ワールド・マジック・カップ・マラソンに挑んだ男たち

更新日 Event Coverage on 2013年 8月 3日

By Event Coverage Staff

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 運命の女神は備えあるものを好みます。マジックのトップ・レベルにおける「備え」とは、あるフォーマットを究めるために注いだ、数え切れないほどのプレイテストの時間です。ワールド・マジック・カップは、この大会ならではの課題を課しました。チームメイトたちは、住んでいる場所がバラバラであるという問題に対処し、また個人的なスケジュールや他にやらなければいけないことによる制約にも立ち向かわなければいけません。チームメイトたちの都合がつけば、今度はチームとしての戦い方を習得する必要があります。それぞれの長所と短所は? チーム・シールドで協力するときのそれぞれの役割は? これらすべてを、特定のフォーマットのプレイテストに入る前に話しておかなければいけないのです。

 ある6人のプレイヤーたちにとって、この週末のワールド・マジック・カップは延々と続くマラソンの一部分に過ぎません。ジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leyton、シャハール・シェンハー/Shahar Shenhar、ウィリー・エデル/Willy Edel、リー・シー・ティエン/Lee Shi Tian、スタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifka、渡辺雄也の6人は、各国のキャプテンを務めているだけではないのです。彼らは、その年で最も権威のある大会、マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2013の選手なのです。

 つまり、彼らは(プレイヤーの皆さんがお気に入りの『Modern Masters』を含む)個人戦で行われるふたつのドラフト、個人戦で行われるふたつの構築、それぞれ別に行われるふたつのチーム・シールド、そして新たに登場したチーム共同デッキ構築・スタンダード、という風に次々と移り変わる7つのフォーマットに備えているということです。彼らは5日間にわたって最高レベルの競技に挑みます。最初の2日間は、マジックというゲームで最高の賞金と最高の栄誉と最高のプロ・ポイントを賭けて戦い、フラストレーションに心を焦がし12ラウンドにわたる極度の集中を経ても、次の日は眠ることができません。朝も早くからチームメイトたちと並んで座り、世界一を目指します。これらはすべて、さらなるプレッシャーのかかる日曜日へ続くのです。

 そんなに一度に詰め込んだらプレイヤーたちが挫けてしまう、と皆さんそうお考えかもしれませんね。世界選手権の優勝は、マジック最高の偉業のひとつです。世界選手権でのパフォーマンスを上げるためにすべてのエネルギーを注ぎ込めるようにした方が、好ましいのではないでしょうか? 理屈の上の話ではありますが、チーム・キャプテンたちは国を代表して戦えることに、きっと名誉を感じてくれていると思います。特別な意味のある大会での困難は、望むところでしょう。マジック・プロツアー殿堂入りを果たし、また世界選手権を戦い抜きトップ4の地位を固めたベン・スターク/Ben Starkも、アメリカ・チームに参加できなかったことを後悔せずにはいられなかったそうです。

 では、キャプテンたちはこの困難にどうやって立ち向かったのでしょう? この5日間にわたる長く厳しい競技に向けて、どのような準備をしたのでしょうか?

スタニスラフ・ツィフカ

 チェコ・チームのキャプテン、スタニスラフ・ツィフカは、「ただみんなのお世話をしていただけですよ」と、冗談交じりに言いました。彼らは十分に合同練習ができず、そのためチーム共同デッキ構築・スタンダードに向けて、各プレイヤーの強みを活かしたデッキを作ることに集中しました。世界選手権に向けてやらなければならないことのため、ツィフカがチームメイトの準備に割ける時間は少なく、彼はコーチ役として見守ることになりました。

リー・シー・ティエン

 香港代表のキャプテン、リー・シー・ティエンは多くの労力をかけてきました。彼の率いるチームは経験が浅く、そのため彼がチームメイトを管理する必要があったのです。実際にプレイテストをする時間は取れませんでしたが、シールド・デッキの構築を指揮することには自信がありました。しかし、ツィフカ同様構築ラウンドでは見守るようにして、彼の豊富な知識を全試合で役立てるためコーチ役に回りました。「世界選手権に向けて手広く行なったプレイテストが、チーム共同デッキ構築・スタンダードで使いたいものに対して多くのひらめきをくれたよ」と彼は言っています。彼はそのおかげで、チームメイトに3つのデッキをプレゼントできたのです。

ジョシュ・アター=レイトン

 アメリカ代表のキャプテン、ジョシュ・アター=レイトンは、個人戦のスタンダードとチーム共同デッキ構築・スタンダードの間によく似た接点を見つけました。プレイテストの結果、彼らはジャンド・デッキと青白コントロール・デッキを使いたいと考え、残る問題は3つめのデッキを見つけるだけでした。そうしている間にも、彼のチームメイトは『基本セット2014』と『ラヴニカへの回帰』ブロックのチーム・シールドに向けて、プレイテストの責務に取り組んでいました。

シャハール・シェンハー

 シャハール・シェンハーとイスラエル・チームの面々は、このイベントの準備をするためにはしっかり集まる必要があると意識していました。しかし、大会の直前まで、世界中を飛び回るシェンハーを中心に彼らは各地に分かれていました。その状況を解決したのは、グランプリ・リミニでした。そこで集まったアムステルダム組は、猛烈な勢いでプレイテストに取り組んだのです。

ウィリー・エデル

 ブラジル代表のウィリー・エデルも実戦派でした。彼は数ヵ月にわたってたくさんの時間をマジックに注ぎ、そのおかげで世界選手権ではスタンダードにもモダンにも安心して臨めました。チームメイトたちにもできるだけ安心してチーム共同デッキ構築・スタンダードへ臨んで欲しいと考えた彼は、チームメイトたちに使いたいデッキをふたつ挙げてもらい、彼自身はそれ以外で組むことにしました。このため、チームメイトたちはチーム・シールドに集中することができたのです。


渡辺雄也

 渡辺雄也は余力を残すようなことをしませんでした。世界選手権とワールド・マジック・カップの練習時間を分けて計画するのではなく、単純に多くの時間を費やしたのです! 彼が練習に参加できないときはチームメイトがシールド戦に取り組み、彼がいるときはチーム共同デッキ構築・スタンダードの練習に明け暮れました。木曜日が終わるころには、彼は疲れ果てていました。

「疲れ」というのもマラソンを走る上で関わってくることです。彼らは公園を散歩しているわけではないのです。精神に強烈な負荷をかける日々を繰り返せば、その負荷は蓄積されていき、一番重要な日曜日に疲れが出てしまうでしょう! イスラエル代表が4-3で2日目進出を決める際はチームのサポートに留まったシェンハーは、自分のペースを作ることが一番大切だ、と言っています。「疲れは感じていないかな。良い感じだ。食事と睡眠はしっかり取ることを心がけてきたよ」と、エデルも同じことを言いました。時差ボケのせいで、大会開始時が一番疲れていたそうです。彼は、チームのパフォーマンスにプラスの影響が出るように気をつけてきました。「世界選手権では振るわなかったけど、今日は上手くいってるね」リーは逆に、疲労が香港代表の奮闘を支えたと語っています。しかし、結果的には勝てば次の日に進める7戦目を落としてしまいました。笑顔で語るリーですが、疲れ切っている様子でした。それでも、彼にはこの走り方しかなかったのです。


(Tr. Tetsuya Yabuki)

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