第13回戦:不確かなオーラ Raymond Tan(マレーシア) vs. Jacob Wilson(アメリカ)

更新日 Daily Deck on 2014年 2月 23日

By Blake Rasmussen

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    アンシー・アルキオ/Anssi Alkio(青赤双子) vs. リー・シー・ティアン/Lee, Shi Tian(ブルー・ムーン)

 2人は同じ色こそ共有こそしているものの、この準々決勝の対戦で注目される2つのデッキについて、果たして違いが無いと言えるだろうか。アンシー・アルキオがモダンラウンドにおいて9勝0敗1分という成績を背景に、初めてのプロツアートップ8への道を切り開いた。最新の青赤双子デッキは、莫大な量の分身を生み出すことができ、爆発的にフィニッシュできる可能性を秘めている有力なデッキだ。他方、香港のリー・シー・ティアンは使用するのは《血染めの月》をベースに置いた革新的なコントロールデッキで、ブルー・ムーンと呼ばれている。このデッキは、マナベースを基本でない土地に依存しているほとんどのモダンデッキに対しアドバンテージがとれるようデザインされている。

熟練のゲーマーで、マジック活動に移行してきたアンシー・アルキオが、
モダンにおけるトッププレーヤーの一人であり、図らずも前回のモダンで行われたプロツアーで
トップ8入賞を果たしているリー・シー・ティアンと対決する。

「この試合はほぼ互角だと思います。」アルキオは試合前に語ってくれた。「特に今回私は先攻を取れませんからね。《ヴィダルケンの枷》は見たくありませんね。このデッキがそれを打ち負かすのは難しいのです。」

 リーも拮抗しているということには同じ意見を持っているようで、少なくともしのぎを削る接戦になると感じている。

「第1ゲームでは私のほうが有利だと信じています」と彼は言った。「しかし、サイドボード後、《古えの遺恨》が入ってくればもっと困難になるでしょう」

    ゲーム展開

 最初のゲームが開幕すると、アルキオはすぐに《沸騰する小湖》を生け贄に捧げた。

「《》?」リーは笑いながら尋ねる。

 この試合の早い段階から両者は《血染めの月》を念頭に置いているようだ。アルキオのデッキは、この強力なエンチャントに窒息させられ、支配されたほとんどのデッキよりも適応力がある。5枚の《》がデッキに入っているのだ。もっとも、リーのデッキにはその倍の数があるのだが。

 3ターン目を迎えるたところで、アルキオに悪い流れが訪れた。リーが3つの土地全てをタップしたのだ。このことは2枚のうち1枚のカードを意味しているが、少なくともどちらも良い知らせではない。アルキオは戦場に《》を1枚しか置いていなかった。つまり、《血染めの月》は彼のデッキの行動を著しく阻害するだろうが、それでも2つの害悪のうちマシなほうだ。不運なことに、それはもう片方の3マナカード、つまり《ヴィダルケンの枷》だった。アルキオが語っていた、打ち負かすことができないカードであり、彼はそれにゲームの早い段階で向き合わなければいけなくなった。さらに悪いことに、リーはその強力なアーティファクトのもう1枚を2ターン目に見つけていたのだ。つまるところ、アルキオは早い段階で事実上ゲームから締め出されてしまったのだ。

 これはアルキオにとっては壊滅的な転換点であり、彼がゲームを進めるためには複数の《詐欺師の総督》か《やっかい児》が必要であることを意味していた。《欠片の双子》をキャストするための糸口をつかむことが非常に困難でもあった。何せ、リーのマナが立っているだけで、それをキャストできないのだから。《鏡割りのキキジキ》ですら、《ヴィダルケンの枷》の前では奴隷に成り下がる。アルキオにとってはほぼ勝利が不可能な状況であったが、それでもなお彼は辛抱強く耐え、苦境を脱出する方法を探していた。

リーには望み通りの序盤戦であり、彼が受けていたプレッシャーを和らげるものであった。

 アルキオは脱出口を見つけるためのカードは持っていた。複数枚の《謎めいた命令》があり、《ヴィダルケンの枷》をバウンスすることで突破口を開くことができる可能性があった。2枚の《詐欺師の総督》と《やっかい児》も持っており、彼の頑張りを助けてくれるものだった。《欠片の双子》も2枚手札にあり、コンボ達成のために必要なものは全て揃っているように見えた。

 試合中盤、リーは《血染めの月》を通し、アルキオに全ての《沸騰する小湖》と《霧深い雨林》を生け贄に捧げ、《》に交換することを強いた。そのエンチャントが本来持っている、ゲームを壊滅的にするほどの効果は無いものの、アルキオの青マナを5つに縛ったことで十分にゲームは深みに嵌った。《血染めの月》はゲームを深みに嵌めるために唱えられたということで、アルキオは基本土地の《》をすべて用意することはできたものの、進行が遅くなることは非常に重大なことだった。

アルキオは、このマッチアップに関して最も憂慮していたカードを
対戦相手に見せられたにもかかわらず果敢に戦う。

 《血染めの月》が解決されてから数ターン後、リーは動き始めるのに十分な土地があると判断し、花火大会が開幕した。彼は孤独なエレメンタルである《波使い》を導き、彼の元で戦わせるために召喚した。彼の使える残りマナは7マナだ。リーのエンドステップにアルキオは《波使い》に対して完璧な守りとなる《詐欺師の総督》をプレイし、リーに対処するよう迫った。リーは喜んで7つの土地のうち2つをタップし、片方の《ヴィダルケンの枷》でそれを奪った。アルキオがもう1体をプレイしようとしリーは解決させた。アルキオは2番目の《ヴィダルケンの枷》をタップすることを選び、2体目の《詐欺師の総督》も奪わせることを強制した。彼は残りの青マナで《謎めいた命令》を使い、《ヴィダルケンの枷》の片方をバウンスすると、《詐欺師の総督》のコントロールが戻り、勝者になるための準備を整えた。それを防ぐために、リーは《蒸気の絡みつき》を使い、その《詐欺師の総督》をアルキオの手札に戻し、《欠片の双子》をプレイして簡単に勝たせることを拒否した。この激しいやり取りは、アルキオが勝利をつかむための一大作戦だった。だが、アルキオは仕方なしにカードを引き、リーにターンを返し、アンタップを許可した。

 リーは再び《ヴィダルケンの枷》をプレイし、アルキオは《謎めいた命令》や《差し戻し》することを選ばず、、先ほどのターンと同じようなことを試みた。動く前に、リーの手札を《のぞき見》て、《殴打頭蓋》、《血染めの月》そして2枚の、非常に重要な《瞬唱の魔道士》を確認した。墓地にある《蒸気の絡みつき》と《差し戻し》へのアクセスは香港の若きプレイヤーにとって守備の要だ。

 新たな情報について思考をめぐらせた後、アルキオはもう一度同じことを試みた。彼の《詐欺師の総督》が帰還し、リーに《ヴィダルケンの枷》で奪うことを強制する。3体目の《詐欺師の総督》を《瞬唱の魔道士》で《差し戻し》させ、リーの防衛手段を制限する。アルキオはリーの選択肢を削っていき、最終攻撃へと近づいていく。それでもなお、リーはアルキオのライフを13まで落とし込み、ダメージレースを突きつけていた。

呪文に呪文を重ね、アルキオには1ゲーム目の勝利を獲得する希望の兆しが見えていた。

 次のターン、リーはその情報を少しだけ撹乱した。2枚の《血清の幻視》を唱え、《差し戻し》をもう1枚と、重要になりうる《不忠の糸》を拾い上げた。次のターンを迎えることができれば、《ヴィダルケンの枷》たちをアンタップし、《不忠の糸》で《詐欺師の総督》を奪いなおして、アルキオの手にある3枚目の《詐欺師の総督》にも対処できる手段になる。

 規則正しい時計のように、アルキオは再度《詐欺師の総督》をリーの終了ステップに出し直した。リーは解決を許し、アルキオに《詐欺師の総督》がある状態で初めてアンタップできる機会が訪れた。アンタップすると、アルキオは突き進んだ。《欠片の双子》を《詐欺師の総督》へと唱えたのだ。彼は援護として2枚の《差し戻し》と《謎めいた命令》を構えており、どのようにプレイするかを慎重に見極めようとしていた。青マナを5つに制限されていることで、《謎めいた命令》を唱えることは少しぎこちないものになっていたものの、リーの《差し戻し》を乗り越えるためにそれを使った。リーは《瞬唱の魔道士》と《蒸気の絡みつき》でコンボを妨害しようとしたが、アルキオは余ったマナで《差し戻し》した。全てのカードがミスなしに適切に唱えられ、アルキオは考えられる限り最悪のスタートからゲームを掴み取った。

 鍵となった瞬間は、実際のところ《血染めの月》の着地したスピードだった。この試合において、アルキオの多くの《》と、彼が赤を使用していたことで、効果が半減しているように見えるが、より序盤に《血染めの月》があれば、アルキオの各ターンの選択肢を制限するために実に重要であることを示しただろう。全ての《》を手に入れることができたことにより、《謎めいた命令》と《差し戻し》をそれぞれのターンに唱えることが可能になったが、そうでなければ勝利する方法はなかっただろう。彼が手札を仕掛けるのにまったくもって完璧に仕上げたことに加えて、一方で、リーの引きが試合の中盤にかけて先細っていき、ジリ貧だったこともあるが、このフィンランド人はプロツアートップ8での初めての試合を勝ち取るのにふさわしかった。

 第2ゲームで、両者は共に妨害手段を少しずつ増やした。《ヴェンディリオン三人衆》、《古えの遺恨》、《殴打頭蓋》に《汚損破》だ。リーが最初に《ヴェンディリオン三人衆》でアルキオの手札を暴いた。アルキオもまた《ヴェンディリオン三人衆》を持っており、加えて《炎の斬りつけ》、《鏡割りのキキジキ》、《殴打頭蓋》と3枚の土地という内容だった。リーは慎重に考え、《殴打頭蓋》を選ぶと、それは《欠片の双子》へと変化した。リーは追い討ちで《広がりゆく海》をアルキオの《》に張り、《鏡割りのキキジキ》に届かないようにしようとした。

ノックダウンを食らい、ほぼ手中にしたように思われた第1ゲームを失い、
それを克服するためにリーはより頑張らなければいけなくなった。

 アルキオは積極的ではなかった。というのは、《ヴェンディリオン三人衆》を手札に温存し、攻撃のためのリソースではなく妨害手段として使うことを選択したのだ。《欠片の双子》を引いたのを見ると、アルキオがコンボをサイドアウトしてはいないということがわかるが、リーもそれは推測しているだろう。先ほどのゲームのように、序盤で《血染めの月》が姿を現すことはなく、リーはそれらをすべてサイドアウトしたようだ。前回のゲームではあれほどに重要だったにもかかわらず、モダンというフィールドにおいて多数を占める他のデッキに比べれば、《血染めの月》はアルキオのデッキには効果的ではないのだ。

 コンボの完成が見えないので、アルキオはついに《ヴェンディリオン三人衆》のプレイを決断し、何を相手にしているのか確認することにした。公開されたのは2枚の《稲妻》と、《汚損破》、《瞬唱の魔道士》、《謎めいた命令》と《血清の幻視》だった。アルキオは《謎めいた命令》を取り除き、それは《》へと変わった。その後、片方の《稲妻》が《ヴェンディリオン三人衆》を打ち落とした。十分なマナに到達したところで、アルキオはリーの《汚損破》から守るために3マナを残しながら、慎重に《殴打頭蓋》を唱えた。

 フェッチランドのライフ支払いと《瞬唱の魔道士》を含めて、リーはアルキオのライフを14まで減らしていたが、《殴打頭蓋》が立ちふさがってしまえば、ライフが増えるのは確実だった。アルキオがもう一度プレイしようとした時、リーは《謎めいた命令》をドローしていたことが明らかになり、アルキオは《差し戻し》を自身の《殴打頭蓋》に打たざるをえなかったが、大事な《詐欺師の総督》を手にすることとなった。《殴打頭蓋》のさらなる試みは同じような結果をもたらした。つまり2体の《瞬唱の魔道士》がリーとアルキオにそれぞれ《謎めいた命令》と《差し戻し》をもたらし、結果として《殴打頭蓋》は解決され、リーは実質無防備になった。3体目の《瞬唱の魔道士》によってリーは《汚損破》で《殴打頭蓋》を破壊した。残り1マナまで使い、《不忠の糸》でアルキオの《瞬唱の魔道士》を奪い、次のターンの攻撃で対戦相手を致命的なダメージを与えられる。

 彼にとって不幸なことに、それは実現しなかった。序盤の《差し戻し》もあって、アルキオは試合を終わらせるのに必要としていた《詐欺師の総督》を引き込んでいたのだ。アンタップの土地が1枚だけでは、アルキオが自身のドローステップにリーの唯一の土地をタップさせ、《鏡割りのキキジキ》への《稲妻》を防ぐのに対し、リーは何もできることは無かった。もはや抵抗するすべはなく、リーはただ手札にあるのが分かっている《鏡割りのキキジキ》をアルキオがプレイするのを待つことしかできない。そして、カードを畳んだ。

アルキオは目を瞠るようなプレイで準々決勝を2-0で勝利した。

「1ゲーム目、彼は完璧なプレイをしましたよ」リーはアルキオを賞賛した。「私は鍵となるミスを犯したと思います。最初に《ヴィダルケンの枷》をタップした時、彼の《詐欺師の総督》を奪う以外の選択肢はありませんでした。しかし、ターンが返ってきたとき、《ヴィダルケンの枷》たちをアンタップして、より守備的に使うべきだったのです。そうしていれば私があのゲームに勝てたはずです。」

 アルキオは同意した。

「彼がそうしていたなら」アルキオは口を開いた。「私が勝利するのはずっと困難だったでしょう。それらのうち1つをアンタップさせるために《詐欺師の総督》を使い、それからもう片方を《謎めいた命令》でバウンスしなければいけませんでした。しかし、それでも勝てる保証などありませんでした。また、特にこの場において、《血染めの月》をサイドアウトすることが正しいプレイかどうか分かりませんでした。実際、私のデッキには大抵のデッキより多くの《》がありますが、もし早い段階で置かれていれば、2枚のフェッチランドをどうにかしない限り勝つのは難しかったでしょう。信じられないほど接戦でしたが、2枚の《ヴィダルケンの枷》を前にして勝つことができたのは幸運だったと感じています。」

アンシー・アルキオがリー・シー・ティアンに 2-0 で勝利し準決勝に進出!


(Tr. Masashi Koyama)

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