真木孝一郎が6-0というスコアでフューチャーマッチへと招待された。これは事件である。

もちろん、これは常に3ラウンド・バイという高いレーティングを維持し続けているという国内屈指のリミテッダーであるからこその逸話であり、真木の戦歴に引き分けがこれだけ多いのは「それだけ打ち負かすのが難しいプレイヤーである」ということを端的に意味するのだ。さらに付け加えるなら、真木がこうも引き分けだらけとなってしまうのはそれだけハードラックだったということでもある。個人的に知る限り、ここ最近の真木のリミテッド・グランプリはというと…初日にどうしようもない糞パックを頂戴して…引き分け街道まっしぐらなのである。
対するはシンガポールから彼女連れで参戦の好青年、Royce Chai。
彼はアジア圏屈指の強豪であり、グランプリでのベスト8進出2回、アジア選手権ベスト4、さらにプロツアー参戦多数というツワモノ。
Game 1
後手マリガンで淡々とハンドをキープした真木。後ほど聞いた限り
「うわー。やな予感」
という気持ちでいっぱいだったらしい。もちろん真木はポーカーフェイスだったが。
とりあえず注目の開幕ターン。Chaiセット《平地/Plains》でターンエンド。真木もセット《平地/Plains》と鏡打ちにてゴー。
第二ターン。Chai。アンタップ、アップキープ、ドロー…溶岩使いばりに渋面で…ゴー。ワンランドスタートで土地が止まった?
マリガンながら悪くないハンドだった真木はここでセット《森/Forest》から《鉛のマイア/Leaden Myr》を展開してみる。
第三ターン。Chai。アンタップ、アップキープ、ドロー…《上天の呪文爆弾/AEther Spellbomb》キャスト。これを後にキャントリップしても土地はやってこない。
ごっつぁんゴール臭プンプンの中、真木は《空狩人の巡回兵/Skyhunter Patrol》、《テル=ジラードの流刑者/Tel-Jilad Exile》、《金属ガエル/Frogmite》とクリーチャーを展開。
実は赤丸級アタッカーを整列させたわけではないのだが、いかんせんごっつぁんゴール。頭数さえ揃えばよかったのである。
真木、追い風を感じさせる一勝。
真木-1, Chai-0
-Sideboarding-
策士真木孝一郎は事故を起こしたChaiが使用した呪文爆弾が「青かった」ことを受け、サイドボーディングでデッキに大胆な外科手術を敢行。いわく…
「こっちの緑は正直重い連中ばっかり。《十二の瞳/One Dozen Eyes》がメインディッシュだしね。そうなると相手が青いっていうことは先手スタートされた親和系ビートダウンに速度ではかなわないよ」
とのことでメインの緑を抜いて青いカードたちといれかえ。
OUT
《解体/Deconstruct》
《十二の瞳/One Dozen Eyes》
《テル=ジラードの流刑者/Tel-Jilad Exile》
《ファングレンの狩人/Fangren Hunter》
IN
《物読み/Thoughtcast》
《厳粛な空護り/Somber Hoverguard》×2
《知識の渇望/Thirst for Knowledge》
Game 2
Chaiセット《島/Island》、真木《山/Mountain》という開幕ターンで、今度はChaiが第2ターンに環境のお約束《銅のマイア/Copper Myr》を展開。真木は《レオニンの居衛/Leonin Den-Guard》。
3ターン目にChaiはセットランドが出来なかったが先ほどのマイアのおかげで《兵士の模造品/Soldier Replica》を召喚。真木はセットランドから《空狩人の若人/Skyhunter Cub》で応酬。
お互いが2枚ずつクリーチャーを呼び出して迎えた第4ターンはお互いがセットランドのみでターンを返したのだが、真木のエンドステップに攻防が。Chaiはこのタイミングで《針虫/Needlebug》をインスタントスピードで展開したのだが、真木はスタックで《知識の渇望/Thirst for Knowledge》。3枚のカードをドローして《金属ガエル/Frogmite》をディスカードするという風にハンドを整理した。
Chaiはここで《針虫/Needlebug》をレッドゾーンに送り出したのだが、真木はこれを冷静に《レオニンの居衛/Leonin Den-Guard》でブロック。ここでコンバットトリックの応酬はなく、静かに第二メインステップへと時は流れ、Chaiは《マイアの処罰者/Myr Enforcer》を展開。

Chaiは《針虫/Needlebug》によるアタックを済ませてから《オーガの爆走者/Ogre Leadfoot》を展開してなんとか抵抗。なんとか《骨断ちの矛槍/Bonesplitter》が破壊したいところだろう。
真木は初手に2枚かかえていた《厳粛な空護り/Somber Hoverguard》のうちの1枚をここで展開し、《骨断ちの矛槍/Bonesplitter》を《空狩人の若人/Skyhunter Cub》にまとわせて豪快に5点アタック。
Chaiもここで引いてはならず、マイア以外の全軍突撃で5点殴りかえし、実はトップデッキしていた《爆破/Detonate》で《骨断ちの矛槍/Bonesplitter》を叩き割る。大事に至る前に《怨恨/Rancor》をようやく《消去/Erase》出来たというわけだ。
ここはインファイトだな、と真木も腰を落としてChaiに殴りかかる。《厳粛な空護り/Somber Hoverguard》と《空狩人の若人/Skyhunter Cub》をレッドゾーンに送り込んで5点殴り返してやろうと目論むが、Chaiはここですごい形相で《針虫/Needlebug》2号機をインスタントで召喚して《空狩人の若人/Skyhunter Cub》をブロック。この相打ちによってダメージを3点で食い止めて見せた。…しかしながら、真木には続く《厳粛な空護り/Somber Hoverguard》が控えているのである。なんせ初手から2枚抱えていたのだから。
2体の《厳粛な空護り/Somber Hoverguard》をならべられてしまったChaiだったが、こうなってはともかく乱打戦に持ち込むしかない。5点アタックで真木のライフを残り7点にまで減らして見せた。ただ、ここで肝心の追加となるクリーチャーが呼べない辛さよ。
もちろん真木もここは殴りあいの構えで航空戦力によって6点のダメージをお返ししてChaiも残り6。次のターンにはこれでキッチリと殴りきるために地上の備えとして《メガエイトグ/Megatog》を光臨させた。このモンスターのためのドーピングアイテムには事欠いていたわけだが、そもそもなかなかのサイズなのである。
Chaiはここで2体のクリーチャーでアタックし、《メガエイトグ/Megatog》が《オーガの爆走者/Ogre Leadfoot》をブロックして粉砕した。ここで《厳粛な空護り/Somber Hoverguard》への対抗策らしいパーマネントを展開できるというわけでもなくChaiはターンエンド。
真木はとどめとばかりに《ゴーレム皮の篭手/Golem-Skin Gauntlets》をプレイしてから総員で突撃。《メガエイトグ/Megatog》に《ゴーレム皮の篭手/Golem-Skin Gauntlets》を食べさせて、チャンプブロッカーだったマナ・マイアごとChaiを粉砕しようとしたのだった。
しかし、ここでChaiはトップデッキしていた《畏敬の一撃/Awe Strike》をダメージスタック後に披露。ここで1ターンの最後の猶予をえることとなったわけだが、結局真木によって《針虫/Needlebug》が《粉砕/Shatter》されてしまい…万策つきる。
真木-2, Chai-0
なんと、わずか30分弱でマッチを真木が終わらせてしまった。
ともあれ久々の追い風を感じる中、今回こそ彼はベスト8インタビューを取材「される側」となれるのではないだろうか? ともあれ、7回戦を終えて全勝での暫定首位というポジショニングにたった真木孝一郎からは往年の凄みを再認識させられたものだった。そう、彼はマジックの大会に勝利して乗用車を獲得したこともあるというインビテ-ショナル・プレイヤーなのである。
最後に御大から一言。
「先手ワンランドでマイア2枚呪文爆弾2枚って言うのは乗せられちゃダメ。後手ならはじめてもいいけどね」