ロードの力

更新日 Daily Deck on 2012年 3月 23日

By Zac Hill

 本日私は一風変わった、ロード、つまり他の同じタイプのクリーチャーに何かしらの能力を与えるクリーチャーを指して開発部がおおまかに名づけた用語について語ろうと思う。闇の隆盛では以下の4つを登場させ――《戦墓の隊長》、《ドラグスコルの隊長》、《流城の隊長》、《常なる狼》――、これらとはまた別のものを私たちは毎年のように印刷している。歴史的に見て、それらは最もポピュラーなカードのひとつで、私たちはほとんどいつでも新しい種族や階級をデビューさせ、それらにロードとしての扱いを与えようと努力している。私が答えようと思っている疑問はこれだ。「なんで?」

    バニラの飾り付け

 マジック:ザ・ギャザリングのカード《真珠三叉矛の人魚/Merfolk of the Pearl Trident》、この何の能力も持たない1/1のクリーチャーは、世界選手権での勝利のうち1勝を取るという経験をしている。

《ゾンビ使い/Zombie Master》 アート: Jeff A. Menges

 リチャード・ガーフィールドがバニラ・クリーチャーをより奥深いものにするために、どのようにして最初のロードをリミテッド・エディション(アルファ)に加えたのか、ということについて、マーク・ローズウォーターが今週の初めに語っていた。《ゾンビ使い/Zombie Master》や《アトランティスの王/Lord of Atlantis》、《ゴブリンの王/Goblin King》によって強化されるクリーチャーたちのほとんどがマジック界でもっとも単純なものであるのは、決して偶然ではなかった。

 それは極めて良いゲーム・デザインだ――そしてその影響こそが、ほぼ20年にわたって存在し続けるマジックの今をより大きなものにするのだ。トレーディング・カードゲームに見られる顕著な特性のひとつは、急に複雑なものへ向かう傾向がある、ということだ。想像の中で君たちは、君たちの持つそれぞれのカードがどちらかというとシンプルなものであって欲しい、と思っているが、それらの間にある相互作用は繊細で入り組んでいて強いものであって欲しい、とも思っている。それが何を意味するのかというと、ロードを印刷するたびに、突然他の同じタイプのクリーチャーにわずかな奥深さを与えている、ということだ。本当に突然、以前はつまらないカードの巨大な刈り跡だったものが、考慮するに足るものになる。もちろん、《真珠三叉矛の人魚/Merfolk of the Pearl Trident》すべてが強力になろうというわけではないが、ほんの少し大きくなった場合どれだけの数のカードが有用なものになるのか、ということが驚くべきことなのだ。

 と言っても、重要なのはサイズの底上げだけではない。近頃私たちが印刷するロードのほとんどは、強化されるクリーチャーに何らかの能力を付与する。たびたび、その能力はレーダーに引っかからないようなカードを、劇的に強化する。例えば、最近行われたプロツアー・闇の隆盛でジョン・フィンケルが使った青白スピリットのカギとなる相互作用は、《地下牢の霊》に呪禁を与えるために《ドラグスコルの隊長》を使う、というものだった。一時的な監禁である効果が、監禁するクリーチャーを除去できない場合、はるかに強力なものになるのだ!

 本質的に、カードをどうにかして使って遊ぶのは楽しいことだ。ロードは、それなしには基準を満たさないたくさんのカード全部と真面目に向き合う、ということを君にさせることによって、それらをプレイに耐え得るものにするのだ。

    線路は続くよどこまでも

 デッキ構築というものは本当にハードだ。

 また本当に、本当に楽しいものだ。

 マジックに感じる最大の不満のひとつは、私の考えでは、真新しいカード・セットを見たのに湧き上がるべきアイデアがない時だ。そのカードたちは強力に見えるし、どこか深いところに埋まったクールなデッキがあるように見えるが、しかしそれは可能な選択の全てを理解する方法を見つけ出そうと挑戦しているに過ぎない。例えば、大型セットには229種類のカードに加えて20種類の基本土地がある。小型セットでは145種類が適量だ。これはスタンダードには一番少ない時でさえも700種類以上の取り扱うカードがある、ということだ。一番多い時には――その環境の大型セットの数によるが――その2倍以上にもなり得る。そのカードの中から、君たちはデッキ構築に必要な20種を選ぶだろう。最もクールな効果を、何度も引き当てることができるよう、複数枚入れておきたいはずだからだ。

 言い換えると、デッキを構築するということは、その大部分が取り除くことである、ということだ。君たちがデッキに入れるカードを選ぶということは、必然的に、デッキに入れない多くのカードを選ぶということなのだ。

 その決定は気が遠くなるほどの難題だ。幾度となく私は、私のアイデアが良いものなのか悪いものなのか分からないじゃないか、といった類の諦めや、そのデッキがきちんと機能するのかどうかはっきりと分からないうちは、デッキの全てのカードを埋める努力をしたくない! と思っているのに気がついたことがある。

 ロードは、この問題を複数の軸から解決してくれる。ひとつは、それらは方向性を与えることだ。君たちが「エルフをたくさん唱えたら、そのご褒美をあげよう!」と言っているやつを見かけたら、君たちは自然と「おお、クールだな、私が何か素敵なエルフを持っていたら見せてくれよ」と口にする。それはまた、評価するのも比較的簡単だ。「ロードを唱え、それからそのタイプのクリーチャーをたくさん唱える」デッキが、熱意を削ぐようなものなのかどうかは、素早く見定めることができる。それゆえ、ロードは試そうとしているプレイヤーに手を出しやすいアーキタイプを与えることにより、そのセットの助けとなるのだ。

 ロードはまた、その反対側にある問題にも取り組んでいる。もし仮に私たちがクールなリス・ロードを基本セット2022に入れるとすると、それは、まだ/こんなの/あったのかブロック(いや、これは公式なセットのコードネームではないよ......まだね)の全てのリスが、その時少なくとも見た目にはより興味をそそるものになる、ということを意味する。それは最適な戦略かもしれないし、そうでないかもしれない。だが、少なくとも試すべきものではある。

《アトランティスの王/Lord of Atlantis》 アート: Melissa Benson

 私たちは真っ直ぐな道のような経験を「レールの上にいる」と表現する。もちろん、多くのセットが君たちをプレイヤーとして「レールの上に」置くようなら、それは悪いことだ。なんといっても、マジックは発見と、可能性の限界を突き進むことに向かっているものなのだ。私は全員のデッキがそのセットにちなんだものになるようなセットを作りたくない。それはデッキ構築の段階を全て破壊してしまうからだ。しかし、「よし、そらいくぞ、わかった!」と簡潔に言うようなセットも作りたくない。私は、テスト段階で私が思いつくようなデッキよりもより良く、よりおもしろく、より入り組んだデッキをプレイヤーたちが組むだろうと、確信している――それでもプレイヤーたちにそのスタート地点を与えるのが私の責任だとも思う。私は2分か3分プレイして止めてしまったゲームの数を伝えることはできない。全部忘れるからだ。それは良い経験にはなり得ない。いくつかのレールを与えてくれるロードを使うことによって、私たちは最初からより健全なデッキ構築の体験ができるのだ。

 ついでにというわけではないが、これはリミテッドにおいても明白でないレベルでは起きている。私たちは、ロードを初手にピックしやすいようなフォーマットをデザインしようと常に努力している。それなら、新しいセットが提供するに違いないものを君たちが知らなくても――なにしろ、まだ見たことのないカードばかりなのだから――、(例えば)吸血鬼のロードと他にたくさんの吸血鬼をピックして、非常にしっかりしたデッキを組み上げられる十分な可能性がある。どちらのケースにおいても、フォーマットを消化しやすいものにするための方向性を得るのに、ロードはうってつけなのだ。

    ふれあいコーナー

 このように、ロードはデッキ構築という行為を平易にすると同時に、その一方で新たな複雑さを生み出す。言い換えるなら、それらは私たちのためにたくさんの働きをしてくれる。複雑さや利用しやすさといったデベロップの原理とは全く関係ないところにロードを作る最大の理由があると言えるかもしれない。

エルフの大ドルイド》 アート: Karl Kopinski

 それについては、私たちはここDailyMTG.comで多くを語らないが――なぜなら、結局のところ、それはおのずとわかる種類のものだからだ――、デベロップの最も重要な役目のひとつは、それを持っていることが自慢になるようなクールなマジックのカードを作り続けることだ。君たちは判断にどんな基準も用いることができるが、実際にその量を決めるのは難しいものなのだ。

 それでも私たちがよく知っているのは、年月を経てたくさんの人がたくさんの部族デッキを組んできたことだ。ゾンビ、エルフ、ゴブリン、マーフォーク、戦士、シャーマン、ウィザード――いやはや、射手でさえも! このことが、特に基本セットで、私たちがエキサイティングなそれらのデッキに、ぴったり収まるであろう新たなカードを与えようと努力する理由だ。その典型例が《エルフの大ドルイド》だった。《エルフのチャンピオン》と《ティタニアの僧侶/Priest of Titania》がどちらも人気のあるものならば、二つを合体させるのはどうだろうか? 私たちにとって幸いなことに、それは非常に好意的に受け入れられた。

 さらに、その経歴のおかげで私たちは、みんながお気に入りのデッキに入れて遊びたいと思うようなロードを作るきっかけとなる、とても面白いアイデアを得る。それも大切なことだ――私たちは、例えば、君たちの他の選択肢よりも粗悪なゴブリンのロードを作りたいとは思わない。オンスロートからはるばる戻って来て、エルフやゾンビデッキのいくつかの派生型を作っている人が何人かいる、ということを私は知っている。私たちからすれば、それらがそんなにも長い時間にわたって続いていることを嬉しく思うし、今日を含めて喜んでプレイされるようなカードを作り続けたいと、強く思う。

 つまり、ロードは、スタンダード環境で与えられた機会にたまたま人気の出たデッキ、という域を越えて、ある種の調和をもたらすのだ。ある意味では、それは永遠のものだ。そしてマジックのように長い歴史を持つゲームにとって、それは私たちが認知し、報いるための良いアイデアなのだ。

    ロードは私を支配する

 ロードは強さを創出する。ロードはレールを与える。そしてロードは報酬を運ぶ。初心者にもベテランにも等しく需要を満たし、構築とリミテッドどちらの環境でも価値のある働きを成す。全ての評価に関係して、一番重要なものは、君たちが気に入ってくれることだ。言ってしまえば、私たちはいつだって君たちにお便りを押しつけたいと思っているのだ。いままで印刷された中でお気に入りのロードは? もう少しだけ愛されるべきクリーチャー・タイプは? 私たちがこれまでまったく扱ってこなかったロードの探究で、君たちが見てみたいところは? このページの最後にあるリンクをクリックするか、Twitterで私(@zdch)をとっ捕まえるかして、ぜひ知らせてくれ。

 それではまた来週、(うまくいけば)カードの描画がテーマになっていて、私がそれと向き合っているだろう時に。

Zac

(Tr. Tetsuya Yabuki / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)



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