第1回戦:ボロス・ビートダウン
Martin Juza(チェコ) vs. Ben Stark(アメリカ)

Posted in Event Coverage on May 16, 2014

By Blake Rasmussen

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マーティン・ジュザ/ Martin Juza vs. ベン・スターク/Ben Stark(世界ランキング4位)

 これでこそプロツアーだ。長きにわたるチームメイトであり、友人であり、そして世界有数のリミテッド・プレイヤー――世界ランキング4位、ベン・スタークとチーム「ChannelFireball」の同胞マーティン・ジュザの両名ほどにお互いのことを知り尽くしているプレイヤーは、この会場内にもまずいないだろう。彼らは共にプレイ・テストを行い、共に旅をし、そして必然と言うべきか、本戦でも共にドラフトを行うことになった。

 こうして第1ラウンドを飾るのも、必然と言える。

 ドラフト・テーブルを挟んで対面する形になったジュザとスタークは両者とも、速く強烈な打撃力と豊富なコンバット・トリックを持つ赤白のアグレッシブなデッキをドラフトした。完全に色が被ったということはつまり、デッキの出来に満足できたのは片方のプレイヤーだけということだ。これについては後に語ることにしよう。

 今大会、ジュザにはスタークより少しでも良い結果が求められる。ジュザ本人が「勝てないシーズン」と言うように、彼はちょうどここ1週間で世界ランキングを失ったばかりだ。殿堂顕彰の候補者でもあるジュザは、投票権を持つ者たちに彼の名前を思い起こさせるために、そして世界選手権への参加をかけたレースへと再び戻るために、プロツアーでの活躍を必要としている。さらに言えば、今大会での成績が奮わないと、今年のプラチナ・レベルも危うい状況なのだ。

 一方スターク。すでに殿堂顕彰を受けている彼にとって今シーズンは(ここまでのところ)「勝てるシーズン」であり、シーズン中最も価値の高い「プロツアー」の舞台においても、しっかりと優位を築いている。盤石と言って差し支えないだろう。

世界ランキング4位のベン・スタークとマーティン・ジュザ、チームメイト同士で迎える第1回戦。

 しかし、結論から言って、スタークのデッキは失敗であった。

それぞれのデッキ

「まずいね」とスタークがひと言。自分のデッキであっても決して贔屓目に見ない男の言である。「強力なコモンが1枚もない。色は想定通りだったけれど、パックが道を拓いてくれなかったよ」

 卓内のポジションから判断して、選択した色については十分に満足したと語るスタークだが、しかしその色、つまり白赤のカードで彼が得たのは「二番手」のものばかりのようだった。その理由はひとつ。ジュザがチャンスを逃さず白赤のカードをかき集めていたからだ。

「良いカードが手に入ったね」30枚近い数の、デッキに入り得るカードをシャッフルしながら、ジュザは言った。「カットもできたよ」

 ドラフトが始まるなり、ジュザは赤が流されて来るのを感じ取った。彼は《力による操縦》を取ると、すぐさまアーキタイプを固めた。《力による操縦》はジュザがこのフォーマットで《信者の沈黙》の次に強い、と考えているカードだが、彼はそれ以上にあるシンプルな理由で赤の呪文を好んでいた。

「攻撃が好きなんだ」

 いずれにしても、彼のデッキはこうなっていたのだろう。厳選されたコンバット・トリックとオーラに支えられた軽量クリーチャーたちを駆使し、素早く強烈な攻めを可能にする、お手本のような白赤デッキ。私がジュザのもとへ取材に行った頃にはもう、強力なコンバット・トリックの数々からどれを抜くか、という段階だった。そして最終的に、使用に耐えるカードが5枚もサイドボードに残された。

 ジュザのデッキは極めて強力で、速く、安定感もあるように見受けられる。一方のスタークのデッキだが、統一感の無いクリーチャーをきちんとしたマナ・カーブにまとめ上げ、コンバット・トリックも添えてあるようだ。

 少なくとも、それがひとつの考え方だろう。

ゲーム展開

 ジュザの動き出しは速かった――1/1を2体続けて繰り出すほどの速さはあった――のだが、すぐに重度の「土地引かない病」が彼を襲い、展開が止まった。ジュザほどの腕をもってしても、《》2枚では動きに限界がある。

 一方スタークは、クリーチャーを並べて攻撃に向かわせる以上の特別なことはしなかった。だが結果的には、それで十分過ぎるのだ。

殿堂顕彰者ベン・スタークが、チームメイトでもある対戦相手の出遅れの隙を突く。

 ジュザの顔に浮かぶフラストレーションの色は想像に難くないだろう。彼の強力なデッキは今、攻め手はおろかスタークの雑多な軍勢を防ぐトークンも召集できないのだ。ジュザの頼みは《》3枚のみで、ちまちまとした《性急な太陽追い》での攻撃を強いられ、一方のスタークはそれを無視し、見たところコンバット・トリックは持っていない中で1/1や1/2、2/2、それからどうにも不似合いの3/2と様々なクリーチャーでの攻撃を重ねていった。

 スタークのライフは9点、ジュザのライフは10点。スタークは雑多なクリーチャーの群れでの突撃を続ける。ジュザがブロッカーを2体追加した頃には彼のライフは3点まで落ち込み、状況を打破することはほぼ不可能だった。

 それでも万が一を信じ、ジュザは《槌の一撃》を《アクロスの猛犬》へ撃ち込むと彼のとれる選択肢を吟味した。様々なシナリオが、計算が(そう、数学的な計算だ)頭をよぎり、彼は結論を出した。次のターンを生き残るという望みはあまりに遠い、と。

 両プレイヤーは第2ゲームでも再び、速く、力強く動き出した。3ターン目には早くも4点のダメージを与え合い、冷静にマナ・カーブ通りに展開を続ける。ジュザは《恐るべき気質》をまとった《印章持ちのスキンク》で攻勢を進め、一方スタークは1マナ、2マナ、3マナと軽量クリーチャーを展開し続け、《アクロスの重装歩兵》に軍勢を率いさせる。

ジュザが良い形で今大会のスタートを切るには、良いドローを取り戻さなければならない

 ゲームが佳境を迎えたのはスタークの4ターン目だった。ジュザは《不機嫌なサイクロプス》(「不機嫌」と言うならジュザのクリーチャーすべてがそうだろう)を《アクロスの重装歩兵》のブロックに向かわせるかどうかの選択を迫られた。ジュザがブロックしないことを選択すると、《定命の者の熱意》を加えた9点ものダメージが彼に直撃し、ライフ・レースは大きくスターク有利に傾いた。

「もうひとつバットリあるんだろ」ジュザはそう判断する。「いや2枚かな」

「3枚だよ。ここを忘れちゃいけないね」スタークはデッキの一番上を軽く叩いた。

 実際に3枚持っていたわけではないが、スタークの手札には《密集軍の隊形》があった――1枚でも3枚分のコンバット・トリックだ。ジュザがブロックに向かい、せめて何体かスタークの軍勢を討ち取ることができればと願いを込めたそのとき、スタークがしっかりと固めた《密集軍の隊形》が、ジュザのブロッカーを3体すべて吹き飛ばした。ジュザがカードを片付けたのは、その次のターンであった。

ジュザ 0-2 スターク

「良いとこ全然引けなかったんだな」試合後ジュザのデッキを眺め、スタークがそう漏らした。「こっちのデッキより断然強いよ。マナ・カーブとコンバット・トリックはまあ良かったけど、強いカード何も無いからね」

 それでも、ジュザは己の運の無さを深く嘆いた。よりにもよって、どうしても結果が欲しいこの大会でのことだ。

「強いカードもいらなかったよ。ただ3枚目の土地があれば呪文が使えたのに」

 スタークはこの友人がプロ・ポイントを必要としていて、今大会で良い成績を収めなければならないことを知っている。だから彼は友人としてできることを――励ましの言葉を送った。この試合は運が無かっただけでデッキは強力無比だ、と。さらに彼は、ベン・スタークとしてできることもした。ジュザのデッキを共に確認し、どこか改善点がないか探したのである。

 たとえわずか数分前に争った相手でも、それがプロツアーで友人のためにできることなのだから。

(Tr. Tetsuya Yabuki)

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