アーティファクト的デベロップ

更新日 Card Preview on 2016年 9月 13日

By Ian Duke

 こんにちは! 私はイアン・デューク、マジック開発部の上席ゲーム・デザイナーで『カラデシュ』のリード・デベロッパーだ。セットのデベロップをするっていうのはどういうことか? そう、デザイン過程の後半と考えるのが一番簡単だ。 デベロップでは、我々はそのセットのビジョンを遂行することに重点を置く。そのテーマは我々の望むように表されているだろうか? 色はバランスが取れているか? リミテッド環境は楽しいか? このセットは構築フォーマットに新しいデッキを加えているだろうか? このセットは新しいプレイヤーにとっつきやすいものだろうか?

 我々がデベロップの時によく考えていたことのひとつは、どうやって『カラデシュ』をマジックのより大きな背景に合わせるよう描くかということだ。それはこのセット自体が上手くプレイできるようバランスを取ることであり、ブースタードラフトのようなリミテッド環境に取り組むときに我々が考えていることだ。しかしまた我々は、『カラデシュ』がスタンダードやモダン、もしくは統率者戦のような大きなフォーマットにより多くを提供するようにしたいとも考えている。

 エネルギーと機体はこのセットの2つの新しく派手なメカニズムとして多くの興奮を招いている。今日私が話すのはこのセットのアーティファクトとプレインズウォーカーの役割と、そして2つのすごいプレビュー・カードについてだ。

アーティファクトの世界に色をつける

 このセットのデザイン・チームのビジョンはプレイヤーを発明家気分にすることだ。そして一緒にプレイする大量のすごいアーティファクトなしで発明家を完全に感じさせる方法があるだろうか? 我々は早い段階でアーティファクトがこのセットに特徴を持たせる重要な役割を演じること、それがスタンダードやマジック全体に貢献することに気づいていた。

 しかし我々は慎重に行きたいと考えた。もしアーティファクト関連のテーマを過剰に「目立つ」ものにしてしまうと、このセットの他のテーマを押し流してしまう危険がある。我々はアーティファクトが全てで他に何もない、新しい『ミラディン』を作りたいとは思わなかった。発明家気分というテーマを伝えるために、我々はアーティファクトを「しなければいけない」ものではなく「することができる」ものにしたいと考えた。

 1セットの中に強力なアーティファクトが多くあることの大きな危険のひとつは、どんなデッキもそれを使えることだ。全てのデッキが同じ総合的に強力なアーティファクトをプレイしている場合、実際の独自性が何もない強力なカードのごった煮に感じるようになってしまう。これでは発明がテーマであるセットのあるべき雰囲気とは真逆だ。

 この問題に対して我々が取り組んだ方法の1つは、アーティファクトの強さのいくらかを、アーティファクトと一緒にプレイすることで恩恵を得られる非アーティファクトのカードによるものにすることだった。個別のアーティファクトそれ自体は全く十分な強さではないかもしれないが、アーティファクトを参照するカードと組み合わせ始めるとトーナメント・レベルまでパワー・レベルをアップさせることができる。

Glint-Nest CraneUnlicensed DisintegrationToolcraft Exemplar

 こうすることによってデッキの中にアーティファクトが大量に入っていたとしても色の特徴を守ることが可能になった。あとはどんな種類のアーティファクト・デッキがあるか、そしてそれぞれの色がどんな方法でアーティファクトを使うかだ。製造を持つカードや他のアーティファクトを生み出すカードでアーティファクト・デッキの色はさらに濃くなる。

 『カラデシュ』スタンダードのテストに移行したときにも、我々はまだアーティファクトの強さをどうするべきかを探っていた。いくつかのデザインは、デッキや戦略に十分強い一方でどんなデッキにも入れるほどには強くないという、ちょうどいいところに固定するのが困難だった。対処法のひとつは各アーティファクトを大きく異なる戦略に向けたものにすることだった。例えば、ゲームが長引くと影響が少なくなる、早くてアグレッシブなアーティファクト・クリーチャーを作った。機能させるためにそれを中心としたデッキ構築が必要なよりコンボ的なアーティファクトのカードも作った。しかしまだ我々はアーティファクトを適正なレベルにする助けになる調整箇所がもうひとつ足りないと感じていた。

 ベン・ヘイズ/Ben Hayesがいくつかのアーティファクトに色マナを使う起動型能力をつけるアイデアをひらめいたのはその時だった。これはどれをどのデッキに入れるかに関して極めて直接的な影響を与えた。この「実験的アップグレード」の最初の候補者に決まったのはこの素敵なちっちゃなやつだ。

http://media.wizards.com/2016/bVvMNuiu2i_KLD/jp_IevjEylQtY.png

 親しみを込めて「手紙虫」とプレイテスト中にあだ名で呼ばれていた《ボーマットの急使》はすぐに我々の心と赤いアグレッシブなデッキの両方に住み着いた。1マナ1/1速攻クリーチャーとして、《ボーマットの急使》は相手のクリーチャーが展開される前に何点かのダメージを削ることができる。そしてこれはアーティファクトなので、『カラデシュ』の他のアグレッシブなデッキに合ったカードでパワーアップしたり恩恵を受けることができる。

 しかしこの小さなクリーチャーの真の力はその能力にある。《ボーマットの急使》が攻撃に行くたび、これは新しいカードを裏向きで持って帰ってくる。手札が減り始めたり《ボーマットの急使》が危険にさらされた場合、簡単に生け贄に捧げて手札が補充される。《ボーマットの急使》が対戦相手に3点ダメージを与えてゲームの後半で3枚カードを引くことは珍しくない。全部で2マナにしては悪い取引ではない!

計算されたリスク

 我々はまたいくつかのアーティファクトを「デッキの軸とせよ」枠に入れた。基本的に開発部は強力な能力を持った軽い非クリーチャーのアーティファクトに対して慎重であり、その理由はそれらへの除去や対処が難しく、戦場に残ったままだとゲームを支配することができるからだ。しかし発明が中心のテーマであるセットの精神で、我々はこれらの強力なアーティファクトに関して保守的であることを少しやめることにした。なので君がもし、デッキを練りあげて開発部の予測しない新しい突発的なコンボ・デッキを探そうとすることが楽しみなプレイヤーであるなら――グッドラック! 何かがそこにあるはずだ……

PanharmoniconGhirapur Orrery

趣向を変えたプレインズウォーカー

 私は今日異なるタイプのデッキに向けたカード、そしてそして戦略の多様性がマジックの健全さにとって重要なのかをたくさん話してきた。これはプレインズウォーカーにとっては特に真実であるといえる。『カラデシュ』には4人の異なるプレインズウォーカーがいて、我々は彼らがそれぞれ異なるタイプのゲーム・プレイを推奨し、異なるプレイヤーに訴えかけるものであるようにしたいと考えた。

 今までのところ、君たちはその4人のうちの3人を見てきている。《反逆の先導者、チャンドラ》は赤いデッキにマナ加速と実に赤らしいカードアドバンテージをもたらすことを含む、いくつか新しい攻撃の角度を与えるあらゆる面でのスーパースターだ。《生命の力、ニッサ》は対戦相手をゲーム後半に押しつぶそうとする緑のミッドレンジ・デッキを最も得意とする。そして《サヒーリ・ライ》は真の発明家向けで、1ターンだけコピーして一番エキサティングなものを考えだすよう要求してくる。

Chandra, Torch of DefianceNissa, Vital ForceSaheeli Rai

 『カラデシュ』4人目のプレインズウォーカーはヴィダルケンの《ドビン・バーン》だ。クリエイティブ・チームが私に彼のキャラクターを紹介したとき、彼は彼の敵対者とその計画を見抜き、それを悪用することができる狡猾な官僚だと記載されていた。彼はゲームを遅くしたいプレイヤーにピッタリに聞こえた。最終的にネジはきつく締められ、希望はなく残されてるのは完全な絶望だけになるまで相手の計画をバラバラにする……失礼、また妄想していたようだ。私が心底コントロール・プレイヤーだと分かってもらえただろうか?

http://media.wizards.com/2016/bVvMNuiu2i_KLD/jp_NVmXolHdE1b.png

 《ドビン・バーン》はコントロール・デッキがやりたいことをほぼすべて与えてくれる。クリーチャーに対する防御、カード・ドロー、ライフ獲得、そしてかなり信頼できる「キングを守る」型の勝ち手段。間違いなく、この紋章で終わりを迎えるようなことはされたくないだろう。もし大きなクリーチャーで攻撃するよりもカードを引いて呪文を打ち消すプレインズウォーカーのほうが好みなら、ヴィダルケンの《ドビン・バーン》はうってつけだ。

街に出て、発明しよう!

 『カラデシュ』のデベロップの世界を一緒に見てくれてありがとう。君がプレビュー・シーズンを楽しんで、その車輪がもう君の輝ける発明家の心に向かっていることを願っている。私は君たちが新しいデッキを練り上げて、それがどうやって我々を驚かせるのかを待ちきれないでいる。

 このセットやマジックに関して質問やコメントや思うことがあれば、マジックのデベロッパーのTumblrまで来てほしい。我々は毎週コミュニティからのいくつかの質問に対して心をこめた回答をしていて、そして皆の言わずにいられない言葉を聞くのが大好きなんだ。

(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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