テイサ・カルロフ

Posted in Magic Story on April 19, 2013

By Adam Lee

Adam Lee had a long freelance career as a writer and artist in the greeting card industry before coming to Magic's creative team. He grew up in the commune-laden wilds of Northern California in the 70s and his Guild Quiz result was Selesnya. "Be groovy, people."

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 あの者達が支配してきた期間は、あまりにも長すぎる。

 テイサはウトヴァラ黒檀製のお気に入りの椅子に座し、しばしの間不敬な考えにふけっていた。そしてそこから生じた感情――冒涜感と解放感の入り混じった味にぞくりとした。

アート:Karla Ortiz

 間違いなく、彼女の前には危険が待ち受けている。オブゼダートは彼女に大特使の地位を与えたが、それは彼らが自分を近くで監視するためであるとテイサは知っていた――絶えず彼女の忠誠心を試し、「公的な仕事」にかかりきりにする。テイサはそのゲームに不慣れではない、そして生者の側でこれほどの影響力を持っているのは自分だけだと知っている……オブゼダートの不可視の操り紐で、彼らの領域へと引っぱられるのを感じるまでは。そしてテイサは着実に力をつけてきた。そして操り紐がさらに引かれるのを頻繁に感じていた。

 彼女はあの死者の老人達にうんざりしていた。

 彼女の机の上には『オルゾフの未来のための世代間声明書』が鎮座していた。その古の書物は、彼女が若き弁術士だった頃からのつまらない塵を集めているものではなかった。テイサはそれを最初から最後まで、何度も読んできた。だが近頃は異なる状況からその本を開いた。文章は新たな意味を持ち始めた。テイサの瞳は開かれていた――彼女はもはや、権力と嘘の無慈悲な世界に足を踏み入れたばかりの、野心的な若き弁術士ではない。近頃、テイサは自身をオルゾフ内に存在する新たな何かの代役なのだと考え始めた。その考えは深い確信と認識をもって彼女の心に浸透していた。彼女はオルゾフギルドの中心を突き、作り変えることを求めた。ラヴニカがかつて見たこともないような新たな類の力へと。

 彼女はその重い本を手に取り、脳内に鳴り響く最も新しい文言のページを開いた。

「露骨な貨幣と単純な富のために、生ある繋がりから自由になることによって世俗の関係から解き放たれ、オブゼダートの構成員は真実と聖なる力を追い求める。ならば何故彼らは今も金銭を追い求めるのだろうか、かつてよりも熱狂的に?」

――作者不詳

 その単純だが不敵な文は、追い立てられ処刑された「作者不詳」へと行き着く。オルゾフのエリート層以外でその話の全容を知る者はいない。だが一門の者達は、「作者」はティハナ・ジャリクという名の貴族であったと知っている。ジャリクはオルゾフのエリート内で、オブゼダートに反抗する発言をすることで知られていた。当初、それはジャリクのオルゾフの血による奇行であるとみなされており、彼女は家名に守られていた――幽霊議員を批判する随筆を出版し始めるまでは。それらの随筆と、批判を止めなかったことから彼女は逮捕され、裁判にかけられ、オルゾヴァの法廷にて公的崩壊刑に処された。

 テイサは信頼できるディミーアの知人へとかなりの大金と贈り物を渡し、貴重で扇動的なジャリクの著書を密かに手に入れていた。それらはテイサの収蔵品となったが、錠と鍵と幾つもの高度な魔法の護りによって厳重に隠されていた。ジャリクの著書を所有することは、彼女を死へと追いやったその罪を犯すことに等しい。だがテイサはオブゼダートからの処遇を気にすることを止め、彼らに対する処遇へとその手強い精神を集中し始めていた。


 迷路。

 数日前、オブゼダートは死盟を用いて彼女に伝言を寄越した。真理の輪の中で、怯えた筆記者がテイサへと口を開いた。テイサは鼠の穴を見守る猫の熱烈さでそれを聞いた。迷路は当初、オルゾフにとっては些細な興味だった。いつものイゼットの奇妙な執念であると、そう重くとらえられてはいなかった。テイサはこの新たな情報がゲームを動かすのを感じた。迷路はとても重要なものとなり、そしてそれはオブゼダートの計画にはないものであると。更に、彼女はそこに気がついている。

〈迷路の終わり〉 アート:Cliff Childs

 オブゼダートの最大の弱点は、肉体的ゲームを楽しむ幽霊達で構成されているということだ――彼らはそのヴェールの外に誰かを必要としている、多大な重要事項を明かしつつも信頼できる者を。それまで、テイサは彼らにとっての不承不承の回答となっていた。彼女へと、迷路を走りその古の秘密を解き明かすという務めを明かし、催促しなければならないという不満を感じることができた。それは抑えのきかない力なのだろうか? 莫大な富? ラヴニカを支配させてくれるもの? テイサは知っていた、オブゼダートは起こりうる何かを心底怖れていると。迷路は幽霊議員の支配の外にあり、時計は進み始めている。テイサは迷路を解き明かすための最良の賭け金なのだ。今や彼女は優位にある――議員達が求める何かを持っている。

 彼女はバルコニーから見下ろしながら、心の底からの喜びに笑みを抑えられなかった。

「スラブニク」 テイサは呼んだ。

 彼女のスラルが息を切らして現れ、頭を下げた。

「使者を送り、ボロス軍のタージク団長を私の書斎へ寄越して」


 タージクはテイサの書斎に座っていた。タイル張りの床に響くテイサの杖の音が彼女の到着を告げた。彼女が部屋に入ると、ボロスの騎士は起立して微笑み、彼のオリーブ色の肌と黒の顎髭に相まってその白い歯がどこか野生的に見えた。彼はテイサへと腕を差し出し、椅子に座る手助けをした。彼の腕は撚り上げられたしなやかな鋼のようだった。

 テイサは彼の瞳が周囲を事細やかに把握しているとわかった。彼女はタージクの知性を感じることができたが、同時に彼がいかに危険を振りまくことのできる存在であるかを感じた。テイサは決して戦士ではないが、タージクはその気になれば部屋の扉の外にいる衛兵全員と、この館の全員を引き裂くことができるのだろうと想像できた。

 テイサはタージクへと座るよう促した。「単刀直入に言います。タージク、貴方は言行一致の人であると存じています。そして貴方が持つ申し分のない誠実さは、私が何よりも重きを置くものです――金銭、土地、そして権力よりも。私達は共に、誠実さは力であり、誠実でないものに力はないと知っています」

 タージクの瞳がきらめいた。彼はこのオルゾフ貴族を気に入っていた。彼女は闘士であり予見者である。「テイサ・カルロフ殿、貴女は常にボロスの良き友人であります、我らがギルド長同士が目を合わせる事はなくとも」 自信をもって話す彼の口調は大袈裟で、ボロスの学院の演説家達をうんざりさせてきたことは疑いない。「疫病クーガ・モットを癒し、ウトヴァラを復興し、ゾマジ・ホークを打倒し、新たなギルドパクトを設立した――これらの貢献全てが貴女自身を語っています。貴女にとってラヴニカはただ商品というだけのものではない、そう存じております」

アート:James Ryman

「平凡な皮肉を言わずにいて下さって嬉しく思います」 テイサは茶を一口すすった。「私も一人の人間であると認めることのできる者は滅多にいません、ましてや私が利益云々ではなく、実際に我らの都市の幸福を気にかけているとは思っていません」 テイサは茶の杯の端越しに彼を見た。

 タージクは椅子に座ったまま身をのり出した。「貴女は法の真価を認めておられる、そしてそれがラヴニカにとって意味するものを熟知されている。だからこそ私は貴女の招待を受け、こうして話しているのです」 彼は寄りかかった。「テイサ・カルロフ殿、正直に申しましょう。私は遠くから常に貴女の勇気を認めてきました、ですが今こうしてお会いして、貴女が偉大なる指導者である理由がわかりましたよ」 タージクのその言葉には口実や狡猾さの気配はなかった。テイサは自身の頬がわずかに紅潮するのを感じた。

「光栄な事です、団長殿」 彼女は照れ隠しに紅茶をひとすすりした。

「何が人々を鼓舞するか、知っておりますので」 タージクは淡々と言った。

 そして長い沈黙があった。二人は黙って座ったまま、茶を少しずつ飲んだ。タージクはスフィンクスのような表情で、いかなる感情も示さなかった。そしてテイサは、この者は自分がかつて遭遇してきたボロスの司令官でも最も風変わりな人物であると感じた。彼は完璧に仕事をこなす。彼こそ、目的を達成するのを手助けしてくれる人物だった。

 テイサは息を吐いた、戻れない扉を開く前につくような息を。

「貴方と同盟を結びたく思います。特別な同盟、絶対の約束と専念を必要とする同盟を」

 タージクは微笑んだ、テイサの要請を初めから予期していたかのように。「迷路を走り、ニヴ=ミゼットの強欲な鉤爪から宝物を盗み出す手助けをお望みですか? 喜んで」

「そうではありません」 テイサは言った。「貴方に、オブゼダートを破壊する手助けをして欲しいのです」


(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)


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