アヴァシンの街、その1

更新日 Daily Deck on 2012年 4月 9日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

まずはこれを。


 遠い昔、「物語の初めはどうする?」という課題が執筆の授業で出されたことがある。答えは、もっとも派手で興奮するような面を最初に出し、読者の心をわしづかみにして離さないようにするべきだ、と思われた。さて、今回はアヴァシンの帰還の最初のプレビューであり、今後3回に渡ってこの新セットのデザインについての話をすることになる。

 話すべき内容はいくらでもあるが、執筆の先生に教わったことを踏まえて、まずは諸君の心をわしづかみにするようなものから始めることにする。その先生から教わったことは他にも少しばかりあるので、今回の話の書き方は少しばかり弄ってみた(アニー・ホールやパルプ・フィクションといった映画が好きなら、楽しめるだろうね)。

 今、諸君が目にしたものこそが奇跡――ここで言う奇跡ってのは、メカニズムの名前ってだけでなくカードに書かれている内容もそう――だ。奇跡が長く奇妙な経過を経てカードに印刷されているものになったのは、諸君も見ての通り。今回のコラムでは、この経過について、アヴァシンの帰還のデザインの最初の一欠片を見せながら話をさせてもらうことにしよう。

    奇跡こそすべて

 奇跡の、そして今回のプレビュー・カードのデザインについて語る最初の一言は――そうだな。アルファ版のデザインから――いや、テンペスト? 神河物語? アヴァシンの帰還? どれも悪くはないが、2008年、テネシー州メンフィスでのことから話し始めることにしよう。


 エルヴィスの裏庭(プレイヤーのディナーはグレイスランドだったが、文字通りというわけではない)でマジックの世界選手権が開催された時だ。ガンスリンガー(イベントで人々を相手に対戦するという出し物)のために呼ばれた中に、私とリチャード・ガーフィールドがいた。イベントの開始前に、リチャードはガンスリンガー用のデッキをデザインしたと私に言ってきた。そのデッキに含まれているカードはどれも新規のもので、彼自身のデザインによるものだった。そのデッキを私に見せ、そしてカードを調整して欲しいというのだ。私は喜んで飛びついた。リチャードとともにマジックのカードをデザインするのは、正気でいられないほど楽しかった。リチャードは興味深い方針を示していて、そのアイデアに触発されて私もいつも以上のアイデアを閃かせた。週末の間、私は彼とそのデザインの方向性について語り合ったのだ。

 そして、週末の終わりに、私はリチャードのガンスリンガー用デッキを元にした新しいメカニズムの着想を手に入れていた。ポケットに入れたそのアイデアは、いつか時を得てセットで使うことが出来るに違いないと思ったのだ。


 本題の話が起こったのは、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストの開発部に入社してシアトルに引っ越すことにしたときだった。デベロッパーとして入社した私は、当時の開発担当副社長マイク・デービス/Mike Davis(ちなみに彼の名前は《ジェイムデー秘本》の元になっている。彼のフルネームはJ. Michael Davis、略すとJ.M.D.だ)に、私はデベロップよりもデザインの能力の方が秀でていると言った。しかし、彼はデザイナーならリチャードがいると言った。彼らが求めているのはデベロッパーだったのだ。


 そして、デベロッパーの職を得た私だったが、デザインする機会をずっと求め続けていた。そして、その機会が訪れたのはテンペストの時だった。リチャードを説得してデザイン・チームに入ってもらい(リチャードがその前にデザインしたのはアラビアンナイトの時で、すでに何年も時間が流れていた)、その後ろ盾を得て機会を手に入れたのだ。そのセットは秋の大型セットで、思い出してみると正気の沙汰ではなかったが、私がデザイナーであるということを証明する機会を得た私には恐れる余裕などなかった。

 いろいろなアイデアがあったが、そのなかで一番のお気に入りはカードを引くことによって誘発するというものだった。引いた時に何かをするという仮想のカードだ。全体としては弱いカードに付加価値をあたえたり、あるいは軽すぎるカードに何らかの弱点をつけたりするものだ。このアイデアによってデッキ構築に完全に新しい一面が加えられ、またカードを引くことそのものが非常にエキサイティングなものになった。

 その一例を挙げよう:

《取り除き》
1R
インスタント
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。[カード名]はそれに5点のダメージを与える。
ドロー・トリガー ― あなたが[カード名]を引いたとき、これはあなたに3点のダメージを与える。

 今考えると、マイク・デービスが私のことをデザイナーだと理解せずにデベロッパーだと決めつけたときにこのカードを見せればよかったのかもしれない。イカしていて、独創的で、ぶっ飛んでいる。

 ドロー・トリガーというメカニズムには大量の問題があった。その中でも最大のものを挙げるなら、対戦相手がこのカードを引いたことをどうやって知ればいいのか、だ。〈取り除き〉に関して言えば、このカードを引いたとしてもほとんどの場合公開したくないと考えるのが自然だ。対戦相手に見せなければ唱えられないという状況はあり得るが、それでも引いたことによって即死するよりは唱えられない方がマシというものだろう。

 テンペストのデザイン・チーム(リチャード/Richard、マイク・エリオット/Mike Elliott、チャーリー・カティノ/Charlie Catino、私)は脳みそを振り絞った。最後に、私が思いついたのは裏面を変えるというものだった。そうすれば引いたと言うことが一目瞭然になる(1996年当時はまだスリーブは今ほど一般的ではなかった)。私の解決策はあまりにも過激だったので、他の方法を探すことになった(マークは何と1996年にメカニズム的に裏面を活用すると言うことを考えていたのだ! ババーン! 客観的に見て、ね)。


 ブライアン・ティンスマン/Brian Tinsmanがビジネス・マネージャーとして開発部に加わった。彼はMBAのビジネス・クラスを卒業し、市場調査部の一員として(当時は市場調査が一つの部として存在していたのだ)ウィザーズ・オブ・ザ・コーストの一員になった。ブライアンはビル・ローズ/Bill Roseの知己を得、開発部ビジネス・マネージャーという職は彼のために創設されたのだ。

 私と同じように、ブライアンが本当にやりたかったことはデザインだった。彼はよく、ビジネス・クラスの講義の時間をつかってマジックのカードをデザインしていたと冗談を言っていた。開発部に足を踏み入れると、彼はカード・デザインをビル・ローズに提出し、そしてマジックの首席デザイナーになったのだ(ビル・ローズは長年にわたり、副社長兼首席デザイナーを務めていた)。ブライアンはカードだけでなく、セット全体をビルに提出していた。ビルはそれに赤ペンで校正を入れ、ブライアンに返した。

 ブライアンの仕事は、ビルが彼をジャッジメントのデザイン・チーム(彼とリチャードと私)に投入することで報われることになった。ビル、リチャード、私は他の仕事で忙しく、このセットのデザイン・リーダーを勤めたのはブライアンだった。実際のところ、その肩書きはほとんど肩書きだけのものだった。ビルが決定し、ブライアンはそのファイルを守るのが仕事だったのだ。ブライアンがよく言うとおり、「肩書きを得た」のだった。

 ブライアンの開発部でのキャリアはデザインの舵取りから始まり、諸君に知られるようになる前に大型セット・神河物語のデザイン・リーダーを務めた。私はそのデザインに関わっていなかったが、ブライアンとはいい友人になっていたのでマジックのデザインについて一日中話し合っていた。ある日、ブライアンは私のところに、凄まじいアイデアを持ち込んできたのだ――カードを引いた時に効果を持つカードについて、どう思う?


「Roll」のデザイン・チームが組織されたとき(イニストラードは「Shake」、闇の隆盛は「Rattle」だった)、分かっていたことを挙げると:

  • このセットはイニストラード・ブロックの第3セットである。(これは完全に正しかったわけではない。それについては来週話そう)
  • このセットは独自のメカニズムを持ち、ドラフト環境を再構築するような大型エキスパンションである。

 それが全てだった。全てだったのだ。

 デザイン・チームのメンバーは:

ブライアン・ティンスマン/Brian Tinsman(リーダー)
 おもしろい話がある。アヴァシンの帰還の発売を以て、ブライアンと私はそれぞれ大型エキスパンション(基本セットを含まない)の半分でリーダーを務めたことになる。ブライアンはマジック・デザイン史上の巨匠の1人である。彼は環境を推し進めることが好きなデザイナーとして知られており、アヴァシンの帰還もその例外ではない(今回は奇跡の話をするのだ)。アヴァシンの帰還はブライアンの最後のデザインであり、デザイン・リーダーを勤めた最後のセットとなる。彼は他のゲーム・デザインの可能性を求めて、ウィザーズを去ってしまった。彼の前途に幸あれと祈るとともに、彼がこのオフィスからいなくなったことを寂しく思う。

マーク・ゴットリーブ/Mark Gottlieb
 最近、彼はマジック・デザイン・マネージャーに就任した。つまり、彼は私を助けるマジックのデザイナー(ケン・ネーグル/Ken Nagle、イーサン・フライシャー/Ethan Fleisher、ショーン・メイン/Shawn Main)のマネジメントを統括する責任者になったのだ。これによって私はマジックのデザインに費やせる時間が増えた。マークをデザイン・チームに招くのが好きなのは、率直に言って、彼がデザイン能力に秀でているからである。彼は他のデザイナーよりも長い期間マジックのデザインをしており、彼自身のペースというものを掴んでいる。マークと私は来年のセットに関して史上初の共同デザイン・リーダーを勤めている。つまり、彼はこのアヴァシンの帰還にあまり時間を割けなかったことになるが、最初の一時期にしか関与できなかったにもかかわらず、その功績は充分に立証されている。

デイブ・ガスキン/Dave Guskin
 デイブはプログラマーとしてウィザーズに入社し、自力で開発部のドアをこじ開けた男だ。当時、彼はマジックのデジタル・プロダクトの仕事をしていたが、我々は可能な限り彼をデザイン・チームやデベロップ・チームに招いていた。実際、彼は今後のマジックのセットではデベロップ・リーダーまで務めている。デイブはゴットリーブに代わってこのチームに入ることになった。その能力はめざましいものがあった。デベロップの視点を持った人間をデザイン・チームに招くのはいい効果を持つものだが、デイブはそれと同時にイカしたカードを大量にデザインしてくれたのだ。

ケン・ネーグル/Ken Nagle
 ケンはいわばデザイン機械だ(いや、別にファイレクシア化してるというわけじゃない、まったく別物だ)。ケンをデザイン・チームに招けば、デザインの泉を手に入れたようなものだ。汲めば汲むほどにあらゆるいいデザインが湧きだしてくる。もちろん、アヴァシンの帰還も例外ではない。


ビル・ローズ/Bill Rose
 このコラムで出てくる場合、ビルの役回りは開発担当副社長としてのことが多い。だが、ビルはキャリアの長いデザイナーでもあり、大型セットのデザイン・リーダーを勤めた回数はブライアンと並んで2位だったのだ。ビルは副社長としての仕事に忙しく、可能なときにしかミーティングには顔を出せなかったが、そのわずかな時間でもデザインに及ぼした影響は大きかった。ビルはこのセットの天使テーマの大ファンでもあり、我々がその方針に定めたのは彼の影響が大きいのは言うまでもない。

マーク・ローズウォーター/Mark Rosewater
 最近、私は全てのエキスパンションのデザイン・チームに所属している。このセットは今までに比べても方針決定などで時間がかかる、厳しいセットだった(詳しくは次回)。ブライアンは独創的なデザインに定評があるので、今回は私は常識的な側に立とうと決めたのだ。

 デザイン・チームの最初のミーティングで、ブライアンは、イニストラード・ブロックの延長だと自然に受け取られ、かつメカニズム的に独自の大型セットにするにはどうしたらいいか考えるのが我々の仕事だと言った。クリエイティブ・チームから提案された、アヴァシンという名の天使について考えることにした。彼女がいなくなったことがイニストラード世界の人間が窮地に陥った原因なら、人間が救われるためには彼女の居場所を見つけなければならない。


 パンドラの箱の物語から、《獄庫》が生まれた。アヴァシンはその中に囚われており、何かが彼女を解放する、と同時に一緒に閉じ込められていた悪魔の群れも解放されるのだ。このフレイバーを表すために、クリーチャーが解放されたというイメージを示すメカニズムが必要になる。そこで私が閃いたのは、遠い昔に世界選手権で見たリチャードのデッキから手にした着想だった。そのメカニズムの名は「禁断」。


 我々は禁断メカニズムの調整に何ヶ月かを費やした。あらゆる奇妙な問題を内包した、奇妙なメカニズムだった。デベロップは禁断に非常に懐疑的で、このメカニズムは根本的に壊れていると言った。ブライアンはそのメカニズムを気に入っており、強く推していた。

 やがて、禁断は使い物にならないと言うことが明らかになってきた。デベロップがデザイン・チームの元に訪れ、疑問点をぶちまけてきた。ブライアンは禁断の支持者がデザイン・チームの他にいないことを悟り、今まで彼がしなかったこと――メカニズムを没にするという判断を下したのだ。

 私がよく言うように、メカニズムを没にするのは後で蘇らせる前触れに過ぎない。しかし、今回はそうではない。禁断メカニズムは二度と日の目を見ることはない。その内容をなぜ公開しないのかというと、私はいつか正しい形で使う方法が見つかるかも知れないと思っているからだ。しかし、まあ、デザイン上このメカニズムは死んだ、とはよく言うが、今回だけは本当に死んだと言っていいだろう。


 ドロー・トリガーの問題を解決するためにテンペスト当時に行なわれたことは、何が本当に問題なのかを抽出することだった。最大の問題は、公開することで有利にならないなら、引いたプレイヤーが公開することは保証できない、ということだった。誰も見ていないなら、イカサマをするのは簡単だ。つまり、不利になるドロー・トリガーは役に立たないということになる。


 問題は不利になるドロー・トリガーにとどまらなかった。「カードを引く」というドロー・トリガーを持つカードを引いたとする。ほとんどの場合はカードを引きたいと思うだろうが、それがライブラリーの最後の1枚だったら? このように、効果が有利になるか不利になるかというのは状況によって違う。カードの組み合わせによって、奇妙なことが起こるのがマジックなのだ。つまり、ドロー・トリガーは選択制でなければならない。公開しなかったプレイヤーを捕まえることはできないので、公開――そして誘発を、してもしなくてもよくするしかないのだ。

 最後の問題を解決することはできなかった。プレイヤーがカードを引いた時に何が起こるか? プレイヤーがカードを引き、「おっ」と言いながらすでに手札にあったドロー・トリガー持ちのカードを公開するという不正をどうやって防げるか? 解決策は見つからなかった。そこでドロー・トリガーに数ヶ月取り組んだ後、テンペストのデザイン・チームはそれの使用を諦めることにしたのだった。


 ブライアンはドロー・トリガーというアイデアに激しく興奮していた。全てのマジック・デザイナーが一度は思いつき、そして実際に形にしようとすると様々な可能性が浮かぶのだ。はっきりさせておくと、マジックがもしコンピューターでプレイされていて、信頼できる第三者が確認しているのであれば、ドロー・トリガーは最高に働いてくれるだろう。しかし、現実はそうではない。

 ブライアンがドロー・トリガーの長所を賞賛し終えた後、私はテンペストのデザインの話をした。彼は「じゃあ、これはやったのか?」と聞き、私は「やった」と答える。そのやりとりが数回繰り返された。

 まだはっきり言っていなかったなら言っておこう、ブライアンは強情っ張りだ(マジック・デザイナーにはよくあることだ)。彼はドロー・トリガーを諦めようとしなかった。彼はなんとかしてそれを使えるようにしようとしていたが、テンペストのデザインでやったように、巧くはいかなかった。やがて、ブライアンでさえも諦めることになり、私もしぶしぶ同意した。


 禁断が死んで、デザインにぽっかりと穴が空いた。何かその代わりになるものを探さなければならなかった。《獄庫》から解放されたクリーチャーを表す他の方法を探したが、数週間空回りが続いた。そのとき、ブライアンは問題解決にもう一度挑戦したいと言ったのだ。


 禁断メカニズムの最高の点の1つに、カードを引くことにドキドキできるようになるということがあった。ブライアンは本当にそれを楽しんでおり、メカニズムが働いたときにはそのゲームに今までマジックに存在しなかった大きなドラマが起こるのだ。禁断の代わりになるものは、物語的に完璧でなくても、セットを強く印象づけるものであればいい。他にカードを引くことに興奮できるようにする方法はないだろうか?

 ブライアンは目をきらきらさせて私を見つめてきた。


 伝説によると、アレキサンダー大王はフリーギアを訪れたという。首都の中央広場に、複雑な結び目で絡みつけられた牛車があった。その結び目は先の為政者ゴルディアスの手に因るもので、ゴルディアスの結び目と呼ばれていた。曰く、ゴルディアスの結び目をほどいた人間が、この王国の王になるだろうと。

 ゴルディアスの結び目をほどこうとした男は何人もいて、不可能に挑戦して王になろうと遠くから訪れる者もいた。しかし誰ひとり成功する者はいなかった。――アレキサンダー大王が訪れるまでは。

 牛車を解き放とうと、アレキサンダー大王は結び目を慎重に調べた。そして少し考えた後で、アレキサンダー大王は剣を抜き放ち、そして結び目を切り落とした。結び目はほどかれ、アレキサンダー大王がその地の王になったのだった。


 ブライアンはドロー・トリガーに執着し、そしてカードを引いた時に誘発するだけでいいと判断した。イカサマの対策はイベント規定に任せればいい。ゲームのルールはゲームの枠内で管理できるし、それがデザインに必要なことだ、充分だ、と。


 私はブライアンの決定に驚かされたが、同時にその決断を賞賛した。彼は問題解決のための斬新な方法を見つけたのだ。私にとっての大問題は、メカニズムとこのセットのフレイバーをどう調和させるかだった。天使達のセットにおいて、ドロー・トリガーはどういう意味を持つのか? この問題を解決したのが、メカニズムの名前「奇跡」だった。


 マジックは発売してから何ヶ月も経っていたが、まだプレイは続けられていた。リチャードはフィラデルフィアでゲーム仲間によるプレイテスト・グループを組織していた。プレイテストが進み、リチャードはカード・セットに加える修正のためのフィードバックを手に入れることが出来ていた。

 ある日、プレイテスターの1人がリチャードを訪れ、「このカードには問題があるよ」と言った。

「どういう意味で?」

「んー、このカードを使ったら、相手が次のターンに負けるなんて、強すぎるよ」

 リチャードはそのカードを見せてもらった。文章欄にはこう書いてあった。

「Your opponent loses next turn(あなたの対戦相手は次のターンを失う/次のターン負ける)」

 リチャードはその誤解を見て笑い、カードを書き換えた。

「Take an extra turn after this one(このターンの次に追加のターンを得る)」

 そのカードの名前は、もちろん《Time Walk》である。


 最初の版では、奇跡はカードの本体の効果に組み合わせられる小さな選択的効果が付け加わるものだった。たとえば、《神の怒り》型のカードで、ドロー・トリガーによってあなたのクリーチャーの中の1体がそのターン破壊されないようになる、とか。元の奇跡も、引いた時に誘発するものだった。

 「デヴァイン」(デザインとデベロップの中間)の時点で、デザイン・チームはデベロップ・チームからのメモに基づいて奇跡の役割を変更することにした。追加の能力を与えるのではなく、コストを下げるのだ。デベロップに両方の版が渡され、選択はデベロップの側にゆだねられることになった。デベロップ中に施されたもう一つの変更点は、奇跡がそのターンの最初のドローでしか使えなくなったということである。


 奇跡を作るにあたっての鍵は、プレイヤーが今っ引きで興奮する効果を選ぶことだった。追い詰められていれば、プレイヤーは奇跡を祈り、何か凄まじいことが起こるのを願うことになる。鉄板と言える効果は、追加のターンを得るものだ。奇跡の存在によって、プレイヤーはで《Time Walk》を唱えて1ターンを得るという夢を見ることができるのだ。

 これが、今回のプレビュー・カードが出来るに至った経緯である。

《時間の熟達》 イラスト: Franz Vohwinkel

 今回の話は、メカニズム1つに関するものだ。アヴァシンの帰還のデザイン全体に関して言えば、まだまだ話したりないことがある。次回、その2では、何を作ろうとしているのか分かっていない状態でどう踏み出したかについて語ろう。

 その日まで、ゴルディアスの結び目を簡単に投げ出すことがありませんように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)



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