決勝: 百瀬和之vs. Kai Budde

更新日 Event Coverage on 2002年 3月 17日

By 森慶太

王将と歩。
Phoenix Foundation と Panzer Hunters の力関係をこう評するものがいた。たしかに、Phoenix Foundation はメンバーあわせてプロツアー 6 勝(もちろん、チーム戦を重複させていない数え方だ)という比類なき戦歴を誇るトップチームであり、対する Panzer Hunters は二度のタナボタでマスターズ出場権を獲得した「日本人」チームである。ご存知のとおり、日本人のプロツアーチャンピオンは一人も存在していない。

しかし、歩なら歩でかまわないだろう。
そう、成金となればいいではないか。

少なくとも、Kai Budde 率いるこのチームを倒すことができれば、 Panzer Hunters は莫大な賞金と栄光とを手に入れられるポジションまでたどり着いてみせたわけであり、それは間違いなく彼らの実力の証左なのだ。

かくて、大観衆の中、百瀬和之が帝王に挑んだ。

Game 1

帝王 Budde は素晴らしいオープニングハンドだった。
《セファリッドの斥候/Cephalid Scout》を召喚し、ハンドには《麻痺の感触/Stupefying Touch》と 2 枚の《中略/Syncopate》が控えていたのだから。

結局、百瀬の 2 ターン目の《狂犬/Mad Dog》を通さざるを得なかったものの、後続となった《地図作り/Cartographer》と《飛びかかる虎/Springing Tiger》を立て続けにカウンターし、都合よく第 5 ターンのドローステップで《秘教の盲信者/Mystic Zealot》を引き当てて盤面を圧倒した。

百瀬は《投鎖獣/Chainflinger》を展開して、なんとか巻き返したいところだった。しかし、Budde は《麻痺の感触/Stupefying Touch》までを持っていたのだった。

続く百瀬の《パーディック山の長槍使い/Pardic Lancer》が通ったために《盲信者》は壁であり続けたが、静かな時間の中で《セファリッドの斥候/Cephalid Scout》が、百瀬のライフを確実に削り取っていった。

百瀬が《リサトグ/Lithatog》召喚、対する Budde も《天使の壁/Angelic Wall》に《秘教の幻想家/Mystic Visionary》...とクリーチャーをそれぞれ展開していくが、百瀬のライフは 12 点にまで削り落とされていたのだった。対する Budde のライフは 14 点という十二分なまでの水準にあり、唯一ガンとなりそうな気配を漂わせる《リサトグ/Lithatog》にも《カーターの願望/Kirtar's Desire》をエンチャントしたのだった。

しかし、百瀬も状況が決定的になる前に《炎の稲妻/Firebolt》で《セファリッドの斥候/Cephalid Scout》と《秘教の幻想家/Mystic Visionary》を除去してみせた。そう、このままでは終われないのだ。

ただ、Budde は二発目の《炎の稲妻/Firebolt》に対応して《セファリッドの斥候/Cephalid Scout》の能力を 2 回起動し、墓地を 7 枚キッカリとなるように調整した。そう、スレッショルドだ。ここで Budde はさらに《光明の守護者/Luminous Guardian》をも展開し、百瀬のデッキにとってはある意味で絶望的なサイズとなった 3/5 飛行クリーチャーによってビートダウンを加速させる。どうやら、場内の誰もが帝王の先勝を確信した風だった。

5 対 14 という絶望的なライフ差の中、百瀬は新たに召喚してきた《葉の踊り手/Leaf Dancer》、それに《投鎖獣/Chainflinger》と《パーディック山の長槍使い/Pardic Lancer》を攻撃陣として送り出した。そして百瀬は《長槍使い》の能力を起動させた。そして、 Budde はこの Random Discard の際に 1/4 という確立で《踏み荒らし/Overrun》を引き当てたのだった。

実は、 Budde の 4 枚のハンドはすべて《島/Island》であり、この「無作為のディスカード」で《尊大なワーム/Arrogant Wurm》を選択してしまった場合、かなりまずいことになってしまったはずなのだった。そう、たった 3 マナ(マッドネス)で 4/4 のクリーチャーが召喚されてしまい、それは百瀬に追加の攻撃陣を召喚するだけの余力を与えてしまうことになったからだ。つまり、その上で百瀬和之が《踏み荒らし/Overrun》をキャストされてしまったかもしれないのだ。

Budde の攻撃によって百瀬のライフは 2 。対して Budde は14。しかも Budde は《光明の守護者/Luminous Guardian》をコントロールしているのである。さらに、Budde は百瀬の 4 枚のハンドから《踏み荒らし/Overrun》を叩き落し、その豪運を観衆に強くアピールしていたわけだった。

Budde の側からレポートしていた私には、もはや百瀬の敗北は確定的であるかのようにさえ思われた。しかし。

...しかし、百瀬は今年も《サーボの命令/Tsabo's Decree》を持っていた。

Temporary Insanity
《一時的狂気/Temporary Insanity》!!!

あの Juggernaut が、言葉を失った。

百瀬和之 1-0 Kai Budde

Game 2

後手百瀬が《狂犬/Mad Dog》で先制するが、Budde は 3 ターン目の《正義の巡礼者/Pilgrim of Justice》でもって対抗した。続く百瀬の《長角火獣/Longhorn Firebeast》には Budde Pay 5 ライフ。《綿密な分析/Deep Analysis》から《セファリッドの貴族/Cephalid Aristocrat》を展開し、《狂犬/Mad Dog》をダブルブロックで除去して見せた。もっとも、百瀬も《貴族》は戦闘終了後の《集中砲火/Flame Burst》で除去し、《地図作り/Cartographer》と《リサトグ/Lithatog》で対抗した。

しかし、Budde は今回こそ、と《思考を貪るもの/Thought Devourer》を展開し、この 4/4 フライングという最高級のダメージクロックの後に《幻影の仔/Phantom Whelp》、《天使の壁/Angelic Wall》、《秘教の幻想家/Mystic Visionary》と万全のブロッカー陣を展開した。ハンドには《霊気の噴出/AEther Burst》と《中略/Syncopate》をかたく握りしめてのビートダウンだ。

百瀬は《パーディック山の長槍使い/Pardic Lancer》、《クローサの締めつけ蛇/Krosan Constrictor》と展開するが、Budde はビートダウンを継続しつつ《カーターの願望/Kirtar's Desire》で《リサトグ/Lithatog》を封じ、さらには《ティーロの信者/Teroh's Faithful》までを展開(Gain 4 life)するという完璧さだった。

さすがBudde 。

Kai Budde 1-1 百瀬和之

ここで安藤がマッチに勝利。
石田も 1-1 という状況でのスタートとなった。

Game 3

Budde の《秘教の幻想家/Mystic Visionary》と《セファリッドの斥候/Cephalid Scout》だった。対する百瀬は第 4 ターンの《投鎖獣/Chainflinger》が最初のクリーチャーだった。

Budde はあわてず騒がず《麻痺の感触/Stupefying Touch》させ、2 体目の《セファリッドの斥候/Cephalid Scout》までを送り出し、序盤の攻防を大きくリードした。

しかし、Budde の 4 枚のハンドは all 《島/Island》である。
そして、百瀬が《秘教の幻想家/Mystic Visionary》を焼き払った次のターンのドローも《平地/Plains》。しかし、百瀬のターンエンドに起動した《セファリッドの斥候/Cephalid Scout》のおかげでなんとか《光明の守護者/Luminous Guardian》を引き当てて、百瀬の 4 マナ 2/2 クリーチャーを沈黙させた。そして、続くターンに百瀬はサモン《ナントゥーコの鎮め役/Nantuko Calmer》。すると Budde も《正義の巡礼者/Pilgrim of Justice》を展開。

序盤の攻防によってライフ差は百瀬 9 対 Budde 16 。

ここで百瀬は長考した。
そして、百瀬はここで《凶暴象/Rabid Elephant》を召喚することを選択した。そして、返すターンに Budde は《思考を貪るもの/Thought Devourer》を展開。

続くターン。百瀬は《地図作り/Cartographer》を展開して《踏み荒らし/Overrun》を臭わせつつ、《凶暴象/Rabid Elephant》でアタックした。現在 7 (百瀬)対 16 (Kai)というライフ。

結局、 Budde はこの《凶暴象/Rabid Elephant》を《光明の守護者/Luminous Guardian》でブロックし、《守護者》を 2 回パンプアップさせた。そして、百瀬は戦闘終了後に《癇しゃく/Fiery Temper》してこの《守護者》を除去し、最後の突撃の準備に入った。

注目の Budde のドローは《カーターの願望/Kirtar's Desire》。
Budde は 3 体のフライヤーで突撃して百瀬の残りライフを 1 点にまで減少させた。《正義の巡礼者/Pilgrim of Justice》ただ一体をアンタップ状態とし、《凶暴象/Rabid Elephant》に《カーターの願望/Kirtar's Desire》をはりつけてターンを終了。百瀬の、そしてBudde にとっても最後となるであろうターンを迎えることになった。

百瀬は最後のドローを確認し、そして投了した。

「Need 1 more creature or 1 more card in hand 」
と、百瀬は戦後に最後のハンド内容を語りながら Budde に語っている。しかし、このハンドを見る限り、実は彼にも勝算はあったようだ。

《地図作り/Cartographer》を展開してから《凶暴象/Rabid Elephant》がアタックしたターンを振り返ってみると、百瀬のハンドは《癇しゃく/Fiery Temper》、《入門の儀式/Rites of Initiation》、《春の儀式/Rites of Spring》、《踏み荒らし/Overrun》、ランド...という内容であった。そう、それだけに「彼が実際に選択した行動以外にもやりようがあったはすだ」と指摘する強豪もいたのである。

まず、《入門の儀式/Rites of Initiation》と《踏み荒らし/Overrun》での最終決着を試みなければならない以上、ハンドの枚数は多いにこしたことはない。というか、一枚も無駄にできない。ここで《春の儀式/Rites of Spring》を活用して《地図作り/Cartographer》とのシナジーを活用しておいたなら、計算上では百瀬はハンドを減らさずに 2/2 クリーチャーを一体展開できていたことになる。マッドネスで《癇しゃく/Fiery Temper》を戦闘後に《守護者》に叩き込んでやるというパターンなら、ハンドはさらに一枚多かったことになるだろう。

ともあれ、この段階で、彼が戦後に語っていた「あと一枚ハンドがほしかった」という状況はクリアされているではないか...

しかし、世界最高の舞台での彼の判断ミスを誰に咎められようか。
これはあくまで Budde のハンドが土地だらけだったという結果論もあってこその話であるわけで、百瀬の下した結論も濃密な思考過程を経たものなのだから。

German Juggernaut wins 2-1

...そして、日本軍総大将である石田格も敗れ、Panzer Hunters の夢は破れてしまった。

そう、今や、 Kai Budde のプロフィール欄には Masters の Champion というタイトルまでもが輝いていることとなった。

Phoenix Foundation 2-1 Panzer Hunters

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