準々決勝 : 斉藤 友晴(東京) vs. 森 勝洋(東京)

更新日 Event Coverage on 2006年 8月 27日

By Keita Mori

世界王者、森 勝洋

会場でこの試合を見届ける人々の間に漂う空気感は、まるで決勝戦を観戦するかのような期待と緊張とが入り混じっている。

無理もない。

世界王者とプロツアーチャンピオンが激突するという構図で演出されたこのカードこそ、間違いなく準々決勝4試合の中でもっとも注目されるべき一戦であろう。この試合の勝者こそが2006年度の日本代表チームを王者として先導するのではないか…という論調さえ、決して行き過ぎたものと非難できないのではないか。

二人の名手。まずは森 勝洋(東京)から。

2001年に日本にはじめての国際タイトル「新人王」をもたらし、2003年にはマスターズに優勝。そして、2005年には日本人として世界選手権に初戴冠という大偉業を果たしてしまった稀代の、現在の「強い日本」を象徴するプレイヤーである。

そんな森 勝洋の今大会における快進撃を支えているのが、スタンダード7回戦全勝というパフォーマンス。これはプロツアー・チャールストンで王者に輝いたチームKajiharu80の鍛冶 友浩のデザインした青白黒コントロール「ストラクチャー・アンド・フォース」という新しいデッキによるものだ。

ちなみに、デッキ提供者の鍛冶は森と世界選手権準決勝戦で「ガジーの輝き」のミラーマッチを戦ったライバルであり、同時に実力を認め合う友人同士でもある。強豪同士の、ある意味で自然なデッキシェアが行われていたということだろう。

世界王者にして日本王者という、さらなる未踏の領域へと挑戦しようとしている森のモチベーションは高い。世界の頂点をとってなおその上を目指すという気概は、一流を超えた「超」一流の世界を見据えようとしているのかもしれない。

マジックの競技史に数あまた存在いる世界王者の中でも、文字通りにひとつの時代を築き上げた「超」一流というのはたったの二人しか存在しない。ドイツの帝王『ジャーマン・ジャガーノート』Kai Buddeと、殿堂入りを果たしたアメリカの英雄『ジョニー・マジック』Jon Finkel。

もはや、森 勝洋はその二人を自身の目標として引き合いに出しても恥ずかしくないポジションへと到達している存在なのだ。

他方で、森のデッキの提供者というかたちでご紹介した鍛冶 友浩とは不可分と言っても良い「相棒」が斉藤 友晴(東京)だ。

現在の日本マジック界きっての名コンビなのである「カジハル」は、One Spin(with 津村 健志)、Kajiharu80(with 八十岡 翔太)という二つのチームを編成してプロツアーで決勝ラウンド進出を果たしているという一流どころである。

二人が二人とも一線級のデッキビルダーである「カジハル」コンビは、それぞれがそれぞれのデッキで日本選手権を迎えた。鍛冶は森にも提供した「ストラクチャー・アンド・フォース」によって16位入賞を果たしており、一方の斉藤「大切に育ててきた可愛い自分のデッキ」である「シーストンピィ」をビルドアップして決勝ラウンドへと駒を進めた。

斉藤 友晴にもまた、森 勝洋に負けないだけの高いモチベーションが存在している。彼は、シングルプレイヤーとしての何かがほしい。

現在Player of the Year争いしているのが八十岡 翔太(Kajiharu80)、世界選手権でベスト4という快挙を遂げているのは鍛冶 友浩(いつも一緒!)、そして昨年度のPlayer of the Yearに輝いている津村 健志(One Spin)といった具合で、斉藤のチームメイトたちは団体戦に限らず個人としての輝かしい戦績をあげているからだ。

…自分にもタイトルを、という覇気を斉藤 友晴は全身から放っているのだ。

鍛冶 友浩 「正直、明日ばかりはどっちを応援したら良いのかわかりません。友晴君はなんといっても友晴君だし、モリカツさんは僕のデッキ使ってくれていますしから。だから、今晩の最後の練習でも…どちらにも肩入れはしないことにしました。二人ともがんばってほしい」

二人の強豪、勝者は一人。

日本王者という高みを目指した二人の若者の戦いがはじまる。

Game 1

心地よい緊張感の中で迎える第1ゲーム。のどから手が出るほどほしい先行白星をここで掴み取ったのが「ストンピィの申し子」斉藤 友晴だった。

開幕ターンの《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》から《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》をプレイするというスタートをきった斉藤は、2ターン目に土地事故をにおわせるブラフを仕掛ける。すなわち、斉藤は逡巡する素振りを見せてから、土地をプレイせずに《密林の猿人/Kird Ape》を召喚したのだ。

一連の斉藤の挙動を受けて、森はこれを《霊魂放逐/Remove Soul》で撃ち落した。

森はこれによってタップアウト。実は手札に土地のあった斉藤は、ここでセットランドからエルフのマナとあわせて《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》をプレイ。成就させる。

 「…このデッキ、十手出されるとキツいんだよね」

世界王者でさえボヤキ節をこぼしてしまう中、神河環境を代表する装備品をまとったエルフが突撃。苦笑しながら《闇の腹心/Dark Confidant》を出してブロックする森。

そして、斉藤 友晴は後続として2体目の《密林の猿人》を呼び出し、これが《十手》のカウンターと《差し戻し/Remand》のバックアップを得て6点、6点、6点、とビートを刻んでいった。

盤面にダメージクロックをかけ、それが任務を遂行するためにカウンター呪文の類でバックアップする。いわゆる「クロック・パーミッション」戦術がカッチリとはまり、斉藤が白星を先行。

斉藤 友晴 1-0 森 勝洋

■シーストンピィ/斉藤 友晴のサイドボーディング

IN :
+1《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror
+4《喧騒の貧霊/Rumbling Slum
+4《炎の印章/Seal of Fire

OUT :
-4《三角エイの捕食者/Trygon Predator
-3《荒廃の思考/Thoughts of Ruin
-1《梅澤の十手/Umezawa's Jitte
-1《差し戻し/Remand

■ストラクチャー・アンド・フォース/森 勝洋のサイドボーディング

IN :
+4《最後の喘ぎ/Last Gasp
+1《不忠の糸/Threads of Disloyalty
+1《アウグスティン四世大判事/Grand Arbiter Augustin IV

Out :
-4《邪魔/Hinder
-1《交錯の混乱/Muddle the Mixture
-1《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror

Game 2

プロツアー・チャールストン王者、斉藤 友晴

第1ゲームで幸先よいスタートがきれたはずの斉藤だったが、ここで彼につきつけられたのは…いわゆる「マリガニング」に関する問題だった。

斉藤 「なんか、この子が機嫌損ねちゃったっぽいな」

 「それって女の子の話みたいだね!」

土地が1枚しかないハンドを一度マリガンしてからの《蒸気孔/Steam Vents》、《密林の猿人/Kird Ape》x2、《深き刻の忍者/Ninja of the Deep Hours》といった内容のハンドをどうするか?

結局、後手の斉藤はこれをキープ。
そして、1ランドでストップしてしまったのである。

対照的に森は《闇の腹心/Dark Confidant》に《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を展開、という素晴らしいスタートを見せ、斉藤を投了に追い込んだ。

斉藤 友晴 1-1 森 勝洋

■シーストンピィ/斉藤 友晴のサイドボーディング

IN :
+3《荒廃の思考/Thoughts of Ruin

OUT :
-3《差し戻し/Remand

Game 3

《差し戻し/Remand》を下げて《荒廃の思考/Thoughts of Ruin》を加えるというサイドボーディングを行ってから斉藤は、マリガン、痛恨のダブルマリガン、悪夢のトリプルマリガン…という具合で初手がたったの4枚となってしまう。

キープした手札の内容は3枚の土地と《極楽鳥/Birds of Paradise》。

森 勝洋は斉藤の初動となった《極楽鳥》を《最後の喘ぎ/Last Gasp》で殺してから《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》と《闇の腹心/Dark Confidant》を展開。

鍛冶 友浩のデザインした「ストラクチャー・アンド・フォース」は《師範の占い独楽》を実にうまく活用できるデザインとなっており、《闇の腹心》で無傷の土地ドローを実現したり、コールドスナップで注目の一枚である《相殺/Counterbalance》と組み合わせてカウンター作戦を敢行したりといったギミックが内包されているのである。カードアドバンテージを稼ぎ出すのが好きなプレイヤー諸兄には間違いなくオススメのコンボだ。

さて、話を試合に戻そう。

《宮廷の軽騎兵/Court Hussar》でさらなる手札拡充を行った森に対して、なんとか斉藤も2体目の《極楽鳥》を《深き刻の忍者/Ninja of the Deep Hours》へと忍術(=変身)させるというトリックを決めて抵抗する。

…が、斉藤の《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》が《呪文嵌め/Spell Snare》され、その返しで森が《梅澤の十手》をプレイするという展開になってしまい、斉藤が投了。

かくて、斉藤 友晴は連続するマリガニングトラブルで崖っぷちに追い詰められてしまうという展開になってしまった。

斉藤 「こういうときに普通のことをしたらダメなんだよな」

と、大胆なサイドチェンジをにおわせながら15枚のカードの束に手を伸ばす斉藤。

しかし、ある意味で精神戦を仕掛けようとしている斉藤のことなど相手にせず、

 「ゆっくり悩みなよ。オレ、ちょっとトイレいってくるからさ。ごゆっくりどうぞ~」

涼しい顔で、観客を掻き分けるようにして離席する森 勝洋。超のつくマイペースぶりだ。
ジャッジの一人があわてて後を追っていく中、

斉藤 「ああいうときのモリカツに、のまれちゃいけないんだよな」

斉藤は自分の頬をぴしゃりとたたき、気合をいれ直す。

斉藤 友晴 1-2 森 勝洋

■シーストンピィ/斉藤 友晴のサイドボーディング

IN :
+3《差し戻し/Remand

OUT :
-3《荒廃の思考/Thoughts of Ruin

Game 4

運命は残酷だ。

入念なシャッフルと想いをこめたサイドボーディングをあざ笑うかのように、斉藤 友晴をみたび襲うマリガニングトラブル。先手ダブルマリガン。初手は5枚。

ファーストアクションとなったのが3ターン目の《密林の猿人/Kird Ape》。森はこれを《霊魂放逐/Remove Soul》。今度は5ターン目に森がカードアドバンテージ製造機たる《闇の腹心》を召喚し、斉藤はここで《マナ漏出/Mana Leak》を使用。森は3マナを支払って、タップアウトしてでもこれを成就させることを選んだ。別の視点にたって今のプレイを考えると、決意をもって斉藤が《枯渇/Mana Short》よろしく《マナ漏出》を詠唱し、承知の上で森もガードをさげたということになる。

さがった、あるいは、こじあけられた森のガード。そして、ガラあきの顎を打ち抜く強烈な青い拳。悪魔ともおそれられる《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》を斉藤 友晴が通した。

しかし、頂点を知る、いや、頂点そのものとも言える名手はまったく動じない。森は2/1《闇の腹心/Dark Confidant》で淡々とアタック宣言を行った。

 「別にブロックしてもいいよ」

斉藤 「…いや、さすがにこれをブロックはないね」

ことのほか長く考え込んでから、日本屈指のビートダウン使いは本体に2点のダメージを通すことを選択した。

実際のところ、不用意なブロックを狙っての《最後の喘ぎ/Last Gasp》で《メロク》を失ってしまうような愚は避けたい。同時に、たかが1点、2点のやりとりだが、その瑣末な違いの「重さ」をどれだけ知っているかがトップの証でもある。実際、このゲームはその1点、2点というライフをめぐる攻防へともつれていくのだ。

戦闘後、森は《宮廷の軽騎兵/Court Hussar》を召喚するために潤沢な土地の中で唯一の白マナソースであった《氷の橋、天戸/Tendo Ice Bridge》を使用し、その後《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を設置。森のデッキにおける白マナの確保という問題もまた、このゲームの最終局面を演出するための伏線となっている。

斉藤はメロクで1/1飛行トークンを作り出し、バウンスしたランドをリプレイしてからアタックを宣言。戦闘後、マナを豊富に残した森を前にして《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》を召喚した。森は《独楽》によってライブラリー上段3枚を確認してから、「どうぞ」と一言。

自ターンを迎えた森は2枚の《最後の喘ぎ》で制空権を握っていた《メロク》を撃ち落し、そのうえで《地底の大河/Underground River》からダメージを受けてまでして2体目の《闇の腹心》を呼び出した。

斉藤の5/5ファッティが突撃し、呼び出されたばかりの2/1クリーチャーがチャンプブロック。さらに斉藤 友晴は2匹目となる《喧騒の貧霊》を呼び出し、ダブルマリガンからの反撃の狼煙を予感させた。この5/5クリーチャーは斉藤のアップキープごとに1点ずつダメージをばら撒くという強烈なおまけのついたファッティであり、これぞクロックといった堂々たるたたずまいである。――それが、2体。

斉藤 「でも、モリカツだからな、有利だなんてあってないようなもんだし」

と自戒をこめてつぶやく斉藤。その友誼ゆえに、目の前に座したプレイヤーがいかに非凡な実力の持ち主か、彼は思い知らされているのである。

 「さすがにどうだろうね。…でも、勝てなくもないか」

と応じる森は《闇の腹心》で《霊魂放逐/Remove Soul》をめくりだし、2点失って残りライフ10。森は《師範の占い独楽》を起動してライブラリー最上段のカードと交換し、プレイした。《曇り鏡のメロク》だ。

2体の《喧騒の貧霊》が時計の針を平等に進める。森8点、斉藤13点。そして、ここで伝説合戦とでもいうべきパワーカードの応酬が実現する。森が《メロク》なら、斉藤は《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》だ。これを一匹がまとい、あわせて二匹の《貧霊》が突撃。たまらず森の《メロク》のトークンと2/1《腹心》がブロッカーに指定され、蹴散らされていく。

しかしながら、《曇り鏡のメロク》の能力起動によって《氷の橋、天戸》をプレイしなおした森は白マナソースを確保し、《糾弾/Condemn》の構えを見せ、メイン動かずターンエンド。斉藤の次のアップキープに森のライフは8から6へ。

斉藤 「とりあえず、間違いなく良い試合してるよね」

 「かもね」

プロツアー・チャールストン王者はじっくりと盤面を見渡し、それから《喧騒の貧霊》2体でのアタックを再度選択した。もちろん、白マナを調達した世界王者の手札から放たれるのは《糾弾》。現代によみがえった《剣を鍬に/Swords to Plowshares》といったおもむきの強力な除去だ。

しかし、《氷の橋、天戸》一枚きりしか白マナの用意できていない森にとって、ここで斉藤が詠唱した《差し戻し/Remand》という呪文は強烈なカウンター呪文となった。クロックをかけてパーミッション(カウンター)するという「シーストンピィ」の真骨頂。森は1/3《宮廷の軽騎兵》と2/1《腹心》でチャンプブロック。戦闘後に斉藤は《極楽鳥》を呼び出してターンを渡した。

文字通りにタイトロープの上を渡ることになった森だが、まったく焦りの表情は見せない。《不忠の糸/Threads of Disloyalty》で《極楽鳥》を奪い取り、《氷の橋、天戸》を置きなおして白マナを構えてターン終了を宣言。

森のターン終了宣言を受けて、ライフ推移を記録していたメモ帳に大きく「CONDEMN」と殴り書きしてから斉藤は《十手》の上から4つのカウンターを取り除いた。もちろん、対象は制空権を握っている2/4の青い悪魔。これを受けて、森は4体のトークンを冥土のお置き土産とばかりに上空配置し、土地は《氷の橋、天戸/Tendo Ice Bridge》ただ一枚しかアンタップしていない状態となる。

かくて斉藤 友晴の11ターン目を迎え、《喧騒の貧霊》2体によってライフトータルは4対9。もちろん斉藤 友晴がリードしている。

斉藤 「やっぱ強いね、モリカツ。ぜんぜんリードしてる気になれないよ」

《メロク》の置き土産として残っていた2体の1/1飛行イリュージョン・トークンの片割れに《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》を装備しなおし、斉藤はトークン2体で攻撃宣言。森が《梅澤の十手》つきに《糾弾》を見舞い1体をスルー。すると、斉藤は生き残りを「忍術」で《深き刻の忍者/Ninja of the Deep Hours》へと変身させた。戦闘後、《十手》を忍者に装備しなおしてターンを終了。この段階でライフは2対10だから、次のアップキープを迎えれば、2体の《喧騒の貧霊》のダメージで斉藤の勝ちだ。さすがの斉藤も「ふぅ」とため息をつく。

しかし、
世界でただ一人、
森 勝洋だけは冷静な目でまったく別のビジョンを明確に描いていた。

森 「このゲームが引き分けになった場合ってどうなりますか?」

テーブルジャッジ 「引き分け? 引き分けたら…次の試合をやってもらうことになるね」

引き分け?

森 勝洋は《不忠の糸》で奪い取っていた《極楽鳥》を使用して、そのカードをプレイするためのマナを生み出した。

《オルゾフの司教/Orzhov Pontiff》召喚。
「あなたのコントロールするクリーチャーはターン終了時まで+1/+1の修整を受ける」。
メロクの忘れ形見、イリュージョン軍団でアタック、ダメージは8点。
お互いの残りライフはぴったり2点。

続くターン、斉藤 友晴の2枚の《喧騒の貧霊》によって二人のプレイヤーは同時に死亡した。

森 「白マナがあれば逆転できてたんだよ」

スコアボードに「引き分け」が書き加えられてから、森は笑った。

森にもしも、もしも白マナがもうひとつあれば、

《オルゾフの司教》を召喚してからの航空爆撃のダメージをスタックに積んでから、自陣のアタッカーのどれか1体を対象に《糾弾/Condemn》をプレイして生き残ることだってできたのだ。それこそ、《喧騒の貧霊》のダメージは1点ずつのスタックで一匹ずつ解決されるわけだから、パワーのあがった《極楽鳥》がアタックしてもよかった!

どんな劣勢に見えても、
真の名手は細い細い勝利への糸口をつねに意識しているのだ。

実は首の皮一枚で生き延びたのは斉藤 友晴だったとは、最後の最後まで凡百たる私には想像もつかない出来事だった。

斉藤 友晴 1-1-2 森 勝洋

時間無制限一本勝負。あまりの激戦ゆえ、休憩時間が設けられた。

その間も二人の名手はこれまでの試合の感想戦をすることに余念がなく、「ここはこうしたほうが良かった」といった活発な意見交換がなされる。そのストイックな姿勢こそ、あるべき王者の姿なのかもしれない。

決勝ラウンドで引き分けが発生するほどの熱戦であるという噂を聞きつけた数多くのギャラリーが二人のプロツアーチャンピオンを見守る中、試合が再開する。

Game 5

めったにないシングルエリミネーションでの引き分けをはさんで、ふたたび斉藤 友晴の先行。とうとうマリガンの悪夢は去った。

斉藤は《深き刻の忍者/Ninja of the Deep Hours》をにおわせながらも《極楽鳥/Birds of Paradise》から《密林の猿人/Kird Ape》を召喚するという立ち上がりで、一方の森は《師範の占い独楽》を設置。斉藤が《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》を置いて2/3となった《猿人》が襲い掛かり、《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》が続く。

このとき、斉藤はうっかり《極楽鳥》ではなく《繁殖池/Breeding Pool》をタップして《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》を召喚してしまったのだが、森はここで「出したマナを変更しないでほしい」とジャッジに主張し、これが容れられた。森はその《極楽鳥》へと《最後の喘ぎ/Last Gasp》を打ち込み、斉藤からカウンターのための青マナを奪った。そして、返すターンに1/3の《宮廷の軽騎兵/Court Hussar》を通す。

しかしながら、4ターン目に斉藤がキャストした《喧騒の貧霊/Rumbling Slum》が場にインパクトを与える。森は《不忠の糸/Threads of Disloyalty》で《ラノワールのエルフ》を奪い、《師範の占い独楽》とライブラリーの最上段を入れ替えて、そこからやってきた《神無き祭殿/Godless Shrine》をタップインで場に出した。森は「やっぱり2点くらってアンタップ」しようとするが、今度は斉藤がそれを拒んだ。

そんなやりとりの末で、白マナが寝ているところへ斉藤は強烈な5点アタックをお見舞いするが、ひとたび森が白マナをたててからは不用意なアタックを自粛し、上空に二羽目の《極楽鳥》を呼ぶにとどまった。エンドステップに森は2/3《密林の猿人》へと《最後の喘ぎ》を使用して除去する。

《糾弾/Condemn》の存在を強烈に意識している斉藤のファッティが地団駄をふみならす中、森はその猶予時間の間に《相殺/Counterbalance》へとたどり着いた。《師範の占い独楽》を活かすアーキタイプであるということは前述のとおりだが、《相殺》とのコンビネーションは特に強烈だ。斉藤はこれを《差し戻し/Remand》して時間を稼ぐこととした。
 
ライフは16対7で斉藤 友晴がリードしているとはいえ、《喧騒の貧霊》の孤軍奮闘状態である。《相殺》が決まる前に、と、斉藤は意を決してタップアウトでの《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》を召喚。その後、《極楽鳥》のマナでトークンを生み出し、手札に戻った土地を出しなおし、そのマナで《ラノワールのエルフ》を召喚した。

森は《曇り鏡のメロク》の召喚による伝説対消滅を行い、斉藤は対応してもう1体のトークンを作り出す。そのイリュージョン・トークン2体のアタックを選択する斉藤に対して、森は1体へ《糾弾》をプレイ。この戦闘を終えてライフは14対5で斉藤のリード。

そして、森の《相殺》がとうとうプレイグランドに設置され、そこへ斉藤がトークン1体と《極楽鳥》でのアタックを仕掛ける。露骨な、というか、見たままのとおり斉藤から《深き刻の忍者/Ninja of the Deep Hours》が「忍術」で現れるが、これを森は《糾弾》。それでも1点のダメージが通って15対3というライフトータル。森は《極楽鳥》再召喚でターンを返そうという算段だったが、《相殺》によってめくられる《呪文嵌め/Spell Snare》によってこれは打ち消される。そして、エンドステップに森は《師範の占い独楽》を起動してライブラリーの上3枚をまさぐる。

残り3ライフの森 勝洋だが、淡々と《交錯の混乱/Muddle the Mixture》での編成から《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》をサーチし、これを1/3《宮廷の軽騎兵/Court Hussar》に装備させた。そして、アタックせずにターンを渡す。

斉藤 友晴の11ターン目を迎えると、《喧騒の貧霊》によって森 勝洋の残りライフはとうとう2点に、そして1/1飛行トークンのアタックとあわせて1点というところまで追い詰められる。あるいは、森の計算どおり、残り1点で踏みとどまっている。

森 勝洋は《十手》つき1/3《宮廷の軽騎兵》でアタックを宣言し、これは5/5《喧騒の貧霊》に葬られてしまうものの2つのカウンターが装備品にあたえらえる結果となった。森はまずカウンターを1個使用して残りライフを3点という「安全圏」に引き上げ、上空のうるさいハエを叩き落すかのようにイリュージョン・トークンを除去した。その上で森は《アウグスティン四世大判事/Grand Arbiter Augustin IV》を召喚し、斉藤の《マナ漏出/Mana Leak》を《相殺》によってめくりだされる《差し戻し/Remand》で打ち消して退ける。

《梅澤の十手/Umezawa's Jitte
《相殺/Counterbalance
《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top

かくも凶悪な3枚のパーマネントによって状況を制圧しはじめた森 勝洋は、最後の最後に《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》を大空へと解き放った。

私はそのとき、Kai Buddeがプレイした《変異種/Morphling》のことを想起せずにはいられなかった。

斉藤 友晴 1-1-3 森 勝洋

Mori Katsuhiro

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Saito Tomoharu

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ソーサリー (3)
3 Thoughts of Ruin
インスタント (8)
4 Mana Leak 4 Remand
アーティファクト (4)
4 Umezawa's Jitte
60 カード

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