決勝:1日で一番大切な食事
Stanislav Cifka(チェコ) vs. 渡辺 雄也(日本)

更新日 Event Coverage on 2012年 10月 21日

By Tim Willoughby

スタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifka(セカンド・ブレックファースト) vs. 渡辺 雄也(ジャンド)

 プロツアー「ラヴニカへの回帰」決勝戦に備えてデッキ・リストに目を通しているうちに、渡辺雄也は本来の調子を取り戻したようだった。マーシャル・サトクリフ/Marshall Sutcliffeが、渡辺はシアトルに移住することを真剣に考えたほうがいい、と冗談めかして提案していた。渡辺はここシアトルでマジック・プレイヤー選手権を勝ち取り、そして今同じ場所で、プロツアー決勝の舞台にいるのだ。この2つの大会の間に、すでに渡辺はプラチナレベルの地位を固めていた。さらにあとわずか1勝へ舵取りができれば、彼の素晴らしいマジック歴の仕上げに残された唯一のものを達成することになる。すなわち、プロツアー優勝。

 わずか1試合を勝つ……それがどれだけ難しいことか? そう、チェコ共和国のスタニスラフ・ツィフカに対しては、渡辺は両手いっぱいに難題を抱えていた。渡辺は今回のプロツアーの第14回戦でツィフカと一戦交え、ジャンド・デッキはセカンド・ブレックファーストに対して特別有利なわけではないことを悟った。ツィフカのデッキは非常に堅実なコンボ・デッキで、おおむね第4ターンくらいに成立するものだが、必要とあればさらに速く決めることも可能だった。それによってジャンド側が干渉する機会はほとんどなく、できることといえば、軸をずらして攻め込み、コンボを成立させるのが難しいライフまで落とすことである。

 試合の前に渡辺と話をすると、彼はプロツアー決勝の舞台に立てたことをとても喜んでいたが、この試合で有利を得るには少しばかり運を味方につけなければならないことを認めていた。1ゲーム目の最初のターンで《死儀礼のシャーマン》を置いて、《ヴェールのリリアナ》を呼ぶためにマナ加速ができる可能性を持つこと、あるいは《思考囲い》や《コジレックの審問》で可能な限りの妨害を行うことが重要だろう。サイドボード後のゲームでは、ツィフカが《神聖の力線》を手に入れないことが鍵となる。この白い力線は、渡辺がゲームに干渉する選択肢の多くを遮断するのだ。

ジャガーノート・オブ・プロツアー「ラヴニカへの回帰」となったスタニスラフ・ツィフカは、
プレイヤー・オブ・ザ・イヤー渡辺雄也を相手に伝説の決勝戦を始めた。


ゲーム1

 ツィフカはスイス・ラウンドをトップの成績で終えてこの試合に臨み、さらにこの3ゲーム先取のマッチにおいて、彼はもうひとつアドバンテージを持っていた。だがしかし、マリガン後迎えた彼の最初のターンは、《神聖なる泉》に《彩色の星》のみ、と特筆すべきものとはならなかった。渡辺はフェッチ・ランドから《踏み鳴らされる地》を探し、《死儀礼のシャーマン》から始めた。ここまでは、理想の形だ。必要に応じて、《死儀礼のシャーマン》はツィフカの墓地から《第二の日の出》のようなものを追放するのに使えるが、それより大切なのは後の脅威のためにマナ加速ができることだ。

 ツィフカの2ターン目は土地と《妖術師のガラクタ》だけだった。渡辺は2ターン目に、《血の墓所》を持ってくるのにもう1枚フェッチ・ランドを使うことができた。この試合では渡辺のライフ総量はあってないようなものなので、彼はそこに関心を持たなかった……《第二の日の出》コンボが与えるダメージには際限がないことを考えればなおさら、ある時点で生きてさえいれば、死にかけであってもいいのだ。

 渡辺は《台所の嫌がらせ屋》をプレイしてライフを16としたが、肝心なのは2ターン目にして3/2の脅威を持ったことだ。渡辺はツィフカがコンボを始めるのに必要な時間を与えるつもりはなかった。

 3ターン目、ツィフカは《彩色の星》を生け贄に捧げて《作り直し》を唱え、《睡蓮の花》を持ってきた。それから《妖術師のガラクタ》で《作り直し》をデッキの底に送ったのち、小さな《第二の日の出》を迎えた。ここで戦場に戻したのはフェッチ・ランド、ガラクタ、《彩色の星》、《睡蓮の花》だ。ツィフカは《妖術師のガラクタ》で先ほどの《第二の日の出》をデッキの底に送ったのち、戻ってきた《沸騰する小湖》を起動して強力なミラディンのインスタントを再び引き込むチャンスを得た。ツィフカのターンはまだ終わらない。彼は2枚目の《作り直し》で《彩色の星》を再び《睡蓮の花》に変えた。

ツィフカは彼の《第二の日の出》コンボ・デッキを回すエンジンを手に入れる。


 タップ・アウトの状態で、渡辺はツィフカが《手練》に続けて《信仰の見返り》で《睡蓮の花》2枚と《彩色の星》、《妖術師のガラクタ》、《沸騰する小湖》を戦場に戻すのを笑って見ていることしかできなかった。渡辺はこのゲーム、ツィフカの勝ちで終わるだろうと感じていたが、それを見ていたかった。プロツアー決勝にふさわしいフェアな心だ。

 ツィフカは《他所のフラスコ》でカードを引き、さらにもう1枚《作り直し》を得た。これまで同様、《彩色の星》を《睡蓮の花》へ変えた。渡辺はツィフカがもう十分にマナを浮かせていることに気づき、ツィフカがマナを数えるためのサイコロをいくつか手に取って、戯れにころがし始めた。もしこの試合がトップ8外のものであったなら、少なくとも1ゲーム目はプレイを続けることで何らかの機会を得ていたかもしれない。だが実際、ツィフカが今大会のスイス・ラウンドを完全に支配していたという事実を見ると、彼は最初のゲームに取るべき道を常に把握していたのだろう。

 自分自身楽しみながら、渡辺はツィフカのマナの記録を申し出て、求められるたびに青と白のサイコロを動かした。間もなくして、渡辺は何かおかしなことが起きていることに気がついた。ツィフカがターンを渡した。《第二の日の出》効果を持つものを引かず、ターンを返さざるを得なかったのだ。

「君の勝ちだ……」とツィフカがぽつりと言った。この週末を通して滅多に見られなかった失敗だった。

 ツィフカは手札に3枚のカードを残してターンを終えた。一方渡辺は《血編み髪のエルフ》から《闇の腹心》と続けたが、ツィフカを倒すには至らなかった。つまり、ツィフカが《第二の日の出》によって勝利するチャンスを再び得た、ということだ。

 フェッチ・ランドでツィフカのライフは8。彼はできる限り最高の形を求めて、《血清の幻視》でデッキを掘った。彼の表情を見ると、はっきりとした勝利への道を掴むことはできなかったようだ。しかし、チェスの名人であるスタニスラフ・ツィフカは、少ない勝ち筋を見つけ出すことにも慣れていた。《血清の幻視》の占術で見たカードは両方デッキの上に残した。そのうち1枚は《彩色の宝球》で、それを《作り直し》て《妖術師のガラクタ》に変化させた。

 これで彼はより多くのカードを引けて、何かが軌道に乗るかもしれない。渡辺は緊張した様子で座り、対戦相手の吐くため息をひそかに喜んだ。《妖術師のガラクタ》が《作り直し》をツィフカのデッキの底へ送った。それから《信仰の見返り》が《他所のフラスコ》、《彩色の宝球》、フェッチ・ランド、《睡蓮の花》を戦場に戻した。ツィフカのデッキにある《睡蓮の花》は今やそのほとんどが墓地にあり、その運用には慎重を要した。しかしそれでも、彼は退路を絶って挑まなければならなかった。

 《彩色の宝球》がツィフカのデッキをさらに深く掘り進め、彼は心細そうに《第二の日の出》を唱えてフェッチ・ランド、《他所のフラスコ》、《妖術師のガラクタ》、《睡蓮の花》を戦場に戻すと、コンボの継続を祈った。続く《血清の幻視》は2枚ともデッキの底へ送るものだった。ドローは乏しかったが、まだ続ける。《妖術師のガラクタ》でもう1枚引いた。マナ・プールには青マナがふたつで、これ以上マナを増やすものは《睡蓮の花》1枚しか残っていなかった。《信仰の見返り》をくれ! 《睡蓮の花》わずか1枚、という状況がコンボの足かせとなる中で、一連の動きを繰り返すたびにドローの連鎖は続けられた。

 とうとう、ツィフカは肩をすくめた。たどり着けなかった。

「ゲームセットだ」

待ってくれ、俺の勝ち? こんなことってあるのか?!


 渡辺は笑い声をあげた。彼は試合前、少しばかり運が必要だと言っていた。それを手に入れたのだ。果たして、サイドボード後あと2ゲームを取ることができるだろうか?

スタニスラフ・ツィフカ 0−1 渡辺雄也

 ツィフカはサイドボーディング中、頭の中で先ほどのゲームを再構築すると、笑顔を見せて、首を振った。最初のゲームがこのような結末を迎えるとは、誰も予想していなかっただろう。ツィフカがデッキをシャッフルしていると、偶然にもテーブルの上に《神聖の力線》が1枚落ちた。両プレイヤーとも笑わずにいられなかった。このカードが続くゲームの軸を担う可能性があることは、両者ともわかっていた。

 1ゲーム目終了後のサイドボーディングは以下の通り。

ツィフカ

−1《ギタクシア派の調査

−1《黄鉄の呪文爆弾

−2《沈黙

−1《手練

+1《ぶどう弾

+4《神聖の力線

渡辺

−1《台所の嫌がらせ屋

−4《稲妻

−2《夜の犠牲

+1《突然の衰微

+2《古えの遺恨

+1《ジャンドの魔除け

+3《殺戮遊戯

ゲーム2

 渡辺は、ゲームに干渉する手段がさらに少なくなり速さが必要になる、とわかっていた。よって、サイドボード後のゲームでは多少特殊なマリガン基準を持っていた。渡辺は7枚のカードを素早くデッキに戻し、6枚のカードも戻した。ツィフカのデッキが2度も失敗することは期待できない……渡辺は可能な限り最高のめぐり合わせを手に入れたかった。

 5枚の手札は4枚になった。ある時点で、それ以上は十分な土地を得られない危険を冒すので、キープせざるを得ないことになる。大きく息を吸い込んで4枚の手札を見ると、渡辺は顔をしかめながらもキープの意思を告げた。

好運は両者の間を行き来した。最初のゲームでは渡辺に運が向き対戦相手のコンボを失敗させると、第2ゲームでは初手4枚という、勝つには難しい状況へ彼を置いた。


 ツィフカは0ターン目に《神聖の力線》を置き、さらに1ターン目に《睡蓮の花》を待機すると、《血清の幻視》で手札を少し向上させ、早い段階でのコンボ成立を匂わせ続けた。渡辺は《闇の腹心》の最初の誘発で、2枚目の《闇の腹心》をめくった。すべてのダメージ源を渡辺が有する、狂ったダメージ・レースだ。渡辺はツィフカが2本目を取り返す可能性のあるターンを見据え、《死儀礼のシャーマン》を繰り出した。

 《睡蓮の花》が解決され、《彩色の星》2枚と《他所のフラスコ》と並んで着地した。1枚目の《彩色の星》が青マナを生むのに使われ、そのマナは《血清の幻視》に注がれた。《彩色の宝球》を引き、再び青マナを生み出して《手練》に使った。《作り直し》が《他所のフラスコ》を《睡蓮の花》に変えたところで、ツィフカは《第二の日の出》1枚と《信仰の見返り》2枚を含む手札を公開した。彼は手札を公開したまま楽しそうにプレイを続け、渡辺がカードを集めて速く次に行きたがる場合に備えた。

 渡辺はツィフカがコンボを進めるのを見守ることに納得しているようだ。彼はプロツアーでトップ8にいることを大切に思い、自分が負けそうだからといってさっさと切り上げるようなことはしなかった。最終的に渡辺は投了したのだが、それに対してツィフカは渡辺に「投了するとツィフカにゲームを完遂させるよりも少ない情報しか得られないだろう」などと思わせたくはないかのように彼のデッキの内容を見せた。つまるところ、渡辺が目にした第2ゲームのとどめの一撃は《ぶどう弾》だったということだ。

 2ゲーム目を落としても潔い渡辺の様子に、彼のマリガンはそこまで戦術的なものではなく、単純に土地がなかったのだ、とツィフカは認識した。

スタニスラフ・ツィフカ 1−1 渡辺雄也

 ツィフカは心の内で笑った。笑っている方が良かった。彼はサイドボードに入ったが、3ゲーム目に選択する勝ち手段はまったく見せないようにした。ツィフカは《ぶどう弾》による勝利を変更しなかったが、それを渡辺に知られるわけにはいかなかった。

ゲーム3

 3ゲーム目が始まるに際し、渡辺は初手をキープし、ツィフカはマリガンをした。

「力線がなかったよ」と、ツィフカは6枚のカードを引く前にシャッフルをしながら、笑顔を見せた。

 6枚となった手札にも《神聖の力線》はなかったが、明確にキープすべきものだった。さらに手札のカードを減らして偶然に身を任せるわけにはいかなかったのだ。1ターン目、渡辺からは《死儀礼のシャーマン》が繰り出され、ツィフカは《妖術師のガラクタ》を出して《睡蓮の花》を待機した。

 2ターン目、渡辺の《死儀礼のシャーマン》は攻撃させる以外の使い道がなかった。しかし、彼は盤面を構築するべく2体目のシャーマンを用いた。渡辺は「パチパチ」と音を鳴らして手札のカードをシャッフルした。するべきことはあったが、少し考える時間が必要だった。彼は首を回してほぐし、次の一手を熟考した。鋭く一息吸い込み、選択した。《ヴェールのリリアナ》だ。リリアナは忠誠カウンターをひとつ増やし、両プレイヤーに手札を捨てさせた。渡辺は捨てるカードを決めていたが、ツィフカの表情を見ると、捨てたい手札があるようには見えなかった。渡辺は2枚目のリリアナを落とし、ツィフカは《手練》を捨てた。

 ツィフカは《睡蓮の花》の待機カウンターを取り除くことを忘れるほどに動揺していた。彼は目を覚まそうと平手で顔を軽く打った。

「長い1日だ」ツィフカは頭を振った。彼は《他所のフラスコ》に続けて《妖術師のガラクタ》を出し、ターンを渡していた。

複雑なコンボ・デッキは、プレイヤーがすべてを把握する能力に影響を及ぼしかねない。


 渡辺がメイン・フェイズの初めにしたのは、リリアナの忠誠度を上げることだった。ツィフカは《霧深い雨林》(シャーマンの良いエサだ)を捨て、それから渡辺は《タルモゴイフ》を盤面に投入した。

 ツィフカには余分な待機となってしまった《睡蓮の花》を待つ時間が必ずしもあるわけではなかった。《》をタップしたのちに、《幽霊街》3枚を連続で使い、青マナ4つを得た。《作り直し》が《睡蓮の花》を持ってきた。ツィフカは《第二の日の出》と《信仰の見返り》を1枚ずつ持っていたが、ドロー手段がほとんどなかった。《他所のフラスコ》と《妖術師のガラクタ》が持ってきてくれることを期待するしかなかった。ツィフカは《彩色の宝球》を引き、それでもう1枚《彩色の宝球》を引き込んだ。列車は今まさに走り始めようとしていた。

 《信仰の見返り》。こうして今、ツィフカはコンボを続けるのに有効なドロー効果をもつものを5枚持っていた。《第二の日の出》効果を起こすたび、複数の《幽霊街》のおかげでデッキから多くの土地を取り除いて活きたドローができるようになり、彼がカードを引くとすぐに連鎖が起こった。ツィフカは2枚目の《信仰の見返り》に行き着いた。《彩色の星》が彼の手札から降り注ぎ、《ぶどう弾》を引き込んだ。ツィフカが十分なストーム数を稼いでいることは明らかで、渡辺はカードをまとめた。渡辺にとって良いスタートに見えたものの、ツィフカが勝利を重ね、この試合をリードした。

スタニスラフ・ツィフカ 2−1 渡辺雄也

 こうして、渡辺が彼の横に鎮座するプロツアー優勝のトロフィーを持ち帰るには、あと2ゲームを続けて勝たなければならなくなった。手で触れられるほど近くにあるトロフィーだが、それを自分のものにするにはやらなければならないことが多くある。

ゲーム4

死儀礼のシャーマン

 ツィフカは第4ゲームに備えてわずかにサイドボードを変えた。《手練》1枚を《黄鉄の呪文爆弾》に変えたのだ。これで彼のデッキには勝ち筋が2つあり、少しばかり《殺戮遊戯》への耐性がついたことだろう。実を言えば、ツィフカは渡辺の妨害のほとんどに先手を打つため0ターン目《神聖の力線》を採用しているので、これには議論の余地が大いにある。しかしプロツアーで勝つ、ということになると後悔するよりも安全をとるべきなのだ。

 渡辺は1ターン目《死儀礼のシャーマン》。ツィフカの最初の一手は《手練》だった。渡辺の2ターン目は、土地を置いて《死儀礼のシャーマン》で攻撃するほかに何もなかった。

 これから先のターンに発射する手札を楽しそうに入れ替えるツィフカから、さらに《血清の幻視》が繰り出された。同様に《手練》もプレイした後、ターンの終わりに渡辺が《死儀礼のシャーマン》を《血清の幻視》を取り除いて起動し、プレイヤーを対象に取らない能力でツィフカに2点のライフ損失を与えた。3ターン目、渡辺は《血編み髪のエルフ》で《闇の腹心》をめくった。プレッシャーをかけていく時間だ。彼は《闇の腹心》のドローで《ヴェールのリリアナ》を手に入れ、攻撃に取りかかる前に《古えの遺恨》で《他所のフラスコ》と《妖術師のガラクタ》を戦場から取り除いた。

 ツィフカのライフは9。このままではすぐにコンボを始めなくてはならなかった。彼は顔をしかめて手札を見渡すと、肩をすくめた。《彩色の星》をプレイして生け贄に捧げ、赤マナを生んだ。ツィフカは《黄鉄の呪文爆弾》をプレイして、それを《死儀礼のシャーマン》の除去に使い、その後《妖術師のガラクタ》を置いてターンを渡した。渡辺は強い決意をもってターンに入り、《ヴェールのリリアナ》を唱え、両プレイヤーにカードを捨てさせた。

 ライフは2点。ツィフカは一か八か始めなければならなかった。《幽霊街》で《》を《平地》に変えると、それをタップしてマナを生んだ。《妖術師のガラクタ》でカードをドローすると、《信仰の見返り》で《妖術師のガラクタ》と《》と《幽霊街》を戦場に戻し、これだけで何かを引き起こそうとしなければならなかった。追加のドローで必要なものは引けず、ツィフカは速やかにカードを集めた。

スタニスラフ・ツィフカ 2−2 渡辺雄也

観戦者たちはプロツアー「ラヴニカへの回帰」決勝戦最後のゲームが始まるのを待っている。


 プロツアー優勝を決めるため、最後にもう1ゲームある。そのことにツィフカは疲れたように笑って応じた。

「長い1日だな……」

 いまやツィフカは椅子に沈み込むようにして座り、一方渡辺は初めてのプロツアー・タイトルに向けてあと1ゲームまで持ち込んでくれた先ほどの勝利に、元気を取り戻した様子だった。ツィフカがこれまで起きたことに気を揉んでいる間、渡辺はトイレのため、ちょっとだけ休憩を取った。その間そのまま席についているプレイヤーもいるが、ツィフカは異なる過ごし方をした。彼は立ち上がって手足を伸ばし、フィーチャー・マッチ・エリアをゆっくり歩いた。血を巡らせ、脳を回転させるためだ。ツィフカは心も身体もプロツアー「ラヴニカへの回帰」最後のゲームに備えた。そして生き生きと席につくと、渡辺が席に戻るまでシャッフルを繰り返した。

ゲーム5

 ゲームを始めるに際し、ツィフカは《神聖の力線》、《睡蓮の花》2枚、そしてノーランドという一風変わった7枚をキープした。2ターン目にも土地は得られず、一方渡辺は1ターン目を《死儀礼のシャーマン》で始め、2ターン目は自分を対象に《思考囲い》を撃ち、《殺戮遊戯》を捨ててもう1枚の《殺戮遊戯》、《古えの遺恨》と《コジレックの審問》がある手札を公開した。渡辺は解答となりえるものを持っていたが、それらはこのゲームでは解答にならなかった。

チク、タク、チク、タク。


 ツィフカは3ターン目、このゲーム初めての土地を得た。《》のおかげで《血清の幻視》を唱えられたが、それはすぐさま《死儀礼のシャーマン》に追放された。まとまったアクションは4ターン目に起こった。まず1枚目の《睡蓮の花》が解決された。2枚目の《睡蓮の花》に対応して、《古えの遺恨》が1枚目を破壊した。これで、理論的に間違いなくツィフカがプロツアー最後のターンに取りかかれたであろうマナが、3つ足りなくなった。渡辺はこれで必要な分ツィフカが遅れてくれるのを願うしかなかった。

 ツィフカは《》を他の土地にするため《幽霊街》を置いた。《彩色の宝球》を唱え、これで青マナを生んだ。《信仰の見返り》のマナを引き出すのは《睡蓮の花》だ。マナの方は確保したが、カードを引くものは? ツィフカは《他所のフラスコ》を置き、《睡蓮の花》を待機してターンを渡した。このターンはプロツアー最後のターンではなかったようだ。

 ターンの終わりに、渡辺は《古えの遺恨》をフラッシュバックして《彩色の宝球》を破壊した。すでにマナは豊富にあるようなので、ツィフカにはカードを引くものを持っていてもらいたくなかった。渡辺は《死儀礼のシャーマン》で攻撃し、《タルモゴイフ》を投入した。

 ツィフカは《他所のフラスコ》を置き、ターンを返した。1ターン1ターン、初めてのプロツアー優勝トロフィーを掲げるのが近づくたびに、渡辺にとってはこの瞬間が贈り物のように感じられた。ツィフカのライフは17。このままいけばやがて渡辺の《タルモゴイフ》は3点ずつ攻撃を加えられるようになるだろう。渡辺は《コジレックの審問》を自分を対象に撃ち、《台所の嫌がらせ屋》を捨てた。これで《タルモゴイフ》が大きくなり、ツィフカを攻撃してライフを13まで落とした。13は《死儀礼のシャーマン》の起動型能力で11になり、ツィフカが再びコンボを始めずターンを渡すと、7になった。

 渡辺は《コジレックの審問》後、もはや手札を表にしてプレイを続けていた。彼の手札には《血編み髪のエルフ》があり、大いにツィフカを悩ませるものだった。いずれにしても、このゲームは、そしてプロツアーは間もなく終わりを告げるだろう。

 ツィフカはマナの方に問題はなかったので、なんとかカードを引こうと《作り直し》で《妖術師のガラクタ》を持ってきた。《幽霊街》を《》に使い、《》と換えた。2枚目の《作り直し》でもう1枚《妖術師のガラクタ》を持ってきた。果たしてツィフカは必要なものすべてを引くことができるのだろうか? 2枚目の《彩色の宝球》から、《第二の日の出》。

 すでにツィフカには膨大な量のパーマネントがあった。そして彼は手札から2枚目の《第二の日の出》を見せた。彼は《他所のフラスコ》と各種「彩色」道具で合計6枚のドロー効果を持ち、さらにデッキ枚数は《幽霊街》で少なくなっていた。最初のドローは《妖術師のガラクタ》と《手練》だった。このドローでコンボを達成したように思えたが、すでにこの決勝戦で見てきたように、確実な保証は何もなかった。

 ツィフカは《血清の幻視》を唱え、続けて《妖術師のガラクタ》と《彩色の宝球》をプレイした。彼は2枚目の《信仰の見返り》と《他所のフラスコ》を引き込んだ。この時点で、コンボの達成はほぼ確実となった。あとは最後に《ぶどう弾》を探すだけだ。ここまででストームは13。そしてツィフカは《第二の日の出》でさらに大量のドローを得た。

 ツィフカのデッキは薄くなっていったが、まだ《ぶどう弾》は見つからなかった。そこにたどり着くのは確実だ。ついにあった! ツィフカは渡辺のライフ総量ぴったりの《ぶどう弾》を放った。渡辺は《死儀礼のシャーマン》でライフを2点回復した。

 このわずかなミスも、まったく問題にならなさそうだった。ツィフカが築いたエンジンはまだ動くので、彼は《ぶどう弾》を戻せる《妖術師のガラクタ》を引くまでライブラリーを引き続け、戻した《ぶどう弾》を引くだけでよかった。あるいは、もうひとつの勝ち手段として入れていた《黄鉄の呪文爆弾》を使うだけでよかった。

ツィフカのセカンド・ブレックファーストがうまく回るなかで、渡辺の手札では《神聖の力線》を前にして《殺戮遊戯》がすべて腐っていた。


 いずれにしても、笑顔で手を伸ばした渡辺は、プロツアー「ラヴニカへの回帰」チャンピオン、スタニスラフ・ツィフカを祝福する最初のひとりにふさわしかった!

スタニスラフ・ツィフカ、プロツアー「ラヴニカへの回帰」優勝おめでとう!

(Tr. Tetsuya Yabuki)

Stanislav Cifka

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渡辺 雄也

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