エンチャントの加護を受けしプレビュー

更新日 Card Preview on 2016年 5月 26日

By Brian David-Marshall

Brian David-Marshall is a New York–based game designer who has been involved with Magic since 1994, when he started organizing tournaments and ran a Manhattan game store. Since then, he has been a judge, a player, and one of the longest-tenured columnists on DailyMTG.com, as he enters his second decade writing for the site. He is also the Pro Tour Historian and one of the commentators for the Pro Tour.

 素晴らしいデッキを初めて目にしたときのことは、決して忘れられないものです。あれは2003年、私が初めて日本へ行ったときのことでした。私の乗る飛行機は遅れ、着陸した頃にはすでに始まっていた「マスターズ横浜2003」の会場への道のりを、私は荷物受け取り所で自分の荷物が流れてくるまでの間に確かめなければいけませんでした。早くも精神的に疲れながら、なんとか第3回戦の頃に会場へ到着――そこで私は、トミ・ワラミーズ/Tomi Walamiesの操る《再誕のパターン》デッキを目にしたのです。私は興奮そのままに、第4回戦も彼のデッキの動きを見ていました。

 そのデッキは、ひと目見ただけでも逸品であることがわかりました。それは、最近のプロツアーでもトップ8入賞を果たしている、生け贄をテーマにした「サクリファイス」系デッキの先駆者とも言えるものです。実は正直に言うと、ワラミーズのデッキのことを思い出したのは当時のカバレージを読み直したからです。第4回戦での彼の相手は、のちの殿堂顕彰者ガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifの操る「エンチャントレス」でした。このデッキと《アルゴスの女魔術師》の力を目の当たりにしたときも、私は撃ち抜かれるような思いをしました――『ウルザズ・サーガ』で登場したこのカードは当初、すぐさま禁止になるような他の強力なカードの影に隠れていました。そんな《アルゴスの女魔術師》は、のちにエンチャントを中心にしたデッキに欠かせないカードとなり、レガシーで大きな活躍を見せています。そして今再び、『エターナルマスターズ』に収録されたこのカードは、間もなく皆さんのもとへやって来るのです。

http://media.wizards.com/2016/adhfianalodifdj2_EMA/jp_cTE1L8qDKE.png

 では当時のナシフのデッキを見ながら、カードを引くだけに留まらない「エンチャントレス」の強さについて少し語りましょう。

Gabriel Nassif - 「エンチャントレス」

マスターズ横浜2003準優勝 / エクステンデッド
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 このデッキは、理論的にはダメージを与えて勝つ(《ヤヴィマヤの女魔術師》を大きく育てて強打を与えるか、ときには《フェアリーの大群》で攻めかかる)ものなのですが、その実態は《気流の言葉》で対戦相手のパーマネントをすべてバウンスすることを狙ったコンボ・デッキです。《気流の言葉》が戦場にあれば、1マナを支払うことで、カードを引く代わりにそれぞれのプレイヤーがパーマネントをひとつ手札に戻すことを強制できます。一見平等な効果に見えますが、このデッキはこれを利用してエンチャントを手札に戻すことでさらにドローを進め、あっという間に手がつけられない状況を作り上げるのです。さらにナシフは《踏査》を手札に戻して出し直すことで、追加の土地もプレイし続けました。(訳注:現在のルールでは不可能です)

 ナシフが使用していた「エンチャントレス」は、私がこれまで見てきた数々のデッキの中でも特にお気に入りのひとつです。このデッキは様々なツールを駆使して、レガシーでもその力を振るいました。《基本に帰れ》や《窒息》は、エンチャントであるためドローを増やすことができるだけでなく強烈な効果を持ったカードであり、それから《緑の太陽の頂点》は《アルゴスの女魔術師》をもう4枚増やす機能を果たし、そして《空位の玉座の印章》は飛行戦力を次々と生み出し、速やかにゲームを終わらせてくれます。最近ベルギーで行われたレガシーの大会で2位の成績を収めた、「エンチャントレス」の最新版を見てみましょう。

Diederik Masure - 「エンチャントレス」

Belgian Legacy Cup Trial 第2位 / レガシー
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 2003年当時と比べて「被覆」を持つクリーチャーもずいぶん除去されやすくなりましたが、デッキの要となるカードを2ターン目にタップ・アウトで繰り出しても火力の対象にならず、《剣を鍬に》で追放されず、《未達への旅》にも出かけない、というのは今でも安心感がありますね。とはいえ、《悪魔の布告》などには無力ですので、気をつけましょう。例えば「フェッチ・ランド」で《ドライアドの東屋》を呼べるようにしつつ、《アルゴスの女魔術師》のプレイを3ターン目まで待つとか。

 メージャーのデッキには《引き裂かれし永劫、エムラクール》が採用されているところが私は好きです。「エンチャントレス」デッキでは、《セラの聖域》――こちらもスーパースター揃いの『ウルザズ・サーガ』で登場し、芽が出るまでに時間を要したカードです――を用いてとてつもない量のマナを生み出すことができます。《Time Walk》までついた15マナ15/15のクリーチャーはきっと、ゲームを終わらせるための特急券になってくれるでしょう。

 それから、『エターナルマスターズ』を使ったドラフトもこの上なく楽しみですね。開発部は『モダンマスターズ』において、10通りの色の組み合わせすべてにコモンとアンコモンを用いたシナジーを組み込み、素晴らしいドラフト体験を作り上げました。そしてこのカードがアンコモンで再録されることを見るに、どうやら『エターナルマスターズ』のドラフトも負けず劣らずの素晴らしいものになりそうです。

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 私は、Magic Onlineで最近開催された「Legendary Cube」が大好きでした……そこでは「エンチャントレス」のアーキタイプがドラフトできたからだ、ということは言うまでもないですかね? ちなみに、私は開催期間中「エンチャントレス」しかドラフトしていなかったため、他のカードについては語れません。《アルゴスの女魔術師》を1パック目に見つけようものなら、脇目もふらずに一直線でした。クリーチャー化した《空位の玉座の印章》へ《勇壮な体形》をエンチャントする、という動きを決めるまで生き残ることはできませんでしたが、3枚ほどカードを引くと対戦相手が投了したこともありましたよ。

 「エンチャントレス」デッキをドラフトする利点は、「女魔術師」系のカードを取ることで、(《平和な心》や《忘却の輪》、《肥沃な大地》といった)便利なエンチャント、そして《オパール色の輝き》や《空位の玉座の印章》のような勝ち手段となるエンチャントを活用でき、多くの対戦相手がそれらを使いこなせないことを尻目に勝利を掴みやすくなるところです。『エターナルマスターズ』を使ったドラフトでどんな「エンチャントレス」デッキが現れるのかはわかりませんが、きっと見つけ出してやろうと思います。

 本当に……ナシフのデッキには心をがっしり掴まれましたよ。あまりに好きすぎて、私は「カナディアン・ハイランダー」でも、現在大きな活躍をしているカードも採用して「エンチャントレス」デッキを組んでしまいました。同名のカードを1枚しか採用できないフォーマットで「エンチャントレス」デッキを組む場合は、「女魔術師」系のカードを可能な限り多く採用したいところです。私のデッキには、元祖である《新緑の女魔術師》から最新の《開花の幻霊》まで、すべてが搭載されています。

(※「カナディアン・ハイランダー」……通常のハイランダー・ルールと同様に同名のカードは1枚ずつ、総数100枚以上でデッキを組む遊び方。ただし制限として「パワー9」などの強力なカードにポイントが割り振られ{例えば各種「Mox」が2点、《Time Walk》は3点など}、合計「7点」までしか使用できない。参考

Brian David-Marshall - 「カナディアン・エンチャントレス」

カナディアン・ハイランダー
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ソーサリー (6)
1 Idyllic Tutor 1 Time Spiral 1 Wargate 1 Ponder 1 Preordain 1 Replenish
100 カード

 このデッキで最も強力なカードは、《基本に帰れ》でしょう。ゲーム中盤、基本土地を持っていない対戦相手がすべての土地をタップしたタイミングで《基本に帰れ》を貼ってやると、それだけでゲームが終わったことも多々あります。こちらも基本でない土地を大量に採用しているのに《基本に帰れ》を使うのは疑問に思われるかもしれませんが、「フェッチ・ランド」も十分に採用しているので、《繁茂》や《肥沃な大地》をつける基本土地は確保できます。

 最近のポイント更新からこのリストは変えていませんが、もし枠を空ける必要に迫られたら《Ancestral Recall》を抜きます。このデッキには、生き残るすべとして対戦相手からの干渉をほとんど防ぐ《独房監禁》が採用されています。これがあればプレイヤーは「被覆」を得るとともにすべてのダメージが軽減されます。こちらのアップキープを迎えるたびにカードを1枚捨てなければならない上にドロー・ステップも飛ばされる、というデメリットもありますが、エンチャントをプレイするたびに2枚も3枚もカードを引ける「エンチャントレス」デッキでは問題ありません。問題は、「被覆」を得ることで《Ancestral Recall》の対象に自分を取れなくなることなのです。

 そもそも「エンチャントレス」デッキなら多くのカードを引けるため、《Ancestral Recall》は抜いてしまっていいと思います。そして『エターナルマスターズ』のドラフトでもきっと、《繁茂》が《Ancestral Recall》になるような強力なシナジーを生み出すデッキを作れるに違いありません。

(Tr. Tetsuya Yabuki)

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