『イクサラン』のデザインの征服

更新日 Card Preview on 2017年 9月 5日

By Ken Nagle

Ken Nagle was a finalist in the first Great Designer Search and joined Wizards of the Coast as a design intern. He has since gone on to work on twelve Magic expansions, including four of which he led, as well as leading the design of Archenemy and the first Commander decks.

 前略 プレインズウォーカーの皆様。私はケン・ネーグル/Ken Nagle、『イクサラン』の共同リード・デザイナーです。私が新しい次元での大型セットでリード・デザイナーを務めるのは初めてのことです。空は青く、記録は空です。何も前提なしで『イクサラン』をどうデザインしたのでしょうか。今日は、『イクサラン』の始まりと、皆さんの手の中で見ることになる変身と、そして変身するプレビュー・カードをお見せいたします。

発見の種

 クリエイティブな試みというものは、単純な前提から始まるものです。『イクサラン』もその例外ではなく、マジックのブロックに関して私が聞いた中で最も小さな前提から始まりました。比較のために、『イクサラン』以外で最も小さいものを挙げると、最初の『ゼンディカー』のプレイテストに参加していて、マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterと対戦していた時の「土地ブロック」あるいは「土地祭り」、つまり土地関連ということです。「土地関連」とは文字通りで、主なメカニズムが土地というカード・タイプを参照するものだという意味です。

 ただカード・タイプの土地だけだったゼンディカーという次元(と、その続きである『エルドラージ覚醒』)は、罠、探索、同盟者などの追加を経て、明らかにもっとずっと大きく成長しました(私も転がる巨大な岩を《石の偶像の罠》で入れました!)。

 ウィザーズは2年に一度、1日使う「小提案/micropitch」セミナーを行なっています。そこでは誰もが幹部に対して5分間の発表をできるのです。それらの小提案の中には、新しい世界のものもあり、その多くはすでに皆さんもご存じのものです。

  • 「スチームパンクの世界」は『カラデシュ』と『霊気紛争』になりました。
  • 「エジプトの世界」は『アモンケット』と『破滅の刻』になりました。
  • 「イニストラードを舞台にしたエムラクールのコズミックホラー」は『イニストラードを覆う影』と『異界月』になりました。

 皆さんがご存じないものが、マジックのストーリー・チームのマネージャーであるジェンナ・ヘランド/Jenna Hellandの提案した新しいマジックの設定の「吸血鬼の征服者の世界」です。勇敢なスペインの船乗りが香辛料を求めて新世界を探したことを想像してください。違いは、吸血鬼が新しい血を求めるというところです。彼らはマヤ、インカ、アステカなどを元ネタにした原住民の部族を発見します。交流か、交戦か。文化同士の接触は常に対立を生みますが、魅力的な物語のためには対立は不可欠です。

 何にせよ、それをマジックの大型セット1つと小型セット1つのカード、それにワールドガイドやアートブック、ストーリーのエピソードを作れるだけの資料に組み替えなければなりません。そのための方法にちょっと触れていきましょう。

未来を探る

 『イクサラン』のメカニズムは、当時先行デザインと呼ばれていた工程から始まりました(今は「展望デザイン/vision design」と呼ばれています)。

  • ケン・ネーグル/Ken Nagleとショーン・メイン/Shawn Main(共同リード)
  • ジェームズ・ワイアット/James Wyatt(クリエイティブ代理)
  • ジャッキー・リー/Jackie Lee
  • ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verhey
  • ヨニ・スコルニク/Yoni Skolnik
  • ジェームズ・ハタ/James Hata

 これは、上席コンセプト・イラストレーターのサム・バーレイ/Sam Burleyが描いた『イクサラン』の最初のコンセプト・アートです。

http://media.wizards.com/2017/images/daily/gEJGU9t4GY.jpg

 すでに話題になっている『イクサラン』のいろいろなテーマが描かれています。探検者、距離感や大きさ、スポットライトのように行き先を照らす輝く太陽の光、失われた都市、目に見える先への道。この時点では登場するのが何者かわかっていないため、探検者たちは故意に曖昧に描かれています。このような絵と「吸血鬼の征服者」の物語を出発点として、私たちはセットへと続く様々なメカニズムの反復工程に挑むことになります。

 最初に検討されたメカニズムは、「優勢」と呼ばれるものでした。このメカニズムに関する話はマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterが話した通りで、私がこのチームを引き継いだのは優勢が《マルチェッサ女王》とともに『コンスピラシー:王位争奪』に落ち着いたより後のことでした(彼女の治世の長からんことを)。

 初期の『イクサラン』の会議中に、私たちがホワイトボードに描いた内容はこうでした。

  1. 3つの陣営:吸血鬼、海賊、獣使い
    1. 吸血鬼は主に黒、それから赤と白
    2. 海賊は青と赤
    3. 獣使いは緑と白、もしかしたら青も
  2. 各陣営は他の陣営の何かを欲しがっている
    1. 海賊は吸血鬼の宝を
    2. 獣使いは海賊の船と技術を
    3. 吸血鬼は獣使いの血と土地を
  3. この次元の巨大生物には、恐竜、リバイアサン、クラーケンがいる
  4. 航海の終わり》の再録!

 ここから、各陣営それぞれを掘り下げていくことになります。海賊の会議のホワイトボードをお見せします。

http://media.wizards.com/2017/images/daily/Ez6T4Uymku.jpg

 拡大してもらってもいいですが、一目瞭然でしょう。同じように集中した表現が、吸血鬼や中米的文化についても行なわれました。

土地物件第1のルール

 陣営の話とは別に、私たちは場所感をもたらす「場所」のメカニズムについても反復工程を行ないました。これについての過去の例には、次のようなものがあります。

  • プレインチェイスでは同時には1枚しか有効にならない次元・カードで、はるかにはっきりと「場所」感を打ち出しています。
  • 交易所》は気持ちの上ではアーティファクトというよりも場所です。
  • アーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheが、『ローウィン』でエルフやゴブリンを推す(《ゴブリンの巣穴》のような)場所のメカニズムを試していたのをなんとなく覚えています。これらはもしかしたら《苔汁の橋》などの秘匿土地になったのかもしれません。

 「場所」という概念は、マジックではそのカード・タイプや戦場における働きから、伝統的に土地・カードになっていました。しかしながら、土地・カードに対戦相手があまり影響を与えられるようにはしていませんので、ここに課題がありました。場所はすべての色、(できれば)全てのレアリティにあるべきです。私たちは何か、新しいカード・タイプほども大きくなりうるものを探していたのです。

 『イクサラン』のデザインの初期の、仮に作られた場所メカニズムの概要は次のようなものでした。

http://media.wizards.com/2017/images/daily/pyKEOceEQ6.jpg

 私たちが試した「旅行/traveling」メカニズムは「征服/conquer」と呼ばれるものでした。

〈島での埋葬〉
{1}{U}
エンチャント ― 場所
[カード名]が戦場に出たか征服されたとき、カードを1枚引く。
征服3(クリーチャーをパワーの合計が3以上になるようにタップする:このカードを征服し、その後生け贄に捧げる。)

 これはこのセットには入りませんでしたが、マジックには採用されました。機体のための搭乗キーワードになったのです。

 当時、(私たちが次のマジックのエキスパンションのプレイテストを行なう)フューチャー・フューチャー・リーグには『カラデシュ』と機体という新サブタイプが含まれていました。ここでは搭乗Nは、N体のクリーチャーで搭乗するということを意味していました。つまり、搭乗1の機体は(サイズを問わず)1体の操縦手が必要で、搭乗2の機体はひどいものでした(クリーチャーを常に2体タップしなければならないのです)。デベロップで調整できる部分も少なくなります。搭乗0はフレイバー的に存在できず(私が作った《平和歩きの巨像》は例外です!)、搭乗1は重いけれども払えるコスト、搭乗2は大量にトークンを並べるデッキでしか不可能でした。

 そのため、FFLは『イクサラン』の征服メカニズムを奪いました。その前にも『コンスピラシー:王位争奪』が『イクサラン』の「優勢」メカニズムを「統治者となる」という形で奪っていました(繰り返しになりますが、これについて詳しく知りたい方はマーク・ローズウォーターの記事をお読みください)。

 私たちはくじけませんでした。私たちは場所のためにさらなる反復工程を続けたのです。

〈沈んだ宝の地点〉
{U}
エンチャント ― 場所
(あなたのクリーチャーはいずれかの場所で戦場に出てもよい。あなたがコントロールしているクリーチャーは「{T}:あなたがコントロールする場所1つへ旅行する。旅行はソーサリーとしてのみ行う。」を持つ。クリーチャーは攻撃したりブロックしたり旅行したりしたときに場所を離れる。)
[カード名]を生け贄に捧げる:カードを2枚引く。この能力は2体以上のクリーチャーが[カード名]にいるときにのみ起動できる。

 これは「複数クリーチャー・オーラ」の類の一例です。通常は、オーラはクリーチャー1体だけにつけますが、これなら複数のクリーチャーをエンチャントにつけることができるのです。この場所は1回限りの利益を得るために2体のクリーチャーが必要です。私たちは場所に留まることによる利益も試しました。

〈鳥の極楽〉
{G}
エンチャント ― 場所
(あなたのクリーチャーはいずれかの場所で戦場に出てもよい。あなたがコントロールしているクリーチャーは「{T}:あなたがコントロールする場所1つへ旅行する。旅行はソーサリーとしてのみ行う。」を持つ。クリーチャーは攻撃したりブロックしたり旅行したりしたときに場所を離れる。)
この場所にいるクリーチャーは「{T}:あなたのマナ・プールに色1色のマナを1点加える。」を持つ。

 しかし、クリーチャーが攻撃もブロックもしないでただ場所にいるだけになれば、あまり行動が起こらなくなります。行動を推奨するために、私たちは攻撃する時に場所を離れることによる利益を試しました。

〈成長所〉
{3}{G}{G}
エンチャント ― 場所
(あなたのクリーチャーはいずれかの場所で戦場に出てもよい。あなたがコントロールしているクリーチャーは「{T}:あなたがコントロールする場所1つへ旅行する。旅行はソーサリーとしてのみ行う。」を持つ。クリーチャーは攻撃したりブロックしたり旅行したりしたときに場所を離れる。)
攻撃クリーチャーが1体[カード名]を離れるたび、ターン終了時まで、それは+2/+2の修整を受けるとともにトランプルを得る。

 これはうまく動きましたが、新しいカード・タイプを発明したわけでも奇妙なキーワード処理を正当化したわけでもありませんでした。これらは、クリーチャー・オーラに近いもので、つまり強力にするのは難しいということです。これらは個別の利益をもたらすだけなので、デザイン空間は浅いのです。私たちは差別化のために次のようなカードを作ることになるでしょう。

〈極楽鳥の安息地〉
{2}{G}
エンチャント ― 場所
(あなたのクリーチャーはいずれかの場所で戦場に出てもよい。あなたがコントロールしているクリーチャーは「{T}:あなたがコントロールする場所1つへ旅行する。旅行はソーサリーとしてのみ行う。」を持つ。クリーチャーは攻撃したりブロックしたり旅行したりしたときに場所を離れる。)
あなたがコントロールしているクリーチャーは「{T}:あなたのマナ・プールに色1色のマナを1点加える。」を持つ。
この場所にいるクリーチャーは「{T}:あなたのマナ・プールに色1色のマナを2点加える。」を持つ。

 必要なルール上の処理や全体としてのゲームプレイの不細工さを考えると、これは非常に魅力的だとは言えません。

 チームはここに書いた以外にも多くのアイデアを試しました。中にはクリーチャーが(戦場にいるままで)出たり入ったりできる戦場の「領域内領域」を含むものまでありました。

 もっといい方法があるはずです。

新世界の征服

 ある日、私は場所の掘り下げについて再検討し、そして別の表現を思いつきました。私が知っている限り最も芳醇な「発見」方法を使った新しいやり方を試しました。そしてこのような仮カードを作ったのです。

〈未知の島への道〉
{1}
アーティファクト
あなたがコントロールしていて飛行を持つクリーチャーが1体攻撃するたび、あなたは{2}{U}を支払ってもよい。そうしたなら、カードを1枚引き、[カード名]を変身させる。


〈勇敢な新しい島嶼〉
土地 ― 島
{T}:あなたのマナ・プールに{U}を加える。

http://media.wizards.com/2017/images/daily/L3FX5a5D8P.png

 宝の地図を見つけ、その地図には大海に隠れた島が示されているけれど、空を飛べなければ到着できない、という流れになっています。私はこれをジェンナに見せ、それから他のクリエイティブの人たちに見せたところ、全員が気に入ってくれました。ジェレミー・ジャーヴィス/Jeremy Jarvisは、10~20枚の異なった地図の絵を作ることへの危惧を示しました(「地図の端を燃やすことはできるでしょうね」)。そこで、私たちはオモテ側を「道を示す」ことができるものならなんでもいいことにしました(地図、方位磁石、天測儀……)。

 こうして全員が、これが『イクサラン』の「新しいあるいは失われた場所を見つける」の表現になりうることに同意しました。『イクサラン』のリード・アート・ディレクターのシンシア・シェパード/Cynthia Shepperdはこれに惚れ込み、そしてプレイヤーがこのカードを裏面で普通の土地のようにプレイするようなことがないようにするためのカード枠を検討し始めました。それによってアートの予算は増えました。

 こうして、『イクサラン』に変身カードが入ることになりました。変身には広いデザイン空間があります。『イニストラード』で導入されたとき、このメカニズムは「闇の変身」のために使われました。『イクサラン』は同じようにその焦点を「発見」にまとめようとしました。『イクサラン』の変身カードは、もとは道を示すもので、土地に変身します。これによって私たちは、オモテ面にマナ・コストを持たせ、裏面に変身する条件つき誘発を持たせることで、極度に強力な土地をデザインすることができるようになります。

 今回のプレビュー・カードは、デザイン・チームがジェンナの元の前提から文字通りのトップダウンで作ったものと、この新しい場所メカニズムを組み合わせたものです。あなたの出身世界は、《征服者のガレオン船》に乗った吸血鬼の征服者に間もなく攻撃されることになるでしょう。

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 ここでは半分しかお見せするつもりはありません。それでも、このカードについては色々なことが明らかになっています。

1.これは機体です! つまり『イクサラン』では公式に『カラデシュ』で導入され『霊気紛争』に引き継がれ、『アモンケット』と『破滅の刻』では登場しなかった機体というサブタイプが戻ってくるのです。『アモンケット』で、私たちはルクサ河に浮かぶカヌーや遊覧船を作ろうとしましたが、それだけだったのでボツにしました。とはいえ、『イクサラン』のワールドガイドにはボートや帆船が一杯ですから、『イクサラン』の機体は船です。『イクサラン』の機体・カードは『カラデシュ』よりも少なくなります。

2.《征服者のガレオン船》は、テーマ的には吸血鬼の征服者の船です。大きくかさばり、大海を越える長旅に必要なだけの荷物を運んでいます。海賊船は対照的に小さく素早く、強襲するのにぴったりです。

3.これが2/10なのは、テーマ的に、これで攻撃してほしい(「出港」)けれども戦闘で死亡してほしくはないからです。

4.搭乗4は重い搭乗コストです。これは大きなボートなのです。合計パワーが4以上必要なのに、わずか2に下がるのは、この機体で攻撃することの潜在的動機があるということを示しています。

5.変身できるのです! 《征服者のガレオン船》は初めての変身する機体です。

6.このカードが奇妙にも追放を経由して変身するのは、単純に裏返ったら(「変身したら」)、0/0の土地になり、死亡してしまうからです。これはパワー/タフネスが印刷されていない機体が搭乗状態になった場合のルールの処理によります。

 さて、それでは《征服者のガレオン船》が岸に乗り付けて変身したら何が起こるのか見てみましょう。

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 このカードは、初期の征服者たちが船を駆り、岸に乗り付け、そして自分たちの船を解体して木材にし、最初の入植地を作るという流れを示しています。後戻りはできないのです!

 最初は、裏面は新しい次元に入植するために望むクリーチャー・トークンを生成するというものでした。しかし、利益としてのトークン生成をこのセットの他では使いたくありませんでした。また、《ヴォルラスの研究室》のような「クリーチャー・タイプを選ぶ」トークンはアートにするのが困難です。最終的には、新しいものが入ってくる港のような感じでカードの流れを強化する(ルーター能力、ドロー、《新たな芽吹き》)に落ち着きました。入植地(マナ基盤)が大きくなればなるほど、流入してくる品物も良くなっていくのです。

出発して見つけましょう

 今日話すことはこれで全部です。『イクサラン』のカードをできるだけ早く手に入れたいなら、お近くのお店で9月23~24日に開催されるプレリリースにぜひ参加しましょう。店舗・イベント検索を使ってお店を探すことができます。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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