パーティー侵犯 その2

Posted in Making Magic on January 16, 2013

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

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 ギルド門侵犯・プレビュー第2週にようこそ。前回、私は〈実験体〉とシミック・ギルドの進化メカニズムを諸君に公開し、そしてイーサン・フライシャー/Ethan Fleisherがグレート・デザイナー・サーチ2(リンク先は英語)の間にそのメカニズムを如何にしてデザインしていったかについて語った。今回は、他のギルド2つ、ボロスとディミーアについて語り、そしてまた別のプレビュー・カードを公開しよう。今回のプレビュー・カードはギルド・メカニズムを含んでいない(いや、ギルド・メカニズムになる予定だったんだが)。楽しみかね? それでは、早速始めよう。

細かなことでボロスるな

 新しいボロスのキーワード「大隊」を知らない諸君のために、まずそれをお見せしよう。


 前回、進化がグレート・デザイナー・サーチ2からどのように現れたかについて詳細に語らせてもらった。大隊もまた同じところから現れた。違いは、その作者がショーン・メイン/Shawn Mainであるということだけだ。ショーンはウォドーサという名前の世界を作った。それについての一言解説は「全面戦争中の砕け行く世界」だ。この世界には、荒廃/blightと呼ばれる神秘的な力が存在し、それが世界をゆっくりと飲み込んでいくのだ。ショーンはウォドーサの構築を、この荒廃を表すメカニズムを作ることから始めた。2週目に、ショーンは自分のセットにまだ必要なものがあると気がついた。彼が大隊(ただし、ショーンのつけた呼び名、そしてギルド門侵犯のデザイン中の名前は「突撃/Assault」だった)の作成に関して書いたことは次のようなものだった。

 ウォドーサ世界がどのようなものに見えるかについて考えた後、躍進の時が訪れたのです。生存者が寄り集まり、荒廃に侵された土地を離れ、そして彼らの隣人との戦いに挑む――メカニズム的に考えて、これが突撃メカニズムの元になりました。死にものぐるいで戦いの準備をするのはよくあることで、青にとってさえも、あるいは荒廃と戦う場合にさえもふさわしく思える、プレイ感も良いものです。私はこの突撃を各色の中心メカニズムにすることを想像しています。ゼンディカーの探索のような「戦闘構想」突撃エンチャント、あるいはワールドウェイクの上陸インスタントのような突撃呪文も考えてみましたが、どちらも複雑になってしまい、第1セットのコモンにはふさわしくないと思いました。

 ショーンが青に触れているのは、2週目の問題が、こちらが指定した色の、自分のセットのコモンをデザインするというものだったからである。私は、もっとも難しいと思われる色を指定したのだ。そういうわけで、一番最初に提出された突撃カードは青だった。

〈空潜りの伏兵〉

クリーチャー ― マーフォーク・兵士
2/2
突撃 ― あなたがコントロールする3体以上のクリーチャーが攻撃するたび、空潜りの伏兵はターン終了時まで+2/+2の修整を受けるとともに飛行を得る。

私の評価:

MR: 突撃はふさわしい色において、興味深いメカニズムにできそうである。このメカニズムは、青以外のあらゆる色にふさわしい。まずもって、青はもっとも呪文を重視し、クリーチャーを軽視する色である。伝統的に、大型セットのコモンにおいては、青にはもっともクリーチャーが少ないものだ。カラー・パイで外れているというだけでなく、これは理念上もふさわしくないと感じる。青の知識への愛情を協調するために多くのことをやってきたわけだが、突撃はどこから来たのか? 青は「戦闘に飛び込む」色ではない。青は、実際に行動する前にその行動の影響について考えることに時間を費やすものなのだ。

 突撃が青でも使えると(万が一にも仮に)想定したら、このカードのデザインは非常にわかりやすいように思える。このカード自身を数に入れるかどうかがわかりにくいという問題はあるが、それはテンプレートの作り方で解決できるものだ。地上クリーチャーによってブロックされる前に飛行クリーチャーを得ることができるというタイミングは見事だと思う。

 2週間後、ショーンは再びこのメカニズムを提出した。今度は白だった。

〈歴戦の槍使い〉

クリーチャー ― 人間・戦士
2/2
突撃 ― あなたが3体以上のクリーチャーで攻撃するたび、[カード名]はターン終了時まで+1/+1の修整を受けるとともに先制攻撃を得る。

私の評価:

 突撃がそれらしい色に配置された(読者諸君のために添えるなら、ショーン・メインは以前この効果を青に持たせていた。私はそれを指摘していたのだ)。このメカニズムは青にはふさわしくなかったが、白には完璧にあっている。私はこのカードが気に入ったし、プレイ感もいいことだろう。

 青というミスを置いておけば(彼が与えられた範囲内での作業であることに因るが)、ショーンは大隊をほぼ仕上げていたと言うことを記しておこうと思う。彼はこれをキーワードでなく能力語にするということまで仕上げたのだ。攻撃クリーチャーの数も妥当なものだったし、得られる効果の種類も適正なものだった。少しばかり修整すべきだと感じるところはあったが、それについてはすぐに触れることになる。

 さて、ギルド門侵犯が始まった時点で、私の手持ちのメカニズムは2つあった。進化と大隊である。グレート・デザイナー・サーチを開催した理由は数多くあるが、その1つに、新しい題材を作ることがあり、そしてこの2つのメカニズムはまさに使える題材だった。さらに、それらのメカニズムはそれぞれシミックとボロスにふさわしいもので、それらのギルドはギルド門侵犯に含まれていたのだ。

 シミックについては先週話したので、ボロスの話を続けよう。ボロスには攻撃的な戦闘中心のメカニズムが必要だとわかっていた。10個のギルドの中で、ボロスは最速で最も攻撃的な色の組み合わせである。ボロスは時間を無駄にすることなく陣営を整え、攻撃する。つまり、ウィニー速攻の戦略を助けるメカニズムが必要ということになる。

 また、私は、旧ラヴニカ・ブロックの間のギルドの中でもっとも出来が悪かったのはボロスだと思っていた。旧ラヴニカにおけるボロスのメカニズム、光輝は最もフレイバー的でなく、そして私が望むようなアーキタイプでは使い物にならなかった。今度は改善しなければならないと強く感じていたのだ。

 そういうわけで、私は大隊を見て興奮したのだった。これこそが、ウィニー速攻デッキに必要なものだった。赤白がもたらす、下に寄せたマナ・カーブを推奨するものだった。ショーンのメカニズムには1つだけ問題があると思ったのは、その与えられる効果がそのクリーチャー自身が戦闘に参加していなければ意味がないものであることが多く、つまり大隊を持つクリーチャーも攻撃すべきだと意図しているのに、メカニズムを見てもそうだとわかるようになっていないということだった。そのクリーチャーが他の2体のクリーチャーと一緒に攻撃する必要があると変更することで、プレイヤーがどうしたらいいのかわかるようになる。さらに、それによってフレイバーもよりはっきりするようになった。

 進化と同じように、大隊も早期にファイルに入り、そしてそのまま残ることになった。しかし、暗号はそう簡単にはいかなかったのだ。

ディミーアは二つの顔

 さて、旧ラヴニカのゴッドブック調査に基づいて、セット内でもっとも評価が高かったカードはどれか?

 それはこのカードである。

秘密の王、ザデック

 2番目は?

 このカードだ。

 この2つの事実と他の様々な資料をつきあわせると、1つの非常に魅力的な結論が導かれる。多くのプレイヤーは、石臼効果が好きなのだ。石臼効果というのは、プレイヤーのライブラリーにあるカードを何枚か墓地に送るということである。この呼び名は、初めてこの効果をマジックにもたらしたカード、マジックの2つめの拡張セットであるアンティキティーに入っている《石臼》から来ている。

1012

 この効果は、プレイヤーがカードを引くことが出来ない状況になったら負けるという事実を取り上げたものだ(注:ライブラリーが空になったら負けるのではなく、カードを引けなかったことによって負けるのだ)。リチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldがこのルールを設定したのは、もし千日手状態になってもゲームに決着が付くようにである。Antiquitiesで《石臼》が登場すると、忽然と新しいタイプのデッキが現れた。ライブラリー破壊デッキである。ダメージを与えるのではなく、ライブラリーを空にすることで勝利を掴むのだ。

 ディミーアがなぜライブラリー破壊なのか? ラヴニカのリード・デザイナーである私がお答えしよう。どちらも墓地に影響を及ぼす色である黒緑のゴルガリが墓地をテーマにするのと同じく、どちらもライブラリーに影響を及ぼす色である青黒のディミーアはライブラリーをテーマとする。プラスの意味では教示者やカードを引くこと、カードを選ぶこと。マイナスの意味ではライブラリー破壊や対戦相手のライブラリーから特定のカードを追放することが含まれる。

 私の過去記事を読み切っていない諸君のために言うと、私は他の勝利条件が好きなのだ。毒の一番のファンであり、他のどのデザイナーより多くの勝利条件カードを作ってきた(一番有名なものを挙げるなら、《機知の戦い》が私の手によるものだ)。そういうわけで、私はライブラリー破壊の大ファンである。ライブラリー破壊をテーマとしたセットがあれば、まず間違いなく私がそのセットのリード・デザイナーだろう。

 さて、ここで私がディミーアのデザインを指揮することになったのだ。ライブラリー破壊はメカニズム的にふさわしいだけでなく、ディミーアのフレイバーにもふさわしかった。こっそりと陰に潜み、対戦相手に気付かれない方法で勝利を得ようとする。ライブラリー破壊はまさにそういう方法なので、私はその勝利方法をギルドの小テーマに据えた。こうしてライブラリー破壊はディミーアの要素となったのだ。

 それから7年後、再び私はディミーアを含むセットのリーダーとなった。当時の資料は覚えていたので、私はチームにディミーアのメカニズムはライブラリー破壊を中心にすると告げた。そう指示した。様々なライブラリー破壊のバリエーションを試してみた。私は、このメカニズムに一ひねり加える何かを探していたのだ。

 ある日、私は、不定量のカードをライブラリーから墓地に送るという思いつきを試してみることにした。対戦相手のライブラリーを破壊するたびに、何らかのドラマができるのだ。様々なアイデアを試してみたが、その中でもっともうまく働いたのは、メカニズムが数を指定し、その後対戦相手のライブラリーからその枚数の土地がめくれるまでライブラリーを破壊するというものだった。土地が最善なのは、全てのデッキに大体同じ割合で入っているからである。我々はこのメカニズムを「研磨/Grind」と名付けた。


 研磨は我々の望んだことをしてくれたが、セレズニアの増殖と同じように、第2波のカードが必要となった。増殖にはトークン生成が必要で、研磨にはライブラリー破壊されたカードを処理するカードが必要だった。対戦相手のライブラリーを削りきることを目的としていないデッキでも研磨カードを使えるようにするために重要だった。もっとも簡単な方法は、対戦相手の墓地にあるカードを参照するカードである。このテーマは黒には簡単な話だったが、青にとっては少し問題があった。

 デベロップ・チームの多くは研磨に難色を示した。最大のものは、他のギルドと組み合わせてうまく使えないというものだった。他のほとんどのメカニズムは組み合わせることができ、他のギルドを使っていても、他のギルドのメカニズムを含む単色カードをプレイすることができる、というのだ。確かにその通りだが、私は納得しなかった。ライブラリー破壊のキーワードは絶対に人気が出ると思っていたのだ。私は、研磨をギルドのキーワードとして残すためにかなりの時間を費やしたが、覆すことはできなかった。

 結局、ファイルをマーク・ゴットリーブ/Mark Gottliebに渡すときが来て、私は全てを彼に伝え、彼に判断をゆだねた。彼の取った選択は、私と彼が話し合っていたものだった。枚数を減らした上で研磨をセットに残し、ただしキーワードではなくすというものだった。つまり、このギルドには新しいキーワードが必要となったのだ。幸いにして、私がそのことを知ったとき、私はあることをしていた。

 そのキーワードの話をする前に、今日のプレビュー・カードをお見せしよう。このカードは研磨メカニズムを使っているのだ。そう、そのカードの名前は〈精神削り〉(訳注:英語では「Mind Grind」)という。

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 幸い、〈精神削り〉はディミーアがライブラリー破壊ファンを見捨てていないということを示している(そう、このセットには他にも研磨カードが入っているのだ)。研磨はギルドのキーワードにこそなっていないが、ライブラリー破壊デッキを組むには充分な枚数があるのだ。

 さておき、暗号の話を始めよう。

 デザイン中の仕事の1つに、各ギルドに第1、第2の2つの勝利手段を与えることがある。当初、ディミーアの第1の手段はライブラリー破壊で、第2の手段は回避能力を使ってこっそりととどめを刺すような遅いコントロール・デッキであった。そのため、ディミーアにはセット内の他のギルドに比べて少し多くの回避能力が与えられていた。元々青や黒には回避能力が多いので、これは簡単なことだった。研磨をキーワード能力でなくす前に、我々はこの第1と第2を入れ替えることに同意していた。つまり、ディミーアには強力な回避テーマが与えられるということだ。これに有利を与える方法はあるだろうか?

 私ははっとミラディンのデザイン、そして刻印を思い出した(旧ミラディンのことであり、ミラディンの傷跡のことではない)。私がデザインしたカードの中に、インスタントやソーサリーを手札から刻印できるクリーチャー・カードがあった。その後、そのクリーチャーが戦闘ダメージを与えるたび、刻印された呪文が発射されるのだ。このカードがなぜ印刷されなかったかは覚えていないが、このデザインはずっと気に入っていた。そして、私は同じようなものを作ろうと思ったのだった。

 しかし、私は別の方向から始めた。クリーチャーに呪文を刻印できる能力を与えるのではなく、呪文のほうに戦闘ダメージを誘発条件として自分自身をクリーチャーに刻印できる能力を与えたらどうなるだろうか? 私は神河ブロックで連繋メカニズムを作った時に同じような空間を探っていた。連繋メカニズムは(秘儀というサブタイプを持つ)インスタントやソーサリーに自身を埋め込むものだった。今回、私は呪文をクリーチャーに埋め込もうと思った。つまり、刻印と連繋の合わせ技みたいなものである。

思考の鈍化

 ゴットリーブは「オーラとして作れるし、戦闘ダメージで誘発するオーラはたくさん作ってきたので、それでは新しいメカニズムには見えない」と指摘してきた。私は、連繋のようにクリーチャーに永続的に能力を与えるインスタントを示し、ゴットリーブは、最初呪文として解決した後でつけられるようにすることを提案してきた(ここで「つける」と言っているが、マジック用語のそれとは意味が違っているので注意)。これによって、呪文を使ったプレイヤーが対戦相手がブロックするかどうかを知らなくても少なくとも1回はその呪文の効果を得ることができ、たいていの場合は再利用できることになる。私はこの提案が気に入り、そしてその変更を施したのだ。

 話を続ける前に、新しく雇ったデザイナーのダン・エモンズ/Dan Emmonsがグレート・デザイナー・サーチ2の選択問題通過者101人の1人としてこの暗号とよく似たメカニズムを提出していたということを記しておくべきだろう。私は数日の間に101の提出物をチェックしたのでぼんやりとしか覚えていなかったが、無意識にダンの提出物を気に入り、そしてディミーアのメカニズムを探していたときに思いついたということは充分あり得ることだ。

 暗号はプレイテストでもうまく働いたが、デザインするのには難しいメカニズムだということもわかった。巧く行く効果はそう多くないのだ。幸いにして、ギルド・メカニズムにはデザイン空間の狭いメカニズムがふさわしい。必要なのはたった10枚かそこらのカードなのだ。私はこのメカニズムの感じが気に入り、ディミーアを作れたと感じていた。デベロップはこのメカニズムに慎重な態度を示したが、そこの話はLatest Developmentsに譲るとしよう。結局の所、暗号はできあがり、我々は新しいディミーアのメカニズムを手に入れたのだ。

 最後に一つ言っておこう。ネット上には、公式に私が失敗だと言った憑依とこの暗号を比べる人がたくさんいる。なぜ憑依がダメなのに暗号はいいのか。それは、直観的デザインと私が呼んでいることで答えになる。メカニズムが誰もが想像する通りに働くなら、少しの複雑さは問題ないのだ。暗号が成功すると私が感じている理由は、呪文の効果を戦闘メカニズムとして埋め込むことのほうが、効果を持つ呪文や戦場に出たときの効果を持つパーマネントが後にクリーチャーに埋め込まれたときに死亡したときの誘発になることよりもイメージしやすいからである。憑依は一手順多いだけに思えるが、その一手順が脳内でイメージしにくくなるような変更をもたらしているのだ。

 その差は微妙なものだが、一文で理解できるか複数の文が必要かということには間違いなく差が存在する。どんなコンセプトが取っつきやすく、どんなものが取っつきにくいのかを調べるための、これはメカニズムになじみのない人々によるプレイテストで得られたことである。

3つが終わってあと2つ

 今日の話はここまでだ。オルゾフとグルールのファンの諸君は、来週、この三部作の最後のコラムで残り2つのギルド・キーワードについて語るので、楽しみにしていてくれたまえ。

 それではまた次回、グルールの話でお会いしよう。

 その日まで、ウィニーの大群による攻撃か、あるいは卑怯なスパイの精密な一撃があなたとともにありますように。


(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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