私の旅

Posted in Magic Story on April 15, 2014

By Ethan Fleischer

Ethan Fleischer works for Magic R&D as a designer. He can sing, but not dance, and is an indifferent fencer. He lives near Seattle with his wife, three sons, and mother-in-law.

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 僕はウィザーズ・オブ・ザ・コーストで働き始めてからずっと、自分にとって初めてのデザイン・チームを率いるための努力を重ねてきた。そして僕の上司にして師匠のマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterは、僕に「Countrymen」という小型セットでリーダーを務めさせてみようと決めた。僕はこれまでに『ギルド門侵犯』『テーロス』『神々の軍勢』『統率者(2013年版)』のデザイン・チームに参加していたので、様々なデザイン上の課題のために様々なデザイン・リーダーが使ってきた様々な手法について、それなりのアイデアを持っていたんだ。

アート:Chase Stone

 僕は何年もの間、色々なものを作ることを学んできたし、物事を作り上げることは数多くの実践を通してしか学べないということはわかっていた。僕は最初のリーダーを務めるにあたって多くの失敗をするだろうし、デベロップに渡す時点で経験豊富なデザイナー達のように洗練されたものを提出することはできないだろうとわかっていた。そして、僕はこの経験を通して多くのことを学べるし、将来またセットをデザインする時にはそれを活かせるようになるということもわかっていたんだ。

 『テーロス』のデザイン中に、より大きなブロック構造がどうあるべきかを決めるために僕たちは並行して予備デザインをするチームを結成した。クリーチャー・エンチャントが大量に登場するのは『神々の軍勢』からで、クリーチャー・エンチャントと定命の者との戦争が『ニクスへの旅』で起こると決めていた。2つの陣営の対立という構想を売り込むため、クリーチャー・エンチャントばかりのデッキを作成することを推し進めるメカニズムと、クリーチャー・エンチャントの入っていないデッキを可能にするメカニズムが必要だとわかっていた。僕たちは「エンチャント・テーマ」のカードを『ニクスへの旅』まで取っておいて、劇的に登場させたかったんだ。

 僕たちは「デッキを組んでよ」メカニズムである星座をデザインし、大量のエンチャントを入れることを推進した。でも同時に、神々と定命の者の戦争というテーマを強調するためのカードも何枚か作った。戦争は軍勢を築き上げることだけじゃなく、敵を抹消する必要があるときもあるんだ! ここで〈全希望の消滅〉を紹介するね。

 これは、クリーチャー・エンチャントだけでクリーチャーでないエンチャントが入っていないデッキではものすごく強いカードだ! 相手の軍勢を壊滅させ、自分の軍勢は無傷にできる。

 このカードは『テーロス』のデザイン中にマーク・ローズウォーターがデザインしたもので、僕らはこれを『ニクスへの旅』のために脇に置いておいたんだ。もとは白のカードで、プレイテスト名は「神々の怒り」だった。デベロップ・チームは、このカードをつい最近『神々の軍勢』で全体除去呪文の《宿命的報復》を手に入れていた白から黒に移したんだ。

メカニズムとの取り組み その1

 『ニクスへの旅』のデザイン開始直後に、僕らは「エンチャント・テーマ」のメカニズムをどうするか決めた。最初は「神占/divinity」と呼んでいたのだけれど、ブロック内に信心/devotionというメカニズムがあって紛らわしいということでクリエイティブはこれに「星座」という名前を付けたんだ。このメカニズムは巧く働いたんだけど、リミテッドでは問題があった。『テーロス』(とそのちょっとした拡張の『神々の軍勢』)には、ドラフトでエンチャントを狙うプレイヤーが後の順目でも取れるような弱いクリーチャー・エンチャントが少なかったんだ。このことは、ブロック内の第3セットに、特定の種類のカードをかき集めたくするような主軸的メカニズムを入れることの問題を明らかにした。『テーロス』のデベロップはもう終わっていたので、ブロックの第1セットに手を入れるのはもう間に合わなかったんだ。

 デザインにとって最大の問題は、定命の者のためのメカニズムを決めることだった。単一の英雄的クリーチャをオーラを使って「高くする」のではなく、大軍勢で「広くする」ことを推奨したいと思っていたんだ。僕らは、英雄と怪物の混成軍を組織しようと、『ドラゴンの迷路』の《育殻組のヴォレル》のような能力「強化/Enhance」を試してみた。「デヴァイン」(デザインの最終期にある、デベロップ・チームがチェックする時期のこと)が始まるまで、しばらくこれをプレイしてみた。リード・デベロッパーのデイブ・ハンフリー/Dave Humpherysが作成したデベロップ・チームからの大問題の指摘をまとめた文書の中で、この定命の者のメカニズムには「わからない」と記されていたんだ!

 なんてこった! 英雄と怪物の速度差は問題で、そしてこのメカニズムをインスタントやソーサリーに持たせると、タイミング的に奇妙な状況が起こったんだ。

 僕は本当に心配だった。新しいメカニズムを作る必要があった。そしてそれをどうやってこのセットに合わせるか考え、そして強化と組み合わせて使うカードをその新しいメカニズムと組み合わせられるように変更しなけりゃならない!

 僕はすぐに「再供給/Resupply」というメカニズムを作った。これは『コールドスナップ』にあった 復活に似たメカニズムだが、クリーチャーが自分のコントロール下で戦場に出たときに誘発し、コストを支払わなかったときに追放されるということはないというものだった。これはもちろんクリーチャーを大量にプレイすることを推奨するもので、英雄的クリーチャーを使うことも推奨される。僕はこのセットを切り分け、この新しいメカニズムを投入した。

無残な収穫

創造上の障害

 もちろん、デザイン・チームのリーダーを務めるというのはデザインだけでは終わらない。チームを統率することも重要だ。

 僕のチームにはマーク・ローズウォーターとエリック・ラウアー/Eric Lauerという、色々な責任を負った2人の高レベルなデザイナーが所属していた。彼らは色々なチームに所属していて忙しいので、彼らに時間通りに「宿題」をやってもらうことが難しいとわかっていた。そこで僕は週2回のデザイン・チームの会合中にカードをデザインしてもらうことに専念したんだ。この2人はさすがで、デザイン中に起こった問題の解決策を示してくれた。彼らには長い長い経験があるんだ。

 編集チームのメンバーにしてマジックのルール・マネージャーを務めるマット・タバック/Matt Tabakは、ときおり普段の仕事に忙殺されているけれど、時には宿題をする時間がある。タバックはルールの枠内で完璧に働く斬新なアイデアを出してくれるので、デザイン・チームに入れるのはすごいことだ。ダン・エモンズ/Dan Emmonsはグレート・デザイナー・サーチ2(リンク先は英語)で僕と同期になる。彼は決勝進出者たちが「Tweet Force Alpha」なんて呼んでいたカード・デザイナーのエリート集団の一員だった。僕らはいつでもTweet Force Alphaのメンバーに大量のカードをデザインしてもらえたし、それはこの『ニクスへの旅』のデザインでも同じだった。ダンは僕らの中でも飛び抜けて若い20代前半で、開発部でも比較的新人なんだ。

 僕は、特定の条件を満たすカードを10枚ぐらいデザインするという宿題を書いたメールをチームに送る、という手法をよく使う。デザイン・チームがメールを返してくれると、僕はそのデザインを見て、セットに一番相応しいと思えるものを選ぶんだ。

 ある日、ダンはその時の宿題に相応しいカードをデザインすることができないと言ってきた。僕は彼に心配するなと言った。僕は質よりも量に興味があった。「何でもいいから送ってよ。使えるのがあるかも」とだけ伝えて、そのことをすぐに忘れた。セットの問題で頭がいっぱいだったんだ。

アート:Johann Bodin

 その週の後半に、僕の監修役のマーク・ゴットリーブ/Mark Gottliebと1対1で行う週例の面談があった。彼は、ダンは僕にあしらわれたことに不満を感じていて、彼が前に僕に言ったときよりも僕の任務を達成できる立場にないと思っている、と伝えてきたんだ。

 そこで、僕は自分の間違いに気がついた。僕には、メンバーをより良いデザイナーにする手伝いをして、そしてマジックの未来を過去よりも良いものにする責任もあったんだ!

 僕はダンに何を伝えるべきだったのか? 僕のマジック・デザイナー歴はそう長くないんだ! うん、でもダンよりも人生経験は10年以上長い。それなら、人生経験から創造上の障害を打ち破るための方法を説明できないだろうか?

 僕はホワイトボードのある会議室でダンと会った。「何も書かれていないキャンバスはホントに怖いよね。何も教えてくれない。でも、何かを作り始めるにあたっては、何もないよりも何かあるだけでマシなんだ」僕は言った。

 僕はホワイトボードに適当な線を書いた。ちょっと曲がった線だった。

「何でもいい、何かから手をつければいい。そうすれば、デザインで必要なものを教えてくれる」

 僕は線を加えて、その一本の線から踊っている人の絵を描き上げる。一本の線は、その男の胴体のそり具合を定めるものになっていた。

「これは、カードのデザインでも同じことだ。何でもいいから手をつけるんだ。何でもいい。パワーとタフネス、クリーチャー・タイプ、昔の好きなカードでも良い。何か始点が決まれば、あとの細かいことは自分から示してくれる。始点となったものが教えてくれるんだ」

 僕は即興でそう説明した。

 ダンは僕の説明に満足したように見えて、翌週のゴットリーブとの面談ではダンが僕のそのちょっとした説明に感謝していたと聞かされた。ふう! 僕は自分がまるで賢くて立派なチーム・リーダーであり師匠であるかのように見せかけていただけだ! 実際は、僕はまだ駆け出しのデザイナーで、暗闇の中でよろめいてるなんてことはナイショさ!

 まあなんにせよ、ダンは他のどのデザイナーよりも多くのカードを、最終的に提出したファイルに収めることになった。彼は非常に多産なデザイナーで、そして今、この文章を書いている時点で彼は自分のデザイン・チームを率いているよ。でも、これでめでたしめでたしって話じゃない、他にも問題はあったんだ。

 僕はセットをデベロップに引き渡して、休暇をもらった。僕は仕事を大過なくこなしたんだ、だってそのすぐあとにまた新しいセットのリーダーを任されたんだからね。僕のキャリアはまだ健全なのさ! さておき、『ニクスへの旅』の旅は続いていたんだ。デベロップでは……

メカニズムとの取り組み その2

 『ニクスへの旅』のデベロップ・チームはこのセットの問題に直面していた。このブロックには誘発型能力を含むメカニズムが多すぎたんだ。英雄的は自分のクリーチャーを対象として呪文を唱えたら誘発する。神啓は自分のクリーチャーがアンタップしたら誘発する。星座はエンチャントが自分のコントロール下で戦場に出たら誘発する。再供給はクリーチャーが自分のコントロール下で戦場に出たら誘発する。プレイテストにおいて、盤面はあまりにも複雑になっていたんだ。

 デベロップ・チームは、再供給を『テンペスト』ブロックからあるバイバックに置き換えてみた。それを聞いて、僕はバイバックが同じ局面を繰り返させる傾向を持つのでホントにヤバいと思ったんだ。カード・デザインは昔のバイバック・カードよりずっといいものになっていて、《転覆》や《不断の霞》はなかったけど、それでも不安だった。

 リード・デベロッパーのデイブ・ハンフリーは数週間の育児休暇を取ったので、代わってセットの指揮を執ったのはエリック・ラウアーだった。エリックはこのセットにデザイン中からずっと関わっていたので、「定命の者のメカニズム」に重要なものが何なのかを把握していた。それに、言ってみれば、彼は2点を結ぶ最短の線を見つけるのがとても上手いんだ。彼は新しいメカニズム「奮励」を作り上げた。単一の呪文が複数のクリーチャーを対象にできるというこの能力は、英雄的クリーチャーを多数並べることを推奨するものになっている。英雄の軍団だ! 僕はこの解決策をとても気に入った。

 デイブが生物学的経験の素敵な結果を見て戻ってくると、彼は『ニクスへの旅』のデベロップに魔力を見せ、もっとも面白いものを見つけてさらに面白くし、巧く働かないものをさっくり切り捨てた。僕は、僕自身の経験不足やいくつかの失敗にもかかわらず、このセットの出来映えが気に入った。2段階に分けてデザインとデベロップをするという僕たちのこの手順のいいところは、最終的な製品に悪影響を与えることなく実験や研究ができるということなんだ。

 この記事では、僕の旅における試練や苦難を取り上げているけれど、全体としてはとても楽しく快適な旅だった。皆が『ニクスへの旅』のプレイを、僕が作ったときの楽しみの半分でも楽しんでくれたら嬉しいよ! さあ、いよいよプレリリースだ!

 

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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