズム》を即決した津村だが、ここにさらに《ボロスの魔鍵》を加えた意図は何なのだろうか。もちろん平地はゼロ、《予言のプリズム》経由以外ではクリーチャー化しない魔鍵だ。決してスペックが高いカードだとは言えない。しかしそれでもこのカードを採用するという。

「他に入れたいカードがあまり無いってのもあるんですが、5マナ域が多いんですよね、このデッキ。純粋にジャンプアップのためにも入れる価値があると思いますよ。」

 なるほど、デッキ全体の構成を考えてマナを安定させるように組むのは、「マナの安定が大事」と言っていた津村らしい。Calcanoが土地を18枚にすることで解決していた問題について、津村はこのアーティファクトに解決を見出したのだ。

「このデッキでグランプリ? うーん、悪くはないと思いますね。」とそこそこの感想を述べてくれた津村。「それよりも聞いて下さいよ、今日の僕のデッキ、メインもサイドも結構強いんですけど、みんなに『サイドのほうが強い』って言われるんですよー! うーん、やっぱりメインはこっちのほうが良かったのかなぁ。でもなー、これ練習してた時に負けるパターンのデッキだと思ったんですよねー。うーん。」

 津村ほどのプレイヤーでも迷い込む。それがシールドのデッキ構築なのだ。

 

 ここまでの三者は、細部の違いはあれどかなり近いグルールを構築した。

 このパックの正解はグルールなのだろうか。この迷宮の解答は。

 そして。

 最後はやはり、あの男に訊いてみよう。

 そう、「現役最強」こと渡辺雄也だ。

渡辺雄也の場合

 渡辺はこれまでの三者に作られてきたグルールにはっきりと拒絶の意思を見せた。

 色、カードの組み合わせの試行の末にできたデッキは、今までの三者とは全く違うエスパーカラーのコントロールデッキだった。もちろん、これまでの三者が組んだグルールについても意識した上で、だ。

「デッキの強さは同じくらいだと思うんですよね。で、そっちのグルールは先手だと70の力が出るかもしれませんけど、後手だと20くらいの力しか発揮できないんですよ。僕はこのデッキでグランプリは戦いたくないですね。」

「その点このエスパーは違います。先手でも後手でも50の力が出せますね。3色なのも2枚の《ディミーアのギルド門》でそれほど気にならないですし。マジックって半分は後手になるゲームなんで。」

 そう語る渡辺は、デッキの強さだけでなくマジックというゲームにおいて、"勝つ"という目的をはっきりと意識していた。

「このグルール、ぱっと見2マナ域がしっかりあって強く見えるかもしれない。でも、その上の3マナと4マナ域が本当に薄いんですよね。言い換えれば、『2マナ域があるだけ』デッキ。そこから5マナに飛んでるから、かなり運が良くないと軽快なビートはしにくいと思いますよ。後手で2マナ域を出せたは良いものの、その後が続かなくて攻めあぐねるシーンが目に見えてますね。」

「それよりも僕はこっち。カードパワーがしっかりしてるからどっしり構えてれば勝てる。除去も複数あるし《心理的打撃》もあるから相手のレアにも対処しやすい。で、1マナ域と2マナ域がしっかり有るので。特に2枚の《従順なスラル》が良いですね、これは2マナ域やそれ以上が止められる1マナ域ですから。」

 ゲーム展開も含めてグルールにノーを出した渡辺。しかしこのグルールが絶対ダメかというとそういうわけではないという。

「先手が取れればかなり勝てそうだし、バイ(不戦勝)が少なければこっちの選択もあるとは思いますよ。あと、サイドボード後で先手が確定してる時とか。そうですね、サイドボードとしてはかなり使いそうですね。先手なら流石に強い。」

 そう、メインはエスパーにするとしても、サイドボード後で先手ならかなりの頻度で使うだろうというのだ。

「このパックでメインをエスパーにするのは他の人とは違う考えかもしれませんね。でも僕はこういう考えが好きですね。メインは安定で。サイドボードでデッキの速度を変えたり、デッキ自体を変えるプランを持っておくと、有利になれる相手が多いですからね。」

 デッキの強さだけでなくゲームの展開、グランプリという舞台で勝つということも含めて考えて自分の意見を語ってくれた渡辺。デッキ構築という視点だけでなくサイドボード後の展開も想定しシールドを考えるその視野の広さは、さすが「現役最強」といえるだろう。

 

 『グランプリ・横浜』という迷宮を攻略するプレイヤーは誰なのか。

 栄誉ある優勝を手にするのは。

 さぁ、迷宮に挑もう。

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