決勝 : Jan-Moritz Merkel(ドイツ) vs. Willy Edel(ブラジル)

更新日 Event Coverage on 2006年 10月 22日

By Yusuke Yoshikawa

Jan-Moritz Merkel(左) vs. Willy Edel

プロツアー神戸の最後を飾る決勝は、新星・Jan-Moritz Merkel(ドイツ)Willy Edel(ブラジル)の対決となった。

日本国内でのプロツアーで、決勝のテーブルに日本勢がいないという事態は、2002年のプロツアー大阪までさかのぼる。同時に、日本勢が日本のタイトルを守り続けてきたという記録も、ここで途絶えることとなる。

残念な限りではあるが、その点は置いておいて、「時のらせん」における最初の秩序を導く頂上決戦に注目しよう。

Jan-Moritz Merkelはこの神戸がプロツアー・デビューとなるプレイヤー。17歳という年齢は、日本がそうであるように、「Kai Buddeの国」ドイツもまた世代交代が進んでいることを、強く印象付けるものとなった。

考えてみれば、2005年度世界王者・Julien Nuijtenや日本の鈴木 貴大も、ほぼ同世代に当たる。彼らのような存在がこれからのマジックを支えていくのだろう。

一方のWilly Edelもまた、本年度の「Rookie of the Year(年間最優秀新人)」の資格を有したプレイヤーである。日本の皆様におかれては、さきのプロツアー・チャールストンの決勝で「Kajiharu80」の前に立ちはだかった「Raaala Pumba」の一員としてご記憶の方もいらっしゃるかもしれない。

南米地区は長らく「マジック不毛の地」とされてきた。2002年にCarlos Romao(ブラジル)が世界を制したことを機会にそれが変わることが期待されたが、近年は活躍するプレイヤーが減ってきていたのも事実である。

その中にあって、プロツアー2大会連続の決勝戦進出を果たした彼は現在の南米を代表する旗手として、今後の活躍が期待される存在である。彼個人としても、内心期するところは大きいに違いない。

「時のらせん」の構造を解き明かし、新たな時代の幕開けを告げるのはどちらか。さあ、熱戦に目を移そう。

Willy Edel

Game 1

注目の先攻はMerkelとなった。

ゲームの開幕を告げるのは、もはや御馴染みとなったEdelの《明日への探索/Search for Tomorrow》待機から。Merkelは《珊瑚のペテン師/Coral Trickster》を普通に表でプレイして攻めの姿勢を見せるが、Edelは《サリッドの殻住まい/Thallid Shell-Dweller》で受けとめる。気を取り直してMerkelは《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron》を待機させる。
Edelが《鉄爪のノスリ乗り/Ironclaw Buzzardiers》で逆に先攻する構えを見せれば、Merkelはデッキの軸である「変異」クリーチャーを送り込む。

Edelの手札には《絞殺の煤/Strangling Soot》と《ぶどう弾/Grapeshot》。まずは静かに《鉄爪のノスリ乗り》が飛んで攻撃、ライフが動き出す。手札は除去だが《遍歴のカゲロウ獣》には対処できず、これが来る前にはなんとかしなければいけない。

逆に、Merkelは《珊瑚のペテン師/Coral Trickster》と先ほどの変異で攻撃。片方が通って2点のダメージを与えると、新たに変異を追加。そして、1番目の変異は《水深の予見者/Fathom Seer》であることを明かし《噴出/Gush》効果で手札を補充、《コー追われの物あさり/Looter il-Kor》をつなげた。

これに、Edelは《絞殺の煤》を2番目の変異(《珊瑚のペテン師》の2枚目)に、続けて《ぶどう弾》で《コー追われの物あさり》《珊瑚のペテン師》とMerkelのクリーチャーを一掃。《サリッドの殻住まい》を狙って出てきた《歪んだ爪の変成者/Crookclaw Transmuter》も、《狩りの興奮/Thrill of the Hunt》でこれを守ってみせ、《絞殺の煤》のフラッシュバックで厄介な3/1飛行を叩き落す。

しかし除去もこれにて弾切れとなってしまった。待機が解けた《遍歴のカゲロウ獣》から、《紡績スリヴァー/Spinneret Sliver》《機械仕掛けのハイドラ/Clockwork Hydra》と厚みを増して攻め立てるMerkelの軍勢に対し、Edelは手札の土地が厚みを増すばかり。あきらめ顔で手札を見せ、Edelはあっさりと土俵を割った。

Merkel –1 Edel –0

Jan-Moritz Merkel

Game 2

Edelは第2ターン《サリッドの殻住まい/Thallid Shell-Dweller》という立ち上がり。一方のMerkelは、2マナクリーチャーがよっぽど欲しかったのか、第1ターンに出した《彩色の星/Chromatic Star》を第2ターンに使う、だが何も引けずマナバーン。少し焦りの見える行動か。

Edelが《明日への探索/Search for Tomorrow》から《胞子撒きのサリッド/Sporesower Thallid》と展開すると、Merkelは《獣群の呼び声/Call of the Herd》をプレイしながら《時間の渦/Temporal Eddy》で4/4を戻す。しかしこれでも攻撃に行けないのでは、テンポを旨とするMerkelにとって具合が悪い。

Edelはもう一度《胞子撒きのサリッド》、Merkelは《機械仕掛けのハイドラ/Clockwork Hydra》。どこか淡々と、のんびりした時間が過ぎる。続いてEdelの《コカトリス/Cockatrice》、Merkelの《コー追われの物あさり/Looter il-Kor》から《獣群の呼び声》フラッシュバック、とようやく殴れそうなクリーチャーが揃ってきた。

しかし、この《コー追われの物あさり》は《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》からの《ぶどう弾/Grapeshot》で除去され、後には「サリッド」3体が残る場に。展開がゆっくりしているがゆえに、その存在は大きい。

Merkelはこの場を打開すべく、変異を2体並べて時を待つ。《コカトリス》がダメージを与えたのち、Edelは《霊気炎の壁/Aetherflame Wall》とさらにガッチリ。

そこでMerkelは変異の片方=《珊瑚のペテン師/Coral Trickster》で《胞子撒きのサリッド》をタップさせ、自分のターンに総攻撃。

ここで攻撃に向かったのは3/3象トークン2体、《珊瑚のペテン師》、変異=《塩水の精霊/Brine Elemental》、そして《機械仕掛けのハイドラ》(カウンター6個→5個)である。ダメージは苗木トークンに向けられ、これはサリッドから生まれた新たなトークンを+1/+1する形で入れ替わった。

しかし、もりもり沸くトークンと堅い壁は偉大であった。この攻撃をほぼ損害なく受け止めきると、変異が《塩水の精霊》となってアンタップを1回失っても、Edelは冷静に次の攻撃に対処してみせる。

結局、突破は無理と悟ったMerkelが、苗木に埋め尽くされる前にと投了を宣言した。

Merkel –1 Edel -1

Game 3

タイ・スコアに戻されたMerkelだが、手にした初手は《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger》に2枚の《珊瑚のペテン師/Coral Trickster》、さらにはドロー《紡績スリヴァー/Spinneret Sliver》と、先ほど《彩色の星/Chromatic Star》でマナバーンを食らってまで欲した軽量クリーチャーに恵まれたものだった。

後手のEdelもそれを察したか、第3ターンに《ナントゥーコのシャーマン/Nantuko Shaman》を普通にプレイして対応する。これが変異(《珊瑚のペテン師》)と相打ちになったところで、《暗影の蜘蛛/Penumbra Spider》がプレイされるのだが、そこには《神秘の蛇/Mystic Snake》!

Mystic Snake

2/2に攻め立てられているところを2/4で守ろうとしたのに、何故かその代わりに相手の2/2が増えている。まさに「テンポを取られる」という言葉の代表例であり、帰ってきた《神秘の蛇》はプロツアー決勝という大一番で、最高の仕事をしてのけたのだ。

さらにはMerkelは、サイドインした《ムウォンヴーリーの酸苔/Mwonvuli Acid-Moss》でEdelの1枚しかない《山/Mountain》を壊して展開を妨害。そのまま沈黙してしまったEdelに対し《放蕩魔術師/Prodigal Sorcerer》《スクリブのレインジャー》と連打し、Edelを投了に追い込んだ。

Merkel –2 Edel -1

後手に回るMerkel、先ほど入れた《ムウォンヴーリーの酸苔》を再度抜き、ブロックされにくい《ダル追われの流れ者/Drifter il-Dal》を入れてデッキを微調整した。

Game 4

勝てば優勝の大一番。初めて参加するプロツアーで、そこまでたどり着いたMerkel少年。シャッフル中にふと見せた笑みは、余裕か緊張によるものか。

後のないEdelのファーストアクションは、「第2ターンの」《明日への探索/Search for Tomorrow》待機。ここまで順調な回転を見せてきたはずのEdelのデッキだけに、やや変調を感じざるを得ない。

一方のMerkelは、《灰毛皮の熊/Ashcoat Bear》から第3ターンに変異といつもの快調な立ち上がり。手札の《珊瑚のペテン師/Coral Trickster》《水深の予見者/Fathom Seer》《流水の海蛇/Slipstream Serpent》の3択から、《珊瑚のペテン師》が場に送られた。

これに対しEdelも、主力たる《胞子撒きのサリッド/Sporesower Thallid》で応える。さらに続けて2体目も出すが、またしても待ってましたとばかりの《神秘の蛇/Mystic Snake》が!

勢いづいたMerkelはこの隙にと、出していた《珊瑚のペテン師》を表にして《胞子撒きのサリッド/Sporesower Thallid》をタップし、3体のパワー2で攻撃。さらに、《流水の海蛇/Slipstream Serpent》を変異で追加する。

Edelが場を落ち着けんと《サリッドの殻住まい/Thallid Shell-Dweller》を出しつつ、明日のために《ナントゥーコのシャーマン/Nantuko Shaman》を待機させれば、Merkelは2枚目の《珊瑚のペテン師》を変異プレイからすぐさま表にし、《灰毛皮の熊》《珊瑚のペテン師》《神秘の蛇》と変異の4体で攻撃してEdelのライフを6に落とす。

しかし、ここで終わるEdelではない。《ナントゥーコのシャーマン》がプレイされカードを引くと、眠っていたデッキの本領とばかりに《新緑の抱擁/Verdant Embrace》を引き出し、《ナントゥーコのシャーマン》に装着。

さらに《ぶどう弾/Grapeshot》で《珊瑚のペテン師》2体を除去しつつMerkelにも1ダメージを与え、6/5となった《ナントゥーコのシャーマン》をレッドゾーンへ送って、攻守交替を暗に宣言する。

だがこのタイミングで《時間の渦/Temporal Eddy》を引き当てるMerkelも相当、ツキが太い。

変異をプレイしつつ《水深の予見者/Fathom Seer》でカードを引き増し、そして《時間の渦》を似非《新緑の魔力/Verdant Force》に打ち込んで危機を脱する。

Edelは仕方ないとばかりに《ナントゥーコのシャーマン》を再待機させると、Merkelは最後のライフを削るべく《コー追われの物あさり/Looter il-Kor》を場に送る。
しかし、Edelも《ナントゥーコのシャーマン》から《サリッドの殻住まい/Thallid Shell-Dweller》を出して、《ぶどう弾》ストーム2でこの《コー追われの物あさり》と《神秘の蛇》を除去して食い止める。

並んだ「サリッド」がトークンを次々と生み出す中、戦力の追加は次々行われるが決め手にはなかなかならない。Merkelの《機械仕掛けのハイドラ/Clockwork Hydra》も《ワームウッドのドライアド/Wormwood Dryad》を除去しただけで苗木トークン4体と相打ち、《ダル追われの流れ者/Drifter il-Dal》も即《絞殺の煤/Strangling Soot》で除去されてしまう。

Merkelは《獣群の呼び声/Call of the Herd》《幻影のワーム/Phantom Wurm》と意味もなく並べているようで、ただただ戦線が伸びていくのはEdelに有利かと思われたが、ひそかに置かれている変異は《塩水の精霊/Brine Elemental》である。これが効果を発揮すれば。

Edelはデッキの圧縮も兼ねて《明日への探索/Search for Tomorrow》をプレイしつつ、《ダークウッドのベイロス/Durkwood Baloth》《スカーウッドのツリーフォーク/Scarwood Treefolk》と並べて機をうかがう。

そして、ゲームが動いたのはMerkelの側からであった。
《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger》を引き当ててこれを場に送ると、次には待望の戦力《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron》が顔をのぞかせる。Edelのライフは6から5、さらに《遍歴のカゲロウ獣》は普通にプレイ。これで決まってしまうのか。

Edelは、まず《絞殺の煤》フラッシュバックで《スクリブのレインジャー》を除去すると、長考に落ちる。ここで場を整理しよう。

Merkel(ライフ14):
《灰毛皮の熊/Ashcoat Bear》2体
3/3象トークン2体
《水深の予見者/Fathom Seer
《幻影のワーム/Phantom Wurm
《遍歴のカゲロウ獣/Errant Ephemeron
変異(《塩水の精霊/Brine Elemental》)
土地は7枚、フルタップ

Edel(ライフ5):
《サリッドの殻住まい/Thallid Shell-Dweller》2体(カウンター各1個)
《胞子撒きのサリッド/Sporesower Thallid》(カウンター2個)
《スカーウッドのツリーフォーク/Scarwood Treefolk
《ダークウッドのベイロス/Durkwood Baloth
苗木トークン、実に11体
土地は10枚中6枚がタップ(《絞殺の煤/Strangling Soot》フラッシュバック)

ライフが5で《遍歴のカゲロウ獣》に直面しているということは、残されたターンはおそらく2ターンだ。

しばらくEdelは考えた後、《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》をプレイして、《サリッドの殻住まい》以外で総攻撃を宣言した。

これに対し、Merkelは大型クリーチャーを《灰毛皮の熊》でチャンプブロック、《胞子撒きのサリッド》は《幻影のワーム》で受け止めて苗木は全部攻撃を通す。
ダメージはどうやっても11点、これではMerkelのライフを削り取るには至らない。
それでも、ブロッカーは用意できているため、次のターンにアンタップしての攻撃で勝利を得ることができそうだ、とEdelは考えたのだ。

「次のターン、アンタップが来れば」。
そういえば、Merkelの変異は何だったか?

Merkelは《遍歴のカゲロウ獣》での攻撃を宣言する。
Edelのライフはもはや1だ。
そして、ややおぼつかない手つきで7枚の土地を寝かせると…

Brine Elemental

《塩水の精霊/Brine Elemental》が表向きになり、Edelの「次の攻撃」は失われた。

それを見たEdelは、何かから解放されたようなにこやかな表情を浮かべながら、
右手を伸ばし、若き王者の誕生を祝した。

Edelがふとライブラリをめくると、一番上には《分解/Disintegrate》がたたずんでいたのだった。

それは、残酷なまでにドラマチックな光景。

Merkel –3 Edel -1

Edelの最後の総攻撃を検証すると、あのとき攻撃しなければ《塩水の精霊/Brine Elemental》の効果をまともに受けることはなく、《分解/Disintegrate》で勝っていたようにみえる。しかし、Webcastでの石田 格の解説をお聞きいただいた方はご存知のように、実はライブラリの《分解》を考慮せずとも、Edelは勝っていたはずなのだった。

すなわち、次のターンが来れば、サリッドたちの効果で苗木トークンがさらに「3体」増える。《サリッドの発芽者/Thallid Germinator》の能力により、苗木トークンのブロックは基本的に意味をなさないから、終了時点で残っていたMerkelのライフ3点は、きっちり削れていたことになるのだ!

おそらく、Edelはあの長考の際に、既に「根負け」してしまっていたのだろう。分析してしまえばただのミスとなってしまうのだが、そういったことが起きてしまうのもまた、プロツアー決勝の恐ろしさといえるのかもしれない。

そして、Jan-Moritz Merkelにとっては、プロツアー初参戦にしていきなり優勝の栄冠を勝ち取ることになった。流れる時の中で、高らかに新時代の到来を告げたのだ!


一方で、冒頭にも書いた日本勢不在の決勝についても触れねばならないだろう。
初参加のプロツアーで初優勝、もちろんこれは素晴らしい快挙だった。
しかし、はばからずに会場の空気を形容すれば、「残念」そして「悔しい」という雰囲気がそこかしこに漂っていたのは間違いないだろう。

会場の悔しさは、あなたに届いたか。
届いたなら、マジックをしよう。そしていつか、世界で戦おう。
この悔しさを晴らすのは、あなたかもしれないから。

"Play the Games, See the World."

Congratulations to the Pro Tour Kobe 2006 Champion, Jan-Moritz Melkel!

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