決勝:高尾 翔太(東京) vs. 仲田 涼(神奈川)

更新日 Daily Deck on 2013年 12月 21日

 古来より「神の山」としてあがめられてきた富士山。

 その麓で行われたこのグランプリも、ついに最後の試合を迎えることになった。

 プロツアー「テーロス」で《海の神、タッサ》《死者の神、エレボス》を始めとした神々への「信心」から始まり、《至高の評決》を中心とした「青白系コントロール」も流行り始め、それらのデッキがローテーションしていたと思われたこのスタンダード環境。

 ここで初日の記事、「3Byeプレイヤークイックインタビュー」を読み返してみよう。いわゆる「トッププロ」達が、今回の勝ち組デッキを予想した記事だ。話題に出てくるデッキはといえば、「青単信心」「黒単信心」「青白系コントロール」ばかりだ。そう、思われていた。


 それでは実際に何が起こったか。

 初日無敗を飾った6つのデッキのうち、3つが白をメインにしたビートダウンデッキだった。そしてこの決勝戦を戦うのは。

 高尾 翔太。エスパー人間ミッドレンジ。

 仲田 涼。白タッチ黒人間。

 一体誰がこの対戦カードを予想しただろうか? いったい、どんなプレイヤーならこの結末を予測できただろうか。


 たっぷりとお互いのデッキリストを確認した両者。

 ゆっくりとカードのシャッフルに入る。誰もが憧れたグランプリの決勝戦で。今、最後の一歩を踏み出すべく、入念に、心を込めて、今日の相棒をメンテナンスしていく。デッキを差し出し、軽くうなづきながらお互いのデッキをシャッフルし。

 そして勝負は始まる。

「神の山」富士山の麓。「テーロス」によって「信心」が試され、「評決」が下り、「神々」に支配されたこの世界で。

 しかし最後に残り、勝利を争うことになったのは。

 そう、「人間」達だ。

高尾 vs. 仲田
    ゲーム1

 素早くキープを宣言した高尾。少し考えてキープした仲田。

 仲田の《万神殿の兵士》と高尾の《威圧する君主》が相打ちし、仲田がさらに《万神殿の兵士》を追加する。

 これを迎え撃つべく高尾は《ザスリッドの屍術師》を展開するが、しかしこれはすぐに仲田の《放逐する僧侶》に追放されてしまう。

 攻められている高尾は考える。《湿った墓》をアンタップインし、《冒涜の悪魔》をプレイした。

 この悪魔に対処しなくてはいけない仲田。人間たちにとって、あの悪魔はあまりに強大だ。《果敢なスカイジェク》を加えるものの、攻撃はできない。ただの人間では悪魔に刃向かえないのか。とはいえ高尾もうかつには攻撃できない。《冒涜の悪魔》をさらに追加し、人間たちの反逆を待ち構える。

仲田 涼

 しかしここで仲田の《精霊への挑戦》が炸裂した。精霊の力をもって悪魔を乗り越えた人間たちが高尾に7点のダメージを与え、残りライフを7とする。攻め切る構えだ。手札に次の《精霊への挑戦》が有ることが予測できる。

 高尾も負けてはいない。《エレボスの鞭》で神の力をも手に入れた悪魔達が仲田に襲いかかろうとする。これはたまらんと仲田は《変わり谷》を悪魔の生贄に差し出した。もう一匹の悪魔は《オルゾフの魔除け》が仲田の命を犠牲に葬り去る。

神の力を得た悪魔

 とはいえ高尾も辛い。《エレボスの鞭》の加護を得た《冒涜の悪魔》が攻撃できればライフは安全圏になるのだが、それができない。《リーヴの空騎士》で「留置」しようとするものの、ここには《精霊への挑戦》が飛ぶ。これは先程のプレイで想定済みだ。そう、ここまでは理解している。ここからの負け筋が有るとしたら。たったひとつ。いや、しかしそんなはずは。まさか、そんなはずは。

「そんなはずはない。」そう考えた高尾は、《果敢なスカイジェク》を追加で展開した。そう、《変わり谷》を寝かせて。

三度炸裂!

 仲田は土地をアンタップすると、「そんなはずはない」3枚目の《精霊への挑戦》を叩きつけ、人間達が神と悪魔を従えた高尾を討滅したのだった。

高尾 0-1 仲田

 一瞬の隙をモノにした仲田。隙を作ってしまったことが悔やまれる高尾。感情は正反対ながら、2人の空気はどこか似ている。

 共通しているのは、そのプレイの判断の早さ、サイドボーディングのスムーズさだ。こんな変わったマッチアップでも、彼らのプレイスピードに淀みはない。たとえ大舞台が初めてであろうとも、彼らにとっては「スタンダード」という慣れ親しんだ環境。そこで行われるゲームでのプロセスは、選択肢は知り尽くしている。

 この速度はまさに彼らの練習の証。これは彼らの「人間」として努力だ。

 そして彼らは「神」に祈る。次のゲームの勝利を。

    ゲーム2

 仲田のマリガンから始まった2ゲーム目。続いての6枚も満足できるものではなかったようで5枚でのスタートとなってしまった。

 ふたたび仲田の《万神殿の兵士》に対して高尾は《究極の価格》で応える。

 仲田が《ザスリッドの屍術師》を出せば高尾も鏡打ち。お互いに《ザスリッドの屍術師》が睨みを効かせる。仲田は「人間」としての《変わり谷》を攻撃に向かわせ、さらに《管区の隊長》を追加と、ダブルマリガンにしては順調な展開だ。

高尾 翔太

 高尾は考える。安易な対応はできない。《ザスリッドの屍術師》がいるために手札の《冒涜の悪魔》も力を発揮しにくい。考えた末に《異端の輝き》で《管区の隊長》に対処。この輝きには屍術師の力も及ばない。

 高尾はついに《幽霊議員オブゼダート》を展開した。少し押されたが、このギルド指導者さえいればあっという間に巻き返しが可能だ。さらには《冒涜の悪魔》も加え、圧倒的な場を形成していく。

 仲田も《罪の収集者》で手札を覗いてみるが、これは《拘留の宝球》と《冒涜の悪魔》で、見えたのは絶望だった。どうにか人間を繋げて耐えてみるものの、《幽霊議員オブゼダート》も《冒涜の悪魔》もどうにもならない。


 ついに高尾の《拘留の宝球》が《ザスリッドの屍術師》を封じ込めてしまえば、仲田にできることはもう何も無かった。

高尾 1-1 仲田

 全てが決まるゲーム3を前に緊張しているのが見て取れる2人。

 このようなグランプリという大舞台、当たり前だ。ここで戦っているのは、マジックが強い、しかし普通の「人間」なのだから。

    ゲーム3

 三度、仲田の《万神殿の兵士》からゲームがはじまった。

三度好展開

 これに高尾は《威圧する君主》で応えるが、仲田の《ザスリッドの屍術師》によって満足な戦闘ができない。仲田の攻撃を止めることもできず、《威圧する君主》《ボロスの精鋭》と並ぶのを見守るだけの高尾。

 どうにか《リーヴの空騎士》を展開するものの、《ザスリッドの屍術師》が戦闘を一方的なものにしてしまっている。仲田はさらに《管区の隊長》と《ボロスの精鋭》を追加。


 高尾もなんとか《幽霊議員オブゼダート》で対抗しようとするものの、《威圧する君主》の効果でブロッカーとして機能させるのが精一杯だ。

 仲田の戦線は広がる一方。高尾は人間たちを止める術が無い。先ほどまでは頼りになった《冒涜の悪魔》も、《ザスリッドの屍術師》と沢山の人間たちが展開されてはどうにもならない。高尾は《拘留の宝球》などで生きる道を検討する。

 しかし、そこに、救いの道は無く。

 そのはにかんだ笑顔と共に、仲田に向かって右手を差し出した。

決着の刻

高尾 1-2 仲田

 神々に支配されたかと思われたこの世界で、頂上を争ったのは「人間」達。

 最後に残った「人間」達に惜しみない賞賛を。

 おめでとう、仲田 涼!!

最新Daily Deck記事

DAILY DECK

2015年 12月 11日

黒赤エルドラージ(モダン) by, Melissa DeTora

 こんにちは、皆さん。今年の「Daily Deck」は今回で最後です。本日ご紹介するのは、『戦乱のゼンディカー』で登場した新たなメカニズム「昇華者」を用いたモダンのデッキです。「昇華者」メカニズムといえば《不毛の地の絞殺者》がスタンダードで活躍を見せ始めていますが、それを用いたモダンのデッキを目にするのは初めてです。  《不毛の地の絞殺者》は、かつて環境を支配した《火炎舌...

記事を読む

DAILY DECK

2015年 12月 10日

Pox(レガシー) by, Melissa DeTora

 本日の「Daily Deck」では、レガシーで使えるものの嫌われやすい戦略をひとつ見ていきます。このデッキは《小悪疫》を中心に組まれたもので、対戦相手の手札を取り去り土地を破壊し、何もできない状態に追いやってゲームから締め出すことを狙っています。今回このデッキを選んだ理由は、このデッキが私に黎明期のマジックを思い起こさせてくれたからです。(「小」ではない)《悪疫》(Po...

記事を読む

記事

記事

Daily Deck Archive

過去の記事をお探しの場合 アーカイブのページをご覧ください。人気の著者による、数千にわたるマジックの記事が残されています。

一覧を見る