準々決勝 : 齋藤 友晴(東京) vs. Raphael Levy(スウェーデン)

Posted in Event Coverage on April 22, 2007

By Daisuke Kawasaki

齋藤 友晴

勢いというものは、本当に存在するものなのだろうか?存在するなら、どんなきっかけが生み出すのだろうか?

「今一番勢いがあるプレイヤーは?」と聞かれたら、多くの人々はなんと答えるのだろうか?筆者がこの質問に答えるとしたら、Raphael Levy(ラファエル レヴィ/スウェーデン)の名前を挙げざるを得ないだろう。もともと長いキャリアを常に最前線に立ち続けていた「古豪」であるLevy。むしろ、その長期にわたる貢献度を買われて、昨年度の「殿堂入り」プレイヤーへと選ばれたといっても過言ではない。そう、日本における藤田 剛史(大阪)のような、長きに渡ってコミュニティを引っ張ってきたリーダーだったのだ。

だが、「殿堂入り」がきっかけだったのかどうかはわからないが、GPダラスで9年ぶりのグランプリ優勝を果たすと、続くGPシンガポールで怒涛の2連覇。そして、このプロツアー横浜でのトップ8入賞だ。別に、それまでのLevyの能力を低く評価しているわけではない。Levyは間違いなくマジックというゲームが誇る強豪のひとりだ。しかし、強豪が「勝てる」とき、それには能力以外の要素が全く無いとは言い切れないのではないだろうか?そして、それこそが勢いと呼ぶべきものではないだろうか。

対するは、「ストンピーの貴公子」齋藤 友晴(東京)。昨年度のPT神戸に続いて、2度目の個人戦トップ8入賞を決めた。Levyの勢いが「爆発力のある急流」だとしたら、今、齋藤に味方しているのは、ゆっくりとだが、しかし確実に着実に流れを強める大河のような勢いなのでは無いか、そう筆者は考えている。

Game 1

齋藤の初手は、《広漠なる変幻地/Terramorphic Expanse》《山/Mountain》という2枚の土地に、《ティンバーメア/Timbermare》《嵐の束縛/Stormbind》、そして、3枚の《癇しゃく/Fiery Temper》というもの。土地の枚数に微妙に不安が残り、パーマネントでアドバンテージを取りにくい展開が予想される手札ではあったが、不満を言う様な内容でもなく、これをキープする。

先手のLevyが2ターン目に《ケルドの匪賊/Keldon Marauders》というスタートを切るが、齋藤は1ターン目に回答となりうる《モグの戦争司令官/Mogg War Marshal》をドローしており、被害を最小限にくいとめる。Levyは《血騎士/Blood Knight》を場に追加する。

3枚目の土地を澱みなく手に入れた齋藤は、《嵐の束縛》を場に設置する。

Levyは、《巻物の大魔術師/Magus of the Scroll》、《硫黄の精霊/Sulfur Elemental》と、攻勢を緩めない。

齋藤は、まず《巻物の大魔術師》へと《嵐の束縛》を起動。ここで、50%の確率である《癇しゃく》がランダムで選ばれれば、一気に盤面を優位にし、アドバンテージをとることができるのだが、ダイスロールでディスカードされたのは《ティンバーメア》。仕方なく、《硫黄の精霊》を2体のゴブリントークンでブロックし、ライフを守りつつ、盤面の脅威を減らしていく。だが、Levyはさらに《硫黄の精霊》を追加し、齋藤が一方的に優位を確立することを許さない。

ここで土地を引けば、セットランドから手札の《巻物の大魔術師》をキャストすることで手札を減らし、《癇しゃく》の確率をさらに上げることができるのだが、残念ながらドローは《嵐の束縛》。《硫黄の精霊》に対して、《嵐の束縛》の能力を起動するものの、やはりというか、ディスカードは《癇しゃく》ではない。なかなか、《血騎士》を除去することができない齋藤、この一体にすでに6点ものライフを削られている。そして、新たにLevyの場に追加されたのは、《嵐の束縛》一回では除去のできない《ワイルドファイアの密使/Wildfire Emissary》。

そう、完全にLevyのペース。明らかに「乗っている。」一方的な完全試合になりかねないこのゲームだが、齋藤がこのギリギリのタイミングで《山》を引き当てたことで、一気に流れが変わる。

齋藤は、セットランドから、《巻物の大魔術師》をキャスト。そして、その《巻物の大魔術師》で《ワイルドファイアの密使》をブロックし、《血騎士》を対象に《嵐の束縛》。ここで、待望の《癇しゃく》がディスカードされ、《ワイルドファイアの密使》へとマッドネス。齋藤のライフが12まで削られたところで、一度場がリセットされる。

そして、このターンにLevyは後続を展開できない。この機を逃してはなるまいと、齋藤は、手札という名の火力を惜しむ事無くLevy自身のライフを削るために使用していく。

Levyはライフを8にまで削られたところで、《巻物の大魔術師》を場に送り出す。このターンエンドに、齋藤はLevyのマナソースを確認して長考する。Levyのマナは、次のターンエンドに2枚の貯蓄ランドにカウンターを貯めることで、X火力で齋藤の残る12点のライフを削りきるのに十分な量になる。

齋藤の手札は、2枚。8点であるLevyのライフを削りきるには、1ターン足りない。結果、齋藤は、Levyがまだ何も持っていない可能性か、自分が何かしらのカードをトップデックする可能性にかけるしかない。そう決心した齋藤は、手札を全て投げ捨てて、Levyのライフを4にまで削る。

次のターンに、齋藤がレッドゾーンに叩きつけたカードは…齋藤が最初にディスカードした《ティンバーメア》。

Levyのライブラリーのトップは、《分解》。

齋藤 -1 Levy -0

Game 2

齋藤 vs. レヴィ

齋藤 「サイド後が重要なんですよ。」

齋藤は、このマッチアップでは、15枚のサイドボードすべてが投入できると語る。むしろ、どのカードを抜くか、それがポイントとなる。冒頭でも説明したように、ボードを構築する分には圧倒的に優勢である、齋藤のデック。したがって、サイドボード後は、Levyはボードで不利になる《ケルドの匪賊》のようなクリーチャーを減らし、バーンスペルの打ち合い、もしくは《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》での強襲での勝利を目指すプランでくるだろうと予想する。

齋藤は、そのプランに従って、まず《巻物の大魔術師》《嵐の束縛》《癇しゃく》を4枚ずつメインボードからはずす。残りは3枚。まず「後手では活かしきれない展開が多い」と《ティンバーメア》をはずし、残り2枚は数あわせとしてボードに対する影響力の低い《硫黄の精霊》を2枚、メインボードからはずすことに決定する。

この齋藤のプランは半分成功で、半分外れていたといえる。

Levyは確かに《大いなるガルガドン》を投入し、《ケルドの匪賊/Keldon Marauders》などを外していたのだが、マナカーブの都合か、多少の枚数を減らすにとどめ、代わりに《ワイルドファイアの密使》を全部抜いていたりしている。もっとも、部分的には齋藤の予想通りではあったが、齋藤自身も「もっとバーンよりの展開になると思ったんですよね…」と認めている。だが、

齋藤 「マナ域が(4マナで)かぶりすぎているんで、サイドボーディングは相当むずかしいはずです。」

という予想は完全に的中していたといえるだろう。

齋藤の3ターン目エンドにキャストした《硫黄の精霊》がファーストアクションのLevyにたいして、齋藤は2ターン連続で《裂け目の稲妻/Rift Bolt》を本体に打ち込む。これで、瞬間的にはライフレースで優位にたったのだが、ブロッカーとしてキャストした《硫黄の精霊》が《癇しゃく》で除去されたことで、雲行きが怪しくなってくる。土地が並んだところで《巻物の大魔術師》をキャストしてきたLevyに対して、なかなか思うように場を構築できない。

手札に《ユートピアの誓約/Utopia Vow》を2枚抱えながらも、緑マナに恵まれず、なんとか《ワイルドファイアの密使》をキャストして場を膠着させようと試みる。

そんな齋藤に向けられるのは、全力のX火力。2発。

齋藤 -1 Levy -1

Game 3

レヴィ

齋藤 「先手の時は、逆に《ティンバーメア》は4枚入れたいですね。逆に抜けるのは、《裂け目の稲妻》かな…」

というように、《ティンバーメア》を全力で投入し、かわりに、《裂け目の稲妻》を2枚サイドボードに落とす。また、《硫黄の精霊》もメインボードに戻して、枚数調整として、色マナ補正もかねて《ユートピアの誓約》を1枚サイドに戻す。

せっかく流れをつかんだかと思われた次のゲームを事故で落とす。それぞれの事象に直接の関連性がなかったとしても、あまり気分のいいものでは無いだろう。先ほどのゲームでは一切活躍することのなかったこのカードを、1枚であっても入れ替える。これで「流れ」がかわるのだろうか?その1枚がどのようにゲームを動かすかはわからない。だが、人事を尽くして天命を待つという言葉もあるように、できることは「とりあえずやってみるしかない」。

Levyが1ターン目に《大いなるガルガドン》を待機し、お互いが2ターン目に《血騎士》をキャスト。3ターン目にLevyが《血騎士》の2体目を並べれば、齋藤もそのターンエンドに《硫黄の精霊》を呼び出し、続くメインターンに《血騎士》という互いにけん制しあうゲームスタート。

齋藤がアタックした《血騎士》はあえなく相打ちとなり、2体目の《血騎士》も《癇しゃく》で除去される。齋藤は《怒鳴りつけ》をキャストするが、未だどちらのライフも減っていない状態、Levyは5点のライフを当然のように支払うことにする。この5点のリードを保ったまま、3点の《硫黄の精霊》と2点の《血騎士》が殴り合えば、確かに齋藤がダメージレースで勝利するのだが、クリーチャー単体の性能では《血騎士》が勝る上に、Levyは《大いなるガルガドン》を待機している。この巨大クリーチャーが強襲してきたらと感gなえるとライフレースなんてあって無いようなものだ。

そして、さらに齋藤は手札に《ワイルドファイアの密使》を抱えながらも、4枚目の土地を引けないという、連続の土地事故に見舞われてしまうのだ。これは、流れは完全にLevyの場に行ってしまったという事なのだろうか?

いや、まだできることが無いわけではない。流れが無いのならば、こちらに引き寄せればよいのだ。

4枚目の土地を何とか引き当てた齋藤は、時間カウンターが残り2個となった《大いなるガルガドン》へと《ワイルドファイアの密使》を「実質的なチャンプアタック」させる。こうして、自身のターンに《大いなるガルガドン》をキャストさせることに成功した齋藤は、先ほどのゲームではお荷物でしかなかった《ユートピアの誓約》をエンチャントする。

齋藤は、このプレイで流れを完全に引き寄せた。

2体目の《ワイルドファイアの密使/Wildfire Emissary》は《癇しゃく》と《突然のショック/Sudden Shock》で除去するLevyだったが、ここで消耗してしまったせいで、続く《硫黄の精霊》へと、虎の子の《分解》をうたざるを得ない。

そこへ登場する《モグの戦争司令官/Mogg War Marshal》を対処しきる手段をLevyはもはや持たなかった。

齋藤 -2 Levy -1

Game 4

鍛冶 「まぁ、《モグの戦争司令官/Mogg War Marshal》のエコー払える展開なら、有利に決まってますし」

Game 3の勝負が決まった時、筆者の脳裏に、前日齋藤と調整した鍛冶 友浩(埼玉)のセリフがよみがえる。

齋藤は、漠然とした「流れ」のようなものに頼り切っていたわけではない。自身の得意な状態へと強引に持っていったのだ。

そして、一度つかんだ自身のスタイルを、齋藤は手放さなかった。

序盤から、2体の《モグの戦争司令官》を「エコーを払って」場に展開する。鉄壁のブロッカーとなりうる《ワイルドファイアの密使》には再び《ユートピアの誓約》が突き刺さる。当然ながら、Game 3でこのゴブリンの軍勢に痛い目にあわされたLevyはサイドボードから《鋸刃の矢/Serrated Arrows》を大量に追加投入し、2枚場にだしていたのだが、《殴打/Battery》の象トークンまで並んでしまい、《鋸刃の矢》での対処が悠長に過ぎてしまった。

《大いなるガルガドン》を場に送り出すも、《退場/Gone》がきっちりとフォロー。《ペンデルヘイヴン/Pendelhaven》の助けもあり、Levyのライフが11まで削られてしまう。ここで、《鋸刃の矢》を使い切ってしまった、Levy。たしかに齋藤の場の脅威は何とかほとんど退けることができたが、一番の癌である《ワイルドファイアの密使》が場に残っている。ブロッカーとして残されている《ワイルドファイアの密使》へと、今度はLevyが《硫黄の精霊》でチャンプアタック。

ここで齋藤は長考する。きっと、ブロックすると、何かしらの手段で《ワイルドファイアの密使》は除去されてしまうだろう。その手段は、《鋸刃の矢》か、火力か。ここで《ワイルドファイアの密使》に火力が飛んでくるようならば、残る1体のトークンで十分粋までライフを削れるだろう。だが、《鋸刃の矢》だったらば…またもせっかく手に入れた流れを失ってしまうことになるかもしれない。

答えの出ない二択。齋藤は意を決して《ワイルドファイアの密使》でのブロックを宣言する。ここに飛んできたのは、《裂け目の稲妻》。齋藤は思わず小さく「イェイ」と。ゴブリントークンを《ペンデルヘイヴン》で強化し、Levyのライフを8とし、2枚目の《ワイルドファイアの密使》を場に追加する。齋藤のライフはまだ18もあるのだ。

だが、Levyが《裂け目の稲妻》を待機したターンに、齋藤はひとつの事に気がつく。Levyの場に並ぶ土地は、5枚。うち1枚は《菌類の到達地/Fungal Reaches》であり、その上には3個のカウンターが載っている。齋藤のターンエンドにさらにカウンターが乗せられると、生み出せるマナは、8マナ。そして、待機中の《大いなるガルガドン》の上の時間カウンターは6つ。Levyがブロッカーを除去しつつ、《分解》をうてたと仮定すると、次のターンに最大で3+7+9で19点のダメージ、見事齋藤のライフは削りきられてしまう。

Timbermare

齋藤は、慎重に展開。《裂け目の稲妻》を引いたものの、一気にゲームを決めるのではなく、できる限りの安全策をとって、《ワイルドファイアの密使》でアタックしてパンプアップ。Levyのライフを4とする。

緊張のLevyのターン…Levyの《裂け目の稲妻》は、ちっぽけなゴブリンへと。そして、《ワイルドファイアの密使》を土地を全部サクリファイスしての《大いなるガルガドン》ブロックで対処するが、こうなってしまうと、もはや先細りの未来しか見えない。

齋藤が、手札の《ティンバーメア》を公開すると、殿堂プレイヤーは力強く握手を求めた。

齋藤 -3 Levy –1

試合開始前に齋藤にこのマッチについて聞いてみた。

齋藤 「Levyは本当に強いプレイヤーです。一番強いんじゃないかとすら思ってますよ。でも、このマッチに勝ったほうが今シーズンのPlayer of the Yearに近づくんです。そして、今年僕はPoYになりますよ。」

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