Jonny vs. AlexJon Finkelといえば最強のアメリカ人プレイヤーである。かつては「アメリカ人の」とわざわざ断らなくてもよかったのだが、今となっては御当地ドイツのKai Buddeが世界最強の称号をほしいままにしている現状だから仕方あるまい。しかし、この世界選手権でFinkelが優勝し、Buddeが芳しくない成績をおさめたような場合には...Finkelの年間MVP逆転受賞というシナリオも存在している。そして、たしかに一時は低迷していたFinkelだが、実際に復調の兆しはある。今季はだいぶ調子をあげてきているようで、先日のアメリカ選手権でも見事にベスト8入賞を果たしたばかりだ。この世界選手権での活躍には是非とも期待したいところである。
対するAlex ShvartsmanはSideboardにおけるコラムニスト、あるいはカードショップの経営者としても有名で、「Mr.Grandprix」というニックネームからもわかるように全世界のグランプリをサーキットして活躍を果たしたプレイヤーだ。今では赤いドラゴン背負って戦う誇り高きYMGのメンバーでもある。
ところで、どうやらホテルの冷房にやられたということでAlexは体調がすぐれないらしい。デッキをシャッフルしながらクシャミ、サイコロをころがしながらクシャミ...といった有様である。プレイに悪い影響が出ないとよいのだが。
ちなみに、使用デッキは黒緑のAlex Shvartsmanと青白のJon Finkelといった具合だ。色を見れば一目瞭然、お互いの狙いは実にはっきりしているだろう。つまり、Alex Shvartsmanにはクリーチャーのサイズで圧倒するか《畏怖/Fear》能力をもった黒いクリーチャーたちでのビートダウンという明確な勝ち筋が存在しており、一方のFinkelも地上戦線を膠着させて空中戦を仕掛けたいという思惑がある。
Game 1
2ターン目《幸運を祈る者/Wellwisher》、3ターン目にも《陰謀団の取調官/Cabal Interrogator》。黒緑ながらサイズ先行ではなくシステムクリーチャーから始動する先攻のAlex Shvartsman。実際、土地ばかりとはいえこの手札干渉クAlex ShvartsmanリーチャーはFinkelに都合4枚のカードを捨てるよう迫ることになる。
しかし、いかにアドバンテージをコツコツと稼いでいったといっても、やはり攻めが細くてはどうしようもない。対照的にFinkelは3ターン目に裏向きで《ダールの槍騎兵/Daru Lancer》、4ターン目に《慧眼のエイヴン/Keeneye Aven》、5ターン目にも《詐欺の壁/Wall of Deceit》と裏向きの《ダールの槍騎兵/Daru Lancer》2体目...と展開してダメージレースで先行する。Shvartsmanも5ターン目エンドステップからは《鉤爪の統率者/Caller of the Claw》を召喚して(これもエルフ)《幸運を祈る者/Wellwisher》での回復量をターンあたま2点としてささやかに抵抗するも、やはり殴れないのがいただけない。
ようやく引き当てた《千足虫/Gigapede》が《変異》をブロックしても、当然これをFunkelはで《ダールの槍騎兵/Daru Lancer》に変化させる。かくて一方的に《千足虫/Gigapede》退場。Shvartsmanはここでいわく「ついてないなぁ」。しかし、《変異》は実は両方とも《ダールの槍騎兵/Daru Lancer》な罠。別に2択を運悪くハズしたわけではない。...ちなみに、今戦っているのはブードラでなくロチェスター。そう、お互いにデッキに入っているカードの内容は知っているはずだ。
とりあえず、《千足虫/Gigapede》は拾わずにShvartsmanは続く7ターン目に《ゾンビの殺し屋/Zombie Cutthroat》を普通に表向きで召喚。基本的には《変異》からのコンバットトリックで登場するのがほとんどだが、ライフで押されている現状だからこうしたのだろう。そんなわけで、防御をまかせて《陰謀団の取調官/Cabal Interrogator》と《鉤爪の統率者/Caller of the Claw》がアタックに参加。Finkelの側に《詐欺の壁/Wall of Deceit》が残っている手前、とりあえず1点しかダメージは通らない。されど1点。
そして、返しのターンのアタックでFinkelはもう1体の《変異》も《ダールの槍騎兵/Daru Lancer》だったことを明かす。もちろん、片方は《ゾンビの殺し屋/Zombie Cutthroat》にブロックされた。
ダメージレースで負けるわけにいかないShvartsmanは《すがりつく不死/Clutch of Undeath》で《ダールの槍騎兵/Daru Lancer》を片方無力化。これによってFinkelのダメージクロックはとまってしまったかに見えた(ライフゲイン量とフライヤーのアタックが殺)が、続くターンにFinkelは次なる航空戦力を召喚して対抗。クリーチャー除去カードにもなりうる「挑発」もちの《急襲する鉤爪兵/Swooping Talon》だ。
この《急襲する鉤爪兵/Swooping Talon》をどうにもできずにShvartsmanの手がピタリととまってしまったところで、Finkelはさらに追い討ちをかけた。《ドラゴンの鱗/Dragon Scales》をその《急襲する鉤爪兵/Swooping Talon》にまとわせ、さらに《疾風衣の散兵/Gustcloak Skirmisher》を航空戦線に追加投入したのである。Shvartsmanは少しばかり遅すぎた《切り刻まれた軍勢/Severed Legion》を展開することしか出来ない。そしてクシャミ。
結局、続くターンのFinkelのトップデッキがダメ押しとなった。《流れ込む知識/Rush of Knowledge》で6枚のカードをドローし、Shvartsmanが最後の希望として引き当てたばかりの《針撃ちゴルナ/Needleshot Gourna》を《平和な心/Pacifism》で黙らせたのだ。
Finkel-1 Shvartsman-0
Game 2
第1ゲームに続いて先攻となったShvarstmanは、これまた1ゲーム目を彷彿とさせる2ターン目の《幸運を祈る者/Wellwisher》というスタート。森サイクリングを経由して第4ターンに《変異/Morph》を展開というたちあがりとなった。そして、Finkelは緒戦からの好調を見事に維持しているようだった。すなわち、3ターン目に《霧衣の壁/Mistform Wall》、4ターン目には「増幅=3」での《ダールのとげ刺し/Daru Stinger》といった具合である。
Jon FinkelShvartsmanは《復讐に燃えた死者/Vengeful Dead》を展開してターンを終え、Finkelは《霧衣の壁/Mistform Wall》を《兵士/Soldier》に変換してアタックし、「増幅」時に見せた《エイヴンの遠見/Aven Farseer》2体を召喚。これでShvartsmanは迂闊に《変異/Morph》をおもてがえすことができなくなったわけだが、それでも《恐怖布の急使/Frightshroud Courier》を展開して《復讐に燃えた死者/Vengeful Dead》を《畏怖/Fear》能力で巨大なダメージクロックにしようと試みた。
しかし、その目論見もFinkelの《流れ込む知識/Rush of Knowledge》X=4によって阻まれてしまったのだった。一度は5点のダメージを叩き出した《復讐に燃えた死者/Vengeful Dead》も《凍結/Frozen Solid》で完封されてしまい、場には《疾風衣の散兵/Gustcloak Skirmisher》が加えられてしまう。それでもShvartsmanは次なる《畏怖/Fear》アタッカーとして《宝石の手の徘徊者/Gempalm Strider》に目星をつけたのだが...これまた《凍結/Frozen Solid》。...ハクション。
Finkelは自ら召喚した《変異/Morph》をおもてがえして2体の《エイヴンの遠見/Aven Farseer》を強化し、鮮やかにビートダウンを果たして見せたのだった。
...Alex、とりあえず風邪なおしてね。
Final Results:Jon Finkel-2 Alex Shvartsman