アメリカ・チームの考えるコミュニケーションとリーダーシップ

更新日 Event Coverage on 2013年 8月 2日

By Nate Price

A longtime member of the Pro Tour and Grand Prix coverage staff, Nate Price now works making beautiful words for all of you lovely people as the community manager for organized play. When not covering events, he lords over the @MagicProTour Twitter account, ruling with an iron fist.

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 ここワールド・マジック・カップには70を超える国の代表チームが集まった。各チームとも前シーズン国内で最もプロ・ポイントが高かったプレイヤーを「ナショナルチーム・キャプテン」として立て、他の3人はワールド・マジック・カップ予選を勝ち抜いたプレイヤーたちで構成されている。各チームとも昨年のベスト・プレイヤーがいることで、メンバーはキャプテンから上級者としての手ほどきを受けられるというわけだ。ベルギーやスウェーデンのように成熟した人材の揃ったチームもあるが、他のチームではプロ経験の浅いプレイヤーもチームの一員なのだ。

 前回のワールド・マジック・カップからわかるように、強者して名を上げた経験の無いチームでも、それを無視することはできない。前回最大の立役者のひとつはウルグアイ・チームで、大会中最も経験の浅いチームのひとつでもあった。経験不足という不利にも関わらず、彼らは世界的なトップ・チームを破る奮闘を見せ、最終日進出まであと一歩のところまで迫った。その大会で決勝を戦ったプエルトリコ・チームも、ウルグアイ・チームよりは経験が豊富であるものの、例えばアメリカ・チームと比べれば底力に劣るだろう。そのアメリカ・チームは、殿堂顕彰者ブライアン・キブラー/Brian Kiblerと、同じくルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasを擁しながら、トップ8入りを逃しているのだ。

 経験の浅いプレイヤーが集まったチームをみるに、コミュニケーションとリーダーシップは考慮すべき重大な要素であることがわかる。誰が発信し、それをどうやって全員に伝えるか? 毎ラウンド、各チームともひとりが試合に参加せずコーチ役をする。コーチをやるのは誰か、そしてコーチの役割は何かを決めるのは、各チーム次第だ。そのフォーマットを4人の中で一番苦手としているプレイヤーに、コーチ役を回すというチームもあるだろう。こうすることで、どのフォーマットでも可能な限り最高の3人で挑むことができる。また、チーム内最強のプレイヤーがコーチ役になり、ひとりの試合に全技術を投入するのではなく、すべての試合にまんべんなく行き渡らせることを選ぶチームもあるだろう。

 今年のアメリカ・チームはその後者の戦略をとり、ここまでは功を奏している。プレイヤー・オブ・ザ・イヤーのジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leytonをキャプテンに据えるアメリカ・チームは、初日のチーム共同デッキ構築・スタンダードで、アター=レイトンにコーチを任せることにしたのだ。

2012-2013年度プレイヤー・オブ・ザ・イヤーを獲得したジョシュ・アター=レイトンがチーム・イベントに出るなら、
普通は試合に出るものだと思うだろう。ところが、アター=レイトン率いるアメリカ・チームは、
彼を最大限活かす手段が彼をコーチにすることであると判断した。

「僕を最も活かせる場所は、一番多く試合に関わることができて、一番多くのゲームに影響を与えられる場所であると、そう感じただけです」とアター=レイトンは言った。

 プレイヤー・オブ・ザ・イヤーに君臨し、日曜日の世界選手権でもトップ4の舞台に上るアター=レイトンが、マジックというゲームにおけるトップ・プレイヤーのひとりであることは疑いようがない。そんな彼が試合に参加することでチームに貢献するのではなく、コーチとして携わることを決めたのは、チームメイトへの絶大な信頼と同時に、チームに一番力を与えられるのはアドバイザーとしての自分である、という確信が見える。とはいえ、すぐ後ろに座っているのが世界のトップ・プレイヤーだと意識しては、気持ちが落ち着かないだろう。

「それが良くもあり悪くもありといった感じで」と、ジョー・スパニア/Joe Spanierが恥ずかしそうにアター=レイトンの方へ笑顔を向けて言った。「彼がそばにいて、その顔が正しいプレイをしているときのものだとわかると、ほっと安心します。でも心が掻き乱されることもあるんです。ミスをやらかすとこっちを見てくるから、余計にミスが怖くなって。そうすると、彼の視線にものすごいプレッシャーを感じますよ。もちろん、それが彼の役目なんですけど、やっぱりジョシュみたいな人が自分のプレイを見てるって意識すると、平静を失いますね」

 すると、アター=レイトンが笑った。「確かに、その気持ちはわかるな」

 さてここで別の問題が湧き上がってくる。強力な仲間が自分を見ているとわかっているなら、プレイの決断について相談したいという状況が頻発しているはずだ。そうしたときに伴う一歩踏み込んだコミュニケーションの必要性が、アメリカのようなチームにとっては少し考えどころなのだ。アメリカ・チームの面々にとって英語が母国語にして唯一使える言語であり、そうなると、彼らが対峙するチームのほぼすべてに、口頭でのコミュニケーションが筒抜けになるプレイヤーが少なくともひとりは所属していることになる。

「英語に依存してるせいで生まれる不利について言うなら、ちょっとどころの騒ぎじゃないよ」この問題を挙げると、ダニエル・チェケッティ/Daniel Cecchettiが笑った。「誰かスペイン語かドイツ語か話せる人がいたらなあと思う」

 それでも、言語についての問題を無視するわけにはいかない。ヨーロッパの国はその多くが言語そのもの、あるいは言語の起源を共有していて、口頭でのコミュニケーションは常に聞き取られる危険性があるのだ。あるプロツアーで、スペイン語話者のプレイヤーが、フィリピンから来たという対戦相手の目の前で手札を読み上げていた、というのは有名な話だ。その相手がスペイン語に堪能であることを知らずに! とはいえ会話以外のコミュニケーションに挑戦したり秘密を守ろうと努めたりすれば、今度は誤解や話の行き違いを引き起こしかねない。

「僕が近くで見ているとミスを起こす、というのは間違いありませんね」アター=レイトンは笑顔で言った。

 また、何かしらのコミュニケーションが行われた、という事実だけで察知される情報が、どれくらいあるかという問題もある。誰かがカードを引いた直後にチーム会議を始めれば、たとえそのままターンを返したとしても、引いたカードがゲームに影響を与えるものである可能性が高い。いやどうだろうか? 実はブラフなのでは? そういったことまで読むのはやり過ぎだろうか?

「そうだ、思い出したよ、みんな」この問題に触れると、アター=レイトンが身を乗り出した。「相手の誤解を狙って話しているとき、全員がわかるようにサインを決めとかなきゃ」

 最初は、ただ冗談を言っているだけだと思った(アター=レイトンは冗談も真顔で言うのだ。たぶんデイヴィッド・オチョア/David Ochoaの影響だろう)。チェケッティもスパニアも、ジェイソン・ガルヴィッチ/Jason Gulevichも真剣に会話へ参加し始めたとき、ようやく私はさっきの言葉が真面目な話であったことに気がついた。そう、コーチとゲームに参加するプレイヤーたちの間で交わされる会話も、巧みな策略の一部だ。コミュニケーションは弱点になるのと同時に、武器としても使えるのだ。

アメリカ・チームは、この大会に至るまで情報収集を徹底してきた。
それでも、策略を練るなどの細かい点も怠らなかったのだ。

 だがしかし、コミュニケーションがしっかり交わされていても、そこに信頼とリーダーシップが無ければ、意図がほとんど伝わらない。コーチは全員を同時に見ることはできず、またプレイヤーに任せきりにしてしまえば、それぞれの決断がチームを崩壊させかねないのだ。試合中にその場で自分の意見を挟んでいくのは、信じられないほど難しい。その直前のターンの行動が、与えられた状況や決断におけるプレイヤーの読みに大きな影響を与えうる。

「構築ラウンドのコーチ役に僕を選んだ理由のひとつは、そのポジションがそれぞれの試合を見て回りやすく、何が起きているのか把握しやすいからです」とアター=レイトンが打ち明けた。「リミテッドでは、試合をぐっとやりやすくするために、ある状況の心構えを説いておくことが大切なんです」

 この意見とは裏腹に、アメリカ・チームはチェコ・チームとの試合で、構築においても予防線を張ることの大切さを示すような状況に出会った。スタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifkaが土地を4枚立たせているところへガルヴィッチが《雷口のヘルカイト》をプレイし、《瞬唱の魔道士》と《中略》に阻まれる結果に終わった。試合後、アター=レイトンが前のターンのツィフカの動きを根拠に《瞬唱の魔道士》があることを意識しながら、なぜプレイの指示を出さなかったのか説明していた。もしそのとき近くで見ていなかったのなら、見逃してしまっていたかもしれないようなことだ。

 コーチ役の使いすぎを防ぐための最も一般的な方法は、一番肌に合うデッキを使っているプレイヤーを両端のどちらかに据えて、残りふたりのプレイヤーの間にコーチが座ることだ。アター=レイトンは、全員がそれぞれ肌に合うデッキを使っているものの、スパニアは今回の青白コントロール・デッキのように《神聖なる泉》を用いるデッキをとりわけ多く経験していて、彼がメンバーの中で一番安心できると感じていたことを認めた。その考え通り、アター=レイトンはスパニアの試合を彼自身に任せ、チェケッティとガルヴィッチの間に座ることにしたのだ。

「それに、僕の使っているデッキが一番遅いので、勝敗が僕にかかっている場合は試合の終わり際に僕の方を見に来られるんです」とスパニアが笑顔を見せた。

 チームに指揮系統がある、というのもまた極めて大切なことだ。ほとんどのチームでは、誰よりも良い成績を収めてそのポジションを獲得したキャプテンに、全員が従う。しかしながら、意見の相違によってメンバーをまとめるのが難しいチームもある。ヨエル・ラーション/Joel Larsson、オーレ・ラーデ/Olle Rade、エリアス・ワッツフェルト/Elias Watsfeldtと傑出したプレイヤーたちを擁するスウェーデンのようなチームでは、あるターンの最善のプレイについて意見が分かれがちなのだ。チームに合った頭脳役を持つことは、プレイについて話し合える能力と相談無しに正しいプレイができる能力の両方を改善させる。その一方で私は、優れたプレイヤーふたりと、受けたアドバイスを無視したプレイをしてそのまま進めるこちらも優れたプレイヤーの間で、意見の食い違いが出る状況を見てきた。そのときのプレイは間違っていたことが判明し、言い争いになった。厨房にコックが多すぎるという状況は、最高に美味しい料理を作れるのと同時に、食材を台無しにすることもあるのだ。

 また、アター=レイトンには、チームに大きく信頼を寄せなければならない理由があった。世界選手権での彼の立ち位置である。ふたつの大会にまたがる7つのフォーマットに向けて練習するのは、両方に出場するナショナル・チャンピオンたちをかなり苦しめた。これにより、両大会に出ようとしているプレイヤーが他と同じだけの働きを見せるのは、並外れて厳しいとわかったのだ。

「ええ、それはもう」ふたつの大会へ向けて準備することについて尋ねると、アター=レイトンは目を見開きため息を吐いた。「本当に厳しかったですよ。チームメイトたちがデッキのテストにリミテッドの練習に、と良く動いてくれたのはありがたい限りです。本当に一生懸命でした。それが役に立っているんです」

 頼れる仲間を持つこと、そして仲間に頼ることは、ワールド・マジック・カップの成功には不可欠だ。前回も、必要なときはすべてクオ・ツーチン/Tzu Ching Kuoに従う台湾チームの姿を見た。そして今大会ではここまで、その姿をアメリカ・チームに見ている。チームに自信を与えるというのは、リーダーが与えられる中でもこの上なく最高のものだ。自信がつけば、アター=レイトンのような尊敬すべきプレイヤーが見ていても、良い印象を与えるかミスを犯すかという心配を和らげてくれる。まだ落ち着かない気持ちは無くなっていないようだが、アター=レイトンがチームに与えた自信はここまで大きな効果を発揮している。プレイヤー・オブ・ザ・イヤーが導く形とはいえ、最終的に彼らの成功はチームの努力の賜物であることがわかり、ジョー・スパニア、ジェイソン・ガルヴィッチ、そしてダニエル・チェケッティの3人は誇りを胸に抱くのであろう。


(Tr. Tetsuya Yabuki)

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