印象的なプレイ

更新日 Daily Deck on 2012年 4月 6日

By Zac Hill

 《獄庫》の週を楽しんでくれているかな!

 毎ターン問題を消し去る3マナのアーティファクトについて、私が言えることはあるけれど、残念ながらただ羅列になるだけだ。それは本当に見事なアートだとか、その中には何か本当に恐ろしいものが潜んでいるとか言えるけれど、それではほとんど記事の体をなさない・・・。

 その代わり君たちに語りたいのは、こっちの《獄庫》だ。


 もっと具体的に言うなら、この《獄庫》が作られるに至る事の次第を語ろうと思う――そして、私たちがこのほぼ15年間に渡ってやってきた方法とはほんの少し違ったプレリリースを始める理由について、包括的に語りたい。

    何かをするか、何かを持つか

 毎年のように、私をうんざりさせるような風潮が世界中に現れる。それらは私の心の奥底で蚊とかアブとかそういうもののように私をいらいらさせ、しかも私はそれらから目を逸らしきることができない。

 2009年――これは私が最近海外から戻ってきた影響かもしれないが――、その年はあらゆるデザートが、アイスクリームを食べることによって、まるで罪人がライオンの餌にされているその目の前で召使いに扇であおがれながらソファーにもたれてぶどう酒を口に流し込んでいるかのような、「退廃」とか「耽溺」とか表される方向に向かう傾向にあった。その次の年は、ゴミを手渡した時に「ありがとうございます!」と熱を込めて言うフライト・アテンダントに当惑するような風潮だった。その言葉の意味は、君たちが考えれば考えるほど不気味なものになる。

《耽溺のタリスマン/Talisman of Indulgence》 アート: Mike Dringenberg

 昨今、あらゆるマーケティング部門が、さまざまな満足度調査によって、人々は製品よりも体験に金銭を消費する方がより生活を楽しんでいる傾向にある、ということを知るようになった。現在この瞬間の意味を高めることに意識の中心があるため、「すること」が「持っているもの」よりも優先される傾向にあるという、確実で間違いない真実に基づいている。しかし、それはとてつもない不調和と、ただ呼び名を変えるだけで製品を体験へと変えていることに挑戦しようという「(小売業者の名前)お買物体験」みたいな、本当にうんざりするような言いまわしをもたらしているだけなのだ。

 それゆえ、私はこの現象に強烈な関心と少なくない懐疑心を持ち、ここ数年来のより多くの製品を体験という形で届けることに関する会議を、やめることにした。

    約束を果たす

 それにしても、ウィザーズのような企業で働いていて良かったと思うことのひとつは、まるで信じていない目標をいい加減に追おうとする、ことはないということだ。会社が示した方針のために、問題を作り出そうとはしない。そして今回の会議は純粋なものに根付いたものだった。私たちはプレリリースを唯一の、他に類を見ないイベントとしてプレイヤーに提供するのだ。だが、君たちがそれに取りかかった場合、本当にそうなるだろうか?

むかつき》 アート: Jeremy Jarvis

 私はウルザズ・デスティニー以来全てのプレリリースに、何らかの立場で立ち会ってきた。たぶんそれぞれのイベントでの話ができると思う。開発部に所属してからは、アメリカ中のプレリリースに飛んでいって、プレイヤーたちに会い大会の主催者たちと話をした。だから、私はこれまでやってきたプレリリースの方法が持つ価値をはっきりと高く見ている、と断言することから始めよう。

 そうは言っても、これまでの形式にはいくつか問題があった。

1)一日の終わりに、シールドデッキか(おそらく)ブースタードラフトだけをしている

 いや、誤解をしないでくれ。それは初めてカードに触れるには非常にクールなものだ。君たちはほぼ毎回相互作用を発見している。だが、君たちはもっと多くのドラフトで遊ぶつもりで、もっと多くのシールドで遊ぶつもりだ。プレリリースの持つただひとつの特別なものとは、それが初めてであることであって――つまり、イベントそのものが特別という訳ではないのだ! むしろ、イベントの背後にある環境こそが特別なのだ。それは悪いことではないが、イベントに進歩の余地がないということではない。

2)多くの人が、シールドの大会でただ負けているだけではない

 いいかい、私は君たちから、大会はみんなのためにあるものではないと感じている。ゼロサム的な環境で他のプレイヤーと競いたがっているのは、一部の少数派プレイヤーたちだけだ。私自身を例に挙げよう。私はマジック歴の大半で、プレリリースがあるセットの使用期間の早い段階で多くのパックを勝ち取る効率的な方法だと見て、イベントに慣れていない初心者プレイヤーのたまり場であって欲しいと思っていた。私がどれだけの頻度でそれをしていたか省みると、本当に馬鹿だと思う。完全に趣旨を見失っていたのだから。こういうイベントは、楽しく、まったりと、新しいセットのカードに触れてもらうことを想定したものだ。大会で他の人と戦うのが好きなスパイクだけでなく、全てのプレイヤーに向けて新しいセットをお披露目することを想定したものなのだ。そしてその目的は本当にその体験を楽しませることに違いなく、賞品としてパックを機械的に出すことではない。そうしたいなら他にイベントはたくさんある。

月皇ミケウス》 アート: Steven Belledin

3)イベントの「プレリリース」性は完全にマイナスである

 たくさんの方法の中で、刺激的なプレリリースの形式は私にa)レジェンド・ルールとb)金色のカードを連想させる。伝説のカードや金色のカードはすごいものだと想像される、そうだろう? しかし、実際にはそれらはどちらも欠点のあるメカニズムだ。伝説のカードは一度にひとつしか置けないし、金色のカードは唱えるのがより困難だ。今なお、それら二つのメカニズムが今までで最もポピュラーなメカニズムのいくつかであるのは、そのリスクが特別にすごいもの、という形で完済されるからだ。プレリリースはこれに類似している。その歴史の大半で、プレリリースは他の大会とほとんど同じだった。君たちが遊んでいるカードを本当に気に入ったとしても、その時点ではそのカードをそれ以上手に入れるすべがないということを除いては。だから、その埋め合わせとして、少しだけオクタン価の高いプレゼントが必要なのだ。

4)昔から、全てのプレリリースは似通っている

 もちろん、私たちはプレイヤーたちにもっと多くのイベントで遊んで欲しいと思っている。問題は、君たちが先入観に囚われるようになる前の限られた回数しか、何かを「特別な」ものだと言えないということだ。例えば、私はおそらく他のどんなタイプのイベントよりもプレリリースで遊んできたが、その歴史の大部分において、すべては基本的に同じ働きをしていた。それはすぐに「特別」でなくなってしまう――残念なことだ。それはまたプレイヤーを木工細工から連れ出すもので、ウィザーズ社の私たちが実際に成功を得ることができる機会なのだから。今では、君たちがいかにも、君たちの好むものを見せそれを得ようとしている、ということを知ることに価値がある。それが、私たちが今まで運営してきたプレリリースの方法を完全に崩すことを望まない理由だ。それでもイベントを「ポップ」で目立つものにするためのちょっとした付加価値が、それぞれのプレリリースを思い出の時間として印象づける助けとなる。

 私たちが革新を始めた時に、こういった問題が頭にあった――一方で、物事の大部分はきちんと動いていたという知識もあった。いらないものと一緒に大事なものまで捨ててしまわないことが重要なのだ。

    君の陣営を選べ

 ミラディン包囲戦に入ろう。

 ミラディンの傷跡ブロックのデベロップの過程全てに渡って、もしミラディンの二番煎じでただの焼き直しにするプランしかなかったなら、失敗していただろうことを私たちは知っている。ゆえに、私たちはその期間、戦争を強調した――その戦いは個人を、対立を、そしてもちろん、マジック界での名高き悪役、ファイレクシアの凱旋をも含んでいた。だが、ただその物語をプレイヤーに伝えるよりは――その内容を聴衆に言い広めるよりは――プレイヤーを引き込み、その体験に参加できるようにはできないだろうか?

ファイレクシアの抹消者》 アート: Todd Lockwood

 そこから、陣営ブースターのアイデアが現れた――君たちがどちらかの陣営で戦える、というアイデアだ。プレリリースをただ対戦するだけのイベントにはしないと私たちは決心したのだ。それは次元全体を統制し、支配するための戦いだ。そしてそれぞれが別々に、自分だけの世界で自分だけの信念に基づいて争う、のではなく、全員がひとつの目標に向かって従事するのだ。今やそれはただマジックのゲーム1つを遊ぶだけではない。生き残りを――あるいは完成を賭けた、戦いなのだ。

 そのプランは見事に功を奏した――私がそのためにやったことは、「陣営ブースター」の大部分がバランスのとれたものだと保証するためのプレイテストぐらいだった。(開発部の「調整役」として最も傑出しているのは、このセットのリード・デベロッパーであるエリック・ラウアーに違いない)。ミラディン包囲戦のプレリリースはいままでのこういったイベントの中で最も成功したが、包囲戦が小型セットであることが二重に驚きだった。動画が上がった。自己表現が楽しまれた。好きな陣営を支持するタトゥーを入れている、なんて手紙もきた(その身を捧げたことになるね!)。みんなはっきりと、何か有意義なものの一部になったと感じた。それが、ただのマッチ結果の記録だけの世界から踏み出された大きな一歩なのだ。

    T次のステップ

 もちろん、当時私たちは包囲戦イベントが大成功するとは知らなかった。私たちは大きなリスクを負っていた。しかしそれでも、結果的に陣営への忠誠はほぼちょうど真ん中から半分半分に分かれて、(先述したように)参加者数は天井知らずだった。こうして私たちは、プレイヤーが同じような思い入れを持つ別の方法を作り始めた。

オリヴィア・ヴォルダーレン》 アート: Eric Deschamps

 包囲戦の結果を得たころ、私たちは闇の隆盛のプレリリースに従事していた。今回の「趣旨」で一番重要なものは怪物たちが次元全体を荒廃させていることであり、非常に広く知られた怪物たちはウイルスみたいなものの比喩で、それらは疑うことを知らない人間たちを徐々に同化させていく、と表現したのはイーサン・フライシャーだった。ゾンビ、狼男、吸血鬼――それらはみな君たちに「感染」し、君たちが死んだ後には亡霊たちが君たちを苦しめるのだ! 私たちはそれを選びうる未来像としてプレリリースの構成の根幹に据えた。その反応で一番大きなものは、この提案を実行する店舗が、しなかったものを大幅に上回ったことだった。

 私たちは闇の隆盛の仕事をしながらも、アヴァシンの帰還が(大型セットなので)ミラディン包囲戦のように規模の大きなイベントを登場させるのに、最も自然な時だとわかっていた。さらに、私たちはそういうイベントの成功の中心が、実際のストーリーラインと並行するプレリリース体験の完成なのだということがわかっていた。では、アヴァシンの帰還におけるストーリーラインの中心とは一体何なのか?

 もちろん、《獄庫》の開放だ!

 私にはそのイベントがどのように進められるのかについて非常に多くの詳細を提供することはできないし、また、これらの《獄庫》の中身を話したこともない。しかしながら、その段取りの構成を説明することはできる。

 それぞれの《獄庫》は、形を変えず、中に宝物を閉じ込めている一連の「封印」を持つことになっている。封印ごとに別々の難題が設定され、プレイヤーたちはそれを解くために協力することになるだろう。やがて、それぞれの挑戦が完遂された時、プレイヤーたちは獄庫を聖なる力で守る魔法を砕き、中に潜むもの全ての束縛を解くことができるのだ。

 もちろん、年来のプレリリースで中心的なものだった、実証済みの遊び方の邪魔をするわけではない。君たちは今までどおり、新しいカードだけでデッキを構築し、今までどおり、通常販売が行われる前のカードで他のプレイヤーと戦う機会を得ることになる。だが、私たちが望むのは、このイベントが他の大会よりずっと際立つことだ。世界中の人々の意向に最も正直な体験を作り出すことが、私たちの望みなのだ――君たちが忘れられないような、良い思い出となるセットを作り出すことが。

 誰が知っているだろうか? 君たちが《獄庫》の残骸を記念に持ち帰り、その小さな切れ端が長きにわたって思い出に花を添えることを・・・。

Zac (@zdch)

(Tr. Tetsuya Yabuki / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)



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