パーティー侵犯 その3

Posted in Making Magic on January 23, 2013

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

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 ギルド門侵犯のプレビュー第3週にようこそ。今回は残り2つのギルドである、オルゾフとグルールについて話をしよう。もちろん楽しいプレビュー・カードは準備している(楽しいのは自分だけで、対戦相手は楽しくないかもしれないな)。その1その2をまだ読んでいない諸君は、まずそれらを読んでくることをお薦めしておこう。今日のコラムでは読んでいることを前提にして話すからだ。

両オルゾフ

 各ギルドに関する私の目標の一つに、それのキーワードを含むギルド・カードはそのギルドを好むプレイヤーが気に入るものにする、ということがある。年を経て、全てのカードを誰もが気に入るようにしようというのは退屈なゲーム、つまりは誰も嫌わないが誰も好きにならないようなゲームをもたらすということを学んできた。トレーディング・カードゲームを作り上げるための鍵は、誰もが何かを愛するようにし、また、他の何かが嫌われることを恐れないようにするということなのだ。

神無き祭殿》 アート:Cliff Childs

 これをギルドに適用する場合、オルゾフのプレイヤーはオルゾフを愛するようにしたいと思う。グルールのプレイヤーがオルゾフを気に入らなくても、それはそれでいい。しかし、デザイナーの一人がいくつかのギルドにだけ思い入れを持っていたとしたら、興味のないギルドのデザインはどうすればいいのだろう? その答えは各ギルドのプレイヤーが望むものを理解することで得られる。プレイヤーの心理分析と同じように、ギルドのプレイヤーを理解するためにはプレイヤーの考え方に踏み込むことが必要となる。

 そのための最も簡単な方法は、よく知っている相手でそのカテゴリーに入る人物を探すことだ。オルゾフの場合、簡単だった。私とともにギルド門侵犯のリード・デザイナーを務めたマーク・ゴットリーブ/Mark Gottliebが自認するオルゾフ人である。つまり、新しいオルゾフのメカニズムを考えた場合、ゴットリーブに意見を聞けばいい。彼が気に入らないなら、他のものを試さなければならないのだ。

 私にもオルゾフ人の要素はある。デッキ構築をしていた時代(ウィザーズに入る前は、私は身内で奇妙なデッキを作りまくるデッキビルダーとして名を馳せていた。中にはいい出来のデッキもあったんだ)、私は「出血デッキ」と呼ばれるものの大ファンだった。出血デッキとは、防御を固め、ゲームの展開を遅らせて、時間を稼いでいるうちに対戦相手にじわじわとダメージを与えていくものだ。出血デッキは大量の小さな切り傷で死ぬことに比較される。その一つ一つは何も怖くないが、積み重ねると対戦相手には手の施しようがなくなる。出血デッキはオルゾフの本質であり、従って私も何が必要かの考察ができる。ただし、ここで明らかにしておくが、ゴットリーブこそが専門家だった。

 その1その2で言ったとおり、進化や大隊は最初からあった。しかし、他の3つのギルドはそれほど簡単ではなかった。デザイン・チームのメンバー(イーサン・フライシャー/Ethan Fleischer、マーク・ゴットリーブ、ジョー・フーバー/Joe Huber、デイブ・ハンフリー/Dave Humpherys、私)でオルゾフのメカニズムを決めるミーティングを開いたときのことを覚えている。私はゴットリーブに尋ね、ゴットリーブはオルゾフ公式見解を出すのだ。ダメだと言われれば、さらに探すことになる。最初の頃は、数知れないダメ出しがあったのだ。

 やがて、「抑圧/oppress」という(ゴットリーブのデザインによる)メカニズムに行き着いた。抑圧はキーワード処理で、パーマネントに永続的に「このパーマネントが呪文や能力の対象になるたび、これを生け贄に捧げる」という能力を与えるというものだった。抑圧はゆっくりと対戦相手のリソースを絞っていくのだ。遅いメカニズムなので、オルゾフが通常やるやり方でプレイしなければならず、ゲームはのろのろしたものになる。これなら、オルゾフはやがて有利を得て、勝つことができるようになるのだ。

 我々は抑圧の様々な版を試してみた。あらゆるパーマネントを対象にできるものから、土地以外のパーマネントを対象にできるものに。私がもっとも気に入ったのは、それまでに抑圧されたパーマネントを抑圧によって誘発できるというものだった。これなら抑圧デッキに対象を取るカードを大量に入れる必要はなく、単に抑圧カードを大量に入れればいいのだ。

〈オルゾフのギルド門〉 アート:John Avon

 私はこの抑圧を楽しんだが、抑圧には2つの問題があった。

 1つめに、少しばかり扱いが難しかった。魔除けのように働くゲームがあったかと思うと、何の役にも立たないこともある。繁殖研磨のように、全力を発揮するには他のカードの手助けが必要だった。2つめに、デベロップが怖がった。面白いメカニズムというのは一見すると怖く見えるものなので、私はデベロップの反応を話半分に見ることにしている。デベロップの中にはメカニズムの面白いところを輝かせ、圧倒的なところを取り除くという工程も含まれる。つまり、そう簡単には安全にできないメカニズムというのも存在するもので、抑圧はまさにそれだったのだ。

 そこで、我々は別のメカニズムを探し始めた。この時点でデヴァイン、すなわちデザインとデベロップの中間段階に入っていた。ファイルのコントロールはデザインがするが、デベロッパーからのメモを参考にするのだ。デヴァインの存在意義は、デヴァインができるまではデベロップの初期はデザイン上の問題を解決することで手一杯になっていたからである。これはデベロップの時間の無駄遣いであり、専門外の領域での働きを求めるものだった。デヴァインは、デベロップが指摘し、デザインが即時にそれを解決できるようにするために作られたのだ。

 デヴァインの初期に、我々はまだオルゾフとグルールのメカニズムを探していたので、その答えを探すための小デザイン・チームが編成された。デイブ・ハンフリーがそのリーダーで、そのチームにはショーン・メイン/Shawn Mainが所属していた(確かもう一人はビリー・モレノ/Billy Morenoだったと思う)。このチームはそれぞれのギルド用の提案を仕上げてきた。グルールの話はすぐにする。

 オルゾフに関しては、ショーン・メインが「強請」と言うメカニズムを作った。対戦相手に呪文を唱えるための税金をかけるというものだった。このメカニズムにゴットリーブのゴーが出たので、セットに入ることになった(この時点で、バトンは渡されていたのでゴットリーブがファイルの責任者だったのだ。つまり、彼はオルゾフ・プレイヤーの代表というだけでなく、セットのリーダーでもあった。つまり、王様だ)。チーム全体がこのメカニズムでまとまっていたわけではないが、ゴットリーブと私はそれが本当に気に入ったのだ。

 デヴァインにおいて、毎週デザインの繰り返しをおこなう(プレイテストが繰り返され、そのたびに間の時間が短くなっていくのだ。詳しくは「基本根本」コラムで触れるつもりなのでお楽しみに)。この時点で、我々はセットを使ったドラフトを毎週する。強請の価値や可能性を探るため、私はこのメカニズムを全力で選ぶことにした。ドラフトできる限りの強請カードをドラフトし、デッキは正気と思えないものになった。チームの評価は「これは何に使えるの?」というものから「デベロップの諸君、これをよく見た方がいい」に一変した。デベロップは抑圧の時と違い、強請の大ファンだったのでこのメカニズムは公式に採用されることになった。

 強請について語っているところで、今日のプレビュー・カードを公開させてもらおう。プレビュー・カードの名前は〈盲従〉。出血デッキで使いたいと思うようなカードそのものだ。対戦相手の速度を鈍らせ、同時にゆっくりと対戦相手にダメージを与えていく。それではさっそく紹介しよう、これが〈盲従〉だ。

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 ここで閑話。ガヴィン・ヴァーヘイの強請に関する記事を読んだ諸君は、このメカニズムがセットに採用されたのはデベロップに入ってからだと言っていたのを覚えているだろう。デザインの歴史を書いている人間として、記憶は曖昧になっていくものだとわかっている。私は可能な限り正確に過去の話を書いているが、同じものに関しても、人の記憶は違うものだ。これは、1年以上前の話をするにあたっての最大の問題の一つである。

 なぜ私は強請がデベロップ中でなくデヴァイン中にできたとわかったかというと、上で書いたとおり、私がこの価値を示すために何週もドラフトしたからである。私はデベロップ・チームの一員ではない。つまり、私がプレイしていたのなら、デヴァインの間でしかあり得ないのだ。実際に起こったこととは違う、何年も前のことを「覚えている」という例もたくさんあるに違いないということを気に留めて欲しい。ごめんねガヴィン。

可愛い子にはグルール

 グルールはオルゾフとは完全に色も違い、スペクトルの正反対に位置する。オルゾフは腰を据えてじっくりと勝利を目指すが、グルールはそれよりも攻撃的だ。私が自分の担当するギルド5つを最初に検討したとき(条件に従って2つに分け、そのどちらを選ぶかはラヴニカへの回帰のリード・デザイナーのケン・ネーグル/Ken Nagleに任せたのだ)、私の真っ先に浮かんだ心配は各ギルドにはっきりした色分けができるかだった。

 オルゾフとディミーアは遅いギルドだが、そのプレイ・スタイルは異なる。ディミーアはカード・アドバンテージやひっそりした攻撃をする色だ。私が心配していたのは、グルールとボロスの重なり合いだった。どちらも赤の攻撃的情熱に引っ張られている。これらの差別化の鍵は、どう攻撃的かというところにあった。

 一見するとよく似たものに見えるが、深く掘り下げていくと違う特徴を持っている。それを理解するには、どの色が赤を讃えているかを見ることが重要だった。例えばボロスは典型的なウィニー・デッキを作る。クリーチャーを毎ターン唱え、そして止めることがない。ゲームは第1ターンから始まり、4ターン目には事実上止まる(ボロス・デッキには重い爆弾カードも入っていることがあるが、最初の数ターンの打撃が非常に重要なので重い側にデッキを寄せることはない)。これは白の、最もウィニーな色という性質から来ている。白は軍勢を組織する色で、白と赤の重なりからもっとも攻撃的な1マナ、2マナのクリーチャーが存在する。これを赤の直接火力やウィニー速攻と組み合わせるのがボロスの長所なのだ。

 グルールは赤と緑の組み合わせである。白と違い、緑はウィニーの色ではない。緑は「クリーチャーの色」ではあるが、このクリーチャーはより大きく、より重い。緑はこの重いカードを使えるように、マナ加速をその特徴として持つ。つまり、緑は4マナ以上のクリーチャーを通常唱えられるよりも1ターン以上速く唱えることに長けているのだ。マナを出すことに関しては赤も第2色(緑の遅く永続的な加速と違い、赤はより速く一時的な加速が多い)だという事実は、この戦略の助けとなっている。

アート:Marco Nelor

 つまり、グルールもまた攻撃的だが、よりミッドレンジ・デッキ寄りだということだ。初期には、後に巨大クリーチャーを出すためのマナ加速をしていくことになる。グルールの強みは、対処しにくい強力なクリーチャーを素早く出せることなのだ。ボロスほど速くはないがそれでも充分に速く、それはサイズと比べるとより明らかになる。

 そこで我々はこのプレイ・スタイルにあったメカニズムを探すことにした。最初に我々が注目したのは格闘である。格闘は昨年導入されたキーワード処理で、2体のクリーチャーをお互いに格闘させるというものだった。格闘がグルールのフレイバーに適しているというだけではなく、格闘能力は緑が第1色、赤が第2色である(これまでは赤の第2色性を充分に引き出していなかったので、これも重視したいと思っていた)。

 最初に我々が作り上げたメカニズムは「乱暴/rowdy」というものだった。乱暴クリーチャーは「これが他のプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、これはそのプレイヤーがコントロールするクリーチャー1体と格闘を始めてもよい」という能力を持つ。グルール・クリーチャーで攻撃したら、指示通り攻撃はするが、その後で格闘もするのだ。幸い、格闘相手は対戦相手のクリーチャーである。

 格闘メカニズムは非常にフレイバーに富んでいて、プレイも面白かったが、小さな問題が1つ――いやまあ、3つあった。

1. 新世界秩序の規定の一つに、クリーチャーを何度も除去できるカードはコモンに置かない、というものがある。一方、ギルド・キーワードはコモンにも置く必要がある。これは問題だ。

2. 戦場のクリーチャーを一掃した後、そのままロックを決める能力となる。毎ターン、チャンプ・ブロックする必要があることになり、小さいクリーチャーは事実上プレイできなくなってしまう。

3. さらに、最初の2つはその理由だが、デベロップが心配した。再利用可能なクリーチャー除去というだけでも危険なのだ。これをキーワード・メカニズムにするのはさらに危険だ。デベロップは「何とか他のものを探せませんか?」と言ってきたのだった。

 我々は格闘を使うのが気に入っていたので、「キックボクシング」という再利用が難しい除去に切り替えた。「キックボクシング」は、戦場に出たとき、キッカーされていたら、他のクリーチャーと格闘できるというものだった。しかし、これにもほぼ同じ問題があるということがわかった。問題#2は回避したが、問題#1と問題#3は手つかずだった。基本的に、新世界秩序もデベロップもこれをよしとしなかったのだ。今度は、「格闘を含まないキーワード・メカニズムにはできませんか?」と言われることになった。

 我々はいろいろなキーワードを探してみたが、どれもピンと来なかった。デヴァインに至って、デイブと彼の小チームが湧血(デザインされたときは「奇襲/ambush」)を提示してきた。正直に言って、デザイン・チームは湧血には賛否両論あった。私が気に入ったのは、それがクリーチャーでありながらインスタントのように振る舞うというところだった。これによって、グルール・プレイヤーは驚きをなくさずにデッキにクリーチャーを詰め込める。それは楽しいゲームに繋がることだ。

 このメカニズムに関する最大の批判は、歴史的にグルール・プレイヤーが気に入るような呪文とは少しばかりかけ離れているということだった。伝統的に、グルールはスパイクよりティミー寄りなのに、湧血はリソースを管理するメカニズムである。つまり、クリーチャーで使うか呪文で使うかという選択が必要となり、これはスパイク寄りなことなのだ。幸いにして、プレイテストの結果、グルール・プレイヤーは他のクリーチャーを殺すためにカードを捨てるという湧血によくある結果を楽しんでいると言うことがわかった。

アート:Steve Prescott

 我々はデヴァイン中に湧血をプレイし、そしてデザイナーもデベロッパーも全員がこれをよしとした。湧血メカニズムを持つカードをデザインするのは楽しいことだった。これについてはまた、「グルールのデザイン」コラムで語るとしよう。

「計画が完遂して、気に入った」

 ギルド門侵犯はラヴニカへの回帰のあとを継いで作られた面白いセットであった。最初のデザイン・ミーティングよりずっと前に多くのことが決定されていた。逆に言うと、ギルド門侵犯がラヴニカへの回帰の焼き直しではなく、リミテッドでも構築でも違うものだと感じられるように苦労した。もっとも重要なのは、デザイン中に私からマーク・ゴットリーブにバトンを渡したのだが、このセットがその初めての例であるということだ。

 すべてを踏まえて、私はこのギルド門侵犯の完成品に非常に満足している。開発部で完成品をスライドショーで見たとき、ゴットリーブとハイタッチをして「やったぞ!」と言ったのは忘れられない。

 これで今日の話は終わりだ。それではまた次回、カードを1枚ずつ見て話すときにお会いしよう。

 その日まで、出血にせよ一撃にせよ、ギルド門侵犯のプレリリースでの楽しみがあなたとともにありますように。


(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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