決勝 : 森 勝洋(東京) vs. 山本 昇平(広島)

更新日 Event Coverage on 2006年 8月 27日

By Daisuke Kawasaki

決勝戦

天才とは、森 勝洋のための言葉である。

しかし、天才とはあまりに漠然とした言葉であり、だからこそ様々なニュアンスをもつ言葉である。それが意味するのは、頭の回転の速さだったり、勝負強さだったり、華麗さであったりする。だからこそ、世に天才は氾濫する。文字通り、天賦の才を天才と呼ぶのであれば、むしろ、天才でないものを探すほうが難しいのではないだろうか。だが、そんな天才の中のひとりである、「華麗なる天才」小室 修はこう言う。

小室 「モリカツは本物の天才ですよ。彼にくらべれば、僕なんて『偽りの天才』です。」

もはや、森というプレイヤーの実力に疑問を持つマジックプレイヤーは存在しないだろうとは思う。そういう意味で、やはり森はマジックというゲームの天才である。

そして、森の持つ、「世界王者」という肩書き。この肩書きは、ただ単純に森が世界で一番強いということを証明しているだけではない。世界選手権という大舞台。場の空気に呑まれ、実力を発揮しきれないプレイヤーもけっして少なくはない。そんな中で、森は誰よりも実力を発揮できる勝負強さを持っていたということをも証明している。そういう意味でも、やはり森はマジックというゲームの天才である。

海外の記事では、森を評して「ライトニング」ということがままあった。言いえて妙とはこのことかと、至極納得させられる。森の稲妻のように素早く正確なプレイは、頭の回転のよさを証明している。そして、森には光り輝くようなスター性がある。

だが、所詮は言葉遊びの域をでない。言葉遊びを敬愛する筆者だが、それでも、言葉遊びには、言葉の持つ力にも限界があることは認めざるをえない。少なくとも森が持っているものの実質を、端的に表現できる言葉を筆者はもたない。

だから、漠然とさせたまま言わせてもらおう。森 勝洋は天才だと。

一方で、名は体を表わすとは言わないが、山本 昇平は、その名のもつ意味の通り、この大会で「ライジング」した。間違いなく今大会の一番のトピックは、トップ8の顔ぶれが新鋭たちで占められたように、「日本のマジックの新時代がはじまろうとしているということ」である。そして、そんな新鋭たちの中で、唯一決勝に進み、もっとも結果を残したプレイヤーとなった山本こそ、「ライジング」と呼ばれるのに相応しいだろう。

一般予選をぬけ、並み居る強豪たちを打ち倒し、この決勝の席まで「昇り」つめた彼は、「新しい時代」の象徴のひとつである。

勘違いしないでほしいのだが、だからといって、ここで「旧時代と新時代の代理戦争」という使い古されたアングルを持ち込みたいというわけではない。

森は、まさに新しいステージに、世界のトップを目指すという段階の次のステージに行こうとしている。そして、そのために「日本王者」の肩書きを欲している。

今、「誰が」とか「どのコミュニティが」という括りではなく、転換期を迎えた日本のマジックが、まるごと変わろうとしている。

そして、この決勝戦こそが、その新しい時代の試金石のひとつなのである。

Game 1

森 勝洋

ゲーム開始の時点で、山本の手札はすでに4枚。トリプルマリガンからのスタートである。

しかし、最後にくばられた手札は、なんとか1ターン目にだした《極楽鳥/Birds of Paradise》が《深き刻の忍者/Ninja of the Deep Hours》に変わるという動きを保障してくれた。一度は《深き刻の忍者/Ninja of the Deep Hours》による攻撃とドローを許した森だったが、《闇の腹心/Dark Confidant》の2体目をブロック用にキャストし、アドバンテージを稼ぐことを許さない。

初手にあった2枚の土地以外に土地をひかない山本。代わりというべきかマナクリーチャーには恵まれる。しかし、森の場の《相殺/Counterbalance》と《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》がにらみを利かせているせいで、十分なマナを確保できない。

山本は少ないマナでできる数少ない選択肢として、《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》をキャストする。森は《師範の占い独楽》の能力を起動し、ライブラリーのトップをめくる。

続いて、やっと土地をひいた山本が、《三角エイの捕食者/Trygon Predator》を場にだそうと試みる。森は《師範の占い独楽》の能力を起動し、ライブラリーのトップをめくる。

カードの名前は《相殺》だが、《相殺》とは名ばかりで、そこでおこっている事は不公平以外のなにものでもない。

森 1-0 山本

Game 2

不公平はまだ続く。

またしても山本の初手は5枚。

手札の内容は、《密林の猿人/Kird Ape》《三角エイの捕食者/Trygon Predator》《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》、2枚の土地。しかし、その土地には火を象ったマナシンボルがない。贅沢はいえないと、一種の賭けで山本はこの手をキープし、《繁殖池/Breeding Pool》をタップインでセットする。

山本は賭けに勝利する。

赤マナ源は引けないものの、さらに2枚の土地をひく事には成功し、《三角エイの捕食者》《巨大ヒヨケムシ》と場にクロックを展開していく。そう、場にクロックを展開し、回答を許さないのが山本のデックのアイデンティティ。

しかし、森は、しっかりと回答を用意していた。

ターンエンドに《三角エイの捕食者》へと《最後の喘ぎ/Last Gasp》を打ち込み、《オルゾフの司教/Orzhov Pontiff》で、対象にならない《巨大ヒヨケムシ》すら対処する。禍根となりうる《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》は対消滅させる。

そして、《オルゾフの司教》と《闇の腹心/Dark Confidant》でのビートダウンを開始する。

山本が回答として用意した《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》は《差し戻し/Remand》で先延ばし、《闇の腹心》で続く《差し戻し/Remand》を手に入れる。森の場に追加される新しいクロック、《アウグスティン四世大判事/Grand Arbiter Augustin IV》。

そう、森のデックもまたクロック=パーミッション。場にクロックを展開し、回答を許さないのがアイデンティティ。

なんとか、《曇り鏡のメロク》で場の不利を挽回したい山本だが、しかし、すでに見えている《差し戻し》が意識から離れない。山本の手札は《曇り鏡のメロク》《石の雨/Stone Rain》《密林の猿人》の3枚。しかも、赤マナをだせる土地はない。ここに来て、マリガン分の2枚が大きく響く。

《極楽鳥/Birds of Paradise》が山本に赤マナを提供する頃には、時すでに遅し。森は《交錯の混乱/Muddle the Mixture》を《差し戻し》に変成し、《極楽鳥》を《不忠の糸/Threads of Disloyalty》でコントロールを奪う。森は山本の回答を封殺する準備をすでに終えていたのだった。

森 2-0 山本

ここまでの山本のマリガン数の合計は5回。
そして、マリガン後の手札もドローも決して恵まれたものではなかった。

ただ、森が、そのアドバンテージを活かし、逆転する可能性をつぶしていたというだけである。

肩書きやキャリアから生まれる「格」というものがあるのならば、その「格」をみせつけた、などと適当にでっちあげることは可能である。だが、別にこの決勝戦でそんな話を持ち出したいとは思わない。そんなことだけでこの男を天才と呼んでいるわけではない。

Game 3

山本 昇平

このマッチではじめてお互いにマリガンのないゲームのスタート。

山本は《密林の猿人/Kird Ape》《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》。手札には《石の雨/Stone Rain》もあり理想的なスタート。一方の森も1ターン目からきっちり《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》をキャストする。

しかし、森の様子がどうもおかしい。

2ターン目のアップキープでコマを起動。そして《神聖なる泉/Hallowed Fountain》をアンタップイン。これには当然山本の《石の雨》が打ち込まれる。これに対応して《師範の占い独楽》の能力を起動したはずの森が、ドロー後に、ふたたび能力を起動。《師範の占い独楽》をライブラリーのトップに送ってまでドローして、置いた土地はけして理想的とはいえない《氷の橋、天戸/Tendo Ice Bridge》。
端的に言おう、森の土地は完全にスクリューしている。

そして、山本のデックは、その優位に乗じて自身の優位を確立し、反撃の芽を摘むことにかけては少なくともトップ8のデックの中で一番秀でているデックである。

《梅澤の十手》のついた《密林の猿人》はなんとか《糾弾/Condemn》し、続いて場に出た《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》も《糾弾》。《三角エイの捕食者/Trygon Predator》も一度は《差し戻し/Remand》すると、ギリギリの状況で粘りをみせる森だったが、山本が1ターンで2体の《三角エイの捕食者》を同時にキャストできる6マナ域に達した時も、森の場にはまだ土地が3枚しかない。しかも、そのうちの1枚はカウンターを使い果たした《氷の橋、天戸/Tendo Ice Bridge》なのだ。

劣勢において、諸刃の剣となりかねない《闇の腹心/Dark Confidant》だが、とにかくドローを進めないことには何もできない森は、キャストする以外の選択肢がない。そして、幸いにして4枚目の土地として《島/Island》を手に入れる。

次第に回復の様子をみせつつある森に対し、ここは圧倒的な脅威によって反撃の芽をつぶさなければならない山本。《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》をキャストし、2体の《三角エイの捕食者》のうち1体に《梅澤の十手》を装備。3体でアタックをする。
森は《巨大ヒヨケムシ》を《闇の腹心》でブロックし、2体の《三角エイの捕食者/Trygon Predator》には《糾弾》《最後の喘ぎ》。土地がない分、手札のスペルは充実している。5枚目の土地となる《島/Island》をセットして《宮廷の軽騎兵/Court Hussar》を場に。

だが、山本の攻勢は止まらない。場にいるだけで森のライフを削っていく《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》をキャストする。この時点で森のライフは8。3枚の《糾弾》をうたれている山本のライフは25。

森は、手札から《梅澤の十手》をキャストして、山本の《梅澤の十手》を対消滅させる。《交錯の混乱/Muddle the Mixture》を変成し、今度は自分が使うための《梅澤の十手》を手札にいれる。

山本のターンに、森のライフは7に。森の唯一の白マナ源である《神無き祭殿/Godless Shrine》へと《石の雨》をうつ。

森は土地を5枚に戻せない。《師範の占い独楽》をキャストし、《梅澤の十手》をキャストする。

この《梅澤の十手》は森の生命線である。対消滅させるために相手の《梅澤の十手》が来れば、何が何でも手札の《呪文嵌め/Spell Snare》でカウンターしなければならない。それゆえ、森はないかもしれない土地に期待して《師範の占い独楽》を起動させるのではなく、マナを残して終了する事を選択する。

森のライフは6。山本のターンのエンドに《師範の占い独楽》を起動して、なんとか白マナ発生源を見つけ出すが、それは今の森には少し厳しい《アダーカー荒原/Adarkar Wastes》。森はライフを5にするのと引き換えに、2体目の《宮廷の軽騎兵》を場に展開する。

《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》は無情に森のライフを削り続ける。ついにカウントダウン直前の4までライフは落ち込む。そして一気に勝負をつけるべく、山本は2体目の《喧騒の貧霊》を場に展開する。これは森に《霊魂放逐/Remove Soul》される。これにより、手札にマナクリーチャー以外の脅威がなくなってしまった山本は、このまま《喧騒の貧霊》を大事にするべきと考えたか、アタックをしない。どちらにしろ、森は《喧騒の貧霊》をなんとかしなければいけないのだ。

森のターン。森は、《宮廷の軽騎兵》に《梅澤の十手/》を装備させると、アタックを宣言する。ここで、山本は《喧騒の貧霊》でブロックする事を宣言する。ダメージがスタックに乗る前に、《喧騒の貧霊》に打ち込まれる《最後の喘ぎ》。そして、《宮廷の軽騎兵》より1点のダメージが与えられた後に、《梅澤の十手》のカウンターが《喧騒の貧霊》にむかって消費される。

昨年の世界選手権決勝――
あの第4ゲーム、圧倒的に不利だったゲームを森は逆転した。しかし、それは1枚のスペルのパワーだったり、劇的なキープレイがあったりといったわかりやすい逆転劇ではなかった。森は、すべてのカードが最も効果を発揮するであろうタイミングを図り、プランを練り、少しずつ自分が特になるように場を構築していった。そして、まさに「いつの間にか逆転していた」のである。

そして、今、同じようなゲームが目の前で展開されている。

前述のように手の中にはマナクリーチャーしか残っていない山本は《極楽鳥/Birds of Paradise》をキャストする。

これは当然、森の《梅澤の十手》によって除去され、森の場にはさらに《アウグスティン四世大判事/Grand Arbiter Augustin IV》が追加される。

山本のドローは《梅澤の十手》。しかし、これに対して前述のように、森は《呪文嵌め/Spell Snare》という解決策を持っている。

日本王者、森 勝洋

3体のクリーチャーによる2回のアタックで、山本のライフは12へ。そして《梅澤の十手》の上には6個のカウンターが。

森の残りターンをカウントダウンする立場だった山本が、ついにあと1ターンというところまで追い詰められる。

山本がドローした《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》を《霊魂放逐/Remove Soul》したことで、森 勝洋の優勝は決定したのだった。

森 3-0 山本

デックの本質がカードにありそこで重要なのがカードパワーであるように、トーナメントの本質がメタゲームでありそこで重要なのが環境の理解と決断であるように、プレイヤーの本質はプレイングにある。

そこに求められるのは、長期的なプランの構築と、小さなアドバンテージの積み重ねのみ。

あまりにも基本的な、だが、基本であるが故になかなかやり通せないことをきっちりやり通して、驚異的な逆転劇を見せた森 勝洋。

だんだんと、だが、いつのまにか状況をひっくり返した森のゲームメイクの持っていた雰囲気を表現するような言葉を筆者はもたない。ただ、淡々とおこった出来事を書き記すことしかできない。

そして、3ゲームを通して、筆者は森の本質を表現するぴったりの言葉が、自分の中にないことを改めて痛感した。だから、陳腐な言葉の繰り返しが、この観戦記事のしめになってしまうことを許してもらいたい。

天才とは、森 勝洋のための言葉である。

念願の日本王者、おめでとう、森 勝洋。

Mori Katsuhiro

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Shohei Yamamoto

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ソーサリー (8)
4 Stone Rain 4 Cryoclasm
インスタント (4)
4 Remand
アーティファクト (3)
3 Umezawa's Jitte
60 カード

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