Feature: Finding the TBC - Step 1

Posted in Event Coverage on April 19, 2007

By Daisuke Kawasaki

Terramorphic Expanse

今月の頭ごろの事だが、津村 健志(広島)はこんな事を言っている。「時のらせんブロック限定構築(以下TBC)は、多くのデックタイプに溢れる可能性がある」と。彼いわく「時のらせんブロックは、サブセットであるタイムシフトによって、2番目のエキスパンション発売後にもかかわらず、通常の3番目のセットが発売された並のカードプールを持っている。また、通常のブロック構築は、ブロックの推し進めるひとつのシステムに支配され、それに対するアンチデッキとのメタゲームが焦点となるが、時のらせんブロックは、意図的にコンセプトの分散が行われているため、そのような事が起こりにくい」

私の意見では、津村の言うことには半分賛成で、半分反対だ。確かに、この環境は過去のブロック構築からは考えられないほどのアーキタイプに溢れる可能性に満ちている。唯一の弱点であると思われた、優秀な多色地形の不足による多色化が難しいとい問題も、《広漠なる変幻地/Terramorphic Expanse》と《虹色のレンズ/Prismatic Lens》によって、2色タッチ1色程度までの多色化はギリギリながらも可能となっている。もちろん、マナベースの億弱さという根本的な欠点は抱えたままであるので、単色デックにも単色としてのメリットが十分にある。

だが、アーキタイプという括りではなく、使用されているカードで考えた場合、ある種のパターンに当てはめることが可能なのではないだろうか?

ここでは、まだまだ馴染みが薄いと思われるTBCの理解の助けとなるべく、環境の簡単な紹介を行っていこう。通常ではここでアーキタイプの紹介を行うのが筋であるとは思うが、あえてアーキタイプではなく、まずは環境に存在し、多くのデックで使用されるであろうカードにこそ目を向けて解説していきたいと思う。それらが使用される具体的なアーキタイプ・デックリストの解説は、明日、二日目進出デックを元に展開していく予定である。

「リミテッドシーズン」と呼ばれた昨シーズンとうってかわって、今シーズンは構築戦が中心となっており、日本のプロツアーも何年かぶりに「伝統の限定構築」となった。限定構築といえば、過去に様々なドラマを生み出してきたフォーマット。時には情報の格差が、時には完全なるメタゲームが、我々に驚きと感動を与えてきた。そして、今回もきっと例外ではないだろう。世界最高峰のプレイヤーたちによって紡がれるプロツアー横浜という物語、3日間にわたるその物語を心ゆくまで楽しもうではないか。

■《カルシダーム/Calciderm

「メタゲームのスタート地点」

まず、最初に紹介するカードはこのクリーチャー。といっても、本質的に紹介するべきなのはこのカード自体ではなく、このカードが使用されるアーキタイプ、白ウィニーである。

「アーキタイプではなく、カードによって環境を理解する」と言った舌の根も乾かないうちに、と思われるかもしれない。しかし、白ウィニーというアーキタイプの強さは、カード単体に拠らない安定性にあるのだ。

次元の混乱発売前から、《アイケイシアの投槍兵/Icatian Javelineers》《聖なる後光の騎士/Knight of the Holy Nimbus》《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》といったスタンダードレベルの低マナクリーチャーと、圧倒的な突破力と除去耐性を誇る《グリフィンの導き》によって、環境を支配する一角と目されていた白ウィニー。次元の混乱によって、欠けていたマナ域である1マナ域を埋める《トロウケアの影/Shade of Trokair》によって序盤の安定感に拍車がかかった。

事実、先週末にMagic Online上で、TBCによって行われたプレミアイベントでは、トップ8のその全員が白ウィニーを使用していたという驚くべき結果が出ている。この結果を盲目的に信じるのはあまりに早計ではある。しかし、この事実は、白ウィニーというアーキタイプのポテンシャルの高さの証左ではあるだろう。

過去に、たとえば神河ブロック限定構築での蛇デックのように、直前で本命であったデックが本戦では思うように活躍できないといった現象はままあった。しかし、一方で、マスクスブロック限定構築のリベリオンのように圧倒的に環境を支配することだって当然あったのである。はたして、白ウィニーはどちらの運命を選ぶこととなるのか。

なににしろ、環境理解のスタート地点が、このビートダウンにあることだけは間違いないだろう。

■《滅び/Damnation

Damnation

「ビートダウンある所にボードコントロールあり」

黒くなった《神の怒り/Wrath of God》こと、《滅び》。ビートダウンが台頭した時に、《神の怒り》を使用した白系のボードコントロールが台頭してくるのはメタゲームの常である。次元の混乱したこの世界では、黒系のボードコントロールがその責を負うこととなる。

実際に、黒系のボードコントロールデックが、白ウィニーへの回答として最も選択されることの多いデックであり、その選択理由が《滅び》にある事は間違いないのだが、しかし、一方で《滅び》自体は白ウィニーへの直接的な回答とはなりえない。《グリフィンの導き》のついたクリーチャーへの根本的な回答となりえない事と、《カルシダーム》への数少ない回答であるため不用意に使用できないのがその理由だ。《滅び》だけでは白ウィニーの猛攻に耐え切ることが難しいのだ。

過去に、多くの白系ボードコントロールは、ビートダウンへの回答として全体除去である《神の怒り》だけでなく、《ジェラードの知恵/Gerrard's Wisdom》に代表されるライフコントロールを積んできた。

TBCにおける黒系ボードコントロールも、この伝統にのっとったカードを採用している。

それが《堕落の触手/Tendrils of Corruption》である。全ての土地を《沼/Swamp》にする《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》と組み合わさった時に《堕落の触手》が稼ぎ出すライフは、ボードを掌握するのに十分な時間を稼ぎ出す。

さらに全体除去を増やした赤黒《虚空/Void》コントロールと、カウンターとドローにバックアップされた青黒コントロールがこのカードを使用した代表的なアーキタイプであると言えるだろう。また、後述するマナ加速と《調和/Harmonize》という環境トップレベルのドローカードを擁する黒緑コントロールも無視のできない存在だろう。

■《影魔道士の浸透者/Shadowmage Infiltrator
■《永劫の年代史家/Aeon Chronicler

「コントロール対決はハンドアドバンテージ対決に帰結する」

ビートダウンを好み、進んで使用するプレイヤーがいるのと同様に、ビートダウンを嫌い、できる限りコントロールを使用しようとするプレイヤーもいる。環境最強のデックが、たとえ白ウィニーであったとしても、それを使用するのではなく、アンチデックとなる黒系ボードコントロールを選択するプレイヤーも間違いなく多い。

白ウィニーからスタートし、《滅び》にたどり着いたプレイヤーが次に考えることは、間違いなく「同型対決」となる黒系に対するメタゲームであろう。

ビートダウンとコントロールの対決の場合、そこで重要になるのは、いかにボードを支配するかである。カードパワーでは劣るものの低マナ域のカードで序盤のボードを支配するビートダウンと、マナコストが高い代わりにカードパワーの高いカードによって終盤のボードを支配するコントロールの対決では、1枚のカードのパワーがゲームを決める。

だが、コントロール対決の場合は話が違う。もちろん、カードのパワーがないがしろにされるわけではない。だが、もともとのカードパワーに差がある対ビートダウンの場合と違い、基本的にはコントロール対決ではお互いのカードパワーに大きな差は無い。従って、コントロール対決では枚数のアドバンテージを制したほうがゲームを制することとなる。

ここであげた二つのカードは、白ウィニー対決であった場合、序盤のボードアドバンテージの奪い合いに対して直接的に大きな影響を与えるカードではない。しかし、コントロール対決になった場合、長期的に場を支配しうるカードなのだ。

この環境に存在するカウンターのほとんどが3マナ以上である。つまり、先攻の3ターン目までにキャストするスペルはほぼカウンターされないという環境の前提がある。そこで登場するのが「フィンケル」こと《影魔道士の浸透者/Shadowmage Infiltrator》である。一度場に出てしまえば無類のドローエンジンとなるこのカード、コントロール対決が3ターン目にキャストされたこのカードによって決まってしまうことも少なくない。

そして、《永劫の年代史家》。《永劫の年代史家》は、そのドロー能力が待機中に誘発される「効果」でもたらされる。つまり、「カウンターされないドローエンジン」なのである。そして、場に出た後は、往年の《マロー/Maro》よろしく、一気にゲームを決める決定打となりうる。待機中に引き増したカードによって、自身を守れるという自己完結したシステム持つこのカードは、その存在が知れるや否や、環境に一気に広まった。元々青をもたない赤黒《虚空》コントロールですら、青をタッチしてこのカードだけを投入する始末なのだ。

■《虹色のレンズ/Prismatic Lens
■《明日への探索/Search for Tomorrow
■《根の壁/Wall of Roots

Search for Tomorrow

「マナが無ければ世界は動き出さない」

まだTBCの調整が始まったばかりのころに、森 勝洋はこう語った。「環境最強のカードのうちの1枚は《明日への探索》だね」と。

《影魔道士の浸透者》の説明でも触れたが、この環境のターニングポイントとなるターンは、先攻の3ターン目にある。カウンターをかいくぐり、《グリフィンの導き》によってクロックは膨れ上がり、変異が謎を呼ぶ。ここで項目としては取り上げていないが、対コントロールのマッチが先攻3ターン目に場に出た《嵐の束縛/Stormbind》で決まってしまうことだってあるのだ。

《滅び》《調和》の例を出すまでも無く、純粋なパワーカードのほとんどが4マナかそれ以上でデザインされている関係もあり、3ターン目までが序盤であると言えるだろう。3マナ以上か以下か、それがこの環境でのカード選択の一つの基準となりうるのである。

そして、その3ターン目に、パワーカードのマナ域である4マナにアクセスしうるこれらのマナ加速カードが弱いはずが無い。繰り返すが、この環境には3マナ域と4マナ域の間に明らかな壁がある。《セラの報復者/Serra Avenger》が4ターン目までキャストできないようにデザインされているのも決して偶然ではない。

《根の壁》はマナ加速をしながら、序盤の猛攻を防ぐという、まさにコントロールにあった使用をされる。《根の壁》の存在こそが、緑系コントロールのひとつの存在意義であるとすら言える。

そして、森が最強(過去に習えば「マジゴッド」)と評する《明日への探索》。こちらも3ターン目に4マナ域まで加速できるカードであるが、《根の壁》がビートダウンへの耐性をあげるというメリットがあるのに対して、こちらは序盤のマナを活用できるというメリットがある。実は、この環境に低マナ域で序盤から使用できるコントロール向けのカードはほとんど存在せず、コントロールの1ターン目は《広漠なる変幻地》に費やされることが多い。

ここで、1ターン目からマナ加速に向けて行動することで、2ターン目に《応じ返し/Snapback》を構えたり、《戦慄艦の浅瀬/Dreadship Reef》などの貯蓄ランドにカウンターをためて後の更なるマナ加速に備えることが可能となるのだ。当然ながら、緑マナしか供給しない《根の壁》とちがって、こちらには色マナを安定させるというメリットもある。

そして、マナ加速は緑だけの特権ではない。

《虹色のレンズ/Prismatic Lens》は全ての色でのマナ加速と色マナの安定を可能とさせる。《広漠なる変幻地》と組み合わさった時、メインボードやサイドボードで1色をタッチし、デック全体のパワーを、安定度をそこまで犠牲とせずとも可能とさせるのだ。

津村 健志の言葉を借りれば、「この環境はマナが止まった瞬間に負ける」環境である。これらのマナ生産手段、そして逆の意味で《なだれ乗り/Avalanche Riders》や《ムウォンヴーリーの酸苔/Mwonvuli Acid-Moss》といった土地破壊が環境のキーのひとつとなることは間違いない。デックタイプによっては《睡蓮の花/Lotus Bloom》がゲームを決めることも少なくないだろう。

■《ヴェズーヴァの多相の戦士/Vesuvan Shapeshifter
■《幽体の魔力/Spectral Force
■《硫黄の精霊/Sulfur Elemental

「クリーチャーは白だけではない」

さて、ここまで白ウィニーから始まり、コントロール対決に至るTBCのメタゲームを見てきたわけだが、環境が白ウィニーと黒系コントロールに二分されているわけではない。確かにこの二つのデックタイプがメタゲームの中心である事は否定できない事実だが、しかし、冒頭の浅原の言葉を引用するまでも無く、この環境には多くのアーキタイプが溢れているのである。

すでにスタンダードでもおなじみのクリーチャーである《ヴェズーヴァの多相の戦士》。本来ならば、ここで青いクリーチャーとして《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》を紹介するべきなのであろうが、様々なデックタイプに入りうるクリーチャーとしてここでは《ヴェズーヴァの多相の戦士》をとりあげたいと思う。

《ヴェズーヴァの多相の戦士》は1枚のカードとしてはありえないほどに多彩な動きをするカードである。《塩水の精霊/Brine Elemental》とのいわゆる「ピクルス」コンボをはじめとして、対戦相手の《ザルファーの魔道士、テフェリー》《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》に代表されるような伝説のクリーチャーを対消滅させたり、《カルシダーム》への直接的な回答となったりと、その有効性は枚挙に暇が無い。

続いて、《幽体の魔力》。

本質的に、緑という色は、ボードを支配する色である。TBCにおける緑は、ドローをしたり、マナを伸ばしたりと、アドバンテージ面での活躍ばかりがフィーチャーされているが、もちろん、緑がビートダウンをしないわけではない。

白ウィニーが低マナ高効率のクリーチャーの群れでボードのイニシアチブを握るデックなのに対して、緑のビートダウンは、中マナ域以上でのマナ効率のよさによって、単体の制圧力でボードのイニシアチブを握るデックである。その代表例が、環境でもっともマナレシオ(パワー/タフネスに対するマナ効率)の良いクリーチャーの一体である《幽体の魔力》である。

こちらもスタンダードでお馴染みのスクリブ&フォース(《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger》とのコンボ)がそのまま使用できる上に、ラヴニカブロックのカードの無いTBCでは、いわゆる《恐怖/Terror》系の除去が実用レベルではほとんど無いのもこのカードにとって追い風である。環境の基本除去のひとつである《突然の死/Sudden Death》ではこのカードを対処できないのだ。赤緑や青緑などのボードコントロールのフィニッシャーや、緑単ストンピーなどでもっともその姿をみるクリーチャーとなるだろう。

メタゲームのスタート地点が白ウィニーである事は、幾度と無く繰り返し書いてきたことだと思う。そして、そのアンチデックが、白の対抗色である黒系のデックであることもまた、幾度と無く繰り返し書いてきた。

では、白のもうひとつの対抗色である赤は、アンチデックとはなれないのだろうか?

その答えとなるのが《硫黄の精霊》である。このカードの強力さは、すでに先のGP京都でも証明されているが、白ウィニーがメタの中心であるこの環境でこそその真価が発揮されるのではないだろうか?

プロテクション(白)をもつ《血騎士/Blood Knight》とともに構築された赤系のビートダウンは、メタゲームのソリューションとなる可能性を秘めているし、《硫黄の精霊》の「単体だと相手のクロックを強化しうる」という欠点をフォローするべく《ヴェズーヴァの多相の戦士》と組み合わせた青赤デックも、ひとつの可能性として考慮に値するデックタイプであろう。

■《野生のつがい/Wild Pair

Wild Pair

「環境のひとつのスパイス」

ビートダウンとコントロールの全面戦争。これがこのプロツアーのキーワードとなるであろう事は、ご理解いただけたと思う。

しかし、マジックはビートダウンとコントロールだけで行われるゲームではない。トリッキーなカードによるコンボデック、これもまた、マジックの一番の醍醐味である。ましてや、パワーカードに溢れたTBC環境、コンボデックがメタゲームに食い込んでこない理由がないではないか。

たとえば、《有り余る無/Null Profusion》をドローエンジンとしたコンボデック。たとえば、《ガイアの祝福/Gaea's Blessing》で《永劫での歩み/Walk the Aeons》を使いまわして無限ターンを得るコンボデック。可能性は無限にある。

だが、コンボデックプレイヤーも伊達や酔狂でコンボをまわしているわけではない。様々な可能性の中から、たったひとつの冴えたやり方を見つけ出さなければならない。

そして、今大会で「もっとも冴えた」コンボカードが、この《野生のつがい》となるのだろう。

様々な可能性を秘めたこのカードだが、最終的に「クリーチャーが並ぶ」というカードの持つ潜在的な特性ともっともかみ合ったスリヴァーによるシステムを採用したデックが環境のメインであるようだ。《宝革スリヴァー/Gemhide Sliver》でマナを加速し、《休眠スリヴァー/Dormant Sliver》でドローを加速する。そして、《野生のつがい》が場に出たらカーニバル。《白たてがみのライオン/Whitemane Lion》から繰り出されるスリヴァーの大群には夢とロマンが溢れている。

また、さらに夢とロマンが溢れた、《基底スリヴァー/Basal Sliver》《肺臓スリヴァー/Pulmonic Sliver》による無限マナエンジンが組み込まれたバージョンも存在するらしいといううわさもある。

このスリヴァータイプの《野生のつがい》デック、コントロールに対しては、軽量のスリヴァーを中心としてビートしつつ、《神秘の蛇/Mystic Snake》で守るクロックパーミとして機能する一方で、白ウィニーに代表されるビートダウンに対しては《念動スリヴァー/Telekinetic Sliver》によるボードコントロールとして機能するという、コンボエンジン以外の部分で環境でのソリューションとなりうる可能性を持っている。

多色かつ、クリーチャーを並べるデックタイプという億弱さもあるものの、選択肢の一つとしてはずせないデックタイプのひとつといえるだろう。

ここで挙げたカードが環境の全てである、とは言わない。現実のトーナメントがどのような結論をだすのか、二日目進出アーキタイプのブレークダウンを楽しみにしたい。

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