すべてはプリンセス・バターカップのために

Posted in Event Coverage on May 18, 2013

By Blake Rasmussen

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 彼の友人たちは彼のことを「バターカップ姫」と呼ぶ。ただし、このままいけば、友人たちは彼のことを「プロツアートップ8入賞者、プリンセス・バターカップ様」と呼ばなければいけなくなるかもしれない。(訳注:アメリカの小説「プリンセス・ブライド」及びその映画版「プリンセス・ブライド・ストーリー」のヒロイン)

 プロツアー初参加にして10-0という見事な結果では、ロブ・カステリョン/Rob Castellonがトップ8を意識し始めても不思議はない。ところが彼はそうならなかった。

 メイン州でジャッジを務めるカステリョンは、世界選手権王者、プロツアー優勝者を相手にカメラの前で戦った後も、私がこれまで見た中で最高クラスの接戦を演じた後も、穏やかにリラックスした様子だ。彼はそのすべてに勝ってきた。

 それでも、こういう経験には戸惑いを覚えているようだ。これまでの成功についての回顧を求められると、彼は肩をすくめ、恐縮したように笑顔で頭を下げる。その一方で、自身のデッキと、ジャッジ褒賞版アートの《天秤》が描かれた見事なタトゥーを誇示することには、彼は喜んでいるようだった。またトップの順位へ登るにつれて友人たちの注目が集まりすぎ、携帯からFacebookをアンインストールしたという。

「まあどっちにしても、今はTwitterで騒がれてますけど」

ジャッジ褒賞版の《天秤》が描かれたタトゥーを見せるレベル2ジャッジ、ロブ・カステリョン。
ニックネームからは驚かれるだろうか。彼は人生初のプロツアーで華々しく初日の主役を演じている。

 なぜ騒がれているのか。マジック・コミュニティは、カステリョンがこの場にいることに、カステリョン本人同様驚いているのだ。彼は『アラーラ再誕』からマジックをプレイし、ジャッジの世界では良く知られた人物だが、高レベルでのプレイ経験は、そう、限られているのだ。

 実際のところ、カステリョンは思いがけないストーリーをたどっている。ニューハンプシャーで行われたプロツアー予選にジャッジとして参加するつもりだったカステリョンは、街に入ると大会主催者のメールに返信していなかったことに気づいた。モダンで行われるこの予選に、スタッフとしての参加ができなくなったのだ。そこで、彼は大会前日にコントロール要素――《太陽のタイタン》、《スフィンクスの啓示》、《台所の嫌がらせ屋》など――を固めて白青のコントロール・デッキを組み、しばしばその色を代表する《聖トラフトの霊》のような人気のカードの採用を避けた。

 果たして彼はプロツアー予選を突破した。それが彼の人生初のモダン10マッチで、わずか6回目のプロツアー予選でのことだった。彼の予定にはない週末だった。地方の大会でジャッジをするつもりが、プロツアーへの旅券を手にしていたのだ。

 それでも、彼はジャッジとしてしてきたことのおかげだと考えている。カメラの前でも落ち着いているのは、ジャッジ中と同じようにしているからだ。

「ジャッジをしている間は、カッとなったり心を乱したりするようなことは起こりません。ですが、プレイ中はそういうことが多々あります」

 カステリョンならではの言葉だ。例えば先述のプロツアー予選準決勝、彼はトリプルマリガンに見舞われながら冷静さを保ち、そのゲームを取り優勝への道を進んだ。一方対戦相手は、そのゲームを落としたことで心を乱し、それが戻ることはなかった。

「ジャッジの仕事は大好きです。とても面白いので。プレイングにある優劣というものがジャッジにはない。私みたいな心構えで大会に出ようという人はいないでしょうね」

 公平な立場から言って、カステリョンのような大会への心構えは珍しい。彼が唯一残った無敗プレイヤーとなると、他のプレイヤーたちが彼の強さの秘密を求めて大騒ぎになった。

 トレードマークである冷静さに加えて、彼の強さの秘密には兄弟であるマイクと共に作り上げたという独自の4色デッキがあると思われる。様々なデッキを試したのち、マイクはボロゾフのミッドレンジ・デッキが良いと感じた。ただし、それは赤単には勝てないデッキだった。そこで彼らは、《ケンタウルスの癒し手》や《サルーリの門番》を運用できる緑マナが必要だとわかった。しかし《狂気の種父》のために赤マナも必要だった。

 ならばすべてを使おうではないか。そして、一緒に《死橋の詠唱》という素晴らしいカードを投入するのだ。このカードは過小評価されていて、このフォーマット最強カードのひとつだ、とカステリョンは言う。

 彼の(青以外の)4色ミッドレンジ・デッキは、今大会中ずっと話題になっていた。元世界選手権王者のユーリ・ペレグ/Uri Pelegは、初日にカメラの前でこのデッキに敗れたにも関わらず、このデッキがどれだけ気に入ったか語り続けていた。

死橋の詠唱
今週末見られた最も驚くべきカードのひとつは、カステリョンを唯一の全勝で2日目へ送った《死橋の詠唱》だ。

 興味深いことに、ペレグの方はマナを安定させるために純粋なアゾリウスのデッキを使っていた。ゲーム中、彼は青マナの供給につまずくことがあった。カステリョンの4色デッキはどうだったのだろう?

「マナ基盤は完璧に仕上げました」とカステリョン。

 とはいえ、4色のマナ・ベースによる被害者もあった。《幽霊議員オブゼダート》だ。カステリョンの言う「完璧」なマナ・ベースでは、はまかなえないのだ。

 それでも、カステリョンは《ヴィズコーパの血男爵》はちょうど良いと言う。

「皆さんがどうかはわかりませんが、僕は《ヴィズコーパの血男爵》に《死橋の大巨虫》を活用したことがあるんです」

 そんなカステリョンが本当に恐れているカードは、《真髄の針》を引くか《殺戮遊戯》で抜いてしまうかしないと対処できない《霊異種》だそうだ。たとえ対戦相手の手札に《スフィンクスの啓示》があるのがわかっていても、《殺戮遊戯》で最初に指定するのは《霊異種》であると彼は言った。

「X=10の《スフィンクスの啓示》なら何とかなりますけど」と、カステリョンは続ける。「《霊異種》はダメですね」

 ドラフトの方はどうだろう。カステリョンはシミック入りのデッキを好んでいて、ここまで2回のドラフトを黒青緑と赤青緑で組んでいる。赤青緑デッキは《種喰らい》2枚からスタートしていて、つまり振り返ることなくシミックへ進んだのだ。

 勝利に次ぐ勝利を掴んでもなお、彼は酔いしれることはなかった。多くの幸運があり、そのほとんどがジャッジの仲間たちが彼の足を地につけていてくれるおかげだ。

 実を言うと、彼のあだ名である「バターカップ姫」を最初につけたのはジャッジ・コミュニティなのだ。

「グランプリ・オーランドの打ち上げで、みんなが大きなステーキを注文しているなか、僕はメニューに『シャーク・ステーキ』とあるのを見つけたんです。聞いたことのないものだったので、僕はそれを注文しました」とカステリョンは説明してくれた。「でも、出てきたのはみんなが頼んだ大きなステーキ用のお皿に乗った小さなステーキ。そこで、あるフロリダのレベル3ジャッジが僕に尋ねました。『お食事はそれで十分ですか、バターカップ姫?』それが定着してしまったんです」

「グランプリ・アトランタで『バターカップ姫、ステージの方へお越しください』と聞いたときには、もう間に合わないと悟りましたよ」

 この記事はたぶんすぐには広がらない。それでも、TwitterやFacebook、そして彼のここまでの成績のおかげで、彼の名前が別の意味で有名になるには時間がかからないだろう。

「今度は、『まぐれの10-0男』ですかね」


(Tr. Tetsuya Yabuki)

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