おそらく、この地球上にポール・リーツェル/Paul Rietzlよりボロス軍のことを知っている人間はいないだろう。ギルドというものが存在する以前に赤と白の旗を掲げていたことで知られるリーツェルは、火力の支援を得た小型高速クリーチャーの扱いの達人である。そんなアメリカのプロにとっては、『ギルド門侵犯』はうってつけの環境だ。
また、彼はボロス・ギルドのドラフトについて教えを請うのに、うってつけな人物なのだ。
ボロス軍の忠実なる兵士、ポール・リーツェル。
リーツェルの軍への忠誠は生半可なものではなく、彼はアーキタイプを決め打ちすることも厭わない。事実、彼はこの週末最初のドラフトを、思わず眉が上がるようなやり方で始めた。1パック目の初手、《ドムリ・ラーデ》より《強盗》を優先させたのだ。
「こうするのはこの会場でもたぶん俺だけなんじゃないかな」と、リーツェルは言う。「こうなることはわかってたよ。別のギルドの神話レアを引くんじゃないかってね」
この選択が、第1戦で彼に牙を剥くべく復讐に現れる。《ドムリ・ラーデ》と対峙することになり、第1ゲームをこのグルールのプレインズウォーカーによって壊滅させられたのだ。「ボロスの魔道士」にとって幸運なことに、彼はその後巻き返し、マッチを取ることができた。
こうして彼が自身に課した《ドムリ・ラーデ》というハードルを越えているのを見ると、リーツェルのプランは巧を奏しているようだ。リーツェルは彼の愛するものでいっぱいになった超強力なボロス・デッキを組むことができた。残酷なまでに優秀なクリーチャー、低いマナカーブ、その頂点に据えられた特別な一撃。
彼の試合が例外なくたっぷりと時間を残して終わっているのを見るに、私たちはこのボロス・マスターから、最高にアグレッシブなギルドのドラフト方法を学ぶ機会を得たと言えよう。
まずはデッキ。
ポール・リーツェルのボロス
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そのプランとは、言うなれば始めからボロスに決め打ちすることで、それはリーツェルが25回ほどのドラフト練習で培ったプランだ……そのうち23回ほどがボロスだった。
「安く取れるコモンのパワー・レベルが驚くほど高いんだ」と、リーツェルは言う。「ボロスは最低ラインも最高ラインも一番高いんだよ。ピックで大失敗しても2-1はいける」
おっと、この記事を読んだみんながボロス決め打ちを試そうとなだれ込む前に、ひとつ注意点だ。それはギルドを絞って盲目的にピックしていけばいいなんて単純なものではない。
「俺には今回限りの有利な点もあった」と、リーツェル。軍への忠誠をすべて晒した上でもまだ語るものがある。「(チームメイトである)オーウェン・ツァーテンヴァルド/Owen Turtenwaldが右隣でラッキーだったよ。彼は俺がドラフトで何がしたいか知っているんだ。ボロスを選ぶこと、たしかに彼にはそれができた。でも、そんなことしたら二人の船がどっちも沈むような魚雷になっちゃうからね」
リーツェルが赤と白のカードを取り、高評価の神話レアですら流してしまうであろうという認識を得ていたため、ツァーテンヴァルドはチームメイト(ふたりはチーム「SCG」のプレイヤーだ)のためにドアを開けっ放しにして、リーツェルはそれに乗じることができたのだ。
しかし、リーツェルが行なった神話レアより《強盗》を優先するピックの裏にある理由はさらに深いところにあり、そこからはボロス・ギルドをドラフトする方法について膨大な洞察が与えられている。
練習の過程で、リーツェルはすべてのボロスのカードをリスト化し、それぞれ比べた上で評価づけをした。その後さらにプレイを繰り返して、チームメイトから意見をもらい、そのリストを改訂した。その結果について、彼は「ほぼ完璧」と評した。
「ピックにはデッキに応じて柔軟性が求められる。たとえば、俺は2回にわたって《徴税理事》ではなく《空騎士の軍団兵》を優先した。安いコモンの白のクリーチャーは後で状況に応じて取ることができると、わかっていたからだ」と、彼はそう言った。
とはいえ、リーツェルには彼がこだわり続けるデッキのために厳格なピック順と理想的なマナ・カーブがある。
彼が言うには、このリストのクリーチャーたちはデッキに応じて絶えず順位を交換しているそうだ。リーツェルの評価ではそれらは皆《軍部の栄光》と同じ3.5だった。
これらのすぐ下に、彼はマナ・カーブを埋める、すべてのクリーチャーの相対的なコストを考えるときに重宝する《皮印のゴブリン》のようなカードを位置づけている。
リーツェルはまた、過大評価されているものと過小評価されているものについても指摘した。《亡霊招き》や《はた迷惑なゴブリン》、《盲従》、《鋳造所通りの住人》はボロス・デッキにおいて十分に評価されていない、と彼は言う。その一方で、《大規模な奇襲》、《オルドルーンの古参兵》、《向こう見ずな技術》、《反逆の行動》そして《突撃するグリフィン》はプレイに適したカードではあるものの、高く見られすぎているそうだ。
とりわけ、《大規模な奇襲》は評価に見合った働きをしていない、とリーツェルは指摘する。
「苦戦しているゲームで、ある程度クリーチャーが自軍にいて、手札にはスペルがある、なんてことはありえない」と、リーツェル。「『やれやれ、そこの2/2か3/3を除去できさえすればなあ』と思うような状況じゃないんだ」
理想のボロス・デッキではマナ・カーブも大切だ、と彼は言う。おおむねこのようなマナ域になるようだ。
クリーチャーは15枚か16枚が理想で、残りはコンバット・トリックと除去で埋めたい、とリーツェル。
ドラフト上級者のために、リーツェルはボロス・デッキをさらにふたつの異なる陣営に分けた。《鋳造所通りの住人》を用いて「オール・イン」に寄せたもの、とリーツェルが述べる赤が基調のデッキでは、《五連火災》のようなカードが価値を増す。「トリッキー」に寄せた白が基調のデッキでは、強請メカニズムを増やし、《騎士の見張り》のようなカードでアドバンテージを取っていくのだ。
どうやら、これまでの言葉の数々を一言にまとめるのなら、ボロスのドラフト方法とは、世界最高級のボロス研究者であるこの男に依存するようだ。だが、最後に究極の質問をこの「《聖なる鋳造所》をタップする世界に生きる男」へぶつけてみよう。
何を取れたらボロスに行かないか?
「難しい質問だね。ボロスのカードを最初にピックしないことに足る、呆れるほどのものじゃないと。《一族の誇示》みたいな……」彼はそこで一息いれた。「いや、別のものがいいな。《一族の誇示》だったらボロスにタッチするからね。《幽霊議員オブゼダート》みたいなものと《軍部の栄光》みたいなボロス専用のカードだったら。うん、オブゼダートを取るかな」
と、そこで彼は再び言葉を切り、考え出した。
「でも、《強盗》が同じパックにあったら、たぶん《強盗》を取ると思うよ」
(Tr. Tetsuya Yabuki)