決勝: 檜垣貴生 vs. 中村修平

更新日 Event Coverage on 2003年 1月 9日

By Keita Mori

檜垣といえば、昨年度の The Finals準優勝者。そして、対する中修は日本が誇る「シルバーコレクター」の一人。そう、どちらが勝っても念願の初タイトルという一戦がここで繰り広げられることとなった。

 ところで、檜垣と中村には「タイトルが無い強豪である」こと以外にも興味深い共通点がある。それは「アジトであったデュエル・スペースを失ってしまった」ということで、これはマジックプレイヤーとしては致命的な事件だったと言って過言ではないだろう。

 オンラインという媒体が確立されたことによって、たしかに個人のレベルでマジックをやりこむ環境を手に入れることも不可能ではなくなった。しかし、それでも強豪とよばれるプレイヤーは「いつもの場所」を必要としているものなのである。やはり、彼らはともに前途への不安感を拭い去ることができなかったそうだ。

…しかし、彼らはそんな逆境から這い上がってきた。

大阪の聖地、Adeptを失った中村修平。彼は新天地をTop Decksにもとめ、岡本弘毅(2002年度日本選手権Top 8)という心強いパートナーと巡りあった。今ここでシャッフルしている黒コントロールも、その岡本が練り上げたマスターピースである。デザイナーではなく、純粋なプレイヤーである中村にとって、岡本のバックアップはとてもありがたいことだった。まさしく「水を得た魚」という言葉を体現しているのが、いまの中村なのである。

一方の檜垣貴生も、やはり「いつもの場所」を失ってしまったことで随分と苦労を強いられたプレイヤーだ。そして、彼はHato Beam(PT Boston初日突破)の仲間たちとの共同出資で一軒のアパートを借りて、そこを彼らの虎の穴たらしめることとしたのである。

「こうなったら、もう負けられない」

そのプロプレイヤーとしての自覚が、間違いなく彼を変えた。そして、二年連続での決勝進出という快挙を果たしたのである。

 こうしてみると、彼ら二人のマジック史における2002年というのは、間違いなく激動の一年だっただろう。そして、その一年の最後を最高の形で終えるために、彼らは今デッキをシャッフルしているのだ。

■必殺のブラフ –Game 1

中村修平というプレイヤーがはじめて全国区となったとき、彼の二つ名はこうだった。

「しゃみしゅう」

そう、「口三味線の修平」だ。つまり、それだけ中村は駆け引き上手の、とくにブラフ戦術を多様することで知られる存在だったわけだ。

そして、この一戦目の分岐点となったのが、まさしくその「三味線」だった。

 リアニメイト(墓地活用)デッキである檜垣が、Benzoを彷彿とさせる《生き埋め/Buried Alive》をキャスト。墓地に送り込まれたのは、

《起源/Genesis
《宿命のネクロマンサー/Doomed Necromancer
《憤怒/Anger

 という3枚だった。暖気運転開始といったところだろう。

 そして、早くもここで中村の見せ場である。

第4ターン、中村は檜垣の墓地をマジマジと確認し、そこから《魔性の教示者/Diabolic Tutor》をプレイ。とあるカードをハンドにいれて、一言。

中村:その《生き埋め/Buried Alive》結構キッツイわぁ。

 すると、檜垣はここで《燃え立つ願い/Burning Wish》をプレイし、サイドボードに潜ませた《陰謀団式療法/Cabal Therapy》をハンドに加えてみせた。一瞬《強迫/Duress》にするかどうか迷ったようだったが、相手が持っているカードが明らかである以上、たしかに《療法》の方がアドバンテージをとれそうである、と判断したようだ。

そして、檜垣はそれを意気揚々とプレイ。もちろん、ここで指定したカードは…《消えないこだま/Haunting Echoes》だ。

 してやったり。

中村はほくそ笑みながらハンドを公開し、そこには《こだま》ではなく《罠の橋/Ensnaring Bridge》が仕込まれていたことを明らかにした。そして、この《罠の橋》がゲームをコントロールすることとなるのである。

檜垣:しゃみられたー!!

 ここで檜垣は《貪欲なるベイロス/Ravenous Baloth》を循環させることで中村の勝ち手を奪い去ろうという戦略に切り替えようとしたのだが…

《アンデッドの剣闘士/Undead Gladiator》による高速サイクリングと、それをコストとしてブーストされた《占骨術/Skeletal Scrying》とが中村修平に3枚の《堕落/Corrupt》をもたらしたのだった。

檜垣:ああ、もう。なかしゅーだけには負けたくないなあ。ほんっと、《強迫/Duress》にしときゃ、よかった。…しゃみられたぁ!

中村修平 1-0

仕組まれたドルイド –Game 2

 「よっしゃ!」

 と、気合を入れなおした檜垣。フェッチランドの連打から、《定員過剰の墓地/Oversold Cemetery》⇒《生き埋め/Buried Alive》という素晴らしい立ち上がりを見せる。

《憤怒/Anger
《沈黙の死霊/Silent Specter
《宿命のネクロマンサー/Doomed Necromancer

 という3枚を墓地に送り込み、さらに《野生の雑種犬/Wild Mongrel》を召喚。中村修平も《罠の橋/Ensnaring Bridge》で対抗してきたものの、ハンドから《宿命のネクロマンサー/Doomed Necromancer》を展開し、これを即座に起動して《沈黙の死霊/Silent Specter》が降臨する。

 しかし、中村は淡々と《チェイナーの布告/Chainer’s Edict》によって《野生の雑種犬/Wild Mongrel》を除去し、ここで《消えないこだま/Haunting Echoes》。キッカリ5ターン目である。

檜垣:せこぃなあ。ダイレクトエコーかよ。

しかし、このリアニメイトデッキの非凡なところは、ゲームからとりのぞかれた、もしくはサイドボードのクリーチャーにもアクセスできるということである。《燃え立つ願い/Burning Wish》⇒《生ける願い/Living Wish》と繋げばいくらでも、である。

ここで檜垣は《起源/Genesis》を《生ける願い/Living Wish》から調達し、《貪欲なるベイロス/Ravenous Baloth》を循環させはじめることを選択した。お互いのデッキリストが公開された状況であるため、中村の勝ち手段が《こだま》からのライブラリー・デストラクションか、ライフを攻めるしかないないのを知っているからである。

ちなみに、《憤怒》が最終的に墓地にもどってくる(檜垣のクリーチャーすべてが速攻もちになる)ことを勘定したうえで、中村の戦線を支えているのは《罠の橋/Ensnaring Bridge》である。そして、檜垣はそれを破壊するために《ゴミあさり/Scavenger Folk》がプレイしたい。しかし、中村のデッキには2枚の《仕組まれた疫病/Engineered Plague》がサイドから投入されているはずだ。

ここで、檜垣はトップデッキした《ゴミあさり/Scavenger Folk》でとりあえず2枚あるうちの片方の《罠の橋/Ensnaring Bridge》を叩き割る。しかし、すぐさま中村が《堕落/Corrupt》でライフをブーストしつつX=8の《占骨術/Skeletal Scrying》で応じ、その8枚の中にはもちろん《ゴミあさり》を完封するための《仕組まれた疫病》がひそんでいたのだった。

 そして、ここからの檜垣はともかく《起源/Genesis》や《定員過剰の墓地/Oversold Cemetery》を起動して《貪欲なるベイロス》でのゲインライフを延々繰り返すというプレイに徹した。中村修平は《占骨術》をプレイしてはいるものの、《消えないこだま/Haunting Echoes》の分ライブラリーでは余裕があり、「とっとと投了したら?」というようなことを何度となくほのめかす。そして、中村は二枚目の《仕組まれた疫病/Engineered Plague》をプレイし、種族を「エルフ」と指定した。

 そうこうするうちに《貪欲なるベイロス》の数と共にゲインライフの規模はとてつもないサイズとなり、あれよあれよという間に檜垣のライフは100点を越すこととなる。もっとも、中村修平はライブラリーアウトでの勝利を確信していたわけで、ライフトータルの管理は完全に放棄(ジャッジに一任)していた。

 しかし、《仕組まれた疫病》を二枚とも使わせた段階で…檜垣の「仕掛け」は終わっていた。

《燃え立つ願い》からの《生ける願い》で《憤怒》と《野生の雑種犬》をゲーム外から回収し、墓地に《憤怒/Anger》を仕込む檜垣。そして、檜垣はさらに《生ける願い/Living Wish》を。そしてもたらされたのが…

《ドルイドの抒情詩人/Druid Lyrist》!!

 中村の《疫病》が封じていたのは…《エルフ》と《ゴミあさり》。つまり、この《詩人》が《ゴミアサリ》を封じている《疫病》を破壊すれば…《生ける願い/Living Wish》から回収されることになる《宿命のネクロマンサー/Doomed Necromancer》によって再度《ゴミあさり/Scavenger Folk》を循環させることができるシステムを構築できることになるのだ。

檜垣:《エルフの抒情詩人/Elvish Lyrist》じゃなくて、《ドルイドの抒情詩人/Druid Lyrist》にして…本当に良かった!!

 かくて、中村の《罠の橋/Ensnaring Bridge》を破壊し尽くした檜垣は…

《クローサの大牙獣/Krosan Tusker
《貪欲なるベイロス/Ravenous Baloth》:4
《野生の雑種犬/Wild Mongrel

 と大軍勢を展開。一気にライフレースは105対4。

《アンデッドの剣闘士/Undead Gladiator》を一応高速回転させてみたものの…中村はここで投了。

《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》の巻き添えになって《エルフの抒情詩人/Elvish Lyrist》が《仕組まれた疫病》に完封されてしまうのを嫌っての《ドルイドの抒情詩人/Druid Lyrist》というカードチョイス。ちなみに、檜垣貴生が《エルフ》を《ドルイド》にしたのはデッキリスト提出直前という土壇場での機転だったそうだ。

…ともすると、これは「20万円のドルイド」ということになりかねない。

檜垣貴生 1-1

■Perfect Answer –Game 3

中村:何が悔しいかって、森田君に『準優勝おめでとう』って言われた!

配られたデッキリストをしっかりと把握していなかったために二戦目を落としてしまった中村。どうやらトイレ休憩の間に関西の仲間たちからかなり冷やかされてきたようだ。

何はともあれ、泣いても笑ってもこれが最終戦。両者、固い握手からこのゲームをスタートさせることとなった。

先攻中村は1マリガンするも、開幕ターンに《強迫/Duress》。
ここで、

《燃え立つ願い/Burning Wish
《生き埋め/Buried Alive
《宿命のネクロマンサー/Doomed Necromancer
《戦慄をなす者ヴィザラ/Visara the Dreadful

というハンドから《燃え立つ願い/Burning Wish》をディスカードさせた。

そして、対する檜垣のアクションは、3ターン目と4ターン目に連続して《生き埋め》をキャストという大味なもの。

《憤怒/Anger
《沈黙の死霊/Silent Specter
《起源/Genesis
《クローサの大牙獣/Krosan Tusker
《極楽鳥/Birds of Paradise
《ゴミあさり/Scavenger Folk

 と、墓地は一気に膨れ上がった。

檜垣:エコー無きゃ勝ちじゃ!

 大声をあげながら…檜垣はシャッフルしたライブラリーを中村の前に叩きつける!

そして、中村修平の5ターン目。

中村:土地待ちやってん。そんなんもっとるわー!

 ああ。またしてもダイレクトエコー。

 ついには幸運の女神の寵愛を勝ちとった中村修平が、檜垣のライブラリーをズタズタに引き裂く。クリーチャー群だけでなく、《燃え立つ願い》までも失ってしまったそれは…もはや紙の束そのものだった。

 かくて、檜垣…投了である。

Final Result:中村修平 2-1檜垣貴生

中村修平、初タイトル獲得。

Nakamura Shuuhei

Download Arena Decklist
クリーチャー (6)
2 Visara the Dreadful 4 Undead Gladiator
インスタント (4)
4 Smother
アーティファクト (2)
2 Ensnaring Bridge
土地 (23)
23 Swamp
他 (6)
3 Skeltal Scrying 3 Cabal Coffer
60 カード

Higaki Takao

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