第10回戦が終わり、全勝のプレイヤーは3人にまで絞られた。ここではその全勝街道を走る一人にその勝利の秘訣を聞いてみよう。
その人は2005年度の日本王者である諸藤 拓馬(福岡)である。
ニコニコと愛想のいい笑顔が印象的な彼は、慌ただしいラウンドの合間に快く取材に応じてくれた。
――「こんにちは。絶好調ですね」
諸藤「そうですね。右手がブンブンして《スラーグ牙》がよく駆けつけてくれています」
――「今回使用されているデッキはなんですか?」
諸藤「緑黒白のリアニメートですね。至って普通な構成です」
(※デッキリストは2日目終了後の掲載となります)
――「このデッキを選んだ理由はなんですか?」
諸藤「このスタンダード環境のメタゲームの背景の説明からになってしまうのですが、環境初期はジャンドやナヤが活躍していて、それを倒して代わりに流行したものがバントコントロールや緑黒白のリアニメートでした。
その後に早い人間系アグロと青白Flashが現れて一旦リアニメートは衰退したのですが、ラクドスミッドレンジが登場したことでナヤなどの中速デッキが戻ってきたことから、再びリアニメートの時代が回ってきたと感じたからです」
――「現在流行しているナヤやラクドスなどの中速のデッキを倒すため、それに強いリアニメートを持ち込んだって形なんですね。たしかに早いターンから《堀葬の儀式》で《スラーグ牙》や《静穏の天使》を釣り上げるのは、中速のデッキにはすごく強そうです」
諸藤「早いターンに出すことももちろんですが、それらの消耗戦になった時が特に強いですね。《スラーグ牙》などは戦闘や除去でよく墓地に落ちて、それを《堀葬の儀式》でリアニメートすると擬似的に枚数を多くプレイできることになるので」
――「なるほど。《スラーグ牙》の枚数は重要ですものね。そこで遅れたゲームでも《静穏の天使》などの本来であればリアニメート要員がプレイできる状態になるのは素晴らしいです。ところで、このデッキが苦手なデッキはなんですか?」
諸藤「先程の背景の話でも取りあげたのですが、人間系アグロなどの早いビートダウンと青白系Falshが苦手です。除去が少ないので人間系にはスピードで負けてしまいます。《スレイベンの守護者、サリア》がやはり厳しいですね。
青白系にはカウンターや瞬速のクリーチャーが厄介で、《魂の洞窟》や《ガヴォニーの居住区》といったシステムの土地が勝負の鍵になります。バントコントロールも苦手なデッキですね。」
――「相性差にメリハリのあるデッキのようですね。昨日のマッチアップはどのようなものでしたか?」
諸藤「ジャンド、ラクドス、バント、人間、ナヤ、青白Delver、緑白ミッドレンジ、リアニメートですね」
――「ほぼすべての仮想敵を制覇してるじゃないですか」
諸藤「人間相手に速度勝負で勝てたのがラッキーでしたね」
――「現在非常に綺麗なレシピだとは思うのですが、ここを変えておけばよかったなど、今なら変更するパーツってありますか?」
諸藤「サイドボードに《安らかなる眠り》を入れておけばよかったなって思っています。
同じリアニメートエンジンを採用している人間リアニメートに分が悪いので、同型対策及び苦手なデッキへの対策って意味でも今ならば採用しそうですね。代わりに減らすのは除去を数枚程度でしょうか」
――「現在の上位テーブルではラクドスミッドレンジ、ナヤ、青白赤Flashが主要なデッキになっていますが、このメタゲームだと理解した上で、新たにデッキを選択できるとすれば何を使いますか?」
諸藤「ほぼこの緑黒白のリアニメートですが、赤を加えた4色の形も調整していたのでそれを使うかも知れません。赤は《忌むべき者のかがり火》と《高原の狩りの達人》で、簡単なイメージでいうとナヤに《堀葬の儀式》やリアニメートエンジンが入っている感じですね」
――「それは面白そうですね。やはりアグロと人間系への対抗といった意味合いでしょうか」
諸藤「それもありますが、《魂の洞窟》を4枚採用できる構成に変更できるからですね。青系とのマッチアップの相性はその枚数で激変するので、これほどまでに青白赤Flashが多いのであればもう数枚検討してよかったと思っています」
――「とても参考になりました。ありがとうございます」
諸藤「いえいえ、それではまた」