
藤田 修というプレイヤーは、この会場に並み居る強豪の中でも、とりわけ古豪に分類される人物である。
彼の名を全国に知らしめた1999年のAPAC(アジア太平洋選手権、2001年まで開催された「もうひとつの選手権」)での「赤茶単《燎原の火/Wildfire》」や、それより少し前の「赤単スライ」、もう少し近い時代であれば「Red Deck Wins」の使い手として名を馳せた藤田は、それらの実績から「漢の赤単」のイメージが強いとされてきた。
しかし、とつなげるべきか、2003年にこの日本選手権で準優勝を果たした際には「黒単色コントロール」を使用していたし、藤田が初戴冠を果たした2005年のグランプリ台北(形式は神河ブロック構築)で彼が使っていたデックは、白青の"Deck-X"、すなわち「伝説」カードをフィーチャーしたウィニー・デックだったことは、注目に値する点だと思われる。
その後も、大規模な構築トーナメントでは青いデックを駆る藤田を目にすることも珍しくなくなってきた。時を重ね新たな一面を見せる名バイプレイヤー「フジシュー」。彼が今回手にするのは、Magic Online発の新機軸デック・「青黒リアニメイト」。大阪でデヴェロップを経たこのデックは、彼のほかに黒田 正城・林 宏樹・そして藤田 憲一といった面々が使用している。
対する清水 直樹は東京のプレイヤー。今では「ソーラーフレア」と横文字で呼ばれるようになった青白黒コントロールを、早い段階から「太陽拳」としてデヴェロップしていた一員であり、彼は激戦の東京地区予選を「太陽拳」で突破、今大会でももちろん同デックを持ち込んでいる。
先の記事"The Legend of Solar Flare"でも紹介しているが、今や大本命と目されるようになったこの「ソーラーフレア」というデッキ、多方面から対策を仕込まれるようになり、もちろん藤田の「リアニメイト」もその例外ではない。しかし、清水とて使い手として負けられない気持ちを持っているのは疑いないだろう。
好勝負を期待しよう。
Game 1
ダイスロールで先攻は清水に決まる。
《湿った墓/Watery Grave》タップインから入る清水に、藤田は《繁殖池/Breeding Pool》に2ライフを支払って《溺れたルサルカ/Drowned Rusalka》という立ち上がり。
まずは受ける立場の清水、藤田の続けた《思考の急使/Thought Courier》は考えて《差し戻し/Remand》、《溺れたルサルカ》をフルタップの隙にと《屈辱/Mortify》、《思考の急使》再登場も《屈辱》2枚目と積極的なさばきを見せていく。
藤田の第4ターンは《強迫的な研究/Compulsive Research》、ここで《シミックの空呑み》2枚が捨てられ、デッキの主眼が明らかになる。息を呑む清水。
続いて《留まらぬ発想/Ideas Unbound》で手札と墓地の充実を図る藤田に対し、清水も《海の中心、御心/Mikokoro, Center of the Sea》で対抗策を模索する。
そして第6ターン、ついに《死後剛直/Vigor Mortis》で《シミックの空呑み/Simic Sky Swallower》が釣り上げられる。
これを《神の怒り/Wrath of God》で出戻りさせ、続く《ゾンビ化/Zombify》で復活したものも《神の怒り》を放つ清水だが、三度の《ゾンビ化》で再度モンスターが空に舞う。その側に《思考の急使》を並べ、攻めの構えを崩さない藤田。
これに清水は頭を抱えて考えるが、ここで《地底街の手中/Clutch of the Undercity》を変成。《迫害/Persecute》を手に入れプレイは指定「黒」、藤田の《夜の星、黒瘴/Kokusho, the Evening Star》《精神を刻むもの/Mindslicer》が墓地送りとなり、《潮の星、京河/Keiga, the Tide Star》と土地2枚が公開されることとなった。
ここからの清水の粘りも驚異的なもの。攻撃を一度受けた後、こちらも三度の《神の怒り》で《シミックの空呑み》《思考の急使》を破壊。続く《思考の急使》には(これも3枚目である)、手出しの《絶望の天使/Angel of Despair》が更なる除去とフィニッシュ予告を。
藤田は《潮の星、京河》を送り込んで対抗し、《絶望の天使》を相打ちに取るが、清水はこれを《嘆きの井戸、未練/Miren, the Moaning Well》でライフに変換した後《ゾンビ化》で再登場させ、青黒デッキにあって不気味な存在感を放っている《繁殖池/Breeding Pool》を破壊した。
《シミックの空呑み》が3回目の《神の怒り》に遭ってからというもの、いまひとつドローに恵まれなかった藤田は、さらに引いた土地と「ある緑色のモンスター」を見て苦笑いすら浮かべる。投了はせず、《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》と十分量のトークンが攻撃してくるのを見届けて、自分のライフシートに「0」を書き込んだ。
藤田 –0 清水 –1
Game 2

ゲームは藤田の第2ターン《思考の急使/Thought Courier》から幕が開く。清水は《アゾリウスの印鑑/Azorius Signet》で場を作る足がかりを。
藤田と清水の双方が《強迫的な研究/Compulsive Research》で手札を充実させる。ここで清水の墓地に《アダーカーの戦乙女/Adarkar Valkyrie》が置かれ、存在が明らかになる。
《思考の急使》起動で墓地に置かれた《シミックの空呑み/Simic Sky Swallower》を釣り上げる呪文を引き込みたい藤田だが、第4ターンの《思考の急使》で引いたのは《留まらぬ発想/Ideas Unbound》。だが、これは皮肉にも既に手札に2枚ある。藤田は不満そう。
しかしその起動で墓地に置かれた《変幻の大男/Protean Hulk》が、この後大きな意味を持ってくることになる。《留まらぬ発想》から《ディミーアの水路/Dimir Aqueduct》をプレイしてターンを返す。
清水が《ふるい分け/Sift》で終了とすると、藤田はここで予定通り《変幻の大男》を《ゾンビ化/Zombify》で釣り上げる。
清水が仕方なく《アゾリウスの印鑑》2枚目から《神の怒り/Wrath of God》でこれらを流すと…ここで《変幻の大男/Protean Hulk》の能力が誘発。藤田がライブラリに手をかける。
そうして開けてしまったパンドラの箱から現れたのは《精神を刻むもの/Mindslicer》《溺れたルサルカ/Drowned Rusalka》《溺れたルサルカ》!
フルタップでターンを返した清水に打つ手はない。
これらが攻撃に向かい、さらなる《ゾンビ化》で《変幻の大男》を再度釣り上げると、《溺れたルサルカ》で《精神を刻むもの/Mindslicer》が墓地に置かれ、コントロールデッキにとって悪夢のような能力が誘発。
これで《アダーカーの戦乙女》《神の怒り》を含む6枚の手札を根こそぎにされてしまった清水は、死すとも援軍を呼び寄せる6/6を目の当たりにして…、どうすることもできなかった。
藤田 –1 清水 -1
Game 3
双方、1回のマリガンを経て6枚でのスタート。清水の《アゾリウスの印鑑/Azorius Signet》、藤田の《思考の急使/Thought Courier》が先ほどと同じように開幕を告げる。
こうなると清水には第3ターン《迫害/Persecute》の権利があるが、ここは《ふるい分け/Sift》でターンを返すのみ。
藤田は例によって《留まらぬ発想/Ideas Unbound》で戦力を探すのだが、今回引くのは「釣り竿」ばかりで《変幻の大男/Protean Hulk》をはじめとするファッティがいない。藤田自身の表現を借りれば、釣り人がいれども魚がいないのである。
しかし、《強迫的な研究/Compulsive Research》が《差し戻し/Remand》されようとも、藤田は《思考の急使》でライブラリを掘り進み、《変幻の大男》に到達。これを力強く墓地に置く。
もちろん力を込めて《ゾンビ化/Zombify》をプレイする藤田だが、これには清水が2枚目の《差し戻し》で待ったをかける。
そして返すターン、藤田を足止めしたうえ先に《ゾンビ化》で《絶望の天使/Angel of Despair》を釣り上げる清水。藤田の4枚の土地のうち《ディミーアの水路/Dimir Aqueduct》を破壊、藤田を3マナ域まで引きずり戻す。
手札に土地のない藤田は、《死後剛直/Vigor Mortis》をプレイすべく《思考の急使》起動と通常ドローで、なんとか《沼/Swamp》にたどり着く。勇躍《死後剛直》がプレイされるが、これを阻む3枚目の《差し戻し》。
そして清水の《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》が場に送られ、時間的猶予がなくなってきた藤田は、今度こそとばかりに《死後剛直》を再プレイするのだが…そこに待っていたのは、都合4枚目の《差し戻し》!
これには藤田もあきらめの苦笑いを浮かべるしかない。《夜の星、黒瘴/Kokusho, the Evening Star》が追加されたターンに、ようやく《ゾンビ化》を通せた藤田だが、ブロッカーにするべく出した《骸骨の吸血鬼/Skeletal Vampire》にも《屈辱/Mortify》の雨あられ…。
デック相性差があったことは否めない。《変幻の大男》さえ場に出てしまえばどうにもできないはずの清水であったが、驚異的なドロー内容によりそれを阻み、慎重に勝利をものにしたのであった。
藤田 –1 清水 -2
清水 直樹、勝利!