Feature: ブロック構築戦回顧録

Posted in Event Coverage on April 19, 2007

By Keita Mori

Giant Strength

八年間さまざまな試合形式のプロツアーを取材してきた私の個人的な感想として、観戦していて一番面白いフォーマットのひとつがブロック構築戦だ。このあたり、世界的デッキビルダーであるところの藤田 剛史(大阪)に言わせると、「カードを工夫して使うというところがマジックの本質的な面白さで、カードプールが弱いほうがアイデアの意外性の勝負になりやすいから当然のことやね」となる。

アイデアの意外性の勝負。

1998年5月。《ボトルのノーム/Bottle Gnomes》が《ジャッカルの仔/Jackal Pup》や《モグの狂信者/Mogg Fanatic》を完封するだろうと言われていたテンペスト=ブロック構築で、David Price(アメリカ)は《巨人の力/Giant Strength》というエンチャント(クリーチャー)に活路を見出した。このエンチャントは同系対決でも自軍の戦力を対戦相手の《焚きつけ/Kindle》や《呪われた巻物/Cursed Scroll》で対処不可能なサイズへと押し上げるもので、実際これが決定打となることもしばしばだった。プロツアー・ロサンゼルスで伝説的な勝利をおさめたPriceは、今も"King of Beatdown"という二つ名とともに語り継がれている。

Pro Tour Los Angeles 1998

Dave Price


2000年4月。伝説のパーマネントが現在のように「対消滅」せずに「先出し絶対有利」だったメルカディアン・マスクス=ブロック構築では、《果敢な勇士リン・シヴィー/Lin Sivvi, Defiant Hero》率いるレベリオンデッキが明確に環境を支配する存在だった。当然、多くのミラーマッチが想定された中で、「結局は膠着状態を《恭しきマントラ/Reverent Mantra》でいかに突破するかの勝負となるから」と、費用対効果にすぐれたアタッカーである《ブラストダーム/Blastoderm》や《はじける子嚢/Saproling Burst》をデッキに加えるために緑をタッチしたのがBen Rubin(アメリカ)たちだった。そして、その色合いゆえに「メロン」と呼ばれたデッキは、数々の同系対決を制しただけでなく、レベルキラーを自認する数々のアンチデッキをもクリーチャーのサイズで蹂躙し、Rubinにプロツアー第3位入賞という栄誉をもたらした。

Pro Tour New York 2000

Ben Rubin


まさしくブロック構築戦プロツアーとは創意工夫の戦いであり、その歴史をたどることは先人たちの英知に触れる道行きとなる。ここで挙げた二つのエピソードなど、あくまでもブロック構築が誇る豊かな歴史のほんの一端に過ぎない。

はたしてプロツアー横浜でどのような機知の戦いが繰り広げられるかは後ほど掲載される試合記事にまかせるとして、本稿では藤田 剛史との昔話にしばしお付き合い願いたい。

■Pro Tour Tokyo 2001

2001年3月。「デッキ構築の天才」藤田 剛史はインベイジョン=ブロック構築で行われたプロツアー東京で準優勝を果たした。いささかの誇張もなく、これは日本マジック史における記念碑的な出来事だった。それは日本コミュニティ全体がブロック構築を苦手科目としていた時代に起こり、しかも、日本がはじめてホストしたプロツアーでのことであり、何よりも、それは日本人がはじめてプロツアーの舞台で決勝ラウンドを踏みしめた瞬間だったからだ。さらに付け加えるなら、「アイデアの意外性」という意味でも藤田が作り上げた"The Rats"は傑出したものがあった。

藤田はプロツアー東京で準優勝を果たした。

「ステロイド(赤緑ビートダウン)や赤黒の《虚空/Void》デッキが強いんだろうなっていうことは、たぶん、世界のほとんどのプレイヤーが、少なくとも何となくは、気づいていたやろうね」と、藤田は当時のインベイジョン環境を振り返る。

「そして、カウンターや手札破壊を組み合わせた青黒のデッキをいじってたヤツは、《虚空》には強いんだけれど、ステロイドが洗練されてくれると勝てないという壁にぶつかることになる。《アーボーグのシャンブラー/Urborg Shambler》だけやと、2マナ域3マナ域で出てくるアタッカーには全然間にあわへんから」

「…でも」 藤田は続ける。

「《貪欲なるネズミ/Ravenous Rats》を入れてみたら、手札1枚を奪いながら、相手の2マナ2/1や3マナ3/1をブロックで相打ちにとる2対1交換ができるようになった。それでも序盤の徹底攻勢にはまだ苦しくて、さらにデッキを軽くしようと《禁制/Prohibit》を試して見ると、これを入れたことによって勝率がガラっとかわった。たぶん、カウンター・シャンブラーにネズミを足すくらいまで辿りついてた人は他にもおったんやろうけど、覚えている限りでは《禁制》まではほとんど入っていなかったと思う。スタンダードではぜんぜん使われへんような微妙な強さのカードやけど、これが入ったことでオレのデッキが完成したっていう感じの一枚が《禁制》やった」

かつてDavid Priceが《巨人の力/Giant Strength》を見つけて他の赤単色を出し抜いたように、藤田も《禁制/Prohibit》というピースを見つけたことでパズルを解き明かしているのだ。

Tsuyoshi Fujita


赤いデッキが強いという判断のもとで藤田が辿りついた答え、"The Rats"は見事なものだった。

しかし、世界には上には上が、藤田いわく「オレにはまったく予想もできんかった素晴らしいデッキ」が存在し、プロツアー東京の決勝戦でそのデッキが藤田をスウィープした。それはある種の機能美を誇示するかのようなシンプルなデザインで、基本地形を除き、メインデッキのすべてのカードが4枚ずつで構成されていた。

いまや「その構築環境への解答」という意味のマジック・スラングとして定着している「ソリューション(The Solution)」とは、このときZvi Mowshowitz(アメリカ)が自らのデッキにつけた名前である。

藤田はその歴史的決勝戦をこう振り返る。

「あれだけインベイジョン=ブロック環境のことを考えに考え抜いて、練習に練習を重ねてきたのに、最後の最後でまったく知らんデッキにあたったなんて、考えられんかった。有利なのか不利なのかもまったくわからんし、正直ちょっとしたパニックのままの三連敗。……あの衝撃は一生忘れられんね」

Pro Tour Tokyo 2001

Zvi Mowshowitz


■Pro Tour Kobe 2004

藤田のデッキを駆り、黒田 正城が日本人初のプロツアー王者となった

プロツアー東京の決勝戦では苦杯をなめさせられたものの、自分のブロック構築デッキが世界に通用するという確信を"The Rats"によって得た藤田は、辿り着けなかった"The Solution"の高みを目指すというモチベーションとともに、数々の名作をトーナメントシーンへと送り出しはじめた。そして、「親和」の支配的な強さに関する話題で持ちきりになっていたミラディン=ブロック構築のプロツアーで、とうとう藤田はソリューションを見つけることに――環境を完全に解き明かすことに――成功する。

2004年2月。黒田 正城(大阪)がGabriel Nassif(フランス)へと渾身の《火の玉/Fireball》を撃ち込むと、藤田の紳士録にはまた新たな一行が追加された。三年越しで、藤田はプロツアーを初めて制した日本人デッキビルダーとなったのだ。そのシンプルなデッキリストは、とても力強く、雄弁で、そして美しかった。

英語圏の記事でいまもマジックを代表的するアーキタイプの分類項として登場する"Kuroda-Style Red"というのは、まさしくこのとき黒田が使用していた赤単色のバーンデッキのことを意味するものである。

藤田 「…やっぱり、強いデッキはリストが短くなるものなんやね」

Pro Tour Kobe 2004

Kuroda Masashiro


■Pro Tour Yokohama 2007 Preview ~時は流れて~

藤田が扉を開いたのが2001年。黒田が藤田のデッキをプレイして日本人初のプロツアー王者となったのが2004年。そして、2005年と2006年の二年間に関しては、世界チャンピオンと年間最優秀プロプレイヤー(Player of the Year)のタイトルを日本勢が独占するようになり、いまやKai Budde(ドイツ)やJon Finkel(アメリカ)と比肩し得るスーパースターとして日本の津村 健志(広島)の名前が挙げられるようになった。

時代の寵児となった津村 健志

過去の歴史を踏まえて、「日本人が勝って当たり前の時代」となって迎えるブロック構築戦プロツアーの行方について藤田に問うてみると、彼はいつも以上に雄弁になった。

「…良くも悪くもマジックオンライン(Magic Online)ってことやね。プロツアー東京なんかの頃との一番の違いは、プロツアー参加選手ほとんど全員がある程度の強さのデッキレシピを持ってくるようになったっていうことやね。昔は調整の足りてないデッキなんかがそれなりにいて、『あ、これってオレのデッキのだいぶ昔のバージョンやん』みたいなボーナスゲームも正直あった。いまじゃ、たとえばちょっと前のオンラインのプレミアイベントでベストエイトが白単色8人に独占されたりしたことなんかも基本知識やからね。『あ、このカード実は強い』みたいなシークレットテクやとか、特定の対戦がえらく有利になるサイドボードカードなんかもあっという間に広まってしまう。あのときのソリューションのような衝撃っていうのは…もうなかなか味わえないんちゃうかな」

藤田の指摘するとおり、かつては存在した情報格差というのがマジックオンラインによってほとんど無くなった。いまでは「マジックで結果を残すのは英語ではない言葉をしゃべる連中で、特に日本語とポルトガル語が多い」とまで言われる時代であり、それに関してマジックオンラインの格差是正が貢献しているところも大であろう。

逆説的に、マジックオンライン上では知られること無く、草の根のトーナメントなどでじわじわと勝ち続けるようなデッキがあれば、それこそがシークレットデッキとして世界に不意打ちをかけることができる時代なのかもしれない。事実、2005年度世界選手権横浜大会のスタンダードで日本勢が大活躍を果たした例など、前述した草の根スキームから発祥した「ガジーの輝き(Ghazi Glare)」デッキという秘密兵器があったからこそとも言える。

「マジックオンラインが当たり前になっているせいなのかどうかはわからんけど、白単色ウィニーと青黒コントロールとその他がそれぞれ1:1:1くらいの割合で存在するメタゲームになるんじゃないかなって、漠然と考えてる」と藤田は時のらせん=ブロック構築の行方について予想する。

「残念ながら、自分としては今回ソリューション的なものは見つけられていないというか、多分、どんなデッキが勝っても予想の範疇を大きく超えることはないんだろうと思っているけど…」

…いるけど?

「ただ、ちょっと気になっているのが、みんな『二色は事故って当たり前』っていう事実を結構忘れてしまっているんじゃないかなっていうのがあるんで、オレは安定性を重視した単色で行こうと思っています」

…二色は事故って当たり前?

Teferi, Mage of Zhalfir

「よほどデュアルランドが充実している時代か、あるいは緑のマナサーチ系カードを基軸にしたデッキでない場合、二色のデッキは基本的に事故りますよ。たとえば、黒コントロール対青緑マッドネスの勝負になったオデッセイ=ブロックでも、《島/Island》12枚《森/Forest》12枚みたいなマナベースの青緑がよく事故って死んでいったでしょ? …っていうか、それオレ自身の話やねんけどね。まあ、今の環境が仮にそこまでではないとしても、青黒コントロールなんかがの《突然の死/Sudden Death》との《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》を普通に共存させたりしてるのは、冷静に考えるとどうなんやろ。あと、《堕落の触手/Tendrils of Corruption》をプレイするときはデッキに1~2枚だけ入ってる《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》が前提だとか、いろいろオカシイことなってるのが気になるね。当たり前の話で申し訳ないんやけど、どんだけ強くてもプレイできない呪文を手札に腐らせるデッキは勝ち上がれないんじゃないかな」

現在のスタンダード環境がラヴニカのショックランドや第9版のペインランドによる「多色全盛」の世界であることがどこまで影響しているかはわからないが、たしかに藤田の指摘するような「不安定なマナベース」という構造的な問題を孕んだブロック構築のデッキも少なくないようだ。

さらに、藤田はマナベースだけでなくデッキそのものの整合性という面にも言及する。

「たとえばスタンダードの『ソーラーフレア』なんかを考えると、《神の怒り/Wrath of God》を使うデッキは、それより軽いクリーチャーは基本的にほとんど入れないでしょ? でも、いまのブロック構築では、《滅び/Damnation》を撃つデッキが軽いクリーチャーを結構入れてたりっていう、デッキとしての矛盾というか、ただパワーカードを集めているだけっていう感じのものが結構あるやんね。そりゃ、引きがかみ合えばパワーカードを端から使っていくだけで勝てるってこともあるやろうけど、デッキとして筋が通ってないと長丁場ではどっかでボロが出るとおもうで。ハッキリ言うと、ただパワーカードを集めたというんじゃ…それは、デッキとは言えない」

二日間の激闘の果てに勝ち残るデッキがはたしてどのようなものであるか、マナベースやデッキの整合性にも注視していきたいところだ。

興味深いことに、《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》デッキひとつをとってみても、多くの日本人プロやフランスのRuel兄弟たちが森 勝洋(東京)デザインの"Baby Star"と呼ばれる青黒タッチ赤を選択している中で、藤田 剛史のコミュニティは堅実な青単色へと進んでいるのである。

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